先日、
師匠と弟子についての記事を書きながら、
弟子を飼い殺すなんて、理不尽な権力行使だよなあと思い、
その関連で、思い出した話がありました。
今日はその話を書きたいと思います。
ですが、その前に、皆さんにやってもらいたいことがあります。
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次の項目が、ご自身にあてはまるかどうか考え、
「とてもよくあてはまる」…◎
「まあまああてはまる」…○
「あてはまるともあてはまらないともいえない」…?
「あまりあてはまらない」…△
「まったくあてはまらない」…×
のいずれかのマークを、それぞれの項目に対してつけていってください。
A.「これは何だろう」「なぜこうなるのだろう」という疑問をもつ。
A. 辞書や事典を引いたり、図鑑で調べたりするのは好きな方だ。
A. ものの仕組みがどうなっているのか、興味をもつ方だ。
B. 家族や友人に対する愛情が深い方だ。
B. 仲間と力を合わせて、1つの目標に向かってがんばるのが好きだ。
B. 誰かが困っているのを見たら、すすんで手助けする。
C. 他人に対して、自分の意見をはっきり言う方だ。
C. 自分が正しいと思うことなら、反対する人を説得してでもやり通す。
C. まちがったことをしている人を見たら、きちんと注意する。
D. 自分が生まれてきたことの意味について考えることがある。
D. この世界には、人間の知恵の及ばない、大きな力がはたらいていると思う。
D. 人間の運命というものを感じることがある。
E. きれいなものを集めたり飾ったりすることが好きだ。
E. 身のまわりの物の形や色に、強く心を引きつけられることがある。
E. 自分がふだん使うものは、色やデザインにこだわる方だ。
F. 人よりも計画性がある方だ。
F. 10分や20分の空き時間・待ち時間も、なるべく有効に使う。・・・・・・
F. どうせやらなくてはならない雑用は、早めに片付けてしまう。・・・・・・・
マークをつけおわったら、
◎…5点
○…4点
?…3点
△…2点
×…1点
として、A~Fのそれぞれの記号ごとの得点を出してみてください。
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では本題です。
かつて、奈良女子大学に勤めていた頃、
パーソナリティ心理学者の酒井恵子先生(大阪工業大学)が
非常勤講師で来てくださっていました。
何度かお話をする機会があって、先生の研究の話など、
色々勉強させていただきました。
酒井先生は、特に、シュプランガーの理論に精通されており、
「価値志向によるパーソナリティ分類」の尺度化をなさった方です。
そこで用いられているシュプランガーの理論とは、
各人が生活の中で重視する価値の種類によって
パーソナリティを分類しようとする理論です。
たとえば、同じ山を見たとしても、それへの反応は様々です。
ある人は、その美しさに心うたれる。
ある人は、その頂上にたどりついたときの征服感に思いをはせる。
ある人は、その山に登る仲間を想像する。
ある人は、その山の資産としての価値を思いめぐらす。
ある人は、その山に神を感じる。
ある人は、その山の成り立ちや分類に興味を抱く。
このような反応の違いを、
その人が生活の中で重視する価値体系の違いが反映されたものと考え、
どの価値をより志向するのかということを、
シュプランガーはパーソナリティ分類の枠組みにしたのです。
その分類は6つ。
事物を客観的に見て、論理的な知識体系を創造することに価値をおく“理論型”
事物の経済性、功利性をもっとも重視する“経済型”
繊細で敏感であり、美しいものに最高の価値をおく“審美型”
神への奉仕、宗教体験を重視する“宗教型”
権力を求め、他人を支配しようとする“権力型”
人間を愛し、進歩させることに価値をおく“社会型”
です。
先ほどの山に対する例でいうと、
その美しさに心うたれる…審美型
その頂上にたどりついたときの征服感に思いをはせる…権力型
その山に登る仲間を想像する…社会型
その山の資産としての価値を思いめぐらす…経済型
その山に神を感じる…宗教型
その山の成り立ちや分類に興味を抱く…理論型
といった感じです。
酒井先生の作られた尺度は、どのタイプにあてはまるかではなく
それぞれのタイプとされた性質が個人の中にどのくらいあるのかを
測定するものですが、
自分が、それぞれのタイプの性質をどの程度もっているのか、
特に強くもっている性質は何か、などを考えてもらうことはできます。
酒井先生は、それを教職課程の学生に回答してもらって、
自分の価値志向性を知ってもらい、
教員という職業を選んだ理由にも、
少なからずそれが反映されている可能性があることを
自覚してもらうようにしているとおっしゃっていました。
たとえば“権力”志向が強い場合は、
教師はある程度生徒を支配することができるというところに、
“社会”志向が強い場合は、
子どもと仲良くできるなどというところに
それぞれ注目して教職をとらえている可能性が考えられるので、
教職に関するそれ以外の側面については、
より意識的に学んでもらう必要があるというわけです。
また、実際の場面においても
“経済”志向が強い場合は効率を最優先させる傾向が、
“理論”志向が強い場合は正しい理解を最優先させる傾向が、
クセのように現れる可能性があるので、
それを自覚しておくことも役に立つでしょう。
というわけで、冒頭には、酒井先生の尺度からの項目を
一部抜粋させていただきました。
著作権などの関係があるのであくまでも一部ですが、
ご自身の価値志向性について、考えるきっかけにしてみてください。
正確に知りたい方は、
酒井恵子・久野雅樹 1997 価値志向的精神作用尺度の作成 教育心理学研究, 45, 388-395.
を御覧ください。
※論文へのリンクは、大学など、電子ジャーナル契約のあるところからのみ
ジャンプすることができます。
というわけで、
A~Fの得点はそれぞれ、
A:理論
B:社会
C:権力
D:宗教
E:審美
F:経済
を測定する項目の得点でした。