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佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

放射線科医の日常や、診療紹介、推薦図書などをご紹介します。問い合わせ先等、詳しくはカテゴリー「はじめに」をご覧下さい。

2009.12月 抄読会 T2'イメージング

2009年12月03日 21時36分02秒 | 抄読会
 ただいま当直中。ネタもないので、抄読会で読んだ論文です。
 例によって長いです。ごめんなさい。どちらかというと自分の勉強のために作っているモノを載せているもので…

 今回のは面白いです。T2'というのはこの論文で初めて知りました。
 では

Radiology.248.2008.979-986
T2' Imaging Predicts Infarct Growth beyond the Acute Diffusion-weighted Imaging Lesion in Acute Stroke
Susanne Siemonsen et al.
T2'画像について

○目的
 デオキシヘモグロビン濃度増加に対して感度の良い、局所磁場の不均一(T2')を計測し、脳組織がおかれている梗塞のリスクを示す。

○背景
 これまで灌流画像(PWI)と拡散強調画像(DWI)を用いることで、再潅流により回復が期待されるペナンブラを予測できると報告されている。しかし、PWIは良性の乏血領域と真のペナンブラを区別できない可能性が指摘され、過大評価しているのではないかという報告もある。
 これらの欠点は、還流不全として捉えられる領域が解剖学的な特徴、年齢、発症からの時間などさまざまな影響を受けるために起こると考えられる。
 ペナンブラは、酸素分画の増加によって特徴付けられる。PETではこの代謝異常を検出することができるが、緊急検査として撮像するのは難しい。MRIでこの状態をルーチンに検出する方法が紹介されるべきである。
 局所のデオキシヘモグロビン濃度は、T2*WIでの信号変化として認識されるということはよく知られている。よって、T2*の変化は酸素分画の変化を反映するかもしれない。

 T2'について
 1/T2'=1/T2*-1/T2

 T2'は、T2*値のなかでも、デオキシヘモグロビンの影響を反映するとされる(文献16,17)

 この研究では、T2'で異常の見られた領域がADCマップで見られる領域より大きい場合、これまで用いられている灌流画像(TTP:time to peal>DWIミスマッチ)より正確に拘束領域を予測できるかをプロスペクティブに調査する。 

○Materials and Methods
・症例:100名(男性57名、女性43名)
 クライテリア:前方循環の虚血、発症6時間以内の撮像、経静脈的に血栓溶解療法(t-PA)を行ったこと
 中大脳動脈領域の50%以上に拡散低下がある症例は除外
 出血が疑われる症例は除外
・MRI(合計10分で終了)
 プロトコル:FLAIR像、DWI、マルチエコーT2WIとT2*マッピングシーケンス、TOF-MRA
 DWI:シングルショットSE-EPI法 b=0,100 ADC値を計算
 PWI:GRE法を用いる
   ΔR2* (R2*=1/T2*)
   ΔR2*=-ln[S(t)/S0]/TE
S(t):造影剤注入後の信号強度
S(0):造影剤投与前の信号強度
TE:エコー時間
 それぞれのボクセルについて、S(0)→S(t)の経時的変化からTTPマップを作成
 T2マップの作成:FSE法(TEを12,84,150に変化させる)で値をとり、MRI装置で信号強度を計算させて画像化
 T2*マップの作成:シングルショットGRE-EPI法 (TEを20,52,88に変化させる)同上
 
 T2'マップは上記の式でボクセルの値を算出し、画像化
・画像評価:2名の読影者が独立して、視覚評価で行う
 TTP>ACCミスマッチ、T2'>ADCミスマッチそれぞれのボリュームを評価
 初回ADC異常の範囲と、最終梗塞巣(FLAIRまたはCT)を評価
 T2'マップに関しては、good, reasonable, poorと評価
 T2'>ADCミスマッチは、読影者間の一致率を算出 poor, slight, fair, moderate, substantial, very good agreement
・統計解析
 発症時間と、それぞれのミスマッチの関連
 閉塞血管と、それぞれのミスマッチの関連 →いずれもFisher検定

 感度、特異度、PPV、NPV、T2'>ADCミスマッチ、TTP>ADCミスマッチと梗塞巣増大のオッズ比

○Results 表
 画質について:T2'画像は50%以上でgood
 ADC低下病変がなかったのは、2/100例
 T2'異常病変がなかったのは、5/100例 ADC低下域より小さいと判断されたものがあり
 TTP異常病変は、全例で検出された  
 TTP>ADCは97/100例
 T2'>ADCミスマッチは読影者1,2でそれぞれ73,65%(κ=0.53)
 T2'病変の有無、ミスマッチと、発症後の時間に関連なし(3時間以前/後):TTP>ADCではあり
 T2'病変と、ADC低下病変の大きさと、血管閉塞部位の差はない
 MRAのフォローが得られた症例のうち、61%で再開通が確認された。再開通のあった症例では、T2'>ADCミスマッチのPPVが低い。
 
○Discussion
 T2'>ADCミスマッチは高い特異度である(読影者1:0.42、2:0.46)
 TTP>ADCミスマッチは特異度が低い(両者ともに0.04)
 →その分感度は下がる、つまり梗塞進展の予測はTTP>ADCミスマッチが優れる
 再潅流療法群で、PPVが低下したのは血管の再開通があったためである
 今回のスタディでは、域値ではなく視覚評価のためにより臨床に近い結果が得られたと思われる
 
