goo blog サービス終了のお知らせ 

中間玲子のブログ

仕事のこととか日々のこととか…更新怠りがちですがボチボチと。

2017-08-12 08:18:48 | 読書日記
新美南吉さんといえば「ごんぎつね」で有名ですね。
私の時代からずっと国語の教科書に載っているようです。

私は,おなじく教科書にあった「てぶくろを買いに」という話が
大好きでした。

新美さんの文章はとても優しく柔らかな感じで,
読んでいるだけであたたかな気持ちに包まれます。

というわけで『新美南吉童話集』を買って読んだのですが
そのなかで,「狐」というお話がありました。

月夜に7人の子どもたちが歩いていました。
お祭りの日でした。
その中に,文六ちゃんという甘えん坊の男の子がいたのですが,
まずはその子が下駄を買いに行くことになりました。
下駄屋さんで下駄を買おうとしていたとき,
おばあさんがお店に入ってきて
「夜に下駄をおろすと狐がつく」ということを言います。

下駄屋のおばさんは,狐がつかないおまじないをしてくれて
その場は落ち着くのですが,

遊んだ帰り道,夜道の不安の中で,
ふと6人の子どもたちの心の中に,文六ちゃんに狐がついているかも…という
不安が広がっていきます。
その不安は,文六ちゃんが「コン」と咳をしたときに
恐怖になって,文六ちゃんをこわいと思って,文六ちゃんを置いて
めいめいの家に帰ってしまいました。

「文六ちゃんは,ぼけんとしているようでも,もうちゃんと知っているのです。みんなが,自分の下駄のことでなんといいかわしたか,また,じぶんが咳をしたためにどういうことになったかを。」

それをなさけなく思うと同時に,文六ちゃんの気持ちにも心配が生じます。
もしかしたら,じぶんは本当に狐にとりつかれたのではないかと…。


このあたりから,読者である私は,
文六ちゃんの心のうごきに共鳴してしまって,
さびしい思いになって読んでいたのですが…。


帰宅後のお母さんとのやりとりを読むとさらに,
文六ちゃんの不安や心配にさらに共鳴してしまう感じで
ドキドキしながら読み進めることとなりました。

そして,最後は号泣です。。。

以下,内容を書きますが,それまでの文章もしっかり読んだ方が
なんで文六ちゃんがそんな気持ちになるのか,感じ取ることができると思います。
短いお話ですので,読まれることをおすすめします!
ただ,立ち読みしていると泣いちゃうかもしれません。


では,以下,内容の抜粋+引用です。

----------

文六ちゃんは家に帰って,お母さんにお祭りの話をひとしきりしたあと,
思い切ってこう聞きます。

「お母ちゃん,夜,新しい下駄おろすと,狐につかれる?」

お母さんは,文六ちゃんがなぜそういうことを聞くのかを察して
「嘘だよ」と答えます。

でも,文六ちゃんの心配は消えず,
「もし,ほんとだったらどうする?」
とたずねます。

「もし,ぼくが,ほんとに狐になっちゃったらどうする?」

お母さんは笑いますが文六ちゃんは真剣で,「ね,ね,ね」と迫ります。

「そうさね」…お母さんは,ちょっと考えてから

「そしたら,もう,家におくわけにゃいかないね」

文六ちゃんを狐のいるところに連れて行くと言いました。

文六ちゃんはさびしい顔になって
「母ちゃんや父ちゃんはどうする?」
と聞きます。

するとお母さんは
「父ちゃんと母ちゃんは相談をしてね,かあいい文六が狐になってしまったから,わたしたちもこの世になんのたのしみもなくなってしまったので,人間をやめて,狐になることにきめますよ」

文六ちゃんは大きい眼を輝かせます。
そして3人の狐になって暮らすことを想像するのですが,
また心配になって,猟師はいないの?と聞きます。

お母さんはみつからないよ,みつかっても逃げたら大丈夫だよ,ということを言うのですが,
文六ちゃんの心配は止まらず,「でも,~~~なったら?」を繰り返します。
不安で不安で仕方ないのです。
自分は子どもの狐だから,猟師の犬につかまってしまうと。

