手元の会報にある連載記事「宇宙の言の葉を尋ねて」(渡部潤一氏、国立天文台上席
教授)の15回目は『南十字星』(サザンクロス)なんですね。 見たことはありませんが、
超有名で、宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』にも出てきますね。
南十字星というのは、アステリズム(目立つ星の並びの通称)で、みなみじゅうじ座
の中の4つの星が均整の取れた十字架の形に並んでいる、その4つの星を指して言って
います。
南十字星
(ハワイアンジュエリーより)
星座(みなみじゅうじ座)としても、現在定義されている全天88星座の中で最も小さい
星座で、その中の4つの星ですが、そのうちの2つは1等星で、1等星を2つも含む星座は、
オリオン座とみなみじゅうじ座のすぐ横にあるケンタウルス座だけなのだそうです。
ケンタウルス座の2つの1等星を結んだ線上少し伸ばしたところに南十字星があります。
なので、南十字星を見つける「指示星(ポインター)」とも呼ばれているそうです。
南十字星から少し離れた所にも、4つの星が十字になっている「にせ十字」があり、
本物よりも大きく立派に見えるところから間違える場合があるので、このポインターは
役立つそうです。
南十字星(右)とポインター(左)
(ウイキペディアより)
北半球には北極星が真北を指していますが、南半球にはこのような方向を示す星が
なく、南十字星の縦の星をつなぐ下延長線が天の南極を示しているので、大航海時代
などには、南を指し示す目印として重宝されていたそうです。
アステリズムという言葉が出てきましたが、この南十字星の他に有名なのがおおぐま座
の北斗七星や夏、冬の大三角、上述の にせ十字 などがそうです。
このように南十字星は、南半球ではシンボル的存在で、各国の国旗にもあしらわれて
います。(十字の4つの星の他に、もう一つ追加されているのもあります。)
南十字星をあしらった国旗(いずれもウイキペディアより)
オーストラリア ニュージーランド
サモア パプアニューギニア
ブラジル
しかしこのような知名度の高い南十字星は、北半球ではその全体が見られるのは、
北緯27度以南だそうで、日本では沖縄本島より南の宮古諸島、八重山諸島(石垣島など)
で見られるそうです。 が、地平線すぐ上あたりのところだそうで、霧が出たりして
なかなか見ることが出来ないようです。
会報筆者の渡部氏は、石垣島で2回見たことがあるそうです。 冬だったので、午前
4時ころに見えたそうですが、氏のアドバイスによれば、ゴールデンウイーク頃には
南十字星の南中時刻は22時から23時ころなので見やすいかもしれないと・・。
この南十字星、日本でも江戸時代の商人が残した文書に、「大くるす」と「小くるす」
という言葉が出てくるそうですが、それぞれ「にせ十字」と「南十字」を指している
そうです。
何となくロマンを感じますが、にせ十字と南十字星の間に、りゅうこつ座の4つの星で
完全なひし形を作るアステリズムがあり、こちらは「ダイヤモンド十字」と呼ばれて
いるそうです。
南十字、にせ十字 ダイヤモンド十字
(エキサイトより)
南十字があるなら北十字もあるか? あるのです。 北十字は、夏の夜空の真上に
見える はくちょう座の主要な星を結んだアステリズムなんですね。南十字に比べて、
極めて大きく立派ですね。こちらは私も見たことがあります。
先の名作『銀河鉄道の夜』では、銀河鉄道で北十字からサザンクロス、つまり南十字
へ旅する物語なんですね。 『もうじきサザンクロスです。』 『あ、あそこ石灰袋だよ。
空の孔だよ。』 物語の終りには、石灰袋がでてきます。これは、実在する暗黒星雲で
「コールサック」と呼ばれています。南十字星のすぐ横に、天の川を背景に、黒く
抜けたような穴のように見える部分が、コールサックで、ガスが濃く集まっているため
に黒くシルエットに見えますが実は、星が生まれている部分なのだそうです。
かって、現役時代に石垣島に行ったことがありましたが、まさか南十字星のことなど
思いもよらぬことでした。
会報記事の最後に、『計算してみると、紀元前1万5千年頃から、紀元200年頃までの
間は、東京でも、南十字星全体が地平線上に昇っていたはずである。』とあります。
これは、地球の自転が、コマを回したときのように「みそすり運動(歳差運動)」に
よって、地球上のある特定場所からみえる星空が少し変化することによるのだそうです。
縄文時代や弥生時代の人達は関東から南十字星を見ていたかもしれないのですね。
ちょっと雰囲気が違いますが・・
南十字星 鳥羽
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