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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

石原慎太郎氏の差別発言と暴言を「石原節」とごまかすマスコミはジャーナリズムの放棄だ。悪い政治家が亡くなったら即座に批判することがこれからの世の中を良くするのだから。

2022年02月10日 | 社会とマスコミ

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 2019年11月30日に中曽根康弘元首相が亡くなった時に、当ブログはその日に

中曽根康弘元首相死す。「従軍慰安所」設置関与、憲法違反の靖国公式参拝、日本はアメリカの盾となる不沈空母発言。安倍首相そっくりのアメリカべったり右翼政治家だった。

という記事を書きました。

 そして、2022年2月1日に石原慎太郎元都知事が亡くなった時には

【橋下維新の会とハシズム 番外編】石原慎太郎氏は橋下徹氏の政治家モデル。数限りない暴言虚言と人権無視・傲慢・強権・無責任・反知性。歴史上、石原氏は日本最悪の政治家の一人だった。

という記事を書きました。

 日本などの「死者に鞭打たない」文化は美風だと思いますよ。

 しかし、悪政の限りを尽くした政治家まで亡くなったからと言って無批判に放置していたら、その後の政治にも悪影響を及ぼすではありませんか。

 

  石原氏の死去の当日に、社民党の副党首が批判するツイートを投稿したところ、不謹慎だと罵倒する声が殺到して炎上したというのですが、以下に見るような差別発言や問題行動をし続けてきた石原氏に対して、現職の政治家が即座に批判するのは極めて正当な政治活動です。

 石原氏のような要職にあった政治家の許されない言動を批判し続けることは、後世の人間が幸せに暮らすために必要不可欠なことで、そこでは「美風」は一歩退くべきなのです。

 

 ですから、石原氏死去の翌日、尊敬する大先輩弁護士の澤藤統一郎先生が、上の記事で私も批判した石原都知事が東日本大震災の犠牲者に対して吐いた「天罰発言」に対して、当時これでもかこれでもかとお書きになっていた記事をご紹介されていたのには、舌を巻き感嘆したものです。

東日本大震災の被害を「天罰」と言ってのけた石原慎太郎

 その澤藤先生が昨日もう一度

そこかしこに同じ穴のムジナがうようよ ー 石原慎太郎の毀誉褒貶

という記事をお書きになっています。

 私もマスコミなどのあまりの石原賛美に呆れて改めて批判を書かないといけないと思っていたので、さすが澤藤先生、グッドタイミングと思いました。

 天皇制の危険な本質をずっと追及され、君が代と日の丸が強制される東京都の教育現場については教員たちの側に立って長く裁判を闘ってこられた澤藤先生。

 私は2008年に橋下徹氏が大阪府知事になって人権侵害の政治と暴言を吐きまくり出した時に、

「これは澤藤先生にとっての石原慎太郎になるな」

とため息が出たものです。

 そして、石原氏は澤藤先生より10歳年上でしたからまだいいが?!、橋下氏は私より年下でしたので、これは一生付き合わなければいけない相手だと、半分ため息をつきながらも腹をくくったものです。

老醜無残 石原慎太郎東京都知事が「日本維新の会」設立を妄想 恥を知れ

 

【橋下維新の会とハシズムの歴史を振り返る2】盟友石原慎太郎氏に「彼の演説のうまさ、迫力っていうのは若いときのヒトラーですよ」と褒められた橋下氏とヒトラーの演説に共通するのは、むしろ嘘八百なところだ。

 

 

 澤藤先生が紹介されている、石原元都知事に対する保守政治家たちの拍手喝采ぶりは目を覆わんばかりです。

岸田文雄首相「重責を担い大きな足跡を残された 寂しいかぎり」
自民で政調会長など歴任 亀井静香氏「『太陽が沈んだ』」
自民 茂木幹事長「カリスマ性あり 時代代表する政治家 言論人」
自民 安倍晋三元首相「既成概念に挑戦し続けた政治家」
自民 二階元幹事長「惜しい政治家を亡くした」
自民 古屋憲法改正実現本部長「遺志に応え改憲実現を」
自民 長島昭久衆院議員「政界でおやじのような存在」
維新 松井代表「経験豊富 丁寧な指導に感謝」
維新 馬場共同代表「生の政治について指導していただいた」
維新 鈴木宗男参院議員「筋を通す 芯がある政治家」
小池都知事がコメント「強い思いを受け継ぎ 尽力」

