メルツ氏㊧は首相就任前の3月にもマクロン氏と会った(写真はマクロン氏がXに投稿)=共同
【パリ=北松円香、ベルリン=南毅郎】
ドイツのメルツ新首相は7日、就任後初めての外遊先としてパリを訪れ、フランスのマクロン大統領と会談する。
欧州の安全保障強化や米国が打ち出した高関税への対策を協議する予定だ。仏側はショルツ前首相時代にギクシャクしがちだった関係の再強化を期待する。
「独仏関係という『モーター』を、今までになく加速させるのが我々の役割だ」。
6日、メルツ氏が2回目のドイツ連邦議会(下院)の投票で首相に選出されるとマクロン氏はすかさずX(旧ツイッター)でお祝いを述べ、連携を呼びかけた。
仏大統領府高官は会談が「独仏という2国間関係だけでなく、欧州の推進力の刷新のサインにもなる」と意気込む。
国防など具体的な案件を協議し、「訪問は儀礼的なものではなく、実務的なもの」になる見通しだという。
「ドイツが大復活を遂げる。メルツ氏がドイツを再び軌道に乗せるだろう」(ブルトン前欧州委員)。
メルツ氏が2月の総選挙に勝利すると、仏国内では両国関係改善への期待が一気に高まった。
慎重派のショルツ氏と、欧州独自の外交・防衛戦略が持論のマクロン氏はウクライナへの軍事支援などを巡り意見の隔たりが目立つことが多かった。
国防強化を打ち出すメルツ氏の登場で、欧州の2つの大国の足並みがようやくそろうとの期待が広がる。
歴史的にも経済的にも深いつながりがある隣国との関係改善には仏世論の関心も高い。
仏紙ルモンドによる独総選挙の解説には、異例の90万件の閲覧があったという。同紙の記者は「読者からの質問が100以上も殺到して驚いた」と振り返る。
両首脳も、メルツ氏の首相就任前から良好な関係確立を意識してきた。
メルツ氏は2月の総選挙の3日後には、パリに向かってマクロン氏と夕食をともにした。3月中旬にマクロン氏がベルリンを訪れた際にも2人は再度会った。
今後は原子力発電の位置づけなどに関する両国の意向の相違点の擦り合わせが課題になる。
どちらの首脳も国内の政治基盤は弱く、連携より自国の利益を優先すべきだとの声が国内で高まれば独仏関係は再び揺らぐ恐れもある。
石破茂首相は7日、自身のX(旧ツイッター)でドイツのメルツ新首相の就任に祝意を表明した。
「両国関係を強化し、自由で開かれたインド太平洋の推進や国際社会の平和と安定のためにメルツ首相と連携していくことを楽しみにしている」と投稿した。
ドイツ連邦議会(下院)は6日にメルツ氏を首相に選出し、メルツ政権が発足した。
1回目の指名選挙で過半数に届かず、異例の再投票で決定した。
日経記事2025.05.07より引用