Renaissancejapan

哲学と宗教、財閥、国際政治、金融、科学技術、心霊現象など幅広いジャンルについて投稿しています

コンテナ海運、日系「ONE」が3.7兆円投資 輸送力3割増(日経2025.3.3)

2025-03-04 08:33:34 | 不動産・流通・交通


日本郵船と商船三井、川崎汽船が共同出資するONEは2030年度までに成長分野へ3兆円超を投資する

 

日系のコンテナ船事業会社オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)は、2030年度までに250億ドル(約3兆7500億円)規模の投資をする。

28年度までに新造船やM&A(合併・買収)を通じて輸送能力を3割増やすほか、港湾整備を進める。グローバルサウス(新興・途上国)の成長などで貿易構造が変わるなか、海運需要の拡大に対応する。

 

ONEは日本郵船商船三井川崎汽船の3社のコンテナ船事業を統合する形で17年に設立された。シンガポールに本社があり、24年8月末で243隻のコンテナ船を運航する。

コンテナ船の運航規模を示すTEU(20フィートコンテナ換算の輸送容量)は190万で、世界6位につける。

 

まず、25〜28年度に42隻のコンテナ船を新造する。運航規模を24年8月時点に比べ約57万TEU積み増す。コンテナ船を所有する海運会社の買収や出資なども想定する。

自社コンテナの積み下ろしをする港湾の整備費用など総額250億ドルの成長投資を30年度までに実施する。

 

自力での規模拡大と同時に、同業との提携も進める。25年2月からはコンテナ船世界最大手のスイスのMSCと協業を始めた。

アジア―欧州路線で船の貨物スペースを相互に融通したり、配船サービスの一部を提供したりする。

 

積極投資の背景には、コンテナ海運の需給逼迫が続くとの見方がある。

世界貿易機関(WTO)によると、世界の貿易量は24年に前年比で2.7%増え、25年は3.0%の増加が見込まれる。

 

インドや東南アジアでスマートフォンや電子部品などの製造拠点を誘致し、輸出産業を育成する動きが広がっている。グローバルサウスの成長に伴って世界貿易が中長期的に拡大が続くと判断した。

世界的なコンテナ船不足に対応する狙いもある。24年以降の中東情勢の悪化を受け、欧州―アジア航路は紅海を避け、アフリカ喜望峰を経由する迂回路が一般的になった。

 

輸送日数が長期化し、航行中の船が増えた。港湾で輸送を待つ荷物が増えており、自社所有の船を増やせばシェア拡大につながる。

 

 

 

世界の海運大手もコンテナ船の新増設に動く。スイスMSCは新造船と中古船を増やして規模を拡大する。

2位のAPモラー・マースク(デンマーク)も28〜30年に、重油以外の代替燃料も使えるコンテナ船を20隻増やす。独ハパックロイドは40億ドルを投じて27〜28年に同様のコンテナ船を24隻増やす。

 

24年は世界でコンテナ船が過去最高となる457隻新造されたという。世界で運航するコンテナ船の輸送能力は25年末に前年末比で6%増える。

米国が世界各国に対して関税などを発動した後も、海運業界にはプラスに働く可能性がある。対中関税は世界の企業が生産拠点を中国から東南アジアやインド、南米などに移す契機となり、新たな荷動きが生まれる。

 

日本海事センターによると、アジア発米国向けの海上輸送量は24年に過去最高となった。米トランプ政権の関税引き上げを懸念し、在庫を積み増す動きが広がったためとみられる。

カナダやメキシコへの関税も同様だ。カナダ・メキシコ以外からの調達が増えると、米国への海上輸送が増える可能性がある。

 

海運市況に詳しい拓殖大学の松田琢磨教授はトランプ政権の関税の影響について「関税を避けるため出荷前倒しが強まれば運賃が上昇する」と指摘する。

一方、関税の影響で米内需が冷えれば、「荷動きが減り運賃が下がる要因にもなる」。

 

世界情勢に需要が大きく左右される海運業界は、需要の減退期にも耐えるために一定の事業規模が求められる。

地政学リスクが高まるなか、さらなる規模拡大に向けた投資競争が激しくなる。

 

 

 
 
