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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

放送法4条の「政治的公平」は倫理規定に過ぎず総務大臣の電波停止の根拠にならないことは、放送法改正の時に田中角栄郵政大臣が認めていた。高市早苗大臣の大罪は安倍政権時代に電波停止ができると言ったことだ。

2023年03月09日 | #安倍晋三が諸悪の根源

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 安倍官邸が総務省に圧力をかけて放送法4条1項2号の解釈を変えさせ、放送局の番組全体から判断するのではなく一つの番組の内容からでも、政治的公平性が判断され、総務大臣はその放送局を電波停止処分にできるとした問題。

 この放送法第4条1項の

放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない

一 公安及び善良な風俗を害しないこと

二 政治的に公平であること

三 報道は事実をまげないですること

四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること

という条文が、実は法的義務を生じる法的規範ではなく、単なる倫理的義務を放送局に負わせるだけの倫理規範に過ぎず、電波法の電波停止や放送法の業務停止などの根拠にはならないというのが学会の通説だ、ということを昨日書きました。

 そうでなかったら、放送法4条1項自体が憲法21条1項の表現の自由・報道の自由を侵害するので違憲無効になってしまいます。

高市総務相が放送法4条違反の放送局の電波停止の可能性を明言。これで「行政指導」も取消訴訟の対象に。 - Everyone says I love  you !

是枝監督は作品も識見も本当に素晴らしい。

放送法4条1項2号が定める「政治的公平」規定は倫理規範に過ぎず、その違反をもって総務大臣が放送局を電波停止や業務停止にすることはそもそもできないというのが学会の通説。安倍政権の悪の遺産に騙されるな。

 

 

 このことは、放送法が1959年に改正された当時、当時担当大臣だった田中角栄郵政相も認めていました。

 すなわち、田中郵政相は放送法4条について

「準則および番組審議機関を設けて、放送事業者の自律によって番組の適正をはかる」

「その順守は公衆の批判に任せる」

と答弁しているんですね。

 つまり、放送法4条1項各号が定める番組編集準則は放送局が自主的・自律的に考慮すべき指標であり、それを放送局が守らない場合でも国が強制する法的義務でなく、視聴者が批判して守らせる倫理義務に過ぎないことを、田中大臣は明確に認めたんです。

 以上の通り、放送法4条1項2号の「政治的公平」も、放送事業者の自主的責務である倫理規定にすぎないのです。

「そもそも、政治的公平に関するこの規定(注 放送法4条1項2号のこと)は、当初は選挙放送に関して定められたものであり、かつNHKに関する規定であった。それが、「番組準則」のなかに盛り込まれ、民放の出現後も、ほとんど議論もなく番組の一般原則となったものであり、違憲性の疑いのある規定である。」

「かりに規定自身は憲法に違反しないとしても、それを根拠に放送局が処分の対象になるとすれば、違憲の疑いが極めて濃いため、この規定は、あくまで放送局に対する倫理的義務を定めたもの、とするのが通説となっている」

なぜ放送法4条は倫理規範なのか(どうして総務大臣の電波停止・業務停止は許されないのか)。

 

 

 この解釈は政府でも維持されていたのですが、いわゆる椿事件で、自民党政権は「政治的公平」は法的義務であるという解釈に変更します。

 ちなみに、椿発言とは1993年の総選挙で自民党が過半数割れをしていわゆる「55年体制」が崩壊し、非自民の細川政権が誕生した際に、テレビ朝日の椿貞良報道局長がニュースステーションなどの報道について

「小沢一郎氏のけじめをことさらに追及する必要はない。今は自民党政権の存続を絶対に阻止して、なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないか」

と発言したと産経新聞に報道され、政治的公平に反すると問題になったんですね。

 この報道を受けて、当時の郵政省の江川晃正放送行政局長が緊急記者会見して、放送法4条1項2号に違反する事実があれば電波法第76条にもとづく電波停止もありうると言いだし、この時から政府は放送法4条1項は放送局の法的義務であり、電波停止もありうるという立場に変わったのです。

 まあ、椿発言もたいがいですが、この解釈変更は自民党による自民党のための解釈変更だったのです。

放送の自由: その公共性を問う (岩波新書)

放送法四条1項が放送事業者が自主的・自律的に守るべき倫理規範にすぎないのか、電波法76条の停波処分の対象ともなる強制力のある規範であるのかを、歴史的経緯を詳しく紹介しながら考察したうえで、後説に基づいた処分は、表現の自由を侵害する違憲無効なものとなるとしている。 
 
川端 和治 | 2019/11/21
 

 

 そして、この「政治的公平」を欠くか否かの判断は、その「放送局の番組全体を見て判断される」というのが郵政省→総務省の見解でした。

 ところが、安保法案をゴリ押しして強行採決した安倍晋三首相や磯崎陽輔首相補佐官や高市早苗大臣がTBSやテレビ朝日の報道を不快に思い、特に磯崎氏はTBSの「サンデーモーニング」という番組を問題にしたため、総務省に対して

