蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

エピジェネティクス  (bon)

2015-07-10 | 科学・生物

 聞きなれない言葉ですが、ご存知でしたでしょうか。

 最近急に、活発に議論されてきているそうで、論文数も激増しているようです。
ライフサイエンス(生命科学)の一つなのです。
難しく専門的ですので、なかなか理解はできませんが、
どのようなことか? ホンの入り口だけご紹介したいと思いました。

 それというのも、先日手元に届いた会報に、エピジェネティクス入門(仲野徹 阪大大学院生命
機能研科長・教授・医博)と題する記事があり、DNAの構造が同一であっても遺伝的に異なった
現象が起こるという、生命科学分野の新しい解明が出来るというだけでなく、このことが生活習慣病などの
疾患の発症から、植物の生理、動物の社会生活まで幅広く関与していることが明らかになっていると
いうのです。

 では、エピジェネティクスとはどういうモノか、にわか勉強で分かりにくいですが、サワリをご紹介します。

 エピジェネティクスの具体例として、エピジェネティクス最新の研究動向(伊藤裕子、科学技術・
学術政策研、薬博)と題する論文に次のように述べられていました。
「一卵性双生児は、ゲノムの遺伝情報が同じであるのにもかかわらず、その身体的特徴および性格や
嗜好に違いがあり、さらに、病気の発症の有無や症状の程度に差が見られることが知られている。
しかも、これらの両者の“違い”は、幼少期には小さく、成長するに従って大きくなる。また、
動物では、ゲノムが同一であるにもかかわらず、元の動物の毛色や模様のパターンがクローン動物に
受け継がれないことが知られている。 可愛がっていた三毛猫のクローンをつくることを試みても、
誕生したクローン猫は似ても似つかぬパターン模様の二色の毛色のネコになってしまうということである。
これらは全てエピジェネティクスの身近な例である。」と

 また、他の記事からも別の見方として引用しますと、

「 私たちの遺伝子は、DNAで構成されています。このDNA配列に変化が起こると、その変化は細胞分裂を
介して、あるいは個体を通して、次の世代に受け継がれます。このような変化を、遺伝的変化と呼びます。
そしてこのような遺伝子の変化と表現型の変化を結びつける学問を遺伝学(ジェネティクス)といいます。
 一方、DNA配列に変化は起こらないのに遺伝子の機能が変化し、その表現型が次の世代まで受け継がれる
ことがあります。たとえば、私たちの身体を構成する細胞は、基本的には同じ遺伝情報をもっています。
ところがそれぞれの細胞は発生分化の過程で、特異的な性質を子孫細胞に伝えるようになります。
このようにDNA配列の変化がないのにその形質が子孫(細胞)に受け継がれることをエピジェネティクスと
いいます。」

 そうなんです。おなじDNA配列なのに、遺伝的に異なる発現があるというのですね。
いったいどういうことなのか? 仲野教授は、アナロジーとして、下図の“巻物”で説明されています。

 


                                              (仲野教授発表資料より)

 つまり、図のように23,000の文章からなる巻物があるとして、この巻物の文章が、それぞれ、
読み取る(活性的付箋)、読まない(抑制的付箋)、読めない(伏せ字)などが施されており、
これらの情報に従って、巻物の“発現状況”が異なるという訳です。 この23,000の文章というのは、
ゲノム(全遺伝情報)の中の遺伝子の数であり、ここに付箋などに従って発現した個体は、おなじ
DNA配列でも性質などが(遺伝的に)異なるというのです。

 もう少し、専門的にその構造を見てみますと、図にありますように

        DNAの構造
          (国立がん研HPより)

DNAは、数珠あるいはネックレスのように、ヒストンというたんぱく質に巻き付いていて、
このヒストンの尻尾であるヒストンテールがアセチル化という化学修飾を受けると、遺伝子が発現
しやすくなる、すなわち読みなさいという付箋が付いた状態になる。 反対に、このヒストンがメチル化
修飾を受けると、読んではいけませんという付箋が付いたようになるというのです。また、DNAの
4つの文字であるACGTのうちC(シトシン)だけがメチル化修飾を受け、そうなると巻物の伏せ字に
されて、遺伝子が発現しにくくなる。つまり、これらをまとめて、仲野教授は、次の図のように表しています。

 
                              (仲野教授発表資料より)


 DNAが同じでも、遺伝的に少し違った個体が出来る理屈がわかったような気がしますが、では、

このエピジェネティクスが疾患と どのようにかかわりを持つのか、次第に明らかになっているといいます。
たとえば、“がん”についても、エピジェネティクスが重要な発症原因であることが分かってきたり、
さらに、骨髄異形成症候群といった白血病の疾患には、DNAメチル化を阻害する薬剤が有効である
などもわかってきた。エピジェネティクスは、殆どの生命現象に多かれ少なかれ関係しているのであるから、
ある意味ではすべての病気に関係しているという言い方も出来る。
最近では、がんや生活習慣病だけでなく、自閉症や統合失調症をはじめとした精神疾患、アレルギー性
疾患など、様々な疾患においてエピジェネティクスが関係しているのではないかといわれている。
しかし、これらを解明するには、今後さらなる研究が必要であると、教授は力説されていました。

 また、伊藤博士も、「異常な遺伝子発現を正常な遺伝子発現の状態に戻すといったエピジェネティクスに
関する基礎研究が進められている。さらに、再生医学でもエピジェネティクス研究の発展が期待されて
いる。再生医療で利用されるES細胞やiPS細胞のような全能性をもつ細胞(どの組織や臓器にも分化できる
細胞)から、目的の細胞や臓器を自由に作製(カスタマイズ)するためには、エピジェネティクスに
ついてのより多くの進んだ知識が必要になる。

 エピジェネティクスにおける遺伝子発現のメカニズムには、代表的な「ゲノムDNAのメチル化」
以外にも様々なものが知られている。 このメカニズムにはまだ不明な部分も多く、解明研究も活発に
進められている。」と述べています。

 これまで、動物や植物などで不思議と思われてきたことも、少しずつ解明されてくると同時に、
それらの仕組みが明らかになるとともに、そのことを医療などに活用することによって、より快適な
生活向上に向けた活動がなされているのですね。

 仲野教授の簡潔なまとめがありました。

 

                              (仲野教授発表資料より)


 

 

 

 

 

 

 


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