β版
Ask! NIKKEI
この機能はベータ版として一部の方に表示しています
<picture class="picture_p166dhyf"><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5353763012092024000000-5.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=638&h=734&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=9af6ece579aef2b68027ede1815947fb 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5353763012092024000000-5.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=1276&h=1468&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=1ee6fe71fbac3cad8d953320e87d5194 2x" media="(min-width: 1232px)" /><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5353763012092024000000-5.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=638&h=734&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=9af6ece579aef2b68027ede1815947fb 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5353763012092024000000-5.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=1276&h=1468&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=1ee6fe71fbac3cad8d953320e87d5194 2x" media="(min-width: 992px)" /><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5353763012092024000000-5.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=600&h=690&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=3672df0e9b6c27ad3cfee5b7d0fd6f16 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5353763012092024000000-5.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=1200&h=1380&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=d50c7679af8f44c7ac0a4685727553f5 2x" media="(min-width: 752px)" /><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5353763012092024000000-5.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=600&h=690&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=3672df0e9b6c27ad3cfee5b7d0fd6f16 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5353763012092024000000-5.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=1200&h=1380&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=d50c7679af8f44c7ac0a4685727553f5 2x" media="(min-width: 316px)" /><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5353763012092024000000-5.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=600&h=690&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=3672df0e9b6c27ad3cfee5b7d0fd6f16 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5353763012092024000000-5.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=1200&h=1380&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=d50c7679af8f44c7ac0a4685727553f5 2x" media="(min-width: 0px)" /></picture>

香港系ファンド、東急プラザ銀座を買収へ 1500億円超で

2025-02-07 13:31:24 | 不動産・流通・交通


ガウ・キャピタルは「東急プラザ銀座」を取得した後に施設名を変え、改修にも踏み切る方針だ

 

香港系ファンドのガウ・キャピタル・パートナーズが商業施設「東急プラザ銀座」(東京・中央)を買収することが6日分かった。

価格は10億ドル(約1500億円)超とみられる。買収後は名称を変更し、2026年にも施設の改修を始める予定だ。

 

インバウンド(訪日外国人)の増加が続いており、ガウ・キャピタルは銀座周辺の消費需要が今後も堅調に推移するとみて買収を決めた。

シンガポール系のペイシャンス・キャピタル・グループ(PCG)と連携し、現在保有する三井住友トラスト・パナソニックファイナンス(東京・港)から買い取る。ガウ・キャピタルがおよそ9割、PCGは1割ほど保有する見通しだ。

 

東京都区部の商業地の基準地価格は24年に前年比9.7%上昇した。

都心部の地価は上昇が続くものの、海外ファンドなどは円安進行もあり、世界の主要都市と比較すると依然として割安とみているもようだ。

 

ニッセイ基礎研究所の調べでは外国資本による国内不動産の購入額は24年通年で前年比2割増の約2兆2000億円だった。

 

 

<picture class="picture_p166dhyf"><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5970125006022025000000-2.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=484&h=566&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=a7cd464cd8597f6d6fa33732dc7a9537 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5970125006022025000000-2.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=968&h=1132&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=0912969417d4686070740e5af61f2150 2x" media="(min-width: 1232px)" /><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5970125006022025000000-2.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=484&h=566&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=a7cd464cd8597f6d6fa33732dc7a9537 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5970125006022025000000-2.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=968&h=1132&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=0912969417d4686070740e5af61f2150 2x" media="(min-width: 992px)" /><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5970125006022025000000-2.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=484&h=566&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=a7cd464cd8597f6d6fa33732dc7a9537 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5970125006022025000000-2.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=968&h=1132&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=0912969417d4686070740e5af61f2150 2x" media="(min-width: 752px)" /><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5970125006022025000000-2.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=484&h=566&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=a7cd464cd8597f6d6fa33732dc7a9537 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5970125006022025000000-2.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=968&h=1132&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=0912969417d4686070740e5af61f2150 2x" media="(min-width: 316px)" /><source srcset="https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5970125006022025000000-2.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=484&h=566&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=a7cd464cd8597f6d6fa33732dc7a9537 1x, https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXZQO5970125006022025000000-2.jpg?ixlib=js-3.8.0&w=968&h=1132&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&s=0912969417d4686070740e5af61f2150 2x" media="(min-width: 0px)" /></picture>

 

東急プラザ銀座は東急不動産が16年に開業した商業施設で、飲食やファッション・雑貨などの店舗が入る。新

型コロナウイルス禍で客足が落ち込み収益が悪化したため、資産入れ替えの一環で23年に売却した。

 

当時の売却価格は非開示だが、東急不動産による同施設の22年3月末の簿価は1185億円で、23年3月期に211億円の減損損失を計上した。

東急不動産は売却後も商業施設を運営してきたが、ガウ・キャピタルは運営も引き継ぐ。

 

