『ひとのあかし』 若松丈太郎 詩 アーサー・ビナード 英訳 齋藤さだむ 写真
この本に出合ったのは、2013年7月29日でした。
2011年3月11日ーーあの日から2年以上も経って、復興もまだおぼつかない現実です。
「フクシマで起きていることをすべて18年も前に見通して歌った」福島在住の詩人・若松丈太郎さん。
「みなみ風吹く日 1 2」 「神隠しされた街」 そして新しく書かれた「ひとのあかし」
が収録されたこの本は、
ページごとにアーサー・ビナードさんの英訳が載り、次に、3・11から3か月後のフクシマで撮影された
齋藤さだむさんの見開き写真という構成。
「神隠しされた街」を読んだ人は、そしてビナードさんは、「予言だ」と言い、 若松さんは
「わたしは予言者ではまったくない。ただただ観察して、現実を読み解こうとしただけのこと」
と言います。そして、「わたしの見方が、大きくハズレていたらよかったのにと、毎日考える」 と。
「神隠しされた街」が書かれたのは、あの日よりも18年も前であることに衝撃を受けます。
その間、私たちは何も考えずにまるで何ごともなかったかのように「平和」に暮らしてきたのでした。
そして3・11があったーー若松さんの見方は的中した
言葉の下を流れる冷たいマグマのような重み。
読み進むうち、腹の底のほうからひんやりとしたものが体中に広がり、固まり、それが消えさらない。
何度読んでも、ずしりと重く、襲われるのです。
けっして声高でない、静謐な詩の魂が読む者の腑に沁み入ってくる・・・
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セシウムの放射線量が8分の1に減るまでに90年
致死量8倍のセシウムは
90年後も生き物を殺しつづける
人は100年後のことに自分の手を下せない
ということであれば
人がプルトニウムを扱うのは不遜というべきか
(1994年8月 「神隠しされた街」より)
what Makes US
定価 1785円〈税込〉
サイズ 四六判 上製 144ページ
清流出版 刊