お母さんはちょっとだまったあと,ゆっくりと,しんからまじめな声でこう言います。

「そしたら,母ちゃんは,びっこをひいてゆっくりいきましょう」
「どうして?」
「犬は母ちゃんにかみつくでしょう,そのうちに猟師がきて,母ちゃんをしばってゆくでしょう。そのあいだに,坊やとお父ちゃんはにげてしまうのだよ。」
文六ちゃんはびっくりしてお母さんの顔をまじまじとみました。
「いやだよ,母ちゃん,そんなこと。そいじゃ,母ちゃんがなしになってしまうじゃないか」
「でも,そうするよりしようがないよ,母ちゃんはびっこをひきひきゆっくりゆくよ」
「いやだったら,母ちゃん。母ちゃんがなくなるじゃないか」
「でもそうするよりしようがないよ,母ちゃんは,びっこをひきひきゆっくりゆっくり……」
「いやだったら,いやだったら,いやだったら!」
文六ちゃんはわめきたてながら,お母さんの胸にしがみつきました。涙がどっと流れてきました。
お母さんも,ねまきのそででこっそり眼のふちをふきました,そして文六ちゃんがはねとばした,小さい枕をひろって,あたまの下にあてがってやりました。


Dick Brunaさんご逝去…

2017-02-19 20:47:58 | 読書日記
昨日の朝のニュースで知りました。

敬愛する絵本作家のDick Brunaさんが,2月16日,亡くなられたそうです。。。

うさこちゃんが大好きな私ですが,
その作家であるBrunaさんの写真を初めて拝見したとき,
温かいまなざしをたたえた柔らかな風貌に感激したのを覚えています。

Brunaさんの作品づくりへの思いなどを知るにつれ
どんどん好きになっていきました。

本当に寂しいです。。。

今年,また,ユトレヒト(Brunaさんが住んでいた街)に行って,
かつて,どうしても見つけることのできなかった
miffyの信号を見つけるぞー!と心に決めているのですが
なんだか寂しいです。

うさこちゃん(miffyちゃん)というキャラクターを生み出し,愛し育ててくださり
たくさんの世界を見せてくださり,思いを抱かせてくださったBrunaさん。
そういえば,うさこちゃんも,大好きなおばあちゃんを亡くしています。
えらいぞ,うさこちゃん。。。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

青年の心

2016-08-16 09:08:50 | 読書日記
8月になってから読んでいた本は,
一応,学術的な興味のもとで読んでいたのですが
たまたま,虐待に深く関連するものが続いてしまいました。


中井広美『あなたの子供をやめました』

堀川恵子『永山則夫:封印された裁判記録』


まったく違うタイプの本ですが,
いずれも,他にきょうだいがいるにもかかわらず
特定の子だけが虐待に合っていたこと,
虐待していた親は,虐待していた自覚がないこと
は共通していました。

そのことが,余計に,他者からの理解を困難にさせ
助けを得られなくさせていました。


前者の本は
「母親から虐待を受けた少女が,救われるまでの手記」という副題があり
てっきり,誰か特別なメンターとの出会いなどが
展開されるのかと思っていました。

読んでいて非常に苦しかったのですが,
その出会いや,その人とのかかわりはどのようなものなのだろうと
ずっと待っていました。

しかし,それはありませんでした。

その代わりにあったのは,本との出会い,そしてその本に基づく自らの実践でした。
著者にとっては,この本を出版することも,
立ち直りの過程の一つだったのかもしれません。



後者の本は,言わずと知れた永山則夫の本です。
こちらも,想像を絶するような生育歴の悲惨さが淡々と記述されており,
暑い夏の日,苦しい読書となりました。

しかし,

精神医学の知識,
精神医学の知識と時代の関係,
孤独であることがもたらす苦しさ,
無視という行為の罪深さ,
少年・青年の心の形成過程,
彼らの心に及ぼす大人の影響の大きさ
不信を抱いた者が信じることの難しさ


ひいては


裁判の在り方
マスコミのこと
当時の社会背景


などなど,

一人の青年の事例から,
多くのことを学び,考えさせられる本となっています。


何よりも,

精神医学,人の心に携わる者のまなざし
人に向き合うとは何か,という点についても,
深い感動を覚える本となりました。

本の主軸は,石川義博という精神科医による鑑定記録です。
実に詳細な,根気強い,誠実な精神科医による鑑定記録,
そして,それを粘り強く継承した著者による共同製作の本です。

(個人的には,石川医師が,土井健郎先生に師事していたことにも
 大きな感銘を受けました。)



虐待の本ではないですが,
笠原嘉『再び「青年期」について』も読みました。
これも,大いに勉強させられる本です。
「説教臭いかもしれないが」としながらも紡がれる著者の思いは
非常に貴重な先人の言葉として心に刻まれるところがあります。



苦しいながらもとってもいい時間を過ごしましたが,

夏休みの宿題が・・・・と青ざめております。。。

読んだ本たち(2015年分の備忘録)

