好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

『尚も生きる。手を取りて』第53話「真実の記憶」

2020-01-08 | ゲームブック二次創作

「おや、まだ分からないのか。ライアン。
 そもそも、その姿を与えられなければ、お前は生きる事も
ままならなかったというのに。
 あの時、私はお前に敬意を表して、全霊をかけてマランハの力を注いだ。
 その成果が今のお前だ」

ザラダンは再び微笑んだ。慈愛に満ちた穏やかな顔だった。

「私は長年、マランハの実験を繰り返していた。
 最初は小動物から始め、ついに高等生物、人間に至った。
 人間を、より上位の超人へ進化させる事が、私の最終目標だ。
 その最初の成功例が、お前と、お前の部下たちだった!」

違う。アイツらは部下なんかじゃない。
一人で戦おうとする俺に付いてきてくれた、大切な仲間だ。

首を回して、部屋を見た。ベッド、タンスの服、机、望遠鏡。
俺はコレを使っていた。この自分の部屋で。あの日も、当たり前に。

「ほう、この部屋も思い出したか?
掃除をしていなくて申し訳ないが、あの時のままにしておきたくてね」

そうだ。こうしてザラダンと対峙していた、あの時から変わっていない。

「ただ残念ながら、お前の部下たちは、お前と違い、
試練に耐えられなかった。
 例えばハニカスの部屋にいたオーク達は、そう、お前はリジーと
バーゴンと呼んでいたな。彼らは、望ましい進化に至れなかった。
 もっとも、私と戦わずに船から逃げた臆病者よりはマシだが。
あの子連れの冒険者の、リチャードの味はどうだったかね?」


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