「お母さん、ひとりになったら庭の芝刈りできるかぁ」
夫の言葉に、
「ええっ、 芝刈りなんてしたことないし、そうなったらシルバーさんにでも頼むわ~」
笑いながらそんな会話をしたのは4月頃だったか・・・
冬枯れの芝生が青さを増した頃でした。
芝刈り機の調子が悪くなり、夫は、老人二人の今後を考え、
この際、芝を剥ぎ、手入れの簡単な庭にしようと言い出したのです。
ほんのちっぽけな庭なのに、手入れは結構たいへんです。
芝は刈れば刈るほど美しくなると言いますから、雑草取りの他、夏場の月に一度の
芝かりに夫は汗まみれになっていました。
私も、花の手入れや草取りには、腰が痛くなり
すぐには立ち上がれなくなってきたのです。
だんだん植えっぱなしで咲いてくれる花ばかりを選ぶようにもなりました。
そろそろ考え時かな、
老い支度よね・・・と
手入れが簡単な庭にするといっても、
芝生をなくすことには未練がありました。
ちっぽけな庭にも春がくると、
芝生が生き生きと緑によみがってくる時のワクワク感、
夏の強い日差しもやわらげてくれ、足の裏に伝わる感触の心地よさは、
すてがたいのです。
迷い迷ってるうちに芝はどんどん伸びて、
10センチほどのモサモサ状態になってしまいました。
庭師さんに相談すると、
最近は、共働きの家では、手入れの簡単な人工芝にする人も増えてきたとか。
人工芝も枯葉が混入したごく自然に見えるものもあるというのです。
でもね、
「 人工芝なんて、プラスチックのお茶碗で食事するような、味気なさだわ
やっぱり安物でも陶器のお茶碗で食事したいわぁ~」
私のへんな例えに庭師さんも笑いながら、
結局、少しの芝を残し砂利を入れることにしました。
(芝が伸び放題になった庭)
(少し芝を残し変身した庭です)
費用をかけない改装も老い支度(笑)
これでずっと楽になりそうです。
庭の変身をお嫁ちゃんにメールすると、
「お父さんどこか検査でひっかかったんじゃあないか・・・って、◯◯さん(息子)が
言うんですよ。ふたりで心配してますが、大丈夫ですよね」
とメールがきました。
「ありがと。ありがと。大丈夫よ。 お父さんは 『息子より元気だい』 と言っています」
と、 大笑いしながら、気遣ってくれるメールに、返信しました。
心もほっこり 老い支度の一歩です。