シリア・アサド政権崩壊がもたらす中東パワーバランスの変化 後編
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国際航空宇宙展で英BAEが展示した次期戦闘機の模型(10月16日、東京都江東区)
日本、英国、イタリアによる次期戦闘機の共同開発を巡り、管理を担う国際機関「GIGO(ジャイゴ)」設立のための条約が10日発効した。
日本外務省が発表した。外務省によると、国際機関は近く英国に設立する。
日英伊は、2022年12月に次期戦闘機の共同開発で合意。開発計画は「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」と呼ばれ、35年までの配備開始を目指す。
GIGOの初代トップには岡真臣元防衛審議官が就く。
〔共同〕
日経記事2024.12.11より引用
フィンランドのオルポ首相(左)と握手する石破首相(10日午後、首相官邸)=共同
石破茂首相は10日、首相官邸でフィンランドのオルポ首相と会談した。安全保障や科学技術での連携を協議し、防衛装備品・技術移転協定の交渉開始で一致した。
ロシアによるウクライナ侵略に関し、北朝鮮による兵士派遣などロ朝軍事協力の進展への懸念を共有した。
中国や北朝鮮など東アジア情勢についても話し合った。石破首相は冒頭で「現下の非常に厳しい国際情勢は両国をさらに強く結びつけている」と語った。
科学技術分野は高速通信規格やスーパーコンピューターで連携を深める。フィンランドは通信機器大手ノキアなど世界的企業を有する。
フィンランドはロシアによるウクライナ侵略後に長年の「軍事的非同盟」政策を転換した。2023年4月に米欧の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)に加盟している。
北欧諸国を巡ってはスウェーデンも24年3月にNATOに加わった。4日には石破首相が来日したクリステション首相と会談している。
日本の外務省の担当者は「北欧各国でウクライナ侵略に関心が高まり、ロシアを挟んで反対側に位置する日本と協力したい意思が強くなっている」と説明する。
日本とフィンランドは16年に「戦略的パートナーシップ」を結んでいる。フィンランド首相の来日は22年の当時のマリン首相以来およそ2年半ぶり。24年1月には当時の上川陽子外相が日本の外相としては39年ぶりにフィンランドを訪れた。
日経記事2024.12.11より引用
ロシアのプーチン大統領㊨はシリアのアサド政権を支えてきた(7月、モスクワ)=AP
シリアのアサド政権崩壊で、ロシアがシリア国内に持つ海軍、空軍基地の存続が危ぶまれている。
アサド政権支持の見返りとして租借していたが、新たな暫定政権の中心である旧反体制派は9日までに周辺地域を制圧したもようだ。シリアを拠点としていた中東・アフリカ戦略の見直しを迫られかねない。
タス通信は9日、旧反体制派がロシアのフメイミム空軍基地がある北西部のラタキア県をほぼ掌握したと報じた。
ロシアのペスコフ大統領報道官は、ロシア軍基地について新たな政権と協議する方針を示した。「今後の見通しを語るのは時期尚早」と述べるにとどめ、軍が警戒態勢をとっていると指摘した。
米衛星情報会社マクサー・テクノロジーズが撮影した衛星写真によると、ロシア軍は10日時点でラタキアにほど近いタルトス海軍基地からフリゲート艦や潜水艦を沖合に退避させているもようだ。
混乱が波及するのを避ける目的とみられる。
フメイミム空軍基地の衛星写真でも9日時点で、ロシア軍の航空機やヘリコプターが確認される。
ロシアは2015年にアサド政権の支援を目的にシリアに軍事介入した。反体制派や過激派組織「イスラム国」(IS)を空爆し、劣勢だったアサド政権にとって救世主となった。
ロシアはアサド政権の後ろ盾となる見返りとして、シリア国内で海軍、空軍の2基地を49年間租借することで合意した。
タルトス海軍基地は地中海につながる地政学的な要衝で、北大西洋条約機構(NATO)をけん制する役目を担ってきた。
マクサー・テクノロジーズの衛星写真では9日時点でフメイミム空軍基地にロシア軍の航空機
などが確認される=ロイター
シリアの基地の重要性はロシアが影響力を広げようとするアフリカ大陸にも及ぶ。シリア内戦ではロシアの民間軍事会社「ワグネル」が関与し、実戦の経験を積んだ。
ワグネルはシリアの基地を物資補給や雇い兵訓練の拠点として活用し、リビアやマリなどアフリカに進出する橋頭堡(ほ)としてきた。
ロシアのプーチン政権は14年にウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合し、欧米との対立が深刻化していた。
シリアへの介入をきっかけに対テロでの連携で欧米との対話再開につなげるうえ、国際社会で主要なプレーヤーとして返り咲く意図もあった。
22年からのウクライナ侵略でプーチン氏の戦略に狂いが生じた。侵略の長期化で兵士不足が深刻化し、シリアに派遣する軍要員も大幅に減少していたとされる。
アラビア語放送のスカイニュース・アラビアは6日、ロシア政府がアサド大統領による追加支援の要請を断ったと報じていた。
アサド政権の崩壊を受け、ロシアがシリア国内の基地を維持できるかが焦点となる。
ロシア国防省と近い通信アプリ「テレグラム」のチャンネル「ライバー」は、「反乱軍は前進を止めないだろう」と投稿した。旧反体制勢力がロシアに打撃を与えるため、基地を攻撃する可能性が高いとの見通しを示した。
ウクライナ国防省の情報総局は9日、テレグラムにロシア軍がラタキア空軍基地から兵器や軍装備品を撤収したと投稿。ロシア軍は基地を失う結果になるだろうと分析した。
仮にロシアがシリアでの基地を喪失すれば、軍事介入を主導したプーチン氏の威信に傷がつく。ロシアの中東、アフリカでの軍事的な存在感は大きく低下し、外交戦略にも打撃が大きい。
