ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

河合俊雄編著『ユング派心理療法』2013・ミネルヴァ書房-ユング派の臨床に学ぶ

2024年04月14日 | ユング心理学に学ぶ

 2018年のブログです

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 河合俊雄さん編著の『ユング派心理療法』(2013・ミネルヴァ書房)を再読しました。

 たぶん2回目だと思うのですが(?)、例によってあまり自信はありません。

 以前読んだ時には当時のじーじの力不足のせいで、あまり理解できたとはいえなかったように思うのですが(河合さん、ごめんなさい)、今回は少しだけ以前より理解できた箇所もあったように思います。

 解説編と事例編の二部構成で、解説編では、心理療法における第三のもの、という論点に興味をひかれました。

 精神分析のウィニコットさんのいう中間領域やオグデンさんや藤山直樹さんのいう第三の主体、あるいは、クライン派の考えなどをめぐって、ユング派から見たイメージの考えなども含めて、考察がなされます。

 イメージから物語、象徴との関連など、考察は広がって、こちらの想像力も喚起される感じがしました。

 心理療法における、今、ここで、の重要性も指摘されており、今、ここでの、クライエントさんの気持ちより、今、ここでの、クライエントさんの事実が重要であって、さらには、今、ここでの、クライエントさんとカウンセラーの両者の事実が重要である、と述べられているように思いました。

 おそらく、その事実の理解や体感のために、第三のもの、が大切になるのだろうと思うのですが、まだまだじーじの力では理解が難しいところです。

 また、事例編でも、クライエントさんが内面を語るより事実を語る中で変化していく事例が紹介されています。

 ここでも、内面にアプローチするより、事実にアプローチをする中で治療的展開が起こっており、これまでの神経症を対象とした内省的な心理療法から発展をしている様子がうかがえます。

 もっとも、じーじのつたない理解では、精神分析でも同様のことが述べられているように思われ、神経症から境界例、統合失調症、そして、発達障碍へと心理療法の対象が広がるにつれて、心理療法のありかたも変わらざるをえないのかもしれません。

 あるいは、本書が主張していることも、そういうところにあるようにも思います。

 難しいですが、なかなか刺激的な、さらに勉強をしたくなる、いい本でした。        (2018 記)

 

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河合隼雄編『ユング派の心理療法』1998・日本評論社-ユング派の臨床に学ぶ

2024年04月13日 | ユング心理学に学ぶ

 2018年のブログです

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 河合隼雄さん編集の『ユング派の心理療法』(1998・日本評論社)を再読しました。

 このところ、なぜかユング派が気になっていて、この本も本棚の隅に見つけて、読みました。

 ちょうど20年前の本で、じーじも2~3回読んでいるはずで(?)、付箋も2種類の付箋があちこちに貼られ、アンダーラインも引かれているのですが、例によって、記憶はあいまいで、またまた新鮮な(?)気持ちで読んでしまいました。

 面白かったです。

 古い本なので、今は大家になった人達の中堅時代の論文が多いですが、みなさん、当時は日本に13人しかいなかったユング派の資格を取った人たちで、当時の熱意みたいなものが伝わってきます。

 もちろん、中身もそれぞれ多彩で、深く、今読んでも勉強になりますし、いろいろと刺激されるところが多いです。

 今回、印象に残った第一は、人と人が傷ついて出会う、という視点。

 今はユング派でも、その後の展開がありますし、精神分析でも議論されていますが(北山修さんなども述べられています)、やはり大切な視点だろうと思います。

 それと関連しますが、第二は、転移と逆転移。

 互いに傷つきながら、治癒に至るという考え方は、なかなか意味深いです。

 第三は、イメージの重要性。

 無意識からのイメージに重きを置くユング派らしい論点だと思います。

 総じてユング派は、私見では、人間の自然治癒力や無意識の治癒力に重きを置いているように思いますが(もちろん、一方で、無意識の破壊力についても警告をしています)、安易に陥らない、真摯で全体的な無意識との対話が大切になってくるように感じられます。

 そして、ここには、精神分析がいうところのエロスや攻撃性との統合も含まれてくるのだろうと思います。

 読んでいると、本当にいろいろな意味で刺激を受ける本で、さらに深く考えてみたいと思いました。       (2018 記)

 

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河合俊雄「最終講義-発達障害の心理療法と物語の縁起」2023・河合隼雄財団

2024年04月02日 | ユング心理学に学ぶ

 2023年春のブログです

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 河合俊雄さんの「最終講義-発達障害の心理療法と物語の縁起」(2023・河合隼雄財団)のビデオを観る。