2016-01-03 17:40:26 | 読書日記
読書日記も怠っていたようですね。。。

他人様が見ると何のおもしろみもないリスト紹介になりますが
前回以降の備忘録として・・・


原田マハ『本日は,お日柄もよく』
→スピーチ作りのお話。政治家の答弁とか結婚式のスピーチとか。
 でも,スピーチのノウハウについても納得しますし
 そこで作られるスピーチの内容もいずれもすてきで,よい本でした。

畑野智美『運転、見合わせ中』
→電車が事故で止まってしまうこと,よくありますよね。
 その事態に遭遇した数人の人たちにとって,その事態がどんな意味をもったか
 それによってその人のいつもの日常がどう変わっていったか,
 いくつかの人の物語として描かれています。
 最後にその事故の当事者の物語も描かれます。
 それぞれの物語が多少重なることもありますが,登場人物間のつながりがメインではなく
 それぞれがそれぞれの物語を生きている感じがとてもよかったです。

麻宮ゆり子『敬語で旅する四人の男』
→これもテイストとしては上記と似たような感じですね。
 こちらは共に旅をする四人の男性の物語。

和田竜『村上海賊の娘』(上・下)
→前から気になっていた本。
 村上海賊については瀬戸内の覇権関係で前々から興味があったのですが
 その時代をまた別の視点から覗いた感じですね。
 話の内容自体は,なんだか全体的に男性目線というか…。

東野圭吾『虚像の道化師』
→短編集でした。

黒川博行『後妻業』『破門』
→京都の保険金殺人で話題になった本『後妻業』,そのついでで手を伸ばした『破門』。
 『後妻業』は,人間の悪意に衝撃を受けました。。。

山田宗樹『ギフテッド』
→ギフテッドチャイルドとか,デザイナーズベビーとか,
 そういった遺伝子問題かと思って借りたのですが
 「異端」「特別」をめぐる視点の問題でした。。。

スティーヴン・キング『11⁄22⁄63』(上)(下)
→スティーヴン・キング,好きなのですが,久しぶりの翻訳本だったためか
 挫折しました。。。JFK暗殺をめぐる物語です。
 気が向いたらまたいずれチャレンジしようかと。

是枝裕和, 佐野晶『そして父になる』
→映画化で話題になった本ですね。

近藤史恵『私の命はあなたの命より軽い』
→出産をめぐってのいろいろな思い。
 視点が変われば意味が変わる,命の重さも変えられてしまう,,,というお話。

奥田英朗『ナオミとカナコ』
→めちゃくちゃおもしろかったです!
 同時に,日本人の特質にも言及があったり,
 家庭内暴力の問題とかも絡んでて深く考えさせられるところもあり。
 最後は爽快感があるのですが,でも,そこに爽快感を感じるところに
 自分の中に潜む狂気を感じたりもします。。。

湊かなえ『物語のおわり』

東野圭吾『新参者』

姫野カオルコ『近所の犬』
→姫野カオルコさんは,女のもついやらしさを書かせたら天下一品。。。
 清々しい気持ちにはなれませんが,そこをすくいあげる表現力には脱帽してしまいます。

水野敬也『夢をかなえるゾウ』
→自己啓発系?な感じもしますが,素直に刺激を受けました。
 たまたま同時期に,人に勧められたのが『あなたの物語』もよかったです。
 でもそれよりも『それでも僕は夢を見る』に号泣。。。
 がんばって生きるのだ!!

内田康夫『黄泉から来た女』

池井戸潤『下町ロケット』
→ドラマ化されましたね。まだ見てませんが録画しました。

朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』


そんなもんですかね。
内容が思い出せない本もちらほら…。


そうそう,前回読みたい本として挙げていた『宇宙兄弟』ですが,
春先に2冊ほど読む機会があり,やはりおもしろく。
このたび1巻から27巻まで大人買いしました♪
でも油断してまだ開封していません…
宿題がたっぷりあるので,数ヶ月放置の予感…

『あん』

2015-05-09 12:01:17 | 読書日記
その後、東野圭吾さんの『新参者』、
そして、ドリアン助川さんの『あん』を読みました。

先日、映画を観に行った際に、予告をしていて、
あんこやあずきが大好きな私、
画面いっぱいに映し出されたピカピカピカ✨の小豆に感動してました。

そう、『あん』って、あんこのあんなんです!

