「できたよ~」
の声に、起きていくと、
夕食の食卓には冷凍の餃子、お刺身、サニーレタスとトマトだけのサラダが
並んでいました。

温かいご飯がお茶碗に盛られ、はじての夫の料理は、
私には最高のご馳走でした。
うれしくって、ありがたくって、
その日は、今まで料理らしいものを全くしたことのない夫の、
料理記念日と言いたくなる日でした。
それからの夫は、毎日、買い物や食事の支度に奮闘です。
日々、びっくりするほどの上達ぶりで、
味噌汁が加わるようになり、それが進化して豚汁になり、
菜園のじゃがいもやきぬさやが収穫できるようになると、肉じゃががテーブルに
のぼるようになりました。
メニューに困ると、
いろいろの野菜をフライパンで焼き、焼肉のたれで食べるだけの焼き野菜だったり、
酢のりを買ってきて、お刺身や大葉、キュウリを巻いて、
お手軽手巻き寿司になったりしました。


「おとうさん、上手ねぇ」
「やめてくれよ! やればできるじゃん・・・なんて言われそうだ!」
に、大笑いです。
しかし、私が帯状疱疹になって、半月が経った頃、
夫は、籐椅子に沈みこむように座り、とても疲れたように見えました。
「ごめんね、疲れたでしょ」
「ううん、なんにも疲れていないよ。ただ頭が疲れただけだよ。
夜は何を食べるか? 次の朝は何にするか? お昼は?と考えると、頭が疲れちゃうよ」
と言って、少し笑いました。