「一番組の内容」

だけでもその放送局が政治的公平性を欠くとして電波停止処分にできる、と解釈変更させたというのが、今回明るみに出た総務省文書なわけです。

 それ自体が安倍政権の私利私欲で酷い話ですし、一番組の一回の内容だけでも放送局全体の電波を止める可能性があるとなったので、それはそれはテレビ局は萎縮することになりました。

 逆に、フジテレビの番組の安保法案特番では安倍首相が出演して安保法案の必要性と正当性を強調して、他の出演者は特に批判を述べるわけでもなく聞いていたなどということもあったのに、そちらはまるで問題にされないのですから、政治的公平という基準がいかに権力に都合よく、いい加減なものかがわかります。

放送法に関する最高裁判決と通説の通りだ→BPO委員長、首相らの批判に反論 政治介入に「NO」。

 

 

 しかし、そもそも放送法4条1項の規定ができた時から政府もこれは倫理規範に過ぎず、電波停止などの根拠になるわけではないと認めていたのです。

 そしてそれはなぜかというと、総務省が放送の中身を判断して「政治的に公平」でないと判断したら、電波を停止できるだなんて、放送局の報道の自由や視聴者の知る権利という基本的人権を侵害して違憲に決まっているからです。

 先に見た田中角栄大臣の

「準則および番組審議機関を設けて、放送事業者の自律によって番組の適正をはかる」

という趣旨に則ってNHKと民放連が自主的につくったBPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会が2007年に出した決定第1号にこういう下りがあります。

『日本の放送界は、放送法と電波法によって直接に行政の監理下に置かれ、折々に行政指導を受ける、という特殊な環境にある。欧米民主主義国などではどこも、政府から相当程度独立した規制機関が設置されているが、日本の場合、ロシア、中国、北朝鮮などと同様、公権力を監視すべき放送メディアが、公権力によってじかに監理監督される、という状態がつづいている。こうしたいびつな状態を是正していくためにも、放送界がみずからを律し、多様・多彩な放送活動を通じて、視聴者から信頼され、支持されることがますます大切になる。』

 安倍政権下で安倍首相や高市総務相や磯崎首相補佐官がやったことは、日本をさらにロシア・中国・北朝鮮化する暴挙でした。

 放送法4条1項2号の「政治的公平」は放送局の法的義務ではなく倫理的な義務に過ぎず、政府がこれを放送局に押し付けることはできないこと。

 総務省など政府がこれを根拠に放送局に行政指導やまして電波停止処分などをすることはできないのだということを、私たち市民がよくよく肝に銘じなければならないのです。

表現の自由の国連特別報告者ケイ教授が「放送法4条は廃止し、政府はメディア規制から手を引くべきだ」

 

こんなん、なんぼでもありますから。放送法関連記事

放送局の電波停止問題、政府が統一見解を発表。言えば言うほど余計に憲法違反になっている。

TBSがスポンサーに圧力をかけるという「放送法遵守を求める視聴者の会」に対して抗議声明。頑張れ!

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高市早苗氏と放送法

安倍首相が答えられなかった「表現の自由の優越的地位」と、高市総務相の電波停止発言の関係。

高市総務大臣「テロを呼びかける放送は放送法違反だから電波停止にしないと」。いやそれ犯罪だからw

高市早苗総務大臣の「テレビ局に対する電波停止発言」を全く報道しないNHKの異様。

高市総務相が放送法4条違反の放送局の電波停止の可能性を明言。これで「行政指導」も取消訴訟の対象に。

高市早苗さん、三浦瑠麗さん、さようなら!捏造でなければ議員を辞職すると高市氏が言った文書が全部行政文書であることを松本総務相が認める。そして瑠麗氏の夫三浦清志氏は東京地検特捜部が業務上横領容疑で逮捕!

小西議員が公開した文書について「捏造でなければ閣僚・議員を辞職するか」と問われて「結構だ」と答えた高市早苗大臣は、文書が真正でも「その中の自分の発言は捏造だ」と言って議員を辞めない魂胆だ(笑)。

かつて安保法案に反対する放送局は電波停止処分と言った高市早苗大臣が、放送法の解釈を変更するやり取りを記載した総務省内部文書が捏造でなければ「辞職」と言った!