アサド政権を倒した旧反体制勢力は国際テロ組織アルカイダ系に起源を持つ。シリアでイスラム過激派が力を盛り返せば、ロシア国内の治安に波及する懸念もある。
ロシアでは今年3月にモスクワ郊外でISによる銃乱射事件が発生するなど、イスラム過激派によるテロが相次いでいる。
プーチン政権も15年にシリア介入を決断する背景として、ISなどテロ組織との戦いを掲げていた。
イスラム過激派にはロシアからも多数の戦闘員が流入したとみられ、国内の不安定要因となりかねない。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
現状、ロシアがシリア国内に持っている恒常的な軍事基地はタルトゥスの海軍基地(正式には物資補給拠点)とフメイミムの空軍基地の二つです。
しかし、空軍部隊は地上への近接航空支援のために複数の前方展開拠点を設けており、これを守るために地上部隊や防空部隊も一緒に前方展開しています。
というわけでシリア国内にはかなり多数のロシアの軍事拠点があり、これらをどこまで削って何を残すかがこれからの交渉対象となってくるのではないでしょうか。
もちろん完全撤退を突きつけられる可能性もないではないですが、ロシアとしてはなんとかタルトゥスとフメイミムだけは残そうとするのだと思います。
アサド政権の崩壊後、ロシアは軍事基地の確保のため反体制派と交渉の用意があるという。
他方のバイデン政権は反テロ組織に指定されていながらも、シャーム解放機構(HTS)と話し合ってもよいという。
ただトランプ氏はシリアに係らない姿勢を示している。そして中国は相変わらず静観の姿勢をとっており、大使館を閉鎖しないで新政権との関係に望みをかけている。
アラブ諸国とイスラエルの関係でも対立している。アサド政権が崩壊したにも関わらずイスラエルがシリアでの攻撃を拡大していることに、アラブ諸国は苛立ちを隠せない。
シリアの情勢はまさに流動的で、混とんとしている。情勢が落ち着くまでにはまだ時間がかかりそうだ。
ロシアの前身・ソ連は多くの海外基地を保有していたが、ソ連解体後は、ロシアにとってシリアが旧ソ連諸国外では唯一の海外基地だった(ベネズエラやスーダンでの設置については話には出るものの実現していない)。
シリアの基地はその地政学的特性により、アフリカ政策の拠点となるだけでなく、中東や欧州にも目を光らせることができる重要拠点だったため、シリアの基地が維持できなければ、ロシアの世界戦略が大幅に崩れることになる。だが、維持は困難だろう。
ロシアはシリアからの傭兵もウクライナ戦争で使っていたとされるが、それもできなくなり、テロ対策もより深刻になることから、ウクライナ戦争でもより窮地に追い込まれるだろう。
イスラエル軍は2024年10月1日、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラに対し、イスラエルと国境を接するレバノン南部で「限定的」な地上攻撃を始めたと発表しました。
その後、イスラエル軍は、イランがイスラエルに向けて同日にミサイルを発射したと発表しました。最新ニュースと解説記事をまとめました。
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戦死した兵士を記念した旗が並ぶキーウ中心部の広場(6日)=ロイター
【キーウ=共同】
ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、ロシアが2022年2月に全面侵略を始めて以降、ウクライナ兵4万3千人が戦闘で死亡したと主張した。X(旧ツイッター)に投稿した。
ウクライナ国民は平和を望んでいるとし、平和の実現には「実効性のある保証」が必要だとの考えを示した。
ゼレンスキー氏によると、ウクライナ兵が負傷して手当てを受けたケースは37万件に上る。負傷した兵士のおよそ半分は治療後に戦場に戻ったという。
ロシア軍は19万8千人が死亡し、55万人以上が負傷したと主張。今年9月以降、ロシア軍はウクライナ軍の5〜6倍の兵士を失っているとした。
ゼレンスキー氏は今年2月、ウクライナ兵の死者が約3万1千人に上ったと説明していた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは9月、ウクライナ側の推計として、今年初めまでに約8万人が死亡し、約40万人が負傷したと報じていた。
ゼレンスキー政権は、ロシアの侵略を抑止する方法は、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟する以外にないとの考えを示している。
ゼレンスキー氏は、平和の保証が伴わない停戦では「いつでも戦闘が再燃する可能性がある」として、ウクライナの安全を保証する措置が必要だと訴えた。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
ウクライナの人口は、独立後の1990年代には5000万人台でしたが、その後減り続け、2014年のロシアのクリミア半島併合前には約4500万人、そこからさらに約1000万人減って、現在は約3500万人前後とされます(もっと少なく見積もる人もいます)。
国外に脱出・避難する人や、国に残っても子どもを産まない人が増えて人口が急速に減っているのが実情です。
戦闘による死亡者数が悲惨な数字であることは分かりますが、大統領がXでその数字を主張したと言われても、流れていってしまうような・・・情報自体が麻痺しているように感じます。
2022年2月、ロシアがウクライナに侵略しました。戦況や世界各国の動きなど、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
日経記事2024.12.09より引用