行きつけの医院の待合室で診察を待っていた。しばらくして診察室のドアが開いて、青い作業服を着た背が高く頑丈な体つきの50代の男性が、母親らしい老婦人の両手を持ち、後ずさりしながら出て来た。
大きな声で礼を言ってから、私の近くのソファーに母親を腰掛けさせ、自分もそのそばに腰を下ろした。にこにこしながら母親に何か話しかけたが、その口調が実に優しい。笑顔も優しいものだった。すぐに立って母親の前にしゃがみ、カーディガンを取り出して着せたが、その手つきも細やかで、相変わらず笑顔で話しかけながら母親の顔をちょっと撫でたりする。その様子は心温まるもので、知らず知らずのうちに私は笑顔になって男性を見ると、彼も笑顔を返した。母親は歩くのが困難なようだが頭の働きのほうは普通のようで、話しかける息子に嬉しそうに答えているその様子には息子を信頼し、何か安心し切っているように思われた。やがて、支払いを済ませて母親をいたわりながら帰っていったが、男性は体つきが大きく頑丈そうで無骨のようであるだけに、その優しいしぐさがなおさら印象的で心地よかった。
どのような家庭環境にあるのかは分からないが、おそらくは進んで母親の介護をしている、平凡な表現をすれば、孝行息子なのだろう。近頃は年老いた親を虐待したり、時には殺してしまうようなことも起こっている。そのようなニュースに接するたびに、いったいどのような親子関係だったのだろう、親は子どもを慈しんで育てたのだろうかと思う。我が子の手で命を絶たれることほど痛ましく哀れなことはない。特にそれが母親の場合には、我が腹を痛めて産んだ子なのにと強く思う。それだけに医院で見た年老いた母親と息子の姿は何か心休まるものだった。
大きな声で礼を言ってから、私の近くのソファーに母親を腰掛けさせ、自分もそのそばに腰を下ろした。にこにこしながら母親に何か話しかけたが、その口調が実に優しい。笑顔も優しいものだった。すぐに立って母親の前にしゃがみ、カーディガンを取り出して着せたが、その手つきも細やかで、相変わらず笑顔で話しかけながら母親の顔をちょっと撫でたりする。その様子は心温まるもので、知らず知らずのうちに私は笑顔になって男性を見ると、彼も笑顔を返した。母親は歩くのが困難なようだが頭の働きのほうは普通のようで、話しかける息子に嬉しそうに答えているその様子には息子を信頼し、何か安心し切っているように思われた。やがて、支払いを済ませて母親をいたわりながら帰っていったが、男性は体つきが大きく頑丈そうで無骨のようであるだけに、その優しいしぐさがなおさら印象的で心地よかった。
どのような家庭環境にあるのかは分からないが、おそらくは進んで母親の介護をしている、平凡な表現をすれば、孝行息子なのだろう。近頃は年老いた親を虐待したり、時には殺してしまうようなことも起こっている。そのようなニュースに接するたびに、いったいどのような親子関係だったのだろう、親は子どもを慈しんで育てたのだろうかと思う。我が子の手で命を絶たれることほど痛ましく哀れなことはない。特にそれが母親の場合には、我が腹を痛めて産んだ子なのにと強く思う。それだけに医院で見た年老いた母親と息子の姿は何か心休まるものだった。