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自由律俳句・・放哉(ほうさい)と山頭火(さんとうか)

2020-04-20 07:19:17 | 日記
屋久島 白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)
ジブリの「もののけ姫」森のイメージはここでつくられたらしい

♥自由律俳句とは
季語を含まず、五・七・五の定型に縛られない。
それでは短詩ではないかということになるが、伝統的俳句を詠んでもそれなりのレベルではあるが、あえてそれを破って自由律へ、ということ。
つまり、「チューリップ あかしろきいろ 背くらべ」なんて俳句風(もへじでは、私がおもしろくないねえ・・考え直してというレベル)をつくっているうちは自由律はご遠慮下さい、って感じかな。 

 ♥さて,この自由律俳句の代表的俳人の1人が尾崎放哉(おざきほうさい)である。 
1885年〈明治18年〉1月20日鳥取県生まれ。本名は尾崎秀雄。
 東京帝国大学法学部を卒業、東洋生命保険(現・朝日生命保険)に就職。大阪支店次長を務めるなど出世コースを進んでいた。しかし、それまでの生活を捨て無所有を信条とする一燈園(京都)へ、放浪の俳人生活に入った。原因は「酒」である。酒を飲むと暴れ、周囲を困らせたらしい。若いときからの飲酒はやがてアルコール中毒といってもいい状態になって仕事でも失敗を重ね。借金も重ねるようになったとか。
 最後は小豆島の西光寺の南郷庵で亡くなった。この庵に入って1年ほどだった。享年41歳。この庵は小豆島遍路をしたときに訪ねた。お墓の中にあるいわゆる墓守の庵である。
 最期の地としてわびしいが、俳句を詠むには良かったのかも知れない。(残酷な言い方か)
そして下のような俳句ができた。
★咳をしても一人・・・昨日取り上げた句
※いれものがない両手でうける
 ↑
 私は、これが一番好き。

肉がやせてくる太い骨である
こんなよい月を一人で見て寝る
一人の道が暮れて来た

◎春の山のうしろから烟が出だした

辞世の句・・・辞世とは、この世を辞す、つまり亡くなること。
この世を去るときに詠む句である
有名な辞世の句としては
旅に病み夢は枯れ野を駆けめぐる・・・松尾芭蕉

・・・・・・・・・・・・・・・・
♥放哉とならんで有名な自由律俳句の巨人は種田山頭火(たねださんとうか)。
最近は教科書にも登場したりしてけっこう知られるようになってきている。
★分け入っても分け入っても青い山
 ▲どうしようもないわたしが歩いてゐる
◎うしろすがたのしぐれてゆくか
これらの句は有名だ。
私は最後の(◎)が好き。
山頭火は1882(明治15)年に山口県防府市生まれ。本名は種田正一。
幼い頃に母が井戸に身を投げて自殺してしまうことから彼の不幸は始まった。造り酒屋の家業も傾き、父は行方不明。弟も自殺するなど次から次へと不幸が彼に襲いかかった。
この人もお酒で暴れるタイプであった。しかし、これだけいろいろあると酒でも飲まなければ生きていけない気持ちになるというのも仕方ないか。(やや甘いかな)
山頭火は放哉より放浪を好んだ。四国の遍路道も何度も歩いていて有名。最期の地も四国松山で俳句の町あった。ここも訪ねたが、こちらはかなり立派な庵であった。最後は58歳,脳出血で他界した。


一言で言えば、放哉も山頭火も酒に飲まれた。(酒を愛した、ともいえるが)不器用で弱く、思うようにならない幸せでない人生を送った、といっていい。
しかし、そういう不如意(ふにょい おもうようにならないこと)や苦労・悲しみ,孤独が今も愛唱される自由律俳句を生んだといっていいだろう。
 ちなみにこの2名はほぼ同時代で自由律俳句の先生は荻原 井泉水(おぎわら せいせんすい)同門である。
この先生は高田(上越市)が先祖の地で新潟とは縁が深い。91歳まで生きて、長命であった。しかし、私、名前は知っているが、この方の自由律俳句は知らない。放哉や山頭火のようなすっと口をついて出てくるような井泉水先生の句は知らない。
「出藍の誉れ(しゅつあいのほまれ)」のいい例だ。
  ↑
 弟子が師匠の学識や技量を越えることのたとえ

 酒への執着や不幸、放浪などが彼らの文学的・芸術的モチベーションを高めて、結果として師の上をいったとすれば・・・・彼らは現世的な幸福は放棄したのか。
いやいや、それはないだろう。できない「何か」=業(ごう)のようなものがあったとしか思えない。
 2名とも破滅系である。日本人はこういう文学者は好きだな、と思う。よく知られているのは太宰治。太宰なんて、一緒に死のうといって女性を誘い,自分は生き残ったりしている。放哉も山頭火も妻子を捨てている。
 人としてどうよ!(`⌒´)ではあるが、これが「文学の人」なのである。表現者は普通の人ではない「人でなし」だってたくさんいると思って読むと分かることがある。
・・・以上 本日の勉強終わります・・・・


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