●T2'>ADCミスマッチは、TTP>ADCミスマッチと比べ梗塞巣の広がり予測に関して、高い特異度である。 

 潅流画像は、なかなか通常の臨床で行うのは難しいと思いますが、T2'法であれば後処理が簡単にできればすぐに応用できそうです。興味のある方は、是非原文をご覧下さい。フリーのPDFです。

2009.12月 抄読会 心臓MRI

2009年12月02日 22時49分30秒 | 抄読会
 今月の抄読会に読んだ論文のうちの1本です。
 例によって、長いです。ごめんなさい。k-t SENSEとラジアルスキャンの併用についてはリファレンスに詳しいことがあるようです。Avanto使用なので、当院でも撮像できるかもしれないですね。心臓は3TのTrioがメインですが。

Real-time Assessment of Right and Left Ventricular Volumes and Function in Patients with Congenital Heart Disease by Using High Spatiotemporal Resolution Radial k-t SENSE

Radiology248 2008 782-791

Vivek M et al.

○Purpose
 先天性心疾患患者において
 (a)心電図同期シーケンス
 (b)通常のリアルタイムシーケンス
 (c)ラジアルk-tSENSEシーケンス
 を用いて、心室容積を比較する

○背景
 先天性心疾患患者においては、心室容積と機能が治療方針を決定するために重要である。 MRIはもっともこれらを正確に評価できるとされており、臨床において重要な方法となっている。
 MRIでは、心拍動や呼吸運動といった動きが問題となるが、現在のところこれらに対しては、心電図同期や息どめで対応している。この為、息どめが複数回に及ぶような場合や不整脈が検査の制限となっている。
 他の方法としては、リアルタイムMRIがある。この方法では、k空間は約100ms以内に充填され、心臓や呼吸の運動による影響は軽減される。ただし、空間時間分解能を犠牲にしている。
 これまで上記の方法は左室評価において良好な成績を得ている。ただし、左室壁性状は右室と比べて平滑でありこのような結果となっている可能性がある。右室に関しては、より詳細な空間時間分解能が必要かもしれない。
 これを達成するためには、k空間と時間(k-t)SENSEが一つの手段としてあげられる(文献11)。
 

○Materials and Methods
・症例40名(5ml±10の差を有意に出すために必要な標本数)
 年齢:中央値23.7歳 男性21名、女性19名
 心拍数:69±1/分
 疾患:ファロー術後:15例、肺動脈閉鎖術後:7例、肺動脈狭窄:4例、大動脈狭窄術後:3例、大血管転位術後:3例、Ross手術後:2例、複合性の先天性心疾患:8例

・MRIプロトコル
 MRI装置 1.5T Avanto Siemens 5エレメントフェイズドアレイコイル
 パラメータ 表1
 撮像シーケンスの呼称
 "cardiac gated", "standard real-time", "radial k-t SENSE"
 "radial k-t SENSE"について(文献12)
 リアルタイムと同様の信号取得方法:2つのRR間隔のうち、最初で定状状態をつくり、2つめで信号を取得する。
 トレーニングデータを取得した後に、実際の画像を撮像する。

・画像評価
 2名の心臓MRIの専門家による読影 シーケンスを伏せて独立して読影
 心室中部の短軸像、シネ画像の画質を評価
・全体的な画質の評価として、シャープさ、コントラスト、解剖学構造の分離の程度を3段階評価(1:poor non-diagnostic, 2:adequate diagnostic, 3:good diagnostic)
・定量的評価
 コントラスト:k-tSENSEを使用しているので、血液プールと心筋の信号強度比を用いる(収縮末期に心室中部レベルで、円形のROIをとる。半径は心室中隔の約2/3)。Osirix使用
 シャープネス:心室中隔の内膜側を通過する直線を引き、ピクセルの信号値をグラフ化して勾配をみる。MATLAB使用 ノイズ低減の工夫あり。全ての心位相で行い、平均値を出す。
 心室容積の評価:乳頭筋と、梁柱は筋に含める。Osirixでトレース。ESV,EDV、Stroke volumeを算出。
 Quantitative analysis of segmentation detail:心内膜をトレースし、長さの合計を比較する。
・統計解析
 SSPS使用

○Results
・画質評価について:図1
 視覚評価、動きの評価、定量的なコントラストとシャープネスはいずれも
 cardiac gated > radial k-t SENSE > standard real-time
 の順で良い
・心室容積の評価
 cardiac gated vs Radial k-t SENSEは表2:RV容積と、EFに有意差なし。LV EDVにわずかな差があり、LV stroke volumeとLVEFに有意差がでる。
 Radial k-t SENSE vs Standard Real Timeは表3:Bland altman解析の結果

 cardiac gated vs standard real-time では、RVとLV EDVが過小評価されている(図3)
・Quantitative analysis of segmentation detail:k-t real timeが、standard real-time
より長い。

○Discussion
●Radial k-t SENSE法について
 アンダーサンプリングは、空間時間分解能を向上するために、確立された技術である。折り返しについては、様々な再構成アルゴリズムでなされる(文献11,17,18)。
 この研究では、k-t SENSEを用いている。k-t SENSEは、空間的時間的な関係とコイルの感度マップ用いている。このため、通常の一つのソースからの情報により再構成する技術と比べ、より高いacceleration factorが達成される。
 k-t SENSEをラジアルスキャンと併用すると、k空間の中心をトレーニングデータとして得ることができる。このため、動きのある物体に関して良い画像が得られる(文献12,13)。

・Limitation
 standard real-timeシーケンスも様々な方法があるが、その中の一つとしか比較していない
 完全なブラインド比較となっていない

○Conclusion
 k-t SENSE 心室容積と、機能が正確に評価できる


 次回はT2'(ダッシュで良いのでしょうか??)についての論文です。面白い論文だったので、お楽しみに!?