改修によって賃貸スペースを広げ、買い物客の購買を促すよう店舗も再配置する。集客力のあるブランドなどの入居を増やし、賃料を上げたい意向だ。

香港などで複数の大型商業施設の運営実績があり、販売促進のノウハウを活用する。

 

海外ファンドによる国内不動産への投資は相次いでいる。米投資ファンドのブラックストーンは2月末に西武ホールディングス(HD)から「東京ガーデンテラス紀尾井町」(東京・千代田)を約4000億円で取得する予定だ。

アジアを拠点とする投資ファンドのPAGは企業の売却物件やデータセンターなどに焦点を当て今後3年程度で日本に約70億ドルを投じる方針だ。

 

ガウ・キャピタルは日本で6500億円程度の資産を運用している。21年からは人工知能(AI)の普及に伴う需要増を見込み、データセンターの開発も増やしている。

 


サッポロHDの4000億円不動産活用、三井不やKKR名乗り

2024-12-20 18:18:09 | 不動産・流通・交通


恵比寿ガーデンプレイス(24年8月)

 

サッポロホールディングス(HD)が外部から募集している不動産の活用案を巡り、三井不動産三菱地所、東急不動産などが提案者として名乗りを上げたことがわかった。

米投資ファンドのKKRを含め、提案を募る入札には10組前後が応じたもようだ。サッポロHDは外部資本の受け入れなどで不動産事業の位置づけを改める。

 

不動産事業全体の価値は約4000億円とされており、複合商業施設の恵比寿ガーデンプレイス(YGP、東京・渋谷)など都心一等地の物件も含まれる。

応募した不動産大手やファンドの経営戦略に大きな影響を与える入札だけに、千載一遇の機会を捉えようと水面下の探り合いが熱を帯び始めた。

 

9日に提案者を募る1次入札が締め切られた。日本経済新聞の取材で判明した応札企業は3社を含む複数の大手不動産のほか、KKRや同じく米投資ファンドのベインキャピタルなど。

今後数社に絞られた候補企業は2025年初めにもデューデリジェンス(資産査定)に入る予定で、早ければ25年春にも外部との提携を決めるとみられる。

 

サッポロHDは2月に公表した中長期経営方針で、不動産事業に外部資本を導入すると発表していた。不動産の売却などを進め、資金をビール事業のM&A(合併・買収)など成長投資に振り向ける。

尾賀真城社長はこれまで「YGPを含めて(全ての保有資産で)、あらゆる選択肢を考えている」と述べていた。外部の不動産関連企業などから、不動産の購入や不動産子会社への出資といった具体的な提案を受けるとしていた。

 

サッポロHDが保有する不動産にはYGPのほか、ビアホールの「ライオン銀座七丁目」(東京・中央)や商業施設の「GINZA PLACE(銀座プレイス)」(同)などがある。

このほど日本経済新聞の取材に応じた尾賀氏は入札について、個別物件ごとではなく事業全体についての提案を求めたと明かし、その狙いを「グループの企業価値を最大限にするため」と説明した。

 

応札した不動産事業者にとって、最も関心が高いのはYGPだ。「恵比寿駅とつながるというポテンシャルは唯一無二で、二度と出てこない案件」(大手不動産社長)という評価は業界内で共通している。

一方、YGPは1994年の誕生から時間がたっており、近年は存在感が低下していた。2021年に三越恵比寿店が撤退するなど、テナント誘致に苦戦しており、テコ入れが必要との見方は強い。

 

「住宅への転用が可能なのかなど、条件を見極めるために入札に参加する」という声も漏れる。大手不動産の中には、条件が不透明だとして入札に参加しなかった企業もある。

サッポロHDでは25年3月、不動産事業のトップを務めた経験のある時松浩常務グループ執行役員が社長に昇格する。

 

外部提案を求めている不動産事業について、「外部資本の導入は当然やらないといけないが、不動産と酒類のシナジーは確実に存在している。

必要な部分は情緒的な説明だけでなく、キャッシュリターンから資本市場に対して説明責任を果たす」と述べている。

 

不動産事業を巡っては、シンガポール拠点の投資ファンド、3Dインベストメント・パートナーズが7月、サッポロHDの株主に向けた書簡を公表した。

不動産子会社のサッポロ不動産開発を分離上場(スピンオフ)することなどを提案していた。3Dの試算では、不動産事業をスピンオフした場合の時価純資産は約4000億円とされる。

 

3DはYGPなど3物件については資産価値が向上する余地があるとみており、サッポロ不動産開発に残したままで分離上場し、残りの物件は完全売却すべきだと主張する。一連の切り離しでサッポロHDの時価総額が6割上昇するという。