Chosun Online | 朝鮮日報

 

 

 

 私が付け加えたいのは、我が天敵、橋下徹氏が石原批判がマスコミで弱いと見るや、故石原氏を利用してまた自分の宣伝に使っていることです。

 2022年2月7日のBSフジLIVE「プライムニュース」で、橋下氏は涙を浮かべてこう言ったんだそうです。

反町理キャスター:
最後はどういうお別れをしたんですか。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
40歳も年下の僕に「友よ」って……。握手した手は柔らかかった。ありがたかったですね。

 橋下ウォッチャーの私に言わせれば、死人に口なしですから、こんなことが本当にあったかどうかもわかりませんし、何より、橋下氏はここぞというときに涙を自由に流せる人だということだけは指摘しておきたいです(大竹しのぶか!)。

怨念の政治家 橋下徹大阪市長と安倍晋三元首相が日本を不幸にする

 

 

  石原氏が亡くなった直後の新聞の見出しもひどいものでした。

『「外国人が凶悪な犯罪」「参拝して何が悪いの」数々の石原節』(朝日新聞)

『「石原節」物議醸す』(毎日新聞)

『石原節 波紋』(東京新聞)

『慎太郎節 時に物議』(読売新聞)

『石原節、時に物議醸す』(日本経済新聞)

『国動かした慎太郎節』(産経新聞)

 石原氏の暴言は「石原節」だの「慎太郎節」だのというような、個人の個性だから仕方ないみたいな誤魔化しをしていいものではありません。

 まず、筆頭に挙げるべきは、2000年4月に陸上自衛隊練馬駐屯地で開かれた「創隊記念式典」で述べた、悪名高い「三国人」発言。

「三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返しており、大きな災害では騒擾事件すら想定される。警察の力に限りがあるので、みなさんに出動していただき、治安の維持も大きな目的として遂行してほしい」

 

 三国人という聞きなれない言葉自体が戦前から中国、朝鮮半島の市民を侮蔑する言葉で、生涯にわたって中国を「支那」と呼び続けた石原氏くらいしか使わない言葉です。

 そして、1923年(大正12年)9月1日に起きた関東大震災の直後、

「朝鮮人が暴動を起こした」

という流言蜚語が広がる中、自警団や軍の部隊によって多数の朝鮮人が虐殺されたのは歴史上の厳然たる事実で、ほとんどの中学教科書にも記述されている事件です。

 その犠牲者の数ははっきりしませんが、防衛大学学長も務めた猪木正道・京大名誉教授が95年に刊行した本(『軍国日本の興亡――日清戦争から日中戦争へ』中公新書)では「6000人が殺された」とされ、2008年にまとめられた内閣府中央防災会議の専門調査会報告「1923 関東大震災【第2編】」でも、朝鮮人や中国人、そして間違えられて殺された日本人の被殺者数について、千人~数千人が虐殺されたと推計されています。

 

 にもかかわらず、現職の東京都知事が、朝鮮人虐殺があった首都東京の知事が、

「三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返しており、大きな災害では騒擾事件すら想定される。」

と公然と言い放ったヘイトスピーチの非常識さは呆れるほかないのです。

 これは、石原氏の死去に対して、

「強い思いを受け継ぎ 尽力」

と述べた今の都知事の小池百合子氏が、歴代の都知事が出してきた関東大震災での朝鮮人追悼の弔電を出すのを、5年連続で断固拒否し続けていることにもつながる歴史的な大罪というべき発言です。

 

 石原氏の言動が虐殺どころか戦争をも引き起こしかねなかったのが、尖閣諸島の都有化宣言でした。

 2012年4月、石原都知事は日本と中国が領土争いをしている沖縄県・尖閣諸島の一部を地権者から買い取る意向を表明しました。

 石原氏は島に船だまりを建設することにもこだわる一方

「国が領有権を含めて万全の体制を敷くなら、いつでも東京は下がる」

と述べ、民主党政権に買収を迫りました。

 石原都知事が尖閣諸島を都有化したら日中関係がどうなるかわからないということで、懸念を強めた当時の野田佳彦首相は国が買収する方針を固め、9月に国有化に踏み切りました。

