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私、Rohi-taの映画の感想(ネタバレ有り!)と日常を報告するページです。

樹の海

2005-08-03 04:30:08 | 映画 サ行
1日の映画の日に、この日2本目として、萩原聖人、井川遥、池内博之、津田寛治、塩見三省、出演の「樹の海」を映画館で観ました。

●ストーリー
(エピソード1)
某公団職員の朝倉正彦(萩原聖人)はある朝、樹海の中で目を覚ます。
彼は暴力団に利用され5億円もの公金を横領した挙句に、口封じの為、殺され樹海に遺棄されたのであるが、幸運にも気を失っていただけで意識を取り戻したのであった。

しかし、公金を横領した彼に帰る場所は無く、宛てもなく広い樹海を彷徨い歩くのであるが、、、。

(エピソード2)
悪徳金融業者のタツヤ(池内博之)は顧客の北村今日子(小嶺麗奈)の家に借金の取立てに行くが、部屋には何も無く、もぬけの殻であった。
夜逃げに感付いたタツヤは今日子に電話をするが、応答が無い。

あきらめかけた時、タツヤの携帯に今日子からの電話が入る。
タツヤの問いかけに「樹海にいるのだが、足を挫いて動けない」と言う今日子。
奇妙な答えに少しキレながらも、車を飛ばし樹海に向かい、今日子の身柄を押さえようとするタツヤであるが、、、。

(エピソード3)
サラリーマン山田(津田寛治)は探偵三枝(塩見三省)に呼び出され、横山真佐子(小山田サユリ)という女性について知っていることを教えて欲しいと頼まれ、彼女と共に写っている写真を見せられる。

写真を見せられても、どうして彼女と一緒に写真を撮ったのかさえ思い出せない山田であったが、写真の日付からそれが日韓ワールドカップで日本がロシアに勝った夜の事で、2人が初めてスポーツバーで出会い、アルコールを飲みながら日本を応援していた記憶を蘇らせるのであったが、、、。

(エピソード4)
映子(井川遥)は2年前まで、都市銀行の本店で勤務していたが、不倫相手にストーカー行為を犯した為に銀行を退職し、現在は駅の売店でひっそりと働いていた。

毎日の売店での仕事に愛着と安らぎを感じ始めた頃、偶然にも精彩を欠き、昔とは変わり果てた不倫相手、渡辺(宮本大誠)に出会う。

渡辺は映子の事に全く気が付かない程、疲れきっていた。
映子の犯したストーカー行為は自分だけではなく、渡辺も深く傷つけたことを悟った映子は失意の中、樹海へと向うのであったが、、、。

●感想
上のストーリーを読んでもらえば分かるように、4つのオムニバスストーリーから成り立っています。
でも4つが全く別のストーリーではなく、少しずつ重なり合わせているのがミソです。(言ってみれば「バルプ・フィクション」みたいな作り方です)。

自殺という重いテーマを扱っているのですが、瀧本監督の手腕により「あなたのためにも誰かがきっといてくれる」と生きる希望を持たせる上手い作りになっています。

ほとんど、役者さん達の会話が主となりストーリーが進んで行くので、それぞれのエピソードでの役者さん達の演技力にこの作品の出来、不出来が懸かっているのですがビックリするほど皆さんイイです。

特に(エピソード1)と(エピソード2)が私のお気に入りなんですが、それはこれに出ている萩原聖人さんと池内博之さんの演技がとびきり素晴らしかったからというのが理由です。

2人共これまでにあまり演じて無い役柄で、ほとんど1人でしゃべりながら、足元の悪い樹海の中で演技をしなければならなかった事を考えるとまさに熱演と呼べると思います。

津田寛治さん、塩見三省さんも存在感のあるいい演技を魅せてくれています。
演技派2人の見せるさりげない居酒屋での会話のシーンでは終始スクリーンに安心感が漂っていました。

でも、1番驚かされたのは井川遥さんの演技の上達ぶりでした。
役柄も彼女にぴったりだったのかもしれませんが、これだけの名優達の中に入っても「スクリーンが似合う女優さんになったなー」と感心させられるくらい静かな名演技を披露してくれました。

私の勘では近いうちに、井川さんは映画で大きな賞を獲るでしょうねー!
癒し系グラビアアイドルと呼ばれ、脚光を浴びながらも少しの間「今後、この娘どうするんやろー?」と勝手に思った時期もありましたが、女優として大きく羽ばたこうとしている遥ちゃんの姿を観て嬉しく思えた作品となりました。

それらはすべて瀧本監督の脚本や演出の賜物であり、初監督ながら見事な手腕を発揮し素晴らしい作品を生み出したと思いました。

瀧本監督自身がこの作品を作るまでに孤独とか焦燥とか不安をたくさん経験したからこそ、自殺という重いテーマの中にも観る側に何らかのメッセージを配信できる、さらっとした内容の映画に仕上げることが出来たのだと勝手に解釈しております。

●採点
私の評価は75点です。
「結構、絶賛しているのに75点かよー!」と思う方もいるかもしれませんが、意図的に話の盛り上がる部分を作りにくい、重いテーマの中でこの点数はスゴイと私は思っています。

強いて言うなら、それぞれのエピソードをもっと関連させて作られていたら(「パルプ・フィクション」の様にラストで見事に全てが1つに繋がっていたら)、間違いなく80点以上をつけたと思います。

それに敢えて瀧本監督にとっては初監督作品でもありますし、最初から甘やかすのもどうかと思い、今後の更なる期待を込めて少し辛目にしてみました。

観る人によっては賛否が分かれる作品だと思いますが、私としては久しぶりに観終わった後に「爽やかな心地良さ」を感じる作品となりました。
少し時間をおいて、「また観に行こうかなー」と思っています。

今日は長文になりましたが、また何か観たら書き込みします。