2009.11.19 心臓のMRI 拡散強調画像

2009年11月19日 23時24分58秒 | 抄読会
 さて。
 ちょっと前から興味の出てきた心臓MRIの文献です。ほかの部位で盛んに利用されている拡散強調画像。最速ともいえる、EPI法をベースにしているので、時間分解能は十分あり、b値を変えることで非常に有用な検査になるのでは?と思っていろいろ調べている最中です。

 ちょっと長くなります。

J Radiol 90 481-4 2009

[Cardiac diffusion MRI of recent and chronic myocardial infarction: preliminary results]

○背景
 心筋梗塞のMRI診断:T2WI、初回増強効果(first-pass enhancement; FPE)、遅延相増強効果(delayed enhancement; DE)
 →検査時間がかかる

 拡散強調画像は造影剤を投与することなく、迅速に診断ができる(1)
 脳卒中同様に、心臓領域で拡散強調画像を応用する技術が開発されている(2)
 ただし、現時点では検査時間がかかること、複数回の息どめが必要であることなどから臨床応用はすすんでいない。

 この論文では、DWIをルーチン検査に組み込み、T2WI,FPE,DEと比較する

○方法
・症例(14名:男性9名、女性5名 年齢44-76歳)
 7例は最近の心筋梗塞(3-15日以内)
 3例は陳旧性梗塞(6ヶ月)
 4例は心筋梗塞のない、弁膜症疾患→コントロールとして撮像

・MRI
 1.5T MRI(Signa Twinspeed HDX, GE)
 8チャンネル 心臓コイル
 ECG-gated
 位置決め SSFPを息どめで撮像
●DWI 
 撮像断面:予想される梗塞巣に対して、3方向(軸位、矢状断、冠状断)
 SE-EPI法
 TR/TEeff 300-400/50-80ms (心拍数による)
 b値 300s/mm2
 FOV 44×44cm
 スライス厚 7mm ギャップ 1mm
 バンド幅 167kHz
 撮像時間 16-24秒

◎In-plane distortionを減少させ、拡散の感度を上げるための工夫◎

 3-6RRの間隔を使う → TRを少なくとも4000msにする(3方向で)ため 

 FOVを少なくとも35cmとする → TEeffを60ms以下にするため

 マトリックス 92×160 → 息どめ撮像を可能とするため

●シネMRI
 息どめ SSFP cine 
 短軸、長軸、4腔像
 FOV 380×380、マトリクス256×192、8mmスライス厚
●triple IR black-blood T2WI
 →浮腫の評価
 TR=2RR, TE 64, TI 140ms, スライス厚8mm、ギャップ2mm、マトリクス256×256、FOV=34-38cm 
●FPEによる灌流画像
 T1-multishot IR SSFP
●DE 遅延造影
 T1-multishot IR GRE 短軸像、4腔像
 3D撮像 (TR 3.9ms, TE 1.4ms, FA 25, TI 200-240ms, FOV 270×340mm, matrix 192×256, 10 slice of 7-8mm thick短軸に沿って)

・画像評価
 3名で合議の上、決定
 心筋梗塞:T2WIで高信号(壁の肥厚は問わない)、FPEでの信号欠損、DEで
 DWIとDEを比較
 ADC値を計測
 統計解析は行わず

○結果
・全ての急性期心筋梗塞(ST上昇の有無や、緊急心臓カテーテル検査の有無にかかわらず)で、梗塞巣がDWI高信号、ADC低下域として描出された。
 病変は、他のシーケンス特に、DEと一致していた。ただし、DEと比べると下壁梗塞は過小評価されている。

・コントロールとしての陳旧性梗塞は、DWIおよびADC値のいずれも異常を示さない。
 これらはFPEで増強効果なし、DEで貫壁性の増強効果あり。

・コントロールとしての弁膜症患者は、いずれのシーケンスでも異常を示さない。

○考察
・拡散強調画像では、再開通療法の有無に関わらず、心筋梗塞を検出することができた。
・壊死に陥った心筋と、viableな心筋を鑑別することができた。

・これまでのスタディ(ヒトに関して)
 拡散テンソルを用いて、心筋梗塞後のリモデリングを調べる(5)
 症例報告では、拡散の異常は浮腫と関連?(6)
 
●limitation
・ダブルオブリークDWIが撮像できず、3方向の撮像となっている点
 →下壁梗塞が過小評価となりうる
・比較的低いb値(b=300)を用いている点

・上記のいずれも改善したスタディが進行中(b=500)
 心筋症などでも撮像


・EKG同期の呼吸停止下での拡散強調画像は、簡易で迅速に行える検査であり、ルーチンに組み込むことのできる有用な検査となるかもしれない。

 pubmedで検索すると2009年は拡散テンソル画像が流行っているようです。すごいですね…心筋の異方性拡散はかなり昔から言われていましたが、in vivoでも画像化できるようになっているとは。
 ま、解析が相当手間だと思うので手を出す気になれませんが。

 気になるのは、この論文ではb値を300s/mm2にしている点。奈良医大のグループはb=50でしているようですが…。b値を変えることでADC値がずれる原因、つまりIVIMも有用な臨床情報と考えるのであれば、low b, high b factorどちらも使ってみる意義はあるかもしれません。いかがでしょうか?