 もちろん、中国は反発を強め、中国の尖閣周辺での活動はエスカレートして日本側は対応を迫られ、いまに至るも尖閣諸島を巡る両国間の緊張は続いています。

 

 

 
 
 さて、

人の気持ちがわからない石原慎太郎氏に今の日本は任せられない

という記事に書いたのですが、石原氏が1977年に環境庁長官であった当時、水俣病患者の直訴文に

「IQの低い人が書いたような字だ」

と言い放ちました。

 さらに、患者さんの中に

「偽患者もいる」

と発言し、これらの発言を厳しく追及されました。

 石原氏はついに、1977年4月22日、患者団体と水俣病患者に直接謝罪しました。

 冒頭の写真は石原氏が胎児性水俣病患者である藤吉美智子さんらに土下座している場面です。

 ところが、読売新聞は、

裕次郎さんの死「ただただ巨きな虚脱」、「三国人」「天罰」自由な発言に注目も…石原さん語録

 という記事の中で

『「行政は患者さんのために何をしてきたかと深く反省させられた」(77年)

 環境庁長官として熊本県水俣市を訪問し、水俣病患者に謝罪した』

と書いていて、まるで国の行政を環境長官として謝罪したかのように全く別の話にでっち上げていて唖然としました。

 何が「自由な発言」か!

 

 

 私は同じ記事の中で、石原氏は1999年には東京都都知事として重度障害者の施設を訪問した際に、

「ああいう人ってのは人格あるのかね。ショックを受けた。ぼくは結論を出していない。みなさんどう思うかなと思って。

 絶対よくならない、自分がだれだか分からない、人間として生まれてきたけれどああいう障害で、ああいう状態になって」

と記者団に語ったことも取り上げました。

 彼は文学者としての発言と言い訳していますが、これは都知事として障害者施設を視察したときの発言です。親御さんたちがこの為政者の言葉を聞いてどう感じるか、考えないのでしょうか。

 

 2001年の悪名高い「ババア発言」に対しては、私は同じ記事の中でこう書きました。

 彼の衝撃を受ける暴言は枚挙にいとまがないのですが、2001年11月6日号にはこんな記事が載りました。

「これは僕がいってるんじゃなくて、・・・・がいってるんだけど、『文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものは「ババア」』なんだそうだ。『女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で罪です』って。男は80、90歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子供を生む能力はない。そんな人間が、きんさん・ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害だって…。なるほどとは思うけど、政治家としてはいえないわね(笑い)」

 何歳でも、どんな能力があってもなくても、人は人だからこそすばらしいのです。人の価値は条件付きじゃありません。それぞれの個性があるから価値があるのです。それが、日本国憲法が最高価値とする個人の尊厳の理念です。石原氏が憲法を改正するどころか破棄するとまでいうのは偶然ではないと思います。彼には、どんな人も最高に素晴らしいという価値観が理解できないのでしょう。

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 2020年7月27日のツイートでは、石原氏はALS(筋萎縮性側索硬化症)にり患した女性に対する医師たちの嘱託殺人事件について

「業病のALSに侵され自殺のための身動きも出来ぬ女性が尊厳死を願って相談した二人の医師が薬を与え手助けした事で『殺害』容疑で起訴された」

と書き、

「武士道の切腹の際の苦しみを救うための介錯の美徳も知らぬ検察の愚かしさに腹が立つ。裁判の折り私は是非とも医師たちの弁護人として法廷に立ちたい」

と殺人医師たちを弁護しました。

 

 そもそも、業病というのは悪業の報いでかかる難病のことで、病人に対する最低の侮辱の言葉です。

 石原氏が人としても、言葉を使う作家・文学者としても最低であることは明白です。

 そして、これらの人種差別・女性差別・障害者差別の発言の数々を、「石原節」の一言で片づけていいわけがありません。

 石原氏の生前の言動に対する批判が甘いから、いまだにヘイトスピーチも差別発言も増え続けるばかりなのです。

 

 

  私は

石原失政の象徴「新銀行東京」が地銀グループ傘下へ 権力の濫用を防ぐためには権力の均衡と抑制が必要だ

という記事の中で

「2003年4月、東京都出資の銀行設立を公約に掲げた石原慎太郎氏が東京都知事再選し、自治体による中小企業支援を目的に設立されたのが新銀行東京で、この銀行は地方自治体が初めて設立した銀行でした。