そんなこともあって、てっきり美味しんぼ的なお話かなーと思ってました。

どら焼き屋さんの任され店長を務める男性がいるのですが、
彼は、どら焼きの生地は作っているのですが、あんこは作ってないんですね。

向上心ももつこともできず、でも、
ただただ、どら焼き屋を毎日開ける、
そんな毎日。
でも、そんなもんかな、とやり過ごして、彼なりに必死に日々を重ねています。

ある日、高齢の女性が現れて、雇ってほしいと言い出します。

ちょっととんちんかんなやりとりもあって、不思議ちゃんみたいな雰囲気の女性。

でも彼女が持ってきたお手製のあんの味が素晴らしくて、
色々考えた挙げ句、店長さんは、あんだけを作ってもらえばいいやと、店を手伝ってもらうことにしました。

そして、小豆との対話が始まり…

なのですが、途中から、その、素晴らしいあんを作る女性の人生が見えてきます。

また、彼女とのかかわりの中で、店長さんは適度な距離を保とうとするのですが、
その人との出会いが、自分にとってかけがえのないものになっていきます。

女性の人生、そして、店長さんの人生、それぞれがもつ人間関係、彼らを取り巻く環境など、
こちらの心が激しく動いて
まだまだ考えをまとめられるまでにはなっていませんが、
その女性が生きるなかで見出した真実、
聞こうとしないと聞こえない、見ようとしないと見えない、
ということが、
それをどう見出していったのが、も含めて
あらためて、ずしんと、心に響きました。

日々の生活の中で、
あえて見ない、聞かないということも
少なくないような気がします。
私の目は見えているのか、耳はちゃんと聞いているのか。
あるがままのことがらを見たり聞いたりすることができるようになるのは
まだまだ先な気がしますが、
見ようとしないと見えないし
聞こうとしないと聞こえないし、っていうことは
せめて覚えておかねば。


そしてその『あん』ですが、5/30公開だそうで❗
私の誕生日です。
なんか嬉しいです。

しかもキャストが素晴らしい。
店長さんが長瀬正敏さん、
女性が樹木希林さんです。
楽しみです❗






乱読の日々

2014-12-09 22:40:50 | 読書日記
出張をはじめとして,たとえば近場への移動中も含め
電車の中では(時にはバスの中でも)たいてい本を読んでいます。

夜間授業への往復で2時間以上は費やされます。
東京出張が入ると,往復で7時間以上あります。

あと,お風呂の中や夜寝る前にも本を読みます。

この数ヶ月(10月以降),まだ記録していない読んだ本の一覧,備忘録として・・・

羽海野チカ『3月のライオン』(1-9巻まで)
越谷オサム『階段途中のビッグノイズ』
庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』
原田マハ『翔ぶ少女』
万城目学『鴨川ホルモー』『プリンセストヨトミ』
原田しをん『舟を編む』
池井戸潤『おれたちバブル入行組』『ロスジェネの逆襲』『ルーズヴェルト・ゲーム』『空飛ぶタイヤ』『鉄の骨』
有川浩『フリーター,家を買う』
石田衣良『コンカツ』
姫野カオルコ『ツ,イ,ラ,ク』
湊かなえ『往復書簡』
百田尚樹『幸福な時間』『夢を売る男』
長尾誠夫『神隠しの村―遠野物語異聞』
原田宗典『人生を変えた一言』
夏川草介『神様のカルテ』『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』

ああ,これだけの時間に論文を読んでいたら・・・
どれだけ新たな論文が書けるのだろうか。

でも本当に読書が好きです。
寝るのが惜しくなります。
池井戸潤シリーズは,とにかく最後まで読み終わらないとハラハラドキドキ落ち着けません。
水戸黄門的なおもしろさがあります。
しかし,ストーリーだけでなく,台詞に仕事や生き方に対する哲学があって
最後はほろりとさせられてしまうことが多いです。
いや,生き方そのものが哲学ですね。

羽海野チカ『3月のライオン』は,原田しをん『舟を編む』を
オススメしていた方にお借りしました。
根底に流れるテイストが共通している感じがします。
研究者として生きることについて,ずいぶん励まされました。

有川浩『フリーター,家を買う』は,自分の中にある甘さや傲慢さに
向き合わされました。
自分が見落としてしまう当たり前という至上の幸福に
主人公が気づいていく過程にもいたく共感しました。

夏川草介『神様のカルテ』『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』
これは3巻セットで借りて良かったです。
3巻に至るまでの医局に戻るか否かをめぐる主人公の心の揺れを通して,
兵庫教育大学に来る現職の先生たちの気持ち(あるいは入院の意義)を
少し理解できた気がしました。
それに応えるべく大学があるのだということに,はっとさせられました。
同時に,先の見えない現場をどう生きるのかをめぐって示される言葉
「あせってはいけません。ただ,牛のように,図々しく進んでいくのが大事です。」
これは,私も座右の銘にしよう。