 と、まあ色々考えてはいるのですが実際撮像してみないといけないですね。もう少しパラメータとかを考えて今度、技師さんに相談してみましょう。良い絵が撮れたらいいな。

 
  

2009.11月 高時間分解能シネMRI

2009年11月04日 21時51分38秒 | 抄読会
 当直明け。
 
 今月選んだ論文の2個目です。

Radiology: Volume 248: Number 2—August 2008
Howard V.Dinh et al
Isovolumic Cardiac Contraction on High-Temporal-Resolution Cine MR Images: Study in Hear Failure Patients and Healthy Volunteers

 先に謝っておきます。長くてごめんなさい。

○Purpose:
・正常コントロール群と心不全患者において、preejection contraction (PEC)と、prefilling relaxation (PER)の時間を比較するために、高時間分解能シネMRIをプロスペクティブに行うこと。
・駆出率(EF)とNYHA分類による症状をリファレンススタンダードとして、PECを用いて心不全患者を階層化すること。

 PECやPERを心機能の指標として提案するのは、背景として、これまで用いられている心機能のインデックスは代償された負荷や、心臓の位置関係に影響されやすいこと、弁膜症の影響を受けること、がある。
 これらを求めるには、心臓カテーテル検査が必要である。代理としては、Tissue Doppler imagingがあるが、アコースティックウインドウと空間分解能の問題がある。
 MRIは非侵襲的に全体的心機能を評価することが出来るが、コンベンショナルなシネMRIではPECやPERを評価するのに十分な時間分解能とは言えない。

○Materials and Methods
●スタディグループ
・正常コントロール群:18名(女性10名、男性8名 平均年齢43±14歳)
・心不全患者    :18名(女性5名、男性13名 平均年齢49.8±3歳)
 
●イメージングプロトコル
・撮像機器 Magnetom TIM Avanto Siemens
 マルチエレメント フェイズドアレイコイル 腹側に6エレメント、背側に6エレメント
 トリガーはprospective gated ECG
 shared-echo breath-hold Ture FISPで短軸像を撮像(心基部~心尖部に6セクション)
 :TR/TE 2.8/1.1ms FA 60°
 256×256マトリックス 50% phase resolutionかつ60%FOV

 シネ画像を作るためには、76ラインが必要
 →k空間を3つに分割
  
 中心のセグメント:20列 2.8msで2列埋める?→時間分解能は5.6ms 
  このセグメント埋めるのに10心拍かかる

 辺縁のセグメント:[76-20]/2=28 パラレルイメージング併用しているため
  セグメントに対して4列埋める 上記の5.6msのエコー時間を利用する"echo sharing"??
  このセグメントの残りを埋めるのに、余分に7心拍かかる

 合計17心拍+定状状態を作るための1心拍

 18±4秒の息どめの間に、1周期あたり133±25フレームが得られる

●画像解析と後処理
・ワークステーション Leonard; Siemens
 解析ソフト     Argus;Siemens
・1症例あたり1時間…
・PEC:QRSトリガーで得られた最初の画像から、大動脈弁尖が動き出すまでの時間(ms)
・PFR:大動脈弁が閉じ出すタイミング(収縮末期)から、僧帽弁尖が動き出すまでの時間(ms)

・LVEF, LV mass, SV, CIも計算

●統計解析
 SPSSを使用
 SignificanceはP≦0.05
 独立した2群間のGroup mean differenceは、two-tailed Student t検定
 linear regression analysisのために、Pearson product-moment correlation coefficientを使用
 ROC解析を行い、AUCを計算
 severe systolic HFは、EFを用いて35%で2群にわける
 moderate-to-severe HFは、NYHA分類で2をもとにわける いずれも治療決定に重要な数字

○Results
・症例の結果:Table.2
・MRIでのIsovlumic index Fig.4 (HF vs control)
 PEC時間 91.3ms±26 vs 40.4±11.8 P<.001
PER時間 103.7ms±41.8 vs 68.3msec±26.8 P<.01
 
・全体的左室機能との相関 Fig.5
 PEC時間は、LVEFと強い負の相関があり、LV massと強い正の相関がある
 PER時間は、LVEFとやや弱い負の相関があり、LV massと明らかな相関はない

・ROC解析
 PEC時間を解析し、患者の階層化のためのカットオフ値を算出 
 Fig.6は、severe dysfuction 70.65msで感度100%、特異度83%
Fig.7は、mild-to-severe HFの症状 70.65msで感度100%、特異度76%
 
○Discussion

・これまでは移植心や、先天心疾患術後フォロー、心筋梗塞後などでIsovlumic indexが検討されてきた。
 現在のところ、慢性心不全は無症状のころからリモデリングが始まっているとされ、不可逆的になる前に診断されることが望まれる。load independentな心機能評価である、Isovlumic indexを用いることにより、こういった初期の変化をとらえることが可能となるかもしれない。 