 その石原都政の象徴とも言うべき新銀行東京が、その役目を事実上終える見通しになりました。これが実現すれば、東京都はこの銀行の経営から事実上退くことになります。 最近は黒字に戻したものの、結局将来的にみて、単独で生き残ることは困難と判断したということです。

(中略)

 1000億円もの税金を使って設立した新銀行東京は設立当初から赤字が続き、開業3年目の2008年に400億円を追加出資が必要になりました。

 石原都知事がこのまま潰してしまうとかえって都民に迷惑をかけると主張して、追加出資をすることになってしまったのですが、その際の補正予算案について東京都議会が可決した際、追加出資分を毀損(きそん)させないことを確約させる付帯決議をしたほどでした。

 しかし、その400億円も元の1000億円も、今回の統合でどうなるかは予断を許しません。」

 と書きました。

 

 

 石原都政に見るべき成果などほとんどなく、東京オリンピック招致やカジノ誘致など、だいたいが失政で都民に迷惑をかけたことばかりです。 

 今の石原慎太郎賛美の嵐は想像できず、石原氏の死去の日にはここまで書かなかったのはむしろ悔やまれるくらいです。

 こんな稀代の悪政治家のどこに褒める点などあるでしょうか。

 
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老醜無残石原都知事2 「野田内閣の尖閣国有化は支離滅裂、人気稼ぎ」=黙ってオレに人気稼ぎさせろ

石原慎太郎日本維新の会代表が「核武装の旗を高く掲げ、日本は北朝鮮くらい存在感のある国になる」みたいな

石原失政の象徴「新銀行東京」が地銀グループ傘下へ 権力の濫用を防ぐためには権力の均衡と抑制が必要だ

 

書き出すとキリがなくて、心身共に疲れました。

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ALS嘱託殺人

石原慎太郎氏の差別発言はなぜ繰り返されるのか 「業病」ツイートの根底に優生思想

記者団の質問に答える石原慎太郎元東京都知事=首相官邸で2019年3月11日、川田雅浩撮影

 業病(ごうびょう)とは「前世の悪業(あくごう)の報いでかかるとされた、治りにくい病気。難病」(デジタル大辞泉)。元東京都知事の石原慎太郎氏(87)がツイッターに「業病のALS(筋萎縮性側索硬化症)に侵され自殺のための身動きも出来ぬ女性」と投稿したことへの批判が止まらない。この種の問題発言は初めてではない。毎日新聞の過去記事データベースから物議を醸した発言を探してみたら、出てくる、出てくる、目を疑うような問題発言の数々。なぜ繰り返されるのか。当時、言及された当事者や差別思想に詳しい識者に石原氏の発言に通底するものを語ってもらった。3回シリーズで連載します。【野村房代、牧野宏美/統合デジタル取材センター】<picture>石原慎太郎氏がALS患者の嘱託殺人事件について投稿したツイート</picture>拡大

石原慎太郎氏がALS患者の嘱託殺人事件について投稿したツイート

患者に責任ないのに「悪業の報い」とは

 最初は10年前、「どこか足りない感じがする」と言及された性的少数者から。その前に、今回批判されている問題のツイートを振り返ってみたい。

 石原氏は7月27日のツイートで「業病のALSに侵され自殺のための身動きも出来ぬ女性が尊厳死を願って相談した二人の医師が薬を与え手助けした事で『殺害』容疑で起訴された」と事件を説明。その上で「武士道の切腹の際の苦しみを救うための介錯の美徳も知らぬ検察の愚かしさに腹が立つ。裁判の折り私は是非とも医師たちの弁護人として法廷に立ちたい」と弁護した。

 これにはツイッターで「作家なのに『業病』の意味も知らないのですか」「東京都民としてこんな恥ずかしい知事を持ったことが残念で仕方ありません」「差別をすることは慎太郎さんご自身がこの世に悪い業を積むことです」などと批判の声が相次いだ。一方で2万5000以上の「いいね」がついている。

 ALSの原因には諸説あるが、患者に責任はなく、ましてや「業病」などではない。念のため、医師たちは起訴されていない。「介錯の美徳を知らぬ」と批判された検察はさぞ驚いたに違いない。