 文字通り、河合さんの京都大学での最終講義。

 ご自分が大学院生の時に担当をした小学校低学年の発達障害の男の子のプレイセラピーの事例検討を通じて、発達障害の心理療法について論じる。

 これがすごい。

 当時のケースを40年後の今の河合さんがコメントをしていくのだが、そのコメントの数と奥深さがすばらしい。

 じーじは家裁調査官の時に、先輩から、仮説は少なくとも三つ以上持ちなさい、と教わったが、河合さんはケースの仮説を十も二十も提示して、その有効性を検証する。さすがだ。

 そして、発達障害については、世間的には訓練や教育が有効で、心理療法には否定的な空気がある中で、河合さんは心理療法の有効性を強く示唆する。

 訓練や教育だけでは解決できないような、子どもの深い部分での障害を、プレイセラピーの中で、子どもの物語の変容を通じて変えていく手だてを示す(これで合っていると思うけど…)。

 治療者が子どものこころの世界に降りていき、くたくたになりながらもつきあい、子どもが自然と変わる様子が示され、興味深い。

 しかも、今の河合さんから見たすばらしいコメントと解説が添えられるので、観ているわれわれは素敵な劇を見ているような印象を受けて、感動的にすら思える。

 ちからのある臨床家というのは本当にすごいなあ、と感心させられる。

 今回は山王教育研究所のご紹介でこのビデオを拝見したが、ご配慮に感謝したい。

 もっともっと勉強を深めて、臨床のちからをつけていきたいと思う。    (2023.4 記)

 

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河合隼雄・中沢新一『仏教が好き!』2003・朝日新聞社-仏教・科学・哲学を考える

2024年03月21日 | ユング心理学に学ぶ

 2015年のブログです

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 河合さんと中沢さんの仏教と臨床心理学に関する対談の本ですが,10年ぶりに再読しました。

 河合さんはユング心理学を基本に臨床心理学全般を深めたかたですが,晩年は仏教,特に,華厳経にも関心をもたれていたようです。

 本書はそんな時期の河合さんが宗教学者の中沢さんに仏教全般に関する講義をお願いし,それを臨床心理学の観点から深めたものと言えます。

 内容は多岐にわたりますが,西洋哲学と仏教,キリスト教と仏教,深層心理学と仏教,医学と仏教,科学と仏教などなど,どれもお二人の真摯な対話が続きます。

 10年前には読み落としていた点がいっぱいあり,とても刺激になりました。

 じーじもさらに謙虚になって,もっともっと勉強を深めなければならないと思いました。   (2015.6 記)

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 2021年6月の追記です

 久しぶりに再読をしました。

 読み返してみると、お二人の間ですごく深い内容が話されています。

 駄洒落好きだった河合さんが中沢さん相手にとても楽しそうに対談をされていますが、内容は深いです。

 今回もいろいろと学ぶところが多かったのですが、印象に残ったのが井筒俊彦さんの存在。

 一神教と仏教を貫く宗教のあり方とでもいうのでしょうか、宗教の本質について述べられているように思われました。

 井筒さんの本はじーじも好きで何冊かは読んでいますが、さらに読み返したほうがいいように感じました。

 新しい刺激をさらにもらえる、とてもいい本です。   (2021.6 記)

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 2023年3月の追記です

 数学教師からスタートし、軍国主義や精神主義への反発から、徹底的に科学性、合理性を追求された河合さんが、仏教に興味を持たれたことはとても面白いなあと思います。

 真の意味での宗教性に触れる何かを感じられたのかもしれません。   (2023.3 記)

 

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河合隼雄『私が語り伝えたかったこと』2014・河出書房新社-河合隼雄さんの「熱い」思い

2024年03月12日 | ユング心理学に学ぶ

 2014年のブログです

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 河合隼雄さんの最新刊『私が語り伝えたかったこと』(2014・河出書房新社)を読みました。

 河合さんの晩年のインタビューや講演,論文などを集めた一冊です。

 一言で感想を述べると,「熱い」です。

 静かに,穏やかに,また,いつものようにユーモラスに語っていらっしゃいますが,中身はとても「熱い」です。

 その「熱さ」は熱いことで有名な山中康裕さんよりも「熱い」かもしれません(山中さん,すみません)。

 もっとも,河合さんは若い時から熱かったと思います。

 それでないとあんなに臨床心理学に命を懸けられないと思います。

 河合さんはそれで命を縮められたような気もしています。

 しかし,男の生き方としては最高なのかもかもしれないとも思います(勝手なことを言って,河合さん,すみません)。

 河合さんの渾身の語りを受けて,じーじも力不足な一年寄りながら,心して生きていきたいなと改めて思いました。    (2014.4 記)

 