・リモデリングされた心筋の特徴(の一つ)
 心室コンプライアンスの低下→PEC時間や、PFR時間の遅延で示される
 電気的な理由(QRS時間の延長)に関しては、検討が必要

・Limitation
 症状あるいは心機能がsevereな患者のみを選択している点
 息どめが必要なシーケンスである点
 高時間分解能を達成するために、空間分解能を犠牲にしている点(ただし弁尖の評価は可能)
 等容性収縮期、あるいは拡張期の容積評価を行っていない点(あるいは行えなかった点)
 →ボクセルサイズが大きい、短軸で6スライスのみ撮像している点
 →view sharingを行っている点(ごくわずかに容積定量のエラーを起こす)
 心拍数の変動によるR-R間隔の影響を考慮していない
 
●"breath-hold ture FISP with echo sharing" により高時間分解能を達成
→ theoretic load-independent windowでの心筋評価が可能となった

 しかし、すごい時間分解能ですね。1症例あたりの解析時間も相当かかっています。ただし、オートマチックにできれば新しいツールになるかもしれませんね。
 勉強になりました。

2009.10月 抄読会 3D 心臓MRI(デュアルエコー)

2009年10月27日 00時38分01秒 | 抄読会
 今、はてと思ったのですが、抄読会って今週でしたっけ??
 10月分はもう終わっていたような…

 ま、とりあえず読んでしまったので。抄読会当日に参加できるかわからないし。
 下に作成したテキストを貼り付けます。長くてごめんなさい。一番下のまとめだけでも読んでいただければ。
 原文は、フリーのPDFが手に入ります。フィリップスの1.5T MRI Achievaなので、ウチにはあまり関係なかったのが残念。

 Radiology248(2),2008
Sergio Uribe et al.
 Volumetric Cardiac Quantification by Using 3D Dual-Phase Whole-Heart MR Imaging

○心臓MRIは、左室機能や左室容積を正確に評価できる。
 特に、SSFPシーケンスを用いて、横断像のシネを作成することができ、Simpson法を用いて、左室容積を計算することが出来る。
 問題点としては、
 a)短軸像を得るために、数ステップ踏まねばならず、時間がかかる
 →慢性心不全患者の負担となる
 b)息どめを複数回行うので、位置ズレが起こる
 →小児ではとくに難しい
 c)心基部では、心房と心室のセグメンテーションが難しい場合がある
 d)房室弁や、半月弁の評価には空間分解能が低すぎる

・等ボクセルの3DシネMRIシーケンスを得るためにのMRI技術が開発されている
問題点として、
 血液プールと心筋の信号差が少ない(2Dと比較して)

・新たな方法として
 拡張末期、収縮末期の3Dデータセットを取得することでLV,RV容積を計算
 →時間がかかる

・この論文では、quasi-independent navigator beamをそれぞれの心周期で用いることで、一度の自由呼吸下に拡張末期、収縮末期のデータを得ることとする。

○Materials & Methods
・対象
 5名の健常ボランティア
 10名の患者(様々な疾患)

・3D-dual phase acuisition scheme
 撮像機器:1.5T MRI Achieva Philips
 32チャネルコイル
 ”pulse programming”というソフトウェアを導入 
 
 基本は3D triggering balanced SSFP turbo field echo sequence
 それぞれの信号を得る前に、脂肪抑制とT2 prepをかけ、血液と心筋のコントラストを上げる

 ナビゲーターにより横隔膜の位置をモニターし、k空間のデータの有効性を判定

・MR Imaging プロトコル
 32チャネル 心臓用コイルで受信
 ロケーターと感度マップの作成
 4チャンバー シネ画像(30-80フェイズ)この画像から収縮末期、拡張末期のタイミングを評価
 3D dual-phaseを撮像(パラメーターは表2)
 マルチセクションの2Dシネ 短軸像 複数の息どめ(各息どめで2セクション撮像)
 自由呼吸下のPC画像で、大動脈および肺動脈の断面のフローを測定
 8名は、造影MRAを撮像後に3Dを撮像

・Image Data Analysis
 3Dデータの解析はセミオート解析(文献14,17)
 短軸画像や、大動脈肺動脈のフローはPhilipsのソフトで解析
 収縮末期容積(ESVs)、拡張末期容積(EDVs)を測定・・・乳頭筋は除外(文献18)
 4チャンバーを用いて、僧帽弁と三尖弁のレベルを決定
 ESVs,EDVsから拍出量を決定
 Flow ratesは、セミオートで解析 (文献19)
 評価は、2名が独立して行い、interobserver variabilityを測定
 
・Statistical analysis
 2Dと3Dで、ESV,EDVを比較
 心拍出量を 
 (a) 3Dとフロースタディ 
 (b) 2Dとフロースタディ
 (c) 3Dと2D
 で比較
 それぞれは、Pearson correlationと、Bland-Altmanで分析
 平均は、t検定(p≦0.05で有意)

○Results
・3D dual cardiac phase study
 撮像時間:7分54秒±1分42秒
 
・統計解析
 図3~5:それぞれの方法で高い相関

・Intra- and Interobserver Variability
 図5
 マルチセクションの2Dシネによる右室評価には差が見られる

○Discussion
 2Dやフロースタディと同等の正確さである
 より短時間で検査を進めることが出来る
 3D data setsは等ボクセルであり、撮像断面をより良い面で再構成することができる
 2Dと比較して、房室弁、半月弁の同定に優れる→先天性心疾患に有利
 コントラストが良く、セミオート解析に向く
 自由呼吸下で行える利点→小児など 鎮静不要