というわけで,本を読み本を読み,
なんだか充実した気分になっている毎日です。

今,図書館においていない本で読みたいものは
『夏子の酒』と『宇宙兄弟』どっちも漫画ですが。

ではまたいずれ。


『我が家の問題』

2014-09-25 22:08:08 | 読書日記
久しぶりに電車で長時間移動だったので
読書をすることができました。

奥田英朗さんの『我が家の問題』
借りて日にちが経っていたのですが
ようやく読むことができました。

奥田英朗さん,なんだかほっこりする世界を展開してくれている作家さんです。
清水義範さんと似たものを感じます。
ちょっとユーモラスの方向性は違うのですが,ユーモラスですし。
登場人物へのまなざしが暖かいところなど,やはり似ている感じがします。
この本は短編集ですが,いずれも家族に起こった問題をモチーフに書かれています。

実は,このクール,「家族狩り」を2話からではありますが,すべて観ました。
そこではかなり深刻な,修復不可能な
それでも家族という枠組みにとらわれてしまうがゆえに
閉塞感から抜け出せず破滅的な状態に至ってしまっている家族が描かれていました。
それを観ながら漠然と思ったのは,
近代家族の在り方それ自体が問い直される時期になっているのかなあということ。
最近,母親が重いといったことを告白する本が散見されるようになっていますが
これは結構大きなことだと感じています。

というのも,それって,気づいてはいても,仕方のないものとして議論せずにいたことが
議論され始めたということで,
そうなると,これまで議論してはいけないものとして,無意識になきものにされてきた
家族をめぐる諸問題が,いよいよ様々な形をなして現れるのではないか,
しかもそれは,家族という制度それ自体の限界をも対象化するものなのではないか,
そんなことを思って眺めているのです。

そんな中で,「家族狩り」を観たものですから,
いよいよ多くの人が,近代家族の限界に気づき始めるのではないか,と
そんなことを思っていたわけです。

家族はこれまでも色々な問題を抱えていたわけだけれども,
そのシステム自体を揺るがすような議論にはなっていなかった,
(少なくとも生活者レベルにおいては)
でもそれが,そういった枠組みを問い直すところまで
来ているのかも知れないなーと…。

さてさて,『我が家の問題』は,
色んな家族の色んな問題に,家族の一員として,
家族というシステムの価値を疑うことなく,
一生懸命向き合う人たちの姿が書かれています。
実際には,近代家族のシステムをきちんと生きている人たちの方が大半です。
そして,その枠組みを足場としながら,家族の問題に向き合っている。

鹿児島弁に,
「三味線のない家はあるが,琴のない家はない」
という意味の言葉があります。

「琴」を「事(=問題)」とかけているわけですね。

近代家族の限界とか,そういったことはやはり漠然と思っているのですが,
それでなくても,やはり,家族は色々な問題を抱えながら
それでも家族という現象が多くの場合,成立している。
そんな当たり前のことを,改めて感じました。
そしてなんだかほっこりとしました。


『大正時代の身の上相談』

2014-09-07 09:48:38 | 読書日記
今朝,ラジオを聞いていたら
「私,ライオンです。狩りと育児で毎日クッタクタ。夫との仲も冷え切ってます。
 人間はいいですよね-。こんな悩みを聞いてくれる新聞があるんでしょ」
という,読売新聞のCMが流れました。

そう,読売新聞には「人生相談」コーナーがあります。

このブログでもすでにふれたことがあるのですが
(→「古今問わずのお悩み」
『大正時代の身の上相談』という本がありまして,
読売新聞の「人生相談」コーナーに寄せられたお悩みとそれに対する回答をまとめた本になっています。

連載当時は記者さんが色々に知恵をしぼって回答なさっていたようで
夫がごはんを食べてくれない,みかんばかり食べている

兄が芸者になれと言いますが,声が悪いので芸者になれません

とかいった悩みに対する回答からは,
記者さんのお人柄がうかがえて,またほっこりします。

そういえば,10年ほど前に
『生協の白石さん』も注目されましたね。

そういえば,最近,東野圭吾さんの『ナミヤ雑貨店の奇跡』を読みました。
この中でも,ナミヤさんという雑貨屋のおじさんが,一生懸命
みんなかが寄せられる悩みに答える,という設定があり,
その設定がこの小説の,なくてはならない核となっており,
その内容も小説全体を動かすものとなっているのですが,
やはり,そこに,ナミヤさんというおじさんの人柄がうかがえて
暖かい気持ちになります。