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河合隼雄『カウンセリングの実際』2009・岩波現代文庫-河合隼雄さんのカウンセリングに学ぶ

2024年03月04日 | ユング心理学に学ぶ

 2011年のブログです

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 河合隼雄さんの『カウンセリングの実際』(2009・岩波現代文庫)を再読しました。

 引越しのドサクサなどで原本の『カウンセリングの実際問題』(1970年・誠信書房)が行方不明となっていましたが、文庫本で再読できました。

 この本は、娘が大学生の時、カウンセリングのレポートの参考文献に図書館から借りてきて、なかなかいいセンスをしているなと感心をしたことがありました(その娘も結婚し、孫が生まれ、今ではじーじはじいじと呼ばれています)。

 前置きが長くなりましたが、今読んでもとてもいい本です。

 息子さんの河合俊雄さんが解説で書いておられますが、若い時の河合さんの体当たりのカウンセリングの詳細がわかりますし(ここまでするのかという驚きもあります)、受容するためには理解しなければならないという言葉など、最近の議論を先取りして考察している鋭い部分もありました。

 これからも大切な一冊になると思われる河合さんのすばらしい本だと思いました。       (2011.7 記)

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 2023年2月の追記です

 娘が河合さんの本を借りてきた時、カウンセリングのレポートをなかなか書けずに苦戦をしていたので、じーじがワープロで、こんな感じで書くといいんじゃない?と下書きをしてみました。

 すると、娘はなんと、である体で書いたその下書きを女子らしい(?)ですます体に書き直しもせずにそのまま提出してしまいました(もう時効だと思うので、大学の先生がた、お許しください)。

 幸い、D評価ではなかったのでなんとか面目がたちましたが、あぶない瞬間でした(?)。 

 よい子のみなさん、宿題は自分でやりましょうね。        (2023.2 記)

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 2024年3月の追記です

 じーじの孫娘たちは宿題の作文が苦手で、じーじの家に来ると、いつもママと苦戦しています。

 じーじが、あんなことやこんなことをああいうふうに、こういうふうに書けばいいんじゃないかい、と話しても、うーん?、とうなっています。

 やっぱり下書きをしないとだめなのかなあ(?)。    (2024.3 記)

 

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谷川俊太郎ほか編『臨床家河合隼雄』2009・岩波書店-河合隼雄さんの思い出を語る

2024年02月26日 | ユング心理学に学ぶ

 2011年のブログです

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 ここのところ、なんとなく元気が出なかったので、『臨床家河合隼雄』(2009・岩波書店)をまた読んでみました。

 元気が出ました!

 河合さんに教育分析を受けた方々の体験談を読むと、河合さんの厳しさと優しさと温かさがじんわりとこちらの心にも伝わってきます。

 今回は特に皆藤章さんの文章が心にしみました。

 だいぶ元気が出ました。

 また、谷川俊太郎さんと山田馨さん(編集者)の対談を読むと、いたずらっ子のような河合さんの姿とだぶって、「泣き虫ハアちゃん」の河合さんが目に浮かんできて、思わず私も涙が出てしまいました。

 河合さんの自然体の姿がいいなあと思いました。

 かなり元気が出てきました。

 さらに、遅まきながら、今回、気づいたのは、河合さんが「悪」の問題を相当深く考えておられたようだということ、晩年、チベット仏教の修行をしたいと話されていたということでした。

 あんなに大家になられても、なお向上心を持ち続けるすごさに圧倒されました。

 自分も頑張らねばと、意欲が湧いてきました。

 涙あり、笑いあり、厳しさありで、久しぶりに襟を正された一冊でした。   (2011.8 記)

 

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大場登「臨床家・河合隼雄の変容」(日本ユング心理学会編『ユング心理学研究第6集・河合隼雄の事例を読む』2014・創元社)

2024年02月24日 | ユング心理学に学ぶ

 2014年のブログですが、今でも時々読んでくださる方がいる不思議なブログです。

 大場先生の力なのか、河合さんの力なのか、とにかく不思議ですが、とりあえず再録します。

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 またまた,ようやく長い冬眠から目覚めました。

 年齢のせいか,だんだんと冬眠の時間が長くなってきているような気がします。

 さて,大場先生の「臨床家・河合隼雄の変容」(日本ユング心理学会編『ユング心理学研究第6集・河合隼雄の事例を読む』2014・創元社)を読みました。

 大場先生は(先生はじーじがつい最近まで在籍していた放送大大学院の先生で,たいへんお世話になりました。だからほめるというわけではないのですが…)ユング派の分析家ですが,河合隼雄さんを教祖のようにおっしゃる方が多い中で,めずらしく河合さんを一臨床家として冷静に語ることのできる臨床家・研究者だと思っています。

