エアバスが米関税の対応に苦慮している(2023年11月、仏東部サンナゼールのエアバス拠点)=ロイター
【パリ=北松円香】
欧州航空機大手のエアバスが30日に発表した2025年1〜3月期決算は純利益が前年同期比33%増の7億9300万ユーロ(約1280億円)だった。ヘリコプター部門が好調だった。
25年の見通しについては米関税の影響を織り込むのは時期尚早として機体納入見通しなどを据え置いた。
米トランプ政権が打ち出した関税について、欧州連合(EU)は今後交渉を本格化する見込み。
エアバスは今年の機体納入について関税の影響を除き、820機という従来見通しを据え置いた。2024年の実績(766機)から積み増す。
仮に高率の関税が発動した場合、エアバスへの業績への打撃は短期的に大きくなる可能性がある。
エアバスはフランス南西部トゥールーズなど欧州に主な製造拠点を構え、大型機の「A350」などを米国に輸出する。
米アラバマ州モビールでは最も受注が多い「A320」などを組み立てているが、部品は他国からも持ち込んでおり関税の影響を受ける。
高率関税が実施されれば、欧州から米国に輸出する航空機の追加費用は500万〜600万ユーロに達するとの試算もある。
エアバスの顧客である米デルタ航空は、すでに関税による追加費用は負担しない方針を決めた。
エドワード・バスティアン最高経営責任者(CEO)は1〜3月期決算のアナリスト向け説明会で「機体に20%のコストが上乗せされれば利益を出すのは困難だ。エアバスには(関税は負担しないと)はっきり伝えた」と明らかにした。
一方で中期的にはエアバスの商機になるとの見方もある。
報復関税や供給網の混乱によって米ボーイングが影響を受けるのに対して、エアバスの欧州拠点は影響を受けにくいためだ。ギヨム・フォーリ最高経営責任者(CEO)は対策の一環として「米国外の顧客へ輸出する機会を模索している」と説明した。
仏運用会社ガリレアセットマネジメントのダミアン・レダ最高投資責任者(CIO)は、米欧どちらの航空機メーカーも多くの受注残があり「顧客がすぐにボーイングからエアバスに乗り換えることはない」としつつも、「将来的にはエアバスにとって欧州生産が大きな利点になるだろう」と指摘する。