同性愛者は「どこか足りない」「遺伝とかのせい」などと

 石原氏の問題発言を振り返るため、過去記事のデータベースを検索してみた。石原氏が3期目の東京都知事だった2010年12月8日付の毎日新聞朝刊の社会面にこう書かれている。<石原知事は7日、同性愛者について「どこかやっぱり足りない感じがする。遺伝とかのせいでしょう。マイノリティーで気の毒ですよ」と発言した。石原知事は3日にPTA団体から性的な漫画の規制強化を陳情された際、「テレビなんかでも同性愛者の連中が出てきて平気でやるでしょ。日本は野放図になり過ぎている」と述べており、その真意を確認する記者の質問に答えた>

 今、読み返しても「足りない感じ」「遺伝とかのせい」という言葉は耳を疑う。性的少数者に関する情報発信をしている一般社団法人「fair」代表の松岡宗嗣(そうし)さん(26)に感想を聞くと「10年たってもそうした人が影響力を持ち、社会的弱者を周縁に追いやっているということに悔しさ、悲しさ、憤りを感じる」と話した。<picture>性的少数者に関する情報を発信する「一般社団法人fair」代表の松岡宗嗣さん=松岡さん提供</picture>拡大

性的少数者に関する情報を発信する「一般社団法人fair」代表の松岡宗嗣さん=松岡さん提供

「優生思想」振りかざす人が権力握る社会とは

 松岡さんはゲイであることをオープンにしながら、性的少数者に関する記事の執筆やメディア出演、講演活動を続けている。石原氏の「業病」ツイートに驚き、その内容を批判するツイートを2度投稿した。

 28日の最初のツイートでは<この人は過去に同性愛についても「どこか足らない、遺伝とかのせい」とも「女性が生殖能力を失っても生きるのは無駄で罪」とも発言している。悔しいのは、こうした無知で愚かな優生思想を振りかざす人たちが、政治を含む様々な領域で実際に権力を握っているという社会構造>と悔しさをつづった。

 その約20分後の2度目の投稿では<石原氏のような自分の気に入らない者たちを排除したいという確信犯的なものも、"冗談”と言いながらの国家による遺伝子選定すべきツイートも根っこは同じ。そんなに自分と同質な人たちだけが気持ちよく生きられる社会にしたいのかな。でもあなたも一瞬で"選ばれない側"になる可能性も全然あるんだよ>と投げ返した。

 ロックバンド・RADWIMPSの野田洋次郎さん(35)が16日に<大谷翔平選手や藤井聡太棋士や芦田愛菜さんみたいなお化け遺伝子を持つ人たちの配偶者はもう国家プロジェクトとして国が専門家を集めて選定するべきなんじゃないかと思ってる>とツイートしたことを念頭に置いたものだ。

<picture>石原慎太郎氏がALS患者の嘱託殺人事件について投稿したツイートを批判する一般社団法人「fair」代表の松岡宗嗣(そうし)さんのツイート</picture>拡大
石原慎太郎氏がALS患者の嘱託殺人事件について投稿したツイートを批判する一般社団法人「fair」代表の松岡宗嗣(そうし)さんのツイート

同調者いるから繰り返される発言

 松岡さんは、1度目のツイートについてこう解説する。「いずれも『生殖能力』で人の価値を推し量るという点で共通しており、優生思想が根底にある。そうした思想には、誰しもある日突然、マイノリティーになる可能性があり、自分が排除される立場になるかもしれないという想像力が欠けている」

 そしてこの種の発言が何度も繰り返されるのは、同調する人たちがいるからだろう、とも指摘する。松岡さんは講演会などで、「性的少数者は自然に反する。子どもが産めないんだから結婚を認める意味がない」という声をぶつけられることが少なくないという。

 「そうした考えを持つ人は簡単には変わらないが、これからの時代を担う若者世代に広がらないように、社会の多様性や受容、人権問題について少しでも啓発していきたい」と松岡さん。そして「他者が安心して生きられる社会は、巡り巡って自分も生きやすい社会。自分の身に何が起きたとしても、安心安全に生きられる社会を目指すことが大切ですよね」と付け足した。

東日本大震災を「天罰」と 石原氏の過去の発言

 石原慎太郎氏が、これまでどんな発言をしてきたのか、毎日新聞の記事を検索して振り返ってみた。

<picture>胎児性患者の前で深々と頭をさげ、あいさつする石原慎太郎環境庁長官=熊本県水俣市明水園で</picture>拡大
胎児性患者の前で深々と頭をさげ、あいさつする石原慎太郎環境庁長官=熊本県水俣市明水園で