ネオナチ代表と写真を撮ったことで世界的に知られる高市早苗氏は「ヒトラーの選挙戦略」というナチス礼賛本にも推薦状を書いた極右。総務大臣として安保法案に反対する放送局は電波停止と脅迫した最低政治家だ。

 

 

自民党憲法草案起案者のひとり磯崎陽輔氏 関連記事

オウンゴールの神、軽くてバカ丸出しの磯崎陽輔首相補佐官についてもいろいろ書きました。

「自民の党と安倍晋三と不愉快な仲間たち」の戦争法案暴言・珍言・迷場面集。

磯崎陽輔首相補佐官が「関係ない」と言っちゃった法的安定性はなぜ重要なのか。

安倍首相が磯崎補佐官の続投を表明。法的安定性よりアベ晋三とフールファイブの「朋的安定性」の安倍政権。

安倍首相、磯崎陽輔首相補佐官、山本一太議員の3馬鹿トリオで始まる参院の戦争法案審議。

安倍自民党の「日本国憲法改正草案」の恐怖1 緊急事態条項=戒厳令の明記

安倍自民党の「日本国憲法改正草案」の恐怖2 基本的人権規定の内容を削減して極小化し法律で好きに制約

安倍自民党の「日本国憲法改正草案」の恐怖3 軍法会議の設置 

 

 

かように権力に濫用される危険性のある放送法4条に存在価値があるとすれば、それは私たち視聴者が放送局の政治的公平について「その順守は公衆の批判に任せる」という趣旨にのっとって、NHKや民放を監視していくための道具としてです。