 2Dと比較して不利な点
 心位相の内、2相のみなので壁運動の動的な観察ができない
 
 Time-resolved 3Dもあるが、コントラストや空間分解能で劣る

 撮像タイミングを正確に決定することが重要
 多数の心位相で2Dを撮像することが必要(特に頻脈)
 不整脈に弱い

●まとめ
・自由呼吸下で、正確に心容積を測定することができた
・プランニングを少なくすることができ
・等容量ボクセルで得ることができ
・弁を正確に描出することができる
・重症患者、鎮静下、うっ血性心不全患者にとって良い検査と思われる。
 

 

2009.10月 抄読会

2009年10月14日 08時20分19秒 | 抄読会
 先月からこっそり大学に帰ってきているコンちゃんが読んでくれた文献です。
 大学に帰ってきた抱負を書いてよ、といっても逃げ回っていましたが、簡単な訳は素直に渡してくれました。

 AJR:191,2008

 MRIの骨髄信号のスコアとゴーシェ病におけるgenotypeと脾臓の状態の相関について

目的:MRIの骨髄信号を定量化した“スコア”とゴーシェ病患者のgenotypeや脾臓、その他の臨床情報との相関があるかを調べる。
方法:ゴーシェ病患者47人のMRIを2人の放射線科医でretrospectiveに診断し、過去の基準に基づいてMRIで骨髄信号をスコア化することと、そのスコアがgenotype等と相関があるかを調べる。

結果:腰椎、大腿骨の骨髄信号をスコア化した。N370とその他の遺伝子型のヘテロ接合をもつタイプ(ex. N370S/L444P、N370S/84GG…)が、N370のホモ接合をもつタイプ(N370S/N370S)よりも、腰椎や大腿骨、加えてその合計のスコアで有意に数値が高かった。また脾臓の状態(脾腫、脾摘された状態)とスコアの間にも有意な相関がみられた。しかし、肝臓の状態や年齢、酵素の補充療法の期間とは相関がみられなかった。

結論:N370遺伝子数がスコアと相関すること、また脾臓の状態が骨髄病変のhigh riskと関連することがあきらかになった。またこの体幹と四肢を基にしたこのスコアがゴーシュ病の病態を評価するのに有用であることが提唱された。

 スコアはT1WI,STIRで信号強度と分布から出しているそうです。

 う~ん、難しい論文読んでるなぁ…

2009.10.03 造影後CISSについて

2009年10月03日 23時16分01秒 | 抄読会
 ただいま当直中。比較的、時間があるのでスライド作りが進むか?と思われたのですが、読まなければならない文献が次から次に出てきてしまい、実際の作業が進みません…
 発表の準備に慣れてないからかなぁ…

 で、読んでいる最中に見つけた文献です。内容、スタディデザイン共に面白かったのでご紹介です。フリーのPDFでは無いかな?
 ざっとまとめたものをコピーします。興味のある方は原文を読まれてください。

 JCAT23(2);224-231

Contrast-Enhanced CISS MRI of Vestibular Schwannomas: Phantom and Clinical Studies

 Yoshinori Shigematsu et al

 CISSのコントラストは、heavily T2WIと同様であるが、他のシーケンスと異なり、造影剤による増強効果が強くみられる!
 このため第Ⅶ、Ⅷ脳神経と聴神経腫瘍の関係を見るのによい。
 ということを示した文献。

○ファントムと使って、FAを最適化した後に症例を撮像
 ファントムは、1%アガロースゲルに造影剤を溶解した11本のシリンジ。
○1.5Tでは、FA60°と70°で造影効果が強い

●CISSの説明
 造影後にCISSで増強効果が得られる理由はよくわかっていない
 CISSで利用される2つのSSFP信号(FISPと、PSIF)のうちの1つが関与していると考えられる

 FISPのコントラストは、短いTR,TE, 大きなFAでT2/T1コントラストを示す
 PSIFは、heavily T2WIを示す

 CISSは本当にお世話になっているのですが、結構複雑な内容を理解しないと解釈が困難なシーケンスです。もちろん、高コントラストと高空間分解能が特徴なので、神経血管圧排性病変などでは読影がしやすいシーケンスなのですが。

 繰り返しになりますが、興味のある方は是非原文をご覧下さい。面白かったですよ。
 ちなみに、熊本大学からの論文でした!
 
 

3T-MRIでの造影MRAについて 足部末梢血管障害への応用

2009年09月02日 22時24分57秒 | 抄読会
 今月選んだ論文はこちら。フリーのPDFダウンロード出来ます。
http://www.ajronline.org/cgi/reprint/190/6/W360

 では、早速内容を。 

Time –Resolved 3D MR Angiography of the Foot at 3 T in Patients with Peripheral Arterial Disease
Karl M. Ruhl et al
AJR: 190, 2008


○Objective
・3T-MRI装置でのサブミリメートルの分解をもった造影Time-resolved 3D-MRAを用いて、糖尿病あるいは末梢血管障害患者のpedal vasculatureを評価する。

