
82歳の長崎健雄さんはテンポスホールディングスで労務担当として働く(東京都大田区)
世界有数のシニア大国ニッポンで「老後」を巡る変化が加速している。
団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となり、「オーバー70歳」人材は540万人に達した。未知なる長寿社会を生き抜く人々の知恵が古い価値観を塗り替える。
厨房機器販売大手のテンポスホールディングスで社会保険などの労務を担当する長崎健雄さん(82)は、シニア社員の研修や安全教育にも携わる。
穏やかな人柄で同僚からの信頼は厚く、私生活の悩みを相談されることも多い。
長く勤めた教師の仕事を50代後半で辞め、畑違いのことに挑戦しようと2006年にテンポスに入社した。
「周囲との年齢差は気にならない。好奇心がある限り働き続けたい」と話す。
社員3割超が60歳以上
1997年の創業当初、知名度の低さから人材獲得に苦しんだテンポスは2005年に定年を廃止した。現在、主要事業会社は社員の3割超が60歳以上だ。
創業者の森下篤史社長(78)は「60代は青少年。人手不足の時代、経営者は『価値あるジジイ』を見つけ出すことが必要だ」と説く。

日本企業は長く「60歳定年」が標準だった。13年の法改正で希望者を65歳まで雇うことが義務づけられ、21年には70歳までの就業機会の確保が努力義務となった。人手不足が深刻な地方はその先を行く。
ビルメンテナンスのセイセイサーバー(静岡市)は社員約380人の4分の1を70歳以上が占める。
創業時から高齢者雇用に力を入れ、21年に就業規則を改定して年齢上限をなくした。「離職率の高い若手に比べて、長く働いてくれるシニアは大黒柱になる」と長田きみの社長は強調する。
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厚生労働省が全国およそ23万社を調査したところ、70歳以上でも働ける国内企業の割合は23年に42%に達し、13年比で2倍以上に高まった。
70歳以上の就業者は24年に540万人と14年比で7割増えた。就業者に占める65歳以上は全業種平均で14%、人手不足の介護や建設は16〜17%と高い。

セイセイサーバーは社員の4分の1が70歳以上だ
職場の高齢化が未知の領域に入り、働き方や評価の仕方も変わる。
介護施設運営の合掌苑(東京都町田市)は働き手の15%が70歳以上となっている。日中と夜の仕事を分け、シニアに低負担の日勤を割り当てた。
体力に応じて週2〜3日の短時間勤務を認め、週20時間以上の勤務はパートではなく時給単価の高い嘱託社員として扱う。森一成理事長は「制度に人を当てはめるのではなく、多様な人材に合わせた労働時間管理が不可欠だ」と語る。
大手も年齢上限廃止
大企業も動く。カルビーは24年4月、開発や生産、法務などで高い技能をもつ社員について、雇用の年齢上限をなくす制度をとり入れた。
60歳定年を超えても、現役並みの処遇が得られるようにした。ダイキン工業は21年以降、60歳以上の再雇用社員の賞与の格差を能力や貢献に応じて最大1.6倍に広げた。
リクルートワークス研究所の坂本貴志研究員は「元気に働くシニアが増えれば、社会保障費の抑制につながる。
企業への税制優遇など、官民が連携して高齢者就労を進めるべきだ」と指摘する。長寿社会の働き方、最適解はいかに。社会、企業、労働者の「三方よし」の模索が始まっている。
(編集委員 松井基一)
次回の長寿社会 挑む②は豊かな長寿をめざす「老活」がテーマです。老化時計を6年分巻き戻して、健康寿命を延ばした人も。充実した老後を生きるシニアの人生設計に迫ります。
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ひとこと解説
「シニア万歳!」とでも言いたい。
日本の年金では最低限の生活しか出来ない人も多いので仕事を続けないと苦しいという事情もあるだろうが、それ以上に、65歳、70歳を超えてもあと20〜30年の最後の人生を生きる価値のあるものにしたいという人も多いのでは。
働くことは、単に給料を稼ぐだけでなく、仕事に自分の価値を見つけることにも繋がる。長年の経験やスキルを生かすことも出来る。
パートで働いても残りの時間をその分楽しむことも出来る。仲間も増え、頭や体力を使い老化現象を遅めることも可能だ。働けるだけ働く人は幸せかも知れない。
ただ、生活のためだけに働く人にとってはきつい面もあるだろうが。
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2025年は「団塊の世代」全員が75歳以上の後期高齢者になった節目の年です。
日本では、医療費の膨張や介護人材不足といった難題が山積しています。未知なる長寿社会で、豊かな老後に挑む人々の創意に迫ります。