国語塾長、情報集めて考えます・書きます的ブログ

国語塾詳細はkokugo.m@ozzio.jpへどうぞ。塾猫常駐。

人間はどのようにして感染症を克服してきたのか?・・・岡田正彦先生のHPより

2022-12-17 10:20:34 | 岡田先生の本要約

(2022.11.28)
Q 人間はどのように感染症を克服してきたのか?

 ペストという伝染病の名前を聞いたことがあるでしょうか。原因はペスト菌という細菌で、ネズミなどに取りつくノミが媒介します。

致死率が100パーセントとも言われ、激しい皮下出血のために全身が黒ずんだ状態で死亡することから、黒死病とも呼ばれてきたものです。なぜかヨーロッパで流行を繰り返してきました。14世紀には、その大流行があり、正確な記録は残っていませんが、中世ヨーロッパに住む人の半数が死亡したとも伝えられています。

WHOの世界統計によれば、最近の6年間で3,000人強の感染者がいて、500人ほどの死者が出ています。日本では1926年以降、確認されていません。

2022年10月19日、米国の研究者チームは、「多くの生物が集団で死ぬような事態が生じたとき、それにに打ち勝った遺伝子をもつ個体が生き残り、次の世代に受け継ついでいるはず」との仮説のもと、大規模な調査を行い結果を発表しました。

研究対象に選んだのは、なんとロンドンのお墓に埋葬されている318体の遺骨で、11世紀から15世紀の頃に埋葬されたことが、放射性炭素年代測定法などの諸技術で確認された人たちでした。

その遺伝子を徹底的に分析した上で、黒死病の大流行があった時代の前後に生きた人たちの間で何か違いが生じていなかったかを調べました。その結果、大流行が終わったあとの時代の人々の遺伝子には、免疫に関係した数百ヵ所で変異がみつかりました。

さて、ここで人間の遺伝子が変異する仕組みについて、簡単に触れておきましょう。遺伝子は、世代を重ねるごとに刻々と変化を遂げていくものです。そうでなければ、人間も含めた生物は進化できないことになってしまいます。

その変異には、2つの異なるタイプがあります。ひとつは、まったくランダムに起こっている変異で、生き物にとってプラスにもマイナスにもならないもので、「遺伝的浮動」と呼ばれています。もう一つは、「環境に適した変異をきたしたものが生き残っていく」という、ご存知、自然淘汰です。

話を戻します。問題は、遺骨からみつかった数百ヵ所の変異が、遺伝的浮動なのか、自然淘汰なのかです。黒死病に対する自然淘汰が働いたのであれば、大流行した前後の世代で、各個体に共通する変異が認められ、一方、それ以前、あるいはそれ以後の時代の人々にバラバラに生じていた変異は遺伝的浮動ということになります。

彼らは、その後、デンマークでも同様の調査を行い、コンピュータ解析により両者で一致した4つの変異が自然淘汰によるもので、その遺伝子をもつ人が「黒死病に強い体質」を獲得していた、と断定しました。理由もおおよそ解明され、ウイルスや細菌が体内に侵入した際に、これら遺伝子がある種のたんぱく質を作り、免疫システムに警報を鳴らすから、ということでした。

さて、ここまで新型コロナウイルスとは関係のない話を繰り広げてきましたが、もうご想像はついたものと思います。これだけ世間を騒がせたコロナ禍でしたから、われわれ人類、とくに感染して生き残った人々の遺伝子にも、何か有益な変化が起こっていたのかもしれません。

一方、幸いにして、濃厚接触があったにもかかわれず感染を免れた人たちの遺伝子にも、過去に大流行したかもしれないコロナウイルスに打ち勝つ遺伝子変異をすでにもっていた可能性があります。

ただし黒死病の研究から言えるのは、大勢の「子をなす世代」が特定の感染症で死亡した場合に、生き残った人たちの遺伝子の好ましい変化が次の世代に受け継がれていく可能性があるということです。しかし世間を騒がせた新型コロナウイルス感染症では、報じられている死亡率が黒死病に比べて遙かに小さく、しかも多くは高齢者で、老衰や誤嚥性肺炎が直接死因であったなど、状況はかなり異なっています。

したがってコロナ禍を経験した次の世代に、遺伝子がどう変わっているかは想像の域を出ませんが、少なくとも人類と微生物は共存共栄をなしてきたわけでなく、まさに死闘の歴史だったことがわかります。そして、これからも・・・。

【参考文献】
1) Klunk J, et al., Evolution of immune genes is associated with the Black Death. Nature, Oct 19, 2022.
2) Zimmer C, How the 'Black Death' left its genetic mark on future generations. New York Times, Oct 19, 2022.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・転載終わり・・・・・・・・・・・・・・・・・

世界史では、ペストによる人口減が、ヨーロッパ中世を終わりにした、と習った。

農奴がみんな亡くなったのである。

流行病は時代を変える、これは一つの原理みたいなもの。

そして生き延びた人の遺伝子をもった人々がまた新しい時代を作る…

このパンデミックが、プランデミックで、「計画」されたものであっても、時代は変わる。

次はどんな時代が来るのだろうか。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 心不全、敗血症、がん、心臓... | トップ | チヨの血液数値が悪くて… »
最新の画像もっと見る

岡田先生の本要約」カテゴリの最新記事