○Subjects and Methods
●症例:21例(女性5例、男性16例。平均年齢65±14歳)
・Fontaine分類Ⅱb~Ⅳ:内70%が臨床的に虚血と診断(同分類Ⅲ, Ⅳ)
・13例が糖尿病合併
・2症例で、バイパス術前後の撮像
●MRI
・撮像装置:Philips社製3T-MRI Achieva
 コイル:8-エレメントフェイズドアレイコイル
・Time-Resolved 3D MRA (4D MRA)
 3Dグラディエントエコー法によるT1WI
 矢状断像
 パラメータ:TR/TE 4.2/1.6, FA 30°, FOV 290×290mm, matrix 352, 120スライス, 空間分解能 0.8×0.8×1.6 mm
 再構成:0.6×0.6×0.8 mm
 時間分解能:3.9秒
 2D-SENCE:R=4 AP方向, R=2 左右方向
 CENTRA(contrast enhanced timing robust angio)使用:ハーフフーリエ法と、centric orderを併用してk空間を充填
 動脈相~静脈相まで描出される間
・造影剤
Gd 0.2mmol/kg
 3.0ml/sec、30mlの生理食塩水後押し
 注入後10秒マニュアルスタート
●画像評価方法
 2名の放射線科医の合議
・足部の血管がシャープに描出されているか
・動静脈の分離が出来ているか
・動静脈シャントが描出されるか
・軟部の増強効果は見られるか
・時間分解能を3.9→7.8秒にしたときの画質は?

 11例では、動脈および静脈のピーク増強時間を計測可
 13例では、静脈のピークが確かではなかった(5例では全く描出されず)

SNR=SI(ROI)/SD(air)
ROIは足背動脈、後脛骨動脈、筋、空気

CNR=(SIROI-SImusc)/SDair

○Results
・全例が良好な画質
・AVシャントがあっても、良好に動静脈を分離可能
バイパス術に必要な動静脈の情報が得られた
・12/24例(58%)では時間分解能3.9秒が必要
10例 (42%)では、7.8秒でも診断可能
・平均動脈ピーク時間 24±13秒
15/24例では、早期に静脈が描出され、内12名ではAV shuntによるものと判断された
・足背動脈のアーチ:22/24例で描出 残りの2例はアンギオでも描出されず
(1例は著明な流速の低下あり、1例は近位で動脈が閉塞)
・軟部の増強効果は17例で観察された
(前足部10例、踵9例、足趾8例)
 *SNRやCNRはパラレルイメージングかつ3D撮像なのでよくわからず略…ごめんなさい

○Discussion
・NSFの問題はあるが、造影MRAは下肢動脈疾患の診断に有用な検査方法である
・3T装置での、本撮像法は高時間分解能、高空間分解能を両立させることができた
・ハードウェアの改善により、今回困難であった、静脈の評価が可能となるかもしれない
多チャンネルコイルの開発により、更に時間、空間分解能が向上するかもしれない


 相当キレイな絵が載っています。当施設では、総腸骨分岐上からテーブル移動をして下肢全長を撮像するので、なかなかここまで空間および時間分解能を絞ることができません。バイパス術式が分かっている上でなら、ウチの3T MAGNETOM Trio Timでも、このレベルで撮れるかな?

 ちなみに、リファレンスでバイパスの目標となる血管の評価にDSAはどうなのか?というものあったので、いずれ読んでみようと思います。
 

2009.07抄読会 DSCTによる冠動脈CTAの文献

2009年07月15日 21時04分12秒 | 抄読会
 予報通り、夕方から雨が降りだしました。空は厚い雲が広がってきていますが、西の方は血のように染まって見えます。時々、雷が暗い雲を照らしています。まだ音も聞こえないくらい遠くで。
 
 なんとも不吉な当直の始まり。

 では、今月の抄読会です。


 Dual-Soure CT: Effect of Heart Rate, Heart Rate Variability, and Carcification on Image Quality and Diagnostic Accuracy

Harald Brodoefel et al.
Radiology: 247: 2 2008
●Purpose
・心臓カテーテル検査をリファレンススタンダードとして、DSCTによる冠動脈CTの正診率および、心拍、心拍の変動、石灰化の影響を評価する。

●Materials and Methods
・症例100名(女性20名、男性80名 平均年齢62±10歳)
・バイパス術後、ステント留置後は除外
・冠動脈疾患が疑われ、CAGまで施行された症例
・正診率は、セグメント間および患者間で評価
・正診率および、心拍、心拍の変動、石灰化の画質に対する影響:
 各項目→Multivariate regression
 適正な画質の域値→Simple regressionで決定
・CT撮像
 ・単純CT:Caスコア 
R-R間隔の60%固定で、3mm実効スライス厚。オーバーラップなしでmedium-sharpのカーネルB35fで計算(シーメンスSyngo Calcium Scoring)
・CTA:20mlテストインジェクションでタイミングを決定
造影剤はイオメロン400を80ml注入レートは5 ml/sec 後押しは60ml
・画像評価 臨床情報を伏せて、2名のDr.の合議で決定
 各セグメントについて、視覚的に4段階評価(excellent~poor)
 狭窄は視覚的に高度狭窄(50%以上)を有意ととる
・評価項目
 ・心拍数、心拍の変動(最大と最小の差 15≧、>15でグループ化)、石灰化の影響(Agaston score ≦100, 100~400, >400)
 ・それぞれについて感度、特異度、PPV、NPV、Accuracy、画質
 ・multivariate linear regression analysisで解析
●Results
○画質:2.1±0.6
・excellent 21.7%, good 50.0%, moderate 18.5%, poor or nondiagnositc 9.8% (per segment)
・画質不良の原因;高度の石灰化が100 segment, motion artifactが20 segment
 統計的(multivariate regression analysis)にも、影響を与えるのは石灰化と、心拍の変動であった(P=.015, P<.001)
○心拍と画質(Table 2):心拍数は画質に影響しない linear regression analysisでは、95.2 bpmまで画質は保たれる(good~excellent)
○心拍の変動と、画質(Table 3.):影響は有意にあるが、あまり大きくない linear regression analysisでは29.9まで許容される
○Caスコアと画質(Table 4):Agaston score 400以上で、画質が低下する。スコアの高い症例ほど、評価不能セグメントが増加する。Linear regression analysisでは、Agaston scoreは375.8まで許容される
○Accuracy of Lesion Detection
・セグメント間
 Accuracy 91.9%, sensitivity 91.1%, specificity 92.0%, PPV 75.4%, NPV 97.5%
・患者間
 Accuracy 95.0%, sensitivity 100%, specificity 81.5%, PPV 93.6%, NPV 100%