 この文章でも,河合さんを時期的に丁寧にたどりながら,河合さんの臨床家としての深まりをわかりやすく述べていると思いました。

 力のある人は本当にいろんな見方,読み方ができるんだなと改めて感心させられました。

 大場先生は,じーじが大学院の授業で,「ここはユング派だとどう理解しますか?」と質問をすると,いつも,「ユング派というより臨床心理学的にはこうかな…」と,より幅の広い見方に導いてくださったように思います。

 ありがたかったなと感謝しています。

 じーじもこれから少しでも臨床の力をつけていきたいと思います。

 なお,一緒に収録をされている皆藤章さんの「河合隼雄の臨床」も,河合さんの,沈黙と気配,について述べており,こちらもとてもいい文章でした。    (2014.3 記)

 

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河合俊雄『村上春樹の「物語」-夢テキストとして読み解く』2011・新潮社-物語のちからを考える

2024年02月10日 | ユング心理学に学ぶ

 2011年のブログです

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 河合俊雄さんの『村上春樹の「物語」-夢テキストとして読み解く』(2011・新潮社)を読みました。

 面白かったです。

 難しかったですけど…(河合さんの伝えたいことの2割くらいは理解できたかなあ?)。

 印象に残ったのは「物語の力」ということ。

 俊雄さんのお父さんの河合隼雄さんがどこかで、人はみな自分の人生の物語を書いている、というような趣旨のことを言われていたと思うのですが、本当にそう思います。

 我々は小説までは書けないけれど、自分の人生は書いているのだと思います。

 しかし、たいていは思うようには書けないし、思ってもみない悲しい物語や厭な物語になってしまうのかもしれません。

 でも、物語は書き換えることが可能なようです。

 村上春樹さんの小説を読むとそう感じますし、今回、河合俊雄さんのこの本を読んでますますそう思いました。

 良い小説、物語とはそういうものなのでしょう。

 そして、心理療法もおそらく同じような作業ではないかと思います。

 悲しい物語や厭な物語で苦しんでいるクライエントさんと一緒に、その人に何か他の物語がないのか、ゆっくりと検討をする作業ではないかと思います。

 カウンセラーは直接、クライエントさんの他の物語を見つけることはできませんが、クライエントさんが他の物語を見つけるプロセスのお手伝いはできそうに思います。

 少なくとも今後、そういう訓練を続けていきたいなと思いました。   (2011 記)

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 2020年5月の追記です

 物語の書き換え、といっても、なかなか難しいことだと思うのですが、精神分析では、反復の問題に注目します。

 人生の反復に気づくと、少しは何かが違ってくるのかもしれません。   (2020.5 記)

 

 

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山中康裕『心理臨床学のコア』2006・京都大学出版会-山中さんの「熱い」思いの本

2024年02月01日 | ユング心理学に学ぶ

 2013年のブログです

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 なぜか読み落としていました。とてもいい本です。熱い本です。

 山中さんですから、当然といえば当然ですが…。

 いろいろと勉強になったのですが、今回、一番、刺激を受けたのは、「記憶」に関しての部分でした。

 「記憶というものは、感情に色づけられた幾多の別の経験とともに集積していくときに、変容していくことがあるものであることが分かる」との一節を読んだ時には、今までの疑問がパッと氷解するような体験をしました。

 精神分析でも、同じような議論がなされていると思うのですが、人間の記憶の不思議さや複雑さに驚かされます。

 同じ現象を同時に見ているはずなのに、「記憶」は全く違う、そんな経験を日常的にしている者にとっては、本当に大きな示唆でした。

 今後、さらに考察を深めたいと思いました。  (2013.5 記)

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 2020年5月の追記です

 久しぶりに再読をしました。7年ぶりになるのでしょうか(山中さん、ごめんなさい)。

 いい本なのに、もったいないことをしました。

 読んでいると、BS放送大学の「イメージと心理療法」の中で山中さんが話されていることが同じように強調されたりしていて、なかなか印象深く再読をしました。

 今回、印象に残ったことの一つは、山中さんの「内閉」論とおなじみの「窓」論。 

 いずれも、「ひきこもり」の意味を深く理解する見方です。

 遊戯療法家の田中千穂子さんと同じく、「ひきこもり」に積極的な意味を読みとる大切な視点ではないかと思われました。

 もう一つは、遊戯療法についての再考。

 プレイセラピーの意味の再確認や表現療法としての遊戯療法、さらに、箱庭療法と遊戯療法との関係などなど、魅力的な考え方が示されていて、刺激になります。

 さらに深く勉強をしていこうと思います。  (2020.5 記)

 

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