この「暖かさ」ってなんだろう。
書いていて,
精錬されていないこと,不器用であること,一途であること
そんなものを伴っているのかな,と感じてきました。
ありのままってことなのかな,作為のないってことなのかな。

あ,

もしかしたら,自己意識がないってことかもしれませんね。
ないというと言い過ぎかもしれませんが,
「どう思うかな?」とか「これで合ってるかな?」とか
あるいは「ウケるかな?」とか
そういった,自分の行為に関連した評価的意識の過程があまりにおわない。
ただ,その答えるべき課題に集中して,向き合っている。
そういうことなのかもしれません。


渡辺淳一『花埋み』

2014-08-08 23:20:18 | 読書日記
母から送られてきた荷物になぜか紛れ込んでおり,
私の本だと勘違いしたのかな?と訝しく思いつつ読み始めました。

荻野吟子という,日本で初めて女医の資格を取得した女性の話です。
以前,所属するコースで,
女子医学校を創設した吉岡弥生という方を題材に
修論を書かれた方がおられました。
その吉岡弥生さんよりも前に,執念で私学の医学校に入学し
女医第一号となったのが,荻野吟子さんだそうです。

男性しか医師がいないことで被った屈辱的な体験から
医者になることを思いつくのですが,
なりたいといって女性がなれるような時代ではない。
そんなことを考えること自体が荒唐無稽とされる,そんな時代です。
だからそんなことを思いつくこともない,そんな時代です。
そんな時代に,医者になることを思いつくこと自体が
すごいことだと思います。

さらに,女医になるために立ちはだかるさまざまな壁に直面し続けても
(壁という言葉が易しく響くほど,高く険しい壁)
ものすごい努力と精神力と知性で女医という立場を獲得する,
医者になるというその執念がものすごくて,
その気合いの入り方に脱帽しました。。。

非常に圧倒されながら読み続けましたが,
しかし,最後が信じられない展開になっており,
信じられない!と衝撃を受けました。

積み上げてきた医者の立場をあっさり棄てて,
別のものへ情熱を注ぐことになるのですが
それがなんだかうまくいかず・・・

もったいない!!どうして!?

とこっちが嘆きたくなってしまいましたが

もしその別の道がうまくいってたらそうも思わないのかもしれませんね,
その意味では未来は予見できないわけだし

そもそも,医者になるという情熱の強さも
私の想像を絶するものだったので,
彼女の決断やそれを実行する力については,
まだまだ私は理解できていないような気がしております。


圧倒されました。


でも,やっぱり私は,,,
もったいない,なんで・・・
という思いがくすぶり続ける凡人でございます。

スラムダンク

2014-08-07 20:55:13 | 読書日記
実は『スラムダンク』を初めて読みました。

ものすごい短期間で31巻読み終えてしまい,
また1巻から読み返そうかという勢いです。

なんてすごい漫画なんだろう…

「あきらめたら…そこで終わりですよ」は
安西先生の名言として多くの人が語り継いでいるところですね。

そう,スラムダンクって,強い心の人たちが集っています。
誰もが己の心と戦っている。

主人公・桜木花道は,超自信過剰発言を繰り返しているのですが,
その発言を貫く心の強さには感動しました。
「天才だから」というのが口癖のお調子者なのですが,
有言実行というか,「天才だから」を現実のものにしようとする。

流川という,中学時代から注目されているすごい選手がいるのですが
(あ,スラムダンクはバスケットの漫画です)
桜木はど素人。
最初はど素人故の怖い物知らずで大口を叩けるのですが
上達するにつれて相手のすごさがわかってきます。
でも,それでも,負けたくないと思い続けるのです。

わ,そこまですごいんだ!と思ったのが次のセリフ。

彼が流川のすごさがわかるようになって
なんであんなにうまいんだ?ということを考え始めます。
周りの人から,彼が中学時代からどれだけ注目されていたか
どれだけ才能があると認められていたかということなどを聞きます。
そして,「うーん,やはり経験の差か…」と一瞬思うのですが
即座に打ち消して,
「はっ,いかんいかん!それでは現時点での負けを認めることになる!!」

これはすごいです!
何の言い訳もしない!
あっぱれでした!!