 古くは40年以上前の1977年4月、当時国会議員で環境庁長官だった石原氏は熊本県水俣市を視察した際、水俣病患者から抗議文を渡されたことについて「今あった患者さんたちはIQが低いわけですね」などと発言し、謝罪に追い込まれた。

 都知事に就任した99年9月には、重度心身障害者施設を視察した後の記者会見で、入所者について「絶対に戻らない。放っといちゃ骨折だらけで死んじゃう」とした上で、「ああいう人ってのは人格あるのかね。意志持ってないからね。ぼくは結論出してないんだけども、記者の皆さんどう思うかってさ」と述べた。

これが批判的に報道されると、「曲解された」と主張した。

 まだまだ出てくる。

 00年4月の三国人発言はあまりにも有名だ。陸上自衛隊第1師団の記念行事に出席し、「東京では不法入国した多くの三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返している。大きな災害が起きた時には、騒じょう事件すら想定される」と発言。毎日新聞は発言要旨まで掲載して詳報している。当時抗議活動していた人材育成コンサルタントの辛淑玉(シン・スゴ)さんは「社会の最も弱い構造的弱者を標的に弱い者いじめをしている」と批判し、辞職を求めている。

 さらに翌年には、「ババア発言」が問題になった。「週刊女性」01年11月6日号に掲載された記事で、テレビで対談した大学院教授が言ったこととして「文明がもたらしたもっとも悪(あ)しき有害なものはババァ」「女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄」「きんさん、ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害」などと発言した。

 3期目の10年12月には、記者の質問に対し、同性愛者について「どこかやっぱり足りない感じがする。遺伝とかのせいでしょう。マイノリティーで気の毒ですよ」と発言している。

 東日本大震災が発生した11年3月には「天罰」発言が飛び出した。記者団に「我欲に縛られ政治もポピュリズムでやっている。それが一気に押し流されて、この津波をうまく利用して我欲を一回洗い落とす必要がある。積年たまった日本人の心のあかをね。これはやっぱり天罰だと思う。被災者の方々、かわいそうですよ」と語ったが、批判を浴びて撤回した。

シリーズ2回目は「ババア発言」問題 7月31日に掲載

 2001年11月の石原氏の「ババア発言」では、都内在住の女性131人が原告となって損害賠償や謝罪広告を求めて提訴しています。その原告の一人、お茶の水女子大の戒能民江名誉教授に話を聞きます。

 

 

ALS嘱託殺人

石原慎太郎氏の「相変わらずな」発言にげんなり 「ババア発言」訴訟の元原告

「ババア発言」を批判し、東京・巣鴨でお年寄りに賛同を訴える女性グループ=2002年11月4日

 元東京都知事の石原慎太郎氏(87)が、ツイッターの投稿で難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)について「業病」(前世の悪業<あくごう>の報いでかかる病気)と表現した問題。過去にも繰り返されてきた石原氏の差別的発言を、毎日新聞の記事データベースからたどり、通底する思想を探るシリーズの2回目は、「女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄」とした「ババア発言」だ。当時、「女性の尊厳を否定し、差別と排除をあおる」として損害賠償や謝罪広告を求めて提訴した原告団の一人で、お茶の水女子大名誉教授の戒能(かいのう)民江さん(75)に話を聞いた。【野村房代/統合デジタル取材センター】

「文明がもたらしたもっとも有害なものはババア」

 まずは問題となった「ババア発言」を詳しく見てみたい。2001年11月6日号の「週刊女性」で、当時東京都知事だった石原氏はテレビ番組で対談した大学院教授の言葉として、こう述べている。

 これに対し、02年12月20日に都内在住・在勤の女性119人(のちに131人)が原告となり、石原氏を東京地裁に提訴した。このことを伝える翌21日付の社会面記事は次のように石原氏の反論も書いている。

 この前には、市民団体「石原都知事の『ババア発言』に怒り、謝罪を求める会」が東京・巣鴨周辺で謝罪と撤回を求めるチラシを配り、賛同者を集める街頭活動をしたことも、記事になっていた。

 その18年後に飛び出した、今回の「業病」発言。「相変わらずだな、という印象ですね」。戒能さんはげんなりとした表情で、ため息まじりに話す。戒能さんは、原告弁護団の中野麻美弁護士(東京弁護士会)に声をかけられ、訴訟に加わっていた。