●Discussion
・DSCTは、心拍数が画質へ及ぼす影響はほぼない
・心拍数の変動は画質へ影響するが、診断精度への影響は少ない
・高度の石灰化病変は、画質および診断精度のいずれにも影響を及ぼす
・64列CTと比較して、DSCTは心拍数および心拍の変動による影響が少ないと考えられる
・Limitation
 症例選択のバイアス(有病率73%)、急性冠症候群を除外している点。合議で読影している点、視覚的評価で行っている点。

 Definitionの優れた時間分解能で、心拍の問題はクリアできても、やはり高度の石灰化が鬼門のようです。
 当施設では、位置決めは前胸部で行って単純での心臓の心電図同期撮像はしていません。方法論としては、造影前にカルシウムスコアを出して、400をこえているようであれば造影せずにCAG、というのも有りだと思います。
 どなたか、見解を聞かせていただければ幸いです。

2009.05月 胸部の非造影MRAについて

2009年05月22日 12時52分06秒 | 抄読会
 こどもの迎えの関係で、抄読会の場で発表できなかったので、こちらにアップしています。
 当施設では、胸部MRAを単純で撮像することがほとんど無いので、参考になればと思い、この論文を選んでみました。

Unenhanced MR Angiography of the Thoracic Aorta: Initial Clinical Evaluation
Christopher J. Francois et al.
AJR: 190 2008 902-906

●Objective
3D-SSFPシーケンスによる胸部MRAは、造影MRAの代替となるかを検討。
●Materials & Methods
 ○症例:23例(男性12名、女性11名。17-80歳)
 上行大動脈瘤8例、動脈瘤術後フォロー1例、大動脈の破格8例、血管炎疑い1例、血管原性腫瘍の大動脈浸潤1例、その他の適応4例

 ○MRI撮像方法
・MR装置 Mangetom Avanto 1.5T SIEMENS
・非造影MRA
 心電図同期あり、自由呼吸下でのT2 prepを使用した segmented 3D SSFP
 広いFOV内で血管内の信号を均一にし、TRを短縮するために、非選択的RFによる励起を使用。
 自由呼吸下なので、Navigator pulseを使用
 TR/TE 2.3/1.0, FA 90°, バンド幅980 Hz/pixel
・造影MRA
 造影剤Magnevist 0.2 mmol/kg 2ml/s テストインジェクション法 2ml使用
 マスク用の3D-FLASHを撮像してから、造影後を撮像
 TR/TE 2.8/1.4, FA25°, voxel size 1.4x0.8x1.3 mm

 ○質的評価
・2名の読影者で、病変の診断及び、大動脈基部がどの程度描出されているのかをスコアリング(5段階評価)。
 ○定量的評価
・それぞれのシーケンスで、7ヶ所の大動脈径を測定(SIEMENS社、MMWP使用)
○統計処理
・Bland-Altman analysisと、Wilcoxon’s signed racked testを使用。
 有意差は、p<0.05とする。
●Results
・平均撮像時間:3D SSFP 9.3±4.3 min
・大動脈根部の描出は、3D-SSFPが優位に優れる
・大動脈の測定径に有意差は見られない
・Bland-Altman analysisで計算される差は0.042±0.173 cm
●Discussion
・3D SSFPによる胸部全体の非造影MRAは良好な画質が得られる。
・造影剤(ヨードや、Gd造影剤)の使用、穿刺、被曝というデメリットがない。
・limitation
 呼吸同期のため、撮像時間がかかる(平均約10分)
 CTAや、DSAとの比較を行っていない

 ひょっとすると、造影MRAより劣る点は、撮像時間の問題だけか!?という内容でした。
 理解が難しかったのは、呼吸同期のためのパルス(?)を心電図に併せてかけている点でした。そもそも、呼吸同期についてよく分かっていないためで、勉強の課題が見つかりました(何がわからないのかすら、わからないんですよね)。

 ちなみに、腎動脈については当院でも非造影MRAを撮像しているのですが、(3Tと1.5Tで違うシーケンスを使用)同じBalanced sequenceでも、ちょっとかけているパルスが異なるようです。この論文であった、T2 prepは、腎動脈でも使っていなければ有用かも!と思いました。