
グッチなどを展開するケリングは苦戦が続く=ロイター
【ロンドン=湯前宗太郎】
欧州の高級ブランド企業が最大市場である中国の低迷に苦しんでいる。仏ケリングが11日発表した2024年12月期決算は純利益が前の期比62%減の11億3300万ユーロ(約1800億円)だった。
米国の高額消費に復調の兆しがある一方、中国での需要はなお低調で回復に向けた道のりもみえていない。
「不動産市況の悪化や若者の高い失業率が消費にマイナス影響を与えている」。伊高級ブランド「グッチ」を擁するケリングのフランソワアンリ・ピノー最高経営責任者(CEO)は、11日の決算会見でこう説明した。
売上高も12%減の171億ユーロだった。減収減益の最大の要因は中国を中心とするアジアで苦戦だ。地域別の小売売上高で、アジアは24%減(為替影響除く)と落ち込み、全体の収益を押し下げた。
ケリングはグッチや「サンローラン」などブランドのテコ入れや、コスト圧縮策に追われている。
中国市場、「今年良くなることは期待できない」
新型コロナウイルス禍の収束後、高額品への消費が盛り上がった中国市場がけん引し、欧高級ブランド各社の業績は拡大した。
だが、不動産不況などの影響で中国景気が低迷した24年からは、イタリアのプラダなど一部を除き、軒並み業績悪化に苦しむことになった。
世界最大手の仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが1月下旬に発表した24年12月期決算も、純利益は17%減の125億ユーロだった。
ケリングと同様に、日本を除くアジアの売上高が11%減となったことが響いた。10〜12月期もアジアは10%減と、なお中国低迷の影響を強く受けている。
「中国市場が今年良くなることは期待しておらず、おそらく来年になるだろう」(ケリングのピノー氏)。足元、高級ブランド各社の中国事業が上向くシナリオは描きにくい。
仏EMリヨン経営大学院のクラウス・ハイネ准教授は、トランプ米政権のもとで関税の応酬など米中対立が激しくなれば「中国の消費者が感情的に西側諸国の高級ブランド品を避ける動きも出てくる」と指摘している。
米国の高額消費復調に期待
中国事業が低調な一方で、高級ブランド各社には足元、明るい材料も出てきた。米国市場の高額消費の復調期待だ。
トランプ氏が24年11月の大統領選で勝利して以降、米国の高額消費が拡大するとの強まった。米調査会社バーンスタイン・リサーチで高級品部門の責任者を務めるルカ・ソルカ氏は「消費者は自信を高めた」とする。
個人所得税の減税などトランプ氏が掲げる様々な施策が、消費者の高額品への需要を喚起しているとみる。
中国市場に加え、米国での高額消費の減速を各社とも懸念してきたが、これが転換することへの期待が高まっている。実際、足元の業績が改善している企業がある。
スイスのリシュモンの10〜12月期の売上高は、米国を中心とする北南米が22%増とけん引したことで、10%増の増収に転じた。
英バーバリー・グループも、10〜12月期の既存店売上高は4%減で2桁減が続いていた状態から持ち直した。寄与したのは4%増と地域別で唯一拡大に転じた北南米だった。

米国市場が高額消費をけん引していくことへの期待は株式市場でも大きい。中国市場の低迷が課題として残るなかでも、各社の株価は年初比で軒並み上昇している。リシュモンは3割強、バーバリーは2割弱高い水準だ。
半面、トランプ政権の発足にはリスクもある。バーンスタイン・リサーチのソルカ氏は関税強化により米国内のインフレが再燃すれば足元の機運がしぼみ、高額品への消費意欲が再び冷える可能性があると指摘している。
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