 「当時57歳で、十分ババアだったわけですけども。私自身、それまでに女性蔑視、セクハラ的言動を受ける経験は山ほどありましたから、人ごとではなかった」と振り返る。続いて「個人的に思うのは自由ですが、都知事という政治的責任を伴う立場の人間が、公共の場で、そうした差別的意見を平気で一般化して話す、という問題。そしてそれを許容し、放任している社会の問題を象徴する出来事だったと思うのです」と語る。<picture>戒能民江・お茶の水女子大学名誉教授=東京都千代田区で、町野幸撮影</picture>拡大

戒能民江・お茶の水女子大学名誉教授=東京都千代田区で、町野幸撮影

 損害賠償を求める訴訟だったが、本当の狙いはそこにはなかったという。「個人ではなく、政治的問題だと社会に提起するため。異議を申し立てない限り、なかったことにされてしまう。『あの人だからしょうがない』と許されてしまえば、見えないところ、声を上げづらい立場の人たちへの差別を助長することになってしまうからです」。裁判では意見陳述に立ち、自身の経験も話した。

 「今でも忘れられないエピソードがある」という。50歳ぐらいの時。当時勤めていた大学の同僚で、自分よりもうんと若い男性に「(生理は)あがったんでしょ?」と冗談めかして言われた。「私の価値はそんなもので決まるのか、と思った。今でも言われた時のこと、相手の顔の表情までありありと思い出せます」

 石原氏は発言の中で「半分はブラックユーモアみたいなもの」と語っているが「ジョークとしてなら言ってもいい、ということが男社会ではまかり通っている。言葉の暴力は、肉体的被害を伴っていなければ『そんなことぐらい』と思われがちですが、その傷は予想以上に深く、いつまでも残るものなのです」。

 裁判などの記録をまとめた「131人の女たちの告発」(明石書店)には、20~70代の女性49人による意見陳述書が収められている。「三度の流産の末に子を持つことをあきらめた私の胸に突き刺さる言葉だった」「非婚の私には『かわいそうだね』『少子化に貢献してるね』などという言葉が投げつけられる。33歳だが『ババア』なのか」「石原氏の家庭は誰が守っているのか。妻がいなければ生きていけない老夫だらけではないか」--。石原氏の発言に傷つけられた女性たちの心情がつづられている。

 しかし裁判に石原氏が現れることは一度もなく、1審で原告側の敗訴が確定。その後03年に行われた都知事選では石原氏が圧勝し、2期目も続投した。

 そして、今。戒能さんは「この20年ほどの間に、果たして社会は変わったのでしょうか?」と投げかける。「効率優先、役に立つか役に立たないか、という分断思想。そうした思想はまだ根強くあり、それがやまゆり園事件の被告のような存在を生み出したのではないかと、思えてなりません」

論理を都合良く飛躍

 改めて当時の発言を振り返ってみると、発言の問題もさることながら、そもそも石原氏が「引用しただけ」とした論拠自体にも、誤りがあった。引用された松井孝典東京大大学院教授(当時)はその後、月刊誌「自然と人間」03年2月号のインタビューで「私の言っていることとまったく逆のことだからね。私はこういう言い方はどこでもしたことはないし、おばあさん仮説という理論を私はいろんなところで話しているから、それを見てもらえば分かるでしょう」と反論している。

 「おばあさん仮説」とは、ヒトの女性が生物としては例外的に生殖可能年齢を過ぎた後も長い期間生きることが進化上、どんな意味を持つかを説明する理論だという。生殖能力を失った後も、「おばあさん」は子孫の世話をしたり知恵を継承したりすることで人類の繁殖に貢献し、結果的に文明の発達をもたらした、という趣旨だ。石原氏は、文明の発達によって環境破壊が進んだこととを結びつけ「ババアは地球にとって害悪だ」と論理の飛躍をさせていた。

     ◇      ◇

 最終回は、石原氏に関する著書「石原慎太郎 作家はなぜ政治家になったのか」もある気鋭の政治学者、中島岳志・東京工業大教授に話を聞きます。高齢になってもその価値観から抜け出せず、あえて発信を続けるのはなぜか。そこには石原氏の芥川賞作「太陽の季節」に代表される「健康」な肉体へのこだわりがあるといいます。

 

 

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