政府寄りの情報ばかり垂れ流すテレビ局や、維新べったりの報道を繰り返す関西のテレビ局には、政治的に不公平だとどんどん文句を言っていかなければなりません。

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弁護士・川端和治さん

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 権力は潜在的にテレビ放送の力を自らに有利に使いたい野心を持っています。それを阻まないと放送の「自主・自律」は成り立ちません。日本のニュース番組などは政治の影響を受けやすくなっていないでしょうか。そんな問題意識で、『放送の自由』(岩波新書)を出版したばかりの川端和治弁護士に話を聞きました。
 桐山 国連特別報告者のデビット・ケイ氏が二〇一七年に国連人権理事会にある報告をしました。日本の放送メディアの独立性を強化するため、独立した監督機関を検討する必要がある、などの提案でした。どういう問題点からでしょうか。
 川端 政府が電波法七六条を、放送事業者に放送法四条違反の事案があった場合、総務相は三カ月以内の「停波」、つまり電波停止の処分ができると解釈しているからです。この制度が放送メディアの独立と自由に過剰な制約となっているととらえたわけです。同時に独立した監督機関がないと放送メディアに政府の干渉を受ける可能性が潜んでいると指摘しています。
 桐山 そこに日本の放送メディアの弱点があると見抜いているわけですね。
 川端 確かに現政権になってから放送局への行政指導の回数が増えています。また一六年には、当時の高市早苗総務相が政治的公平性を欠く放送をした放送局の「電波停止」に言及しています。一つの番組の中で公平性を欠いてもだめだと。
 NHKと民放連が自主的につくった「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会の決定第一号にはこんな趣旨の一節があります。「欧米民主主義国には政府から独立した規制機関が設置されているが、日本の場合はロシアや中国、北朝鮮と同様に放送メディアが公権力によってじかに監理監督される状態だ」と。
 桐山 驚きの表現ですね。電波の権限が絡むと、行政の影響も受けやすいでしょう。一例がかんぽ生命保険の不正販売問題です。NHKの「クローズアップ現代+(プラス)」では一昨年に、その問題を番組で扱っていました。第二弾の放送が予定されていたのに遅れました。
 かんぽの親会社である日本郵政側からの抗議があったのですね。そこの上級副社長(当時)は元総務省の事務次官。電波行政を扱う役所ですね。抗議のためか、NHKの経営委員会がNHK会長を厳重注意するという奇妙な結果になりました。
 川端 NHK経営委員会は執行部を監督できますが、会長を厳重注意したなら、その議決があるはずで、その議事録は放送法で公表が義務付けられています。それが一年もたってから議事録ではなく議事経過なるものを公表したのですから…。おかしな出来事でした。
 経営委員会の人事は両院の同意が必要で、もともとは野党も賛成する人を選んでいました。しかし、「安倍一強」の政治情勢の中では自分好みで、自分の意思を反映してくれる人を選んでいるようです。この経営委員会が会長を任命するので「政権が右というなら、左というわけにはいかない」という会長もでたわけですから。
 桐山 放送と権力との関係は昔からですね。ドイツのナチスがそうですね。ラジオ放送でナチ思想や政策を国民に浸透させました。放送への政治干渉という忌まわしい歴史の教訓です。
 川端 日本でも軍事用として電波が使われ、太平洋戦争下ではあらゆる戦争の報道が大本営に統括されます。戦果の捏造(ねつぞう)が行われ、放送は戦意高揚のプロパガンダの手段となりました。
 桐山 権力には放送の力が有効だったかが分かります。戦後にできた放送法の理念はどうだったのでしょう。
 川端 政府首脳や官僚に戦中の放送に対する反省がありました。占領軍は軍国主義体制や封建思想を除去するため、ラジオ放送を使います。実はこのときも検閲があったのです。一九四七年に新憲法が施行されたとき連合国軍総司令部(GHQ)が当時の逓信省と日本放送協会に放送法案の根本原則を伝えました。放送の自由、不偏不党、政府から独立した機関による監督などの重要な原則です。
 川端 五〇年に成立した放送法は、国会で政府案が修正され「公安を害しないこと、政治的に公平であること、報道は事実を曲げないですること、意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」-。この四原則をもってNHKも民間放送も規律することになります。この番組編集準則は後に「公安」の部分が「公安及び善良な風俗を害しないこと」に変わっています。
 桐山 放送法四条ですね。問題はこの番組編集準則が放送事業者に対する法的義務であるかのように政治家が認識していることです。
 川端 放送法の五九年改正当時、田中角栄郵政相は「準則および番組審議機関を設けて、放送事業者の自律によって番組の適正をはかる」と答弁しています。「その順守は公衆の批判に任せる」とも。つまり番組編集準則は自主的・自律的に考慮すべき指標ではありますが、法的義務でないことが明確になりました。放送事業者の自主的責務である倫理規定なのです。
 桐山 「政治的に公平」という意味も常に両論併記で、それぞれ平等な時間を配分するということでもありませんね。
 川端 与党の政策評価や野党の主張についての議論を公正に伝えることは、たとえその結果が一方に有利に働いたとしても、公平性や中立性を害したことにはなりません。与党と野党の主張を単に並列しただけでは、有権者が問題を理解したうえで選択するための材料を与えたことにもなりません。時間の量的平等を言うのでもありません。
 桐山 放送法の他に電波法があり、この運用権限は総務相が握ることになっています。これが現在の「放送の自由」の問題につながっていますね。
 川端 放送法四条に違反した場合、電波法の定める「停波処分」の対象になるかという問題ですが、実は立法当時はそういうつもりはなかったのです。立法担当者の回想などにもありません。四条の番組編集準則は倫理規定として立法されたのですから、停波という処分はありえません。しかし「椿発言」問題が起きたとき、政府は解釈を変更して「準則違反があれば電波法による停波処分の対象となる」と明言したのです。
 準則にいう「善良な風俗」も「政治的に公平」もあいまいな規定ですから、政府が何を意味するのかをきめて強制できるということになれば、放送の自由が危機に陥ります。特に報道が「事実を曲げた」かどうかを政府が判断できるというのでは、報道の自由はないに等しいでしょう。
 桐山 倫理規定と考えないと憲法問題にもなりえます。
 川端 番組内容を政府の意向に沿って変更できてはいけません。法的強制力をもっているとするならば「表現の自由」を侵害する違憲の規定でしょう。多くの学説も政府によって準則が強制されるものでないと解しています。
 <かわばた・よしはる> 1945年、北海道生まれ。東京大法学部卒。第二東京弁護士会会長、日弁連副会長を歴任。2007年から18年までBPO放送倫理検証委員会委員長。放送倫理を放送界に定着させた功績が認められ「第9回志賀信夫賞」受賞。近著に『放送の自由』(岩波新書)。
 <「椿発言」問題> 1993年の総選挙で自民党が過半数割れをし、「55年体制」が崩壊した。このときテレビ朝日の椿貞良報道局長が「非自民党政権が生まれるように報道せよと指示した」と発言したと新聞報道され、政治的公平に反すると問題になった。
 
 

 

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1 コメント

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Unknown (怒りの日)
2023-03-10 11:59:03
こんにちは。
姑息で汚ない高市早苗が問題を捏造の有無に矮小化してますが、そもそもあの電波停止発言の時点で議員辞職が適切であったと思われます。
しかし、頭がワルくて腹黒い自民党の政治家が言う通り、個別の番組でも政治的中立を必ず確保しなければならない、というのを適用してみると面白いことになるかもです。
例えば、大阪のテレビ局がやったような「府知事と市長と黒幕にゲストで来ていただきましたー!」みたいな番組をやるときは、「個別の番組でも公平を保つため」、共産党や立憲の府議団長とか市議団長やらを必ず同数で呼び、しかも同じ尺を与えなければならない、となるでしょう。
或いは、どこかのテレビ局が「総理に聞く!」とかいうインタビュー番組を企画したとしたら、総理大臣のインタビューを全体の半分以下に抑え、同じ時間を泉さんだったり志位さんに与えて存分にしゃべってもらわねばなりません。
さらに、終わってしまって久しいですが、「笑っていいとも」のテレホンショッキングに安倍晋三を呼ぶなら、友達の友達として福島瑞穂あたりを同時に呼んで、タモリの横に並んで座ってもらわなくちゃ、ということになるでしょう。まあ、前後でもいいですけど。
アホか、と。
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