原田マハ『楽園のカンヴァス』

2014-08-03 17:33:50 | 読書日記
面白かった-!です。
何が面白かったか??
「美術って面白いんだ!」ということを知ることができた!!
そういう面白さを存分に味わわせてくれる作品でした。


美術館に行くのはそこそこ好きですが
そこそこレベルの知識しかなく
あまり美術についての物語を読んだこともない私。

唯一深く鑑賞した経験としてあげられるのはゴッホ。
オランダで何度かゴッホの絵を観る機会があり,
ゴッホの生涯を知るにつれ,彼の絵に対するこちらの見方が変わっていった
そういう思い出があります。

でもそのほかは,愛してやまないディック・ブルーナさんくらいしか
あまり人柄について思いをはせたことはありません。

あ,『カミーユ・クローデル』は,以前映画を観たことがありますので
そのつながりで,ロダンについてもちらりと人柄を垣間見ましたが
その後,ロダンの彫像を眺めることもなく・・・


さて,この本は,アンリ・ルソーという画家の
絵画をめぐる物語です。

アンリ・ルソー,,,美術に疎い私は知らなかったのですが,
この本を読むにつれ,ものすっごくその絵画を観たくなりました。

原田マハさんはキュレーターでもあられるのですね,
アンリ・ルソーという画家とその絵の魅力について
存分な知識でもって語ってくださっています。

しかもそのルソー像をそのまま鵜呑みにするのは危ういぞ・・・という
仕掛けの上で文章が展開しており,それがまた絶妙なところです。
ルソー像に関する物語の部分は,それだけ取り出すと
少々素朴すぎる感じがあるのですが,
その「あやしむ心」を読み手に起こさせる仕掛けがあることで,
その素朴な物語を読み手が幾重にも想像で脚色し,
読み手の心の内で壮大な物語へと増殖していく,
そんな作用があるように思いました。

読んでいる間は,まったく絵画をみず,
ルソーも今までそれと思って観たことがなかったのですが,

原田マハ著『楽園のカンヴァス』に登場する絵画のまとめ

というサイトを見つけました。

でも読むとき,絵を知らなくてよかったです。
自由に絵も描けるので,その方が,上記のような仕掛けは
存分に作用するように思いました。

なので,あまり絵画に詳しくない方は
ぜひ,まずは小説を読んで,その中で
「わ-,これ,どんな絵だろう!?」と存分に想像する楽しさも
味わっていただければと思います。

遠藤周作フェア(4):『海と毒薬』

2014-08-01 18:39:54 | 読書日記
遠藤周作さんの著書でたぶん最初に読んだのは
『海と毒薬』でした。

今回,(勝手)フェア開催中に再読しました。

この季節,夏のうだるような暑さのもたらす重たくだるい空気の中で読みました。
覚えていたのは「勝呂」という名前くらいで,詳しい内容については
ほとんど忘れていましたが,
読んだ後に抱いたイメージ,経験された空気は,
確かに経験したものであったような気がしました。

第二次世界大戦中に起こった生体解剖実験が物語の核になっており,
実験に立ち会う2人の教授,1人の看護師,2人の研修医の背景が
掘り下げられていきます。

1人の看護師と2人の研修医からにじみ出てくるのは
何ともいえない無力感,退廃的な空気。

勝呂(研修医)は,生体解剖実験に立ち会うことに葛藤を感じながらも
断れずそのまま参加してしまう
そして今もそういう自分のままであることを無力的に受け入れています。

戸田(研修医)は,罪と罰の存在には気づいていながらも
それを実感として感じられない人物として描かれています。
外から見るときっと彼は,冷静で合理的で行動的な人なのでしょう。
でも,自分の心の闇を知っている。
知りながら,それに苦しむことができない。
そこに彼の無力感があります。

看護師の場合は,世間体や慣習や見栄や復讐といった外的な事象が
自分の主体性のよりどころとなってしまっている。
自分の人生を作ることができない。

教授たちは自分の欲望を実現すべく画策しますが
それは失敗してしまいます。
また,画策に向かう教授の心についてはあまり語られていません。
全体として,そういう大きな流れを引き起こした人たちのことではなく,
そこに巻き込まれてしまった人たちの心のありようが書かれてある感じでした。

悪い夢を見て汗びっしょりになって目が覚めた時のような
なんともいえない無力感にひきずられてしまいました。
この感じは,この本に対するなんとなくのイメージとして持っていたので
おそらく,前もそんな気分になったのでしょう。

今回も,
夏の昼下がり,空気の流れも少しゆるやかになった時間,
遮光をくぐりぬけて差し込む太陽の日差しや壁を隔てて聞こえる蝉の声。
その空間と時間の中で,自分の中の無力感や厭世観が,
この本の世界と通じ合ってしまったのかもしれません。