3Dは12月時点で約18%を出資するサッポロHDの筆頭株主で、売却を含む不動産の活用案の検討については「経営陣の判断に敬意を示す」と評している。

 

7月に公開した書簡で「企業価値最大化の観点から、適切な不動産の切り離しのスキーム選択は極めて重要」としていた。

 

 
 

 

日経記事2024.12.20より引用

 

 


マンション価格、年収の10倍超える 東京は18倍に

2024-12-12 13:54:07 | 不動産・流通・交通

新築マンション価格が賃金の伸びを上回るペースで上昇し、実需層にとって手が出しにくい存在となっている。

投資対象としての人気が根強く、デベロッパーも「億ション」を大量供給する。特に東京都では平均価格が年収の18倍と、実需層を置き去りにするような市場になっている。

 

東京カンテイ(東京・品川)の集計によると、新築マンションの平均価格が平均年収の何倍かを示す「年収倍率」が2023年時点で10.09倍(全国平均)に達した。

22年から倍率は0.43ポイント上昇し、全国平均としては06年の調査開始以来はじめて10倍を超えた。

 

 

23年に分譲された新築マンションの価格(70平方メートル換算)を、平均年収で割って算出した。

都道府県別でみると、最も高倍率だったのは東京都の17.78倍だった。平均年収が592万円、マンション価格は1億526万円だった。

 

22年時点では平均年収が578万円、マンション価格が8561万円で倍率は14.81倍だった。年収の伸びを大きく上回るマンション価格の高騰で倍率が跳ね上がった。

土地代や建築コストの上昇がマンション価格に反映された。富裕層や海外勢から人気がある都心の高額物件に、さらなる値上がりを期待した投資マネーの流入が続いている影響も大きい。

 

東京都内では23年に億ションが4039戸供給された。22年の1.5倍の規模となり、全国の億ションの8割が東京に集中した。

「三田ガーデンヒルズ」(港区)や「パークタワー西新宿」(新宿区)など1億円を超える物件が100戸以上ある大規模マンションの販売も目立った。

 


東京都心の新築マンションは1億円を超える物件が目立つ(東京都千代田区で建設中の物件)

 

東京カンテイの高橋雅之上席主任研究員は「東京ではマンションを買う目的が『住むための器』ではなく、投資対象に変わってきた」と指摘する。

「デベロッパー側も資金が豊富な層を重視して物件を開発する傾向がうかがえる」と説明する。

 

東京についで年収倍率が高かったのが長野県で、15.88倍だった。軽井沢町での高級マンションの供給の影響で平均価格が上がった。

東京から新幹線で1時間強とアクセスがよく、観光資源も豊富な軽井沢には、都市部からの移住目的やセカンドハウスとして富裕層からの需要が強い。

 

 

京都府や沖縄県でも、地元の居住者以外からの高級マンション需要が相場を押し上げているという。

景観条例で高層マンションが建設できなかったり、建設用地がホテルとの取り合いになったりするなど供給が限られていることも価格の高騰につながっている。これに対し中国・四国エリアは倍率が比較的低い

 

データのある46都道府県のうち、倍率が最低だったのは山口県の6.46倍だった。香川県が6.79倍で続く。広島県(8.14倍)や岡山県(8.25倍)も全国平均の10倍を下回っている。

「東京から距離があるなどの理由で投資目的の需要が少なく、地元住民の目線と見合う物件の供給が相対的に多い」(東京カンテイの高橋氏)という。

(佐藤日菜子、筒井恒)

 

 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

 

大槻奈那のアバター
大槻奈那
名古屋商科大学大学院教授、ピクテ・ジャパン シニア・フェロー
 
別の視点

全国のマンション価格はリーマンショック後2.1倍になっています(国交省)。

一方、収入は同じ時期に僅か3%程度の上昇。つまり、個人の”買いにくさ”は約2倍になっています。

それでも価格が上がり続けている理由は、記事にある海外投資家や富裕層に加え、かつてに加え、銀行ローンが借りやすくなっていることも大きいと思われます。

都心のマンションの場合、この10年程度で活発化した「ペアローン」を大半の夫婦が利用している模様です。

しかし、このスキームはどこまで有効なのか… 今後の住宅価格への影響が大きいのは、よく話題になる金利上昇よりも、年収の伸びとローンのアベイラビリティだと思います。

<button class="container_cvv0zb2" data-comment-reaction="true" data-comment-id="48598" data-rn-track="think-article-good-button" data-rn-track-value="{"comment_id":48598,"expert_id":"EVP01007","order":1}">いいね89</button>