2020年3月のブログです
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加藤周一さんの『夕陽妄語3 2001-2008』(2016・ちくま文庫)を再読しました。
加藤さんが朝日新聞に連載していたエッセイ「夕陽妄語」最後の8年分。
世界は激動の時代で、しかし、加藤さんは冷静に批評します。
2001年は9・11の同時多発テロ。
ブッシュ大統領が報復を宣言します。
2003年はイラク戦争。
日本はアメリカに追従をしますが、大量破壊兵器は見つかりません。
その後、アメリカは戦争を反省し、2008年にはオバマ大統領が誕生します。
ところが、日本は右傾化を強めたまま、今日に至ります(もっとも、アメリカも、その後、最悪のトランプ大統領の誕生となるのですが…)。
こういう目まぐるしい戦争状態の継続の中でも、加藤さんの反戦、反核の姿勢はぶれません。
さらに、「夕陽妄語」の魅力は政治のお話だけではなく、芸術や文化のお話も素敵なところ。
その的確な批評と格調高い文章は類を見ません。
加藤さんの思索は深く、感動的ですが、読者をも深い思索や感動に導いてくれます。
そこが魅力です。
一般大衆紙でこういうことができたのは加藤さんくらいかもしれません。
何度読んでも、その深い思索に感動させられます。
また、数年内に再読をしたいな、と思います。 (2020.3 記)
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2022年春の追記です
加藤さんが今もご健在でしたら、ロシアのウクライナへの侵略をどう評されたでしょうか。
加藤さんの反戦、反核に立脚したウクライナの自由を護るための論陣、提言をお聞きしたかったとつくづく思います。 (2022.4 記)