救ってくれたのが解説でした。

この小説の核は上記の通り,生体解剖実験なのですが,
周辺にちりばめられているのは「隣の人の隠し持つ残虐性」。
ある状況に置かれたとき,それでも人は人たり得るのか,
そういう問いに取り組んだ作品だと書かれてありました。

なるほどー

ということで少し心の整理がつきました。

その問いであれば,アイヒマン実験とかにつながる話ですし,
責任をめぐる議論としても理解できます。

ですが,それは非常に整理された世界で,
ここに立ち会った人たちの経験世界は,
混沌としていて未分化で,
だるい感じや無力感として迫ってくるのでしょう。
未分化な世界,混沌の世界を歩くしんどさなのでしょう。

でもこれは小説であり,言葉になっている。
その意味ではある程度整理された世界です。
それ以前の世界が,本当の経験世界にはあるんだろうなあ…

遠藤周作フェア(3):『スキャンダル』

2014-07-29 19:39:03 | 読書日記
これはちょっと毛色の違う本だったので,
主人公が世界の多次元性に迷い込んでしまっているような
意識のあやういところを生きている世界が描かれているのですが
びっくりしたのは「森田ミツ」という女性が登場していたこと。

「わたしが・棄てた・女」の森田ミツが
ひょっこり顔をだしたと思わされたときのドキドキ感がすごかったです。
まったく違う世界だと思って歩いていたときに
知った顔が出てきてどきっとする,あの感じです。

成瀬という女性も出てきてまたまたどきっとするのですが
『深い河』の成瀬さんとは人物像がまったく違う。
でも,それがまた,,,意味ありげで。

同じ人物が違う世界で違う人物として生きていて,
それが現実をおびやかすようななんともいえない汗ばむ空気感が
本の全体に漂っているわけですが,
成瀬という同じ名前の女性が,この世界ではまったく違う人物として
描かれている。
なんだか,壮大な仕掛けの中にとらえられたような感じがして
スリリングでした。









遠藤周作フェア(2):『深い河』

2014-07-28 19:27:42 | 読書日記
『私が・棄てた・女』に惹かれ,
その後,『深い河』を読みました。

これはすごい本でした。

インドの旅行ツアーに参加した人たちのエピソードが
編まれる形で構成されており,
それぞれの人たちの人生もおもしろいのですが,
私にとっては,日本人にとってのキリスト教ということを考える上で
非常に勉強になった本でした。

成瀬さんという女性が大学生時代に遊びでつきあった男性がいるのですが
彼が敬虔なクリスチャン。
しかし,彼はキリスト教に傾倒すればするほど,
その一神教的な考え方にどうしてもなじむことができず
それを乗り越えられません。
それでも彼はキリストに命を捧げて生きようと
ヨーロッパの教会で修行を重ね,自分なりのキリスト教理解に至るのですが,
それが伝統的なキリスト教会においては異端とみなされ棄てられます。

成瀬は,偶然,旅先のインドで流れ着いた彼と再会します。

4月に,梶田叡一先生より『不寛斎ハビアンの思想』という本を
頂戴いたしました。
そこでも,日本人にとってのキリスト教の問題が
論じられており,大いに感銘を受けました。

私は自己形成の問題を研究しているのですが
自己のあり方,主体のあり方,ずっと問題意識をもっているところなのです。
梶田先生の本と共に,大切にしたい一冊となりました。



遠藤周作フェア:『わたしが・棄てた・女』

2014-07-28 16:21:06 | 読書日記
数ヶ月前,一人で遠藤周作フェアをしていました。

きっかけは,ひいきにしている「音楽座」が
「わたしが・棄てた・女」を原作としたミュージカル
「泣かないで」をするということで。

20歳くらいのころにその本を初めて読んだとき,
どちらかというと語り手の独りよがりな世界としか
読み取ることができなかったのですが,

音楽座がやるならば,きっともっと深い意味があるのだろうと
改めて読んでみました。

読後感として・・・
私は20年間も誤解をしていたという思いを抱きました。

語り手である僕の言い訳満載の物語として読んでしまっていたのですが
森田ミツという存在に僕がどう向き合ったかという物語であり,
その存在の前に,僕の心がどう問われたか,
それに向き合うことから逃げられない心をもった僕の物語でした。

森田ミツという女性は非常に不思議な女性です。
僕からは蔑まれた描写をされているにもかかわらず,
その僕をして,崇高な存在と感じさせられる,そんな女性です。
そんな人に出会ったときの,自分の小ささに向き合おうとする
僕の物語でした。

また20年後は違う読み方になるのかな・・・