好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

『尚も生きる。手を取りて』第59話「勇者に倣って」

2020-01-29 | ゲームブック二次創作
キャリイが腕を振ると、散らばっていた門と槌のカケラが、
つむじ風によって集まり、融け合って形を変えた。

現れたのは、闇のように深い黒色の大剣。
俺は導かれるように、その柄を持った。同時に思い出した。
俺は知ってる。これは、俺の親しんだ得物に限りなく近い。

両手で持ち上げようとすると、重かった。
日頃は易々と扱っていた武器だが、ふらつく足では、立てもしない。
難儀しかけた俺の腕に、キャリイのそれが添えられた。
二人がかりで、どうにかこうにか立ち上がった。

「わたしに出来る事は、これくらいしかありません。
この体のおかげで、あなたを支えてあげられます」
「馬鹿言うな。お前はいつだって支えてた」
「どういう意味ですか?」

問われたが、聞こえなかったふりをした。
心強い聖女様と話したいのは山々だが、今は集中しなければ。
剣の切っ先を、魔王の顔へ掲げ、位置を合わせた。
これが本来の使い方。剣としても使えるが、本質は杖(ロッド)だ。
力を持つ古代語を、正しく紡ぐために、深く息を吸った。

さよならだ。“おやじ”。
声に出さずにそう言ってから。
かつての伝説に謳われた雷撃呪文を、はなむけに撃った。

「ZAP――!」

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