NHKの報道番組「クローズアップ現代」でやらせがあったとされる問題で、放送局で作る第三者機関である放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は2015年11月6日、「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を公表しました。
この検証委は弁護士の川端委員長のほか、映画監督の是枝裕和さん、精神科医の香山リカさんら各界の識者で構成し、5月から番組関係者の聞き取り調査などを進めてきました。
問題となった番組は、2014年5月放送の「クローズアップ現代 追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」と、その基になった関西ローカル番組「かんさい熱視線」です。
その番組内で詐欺に関わるブローカーとして匿名で紹介された大阪府の男性が、「NHK記者の指示で架空の人物を演じた」と週刊誌で告発して問題になったのです。
この番組作りのことはひとまず置くとして、今回の意見書の中でBPOは、この番組に関してNHKを厳重注意した総務省と事情聴取した自民党を、
「放送法が保障する『自律』を侵害する行為」
「放送の自由とこれを支える自律に対する政権党による圧力そのものであるから、厳しく非難されるべきである」
などと厳しく批判しました。
BPOが政府・与党を批判するのは極めて異例で、放送業界でつくった第三者機関が権力の介入に強く警鐘を鳴らす形となりました。
このBPOの意見書は、まず総務省が厳重注意の根拠とした放送法4条について
「ここに言う『放送の不偏不党』『真実』や『自律』は、放送事業者や番組制作者に課せられた『義務』ではない。
これらの原則を守るよう求められているのは、政府などの公権力である」
「政府がこれらの放送法の規定に依拠して個別番組の内容に介入することは許されない」
と指摘しました。
少しわかりにくいかもしれませんが、憲法の基本的人権の中核である自由権は、「国家からの自由」が本質です。国家権力こそが最も人権を侵害するからです。
「放送の自由」もまたしかり。テレビ局は夜となく昼となく政府から圧力を受けているからこそ「自粛」するわけです。
BPOが言うように、放送の不偏不党を守るように求められているのは、政府などの公権力である。「何人からも干渉されない」の名宛人は国家権力。まさにその通りです。
古賀茂明氏 フジのレポーターに「戦わないって決めたら、戦う人を追い詰めるために質問するんですか?」
放送法第3条
放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない
放送法第4条
放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
元フジテレビアナウンサー長谷川豊くんに、放送法3条・4条と憲法との関係について教える
この事件で一番問題なのは、自民党が2015年4月にテレビ朝日とともに、NHK幹部を呼び出して説明を求めたことです。テレ朝で問題にされたのは古賀茂明氏が官邸からの圧力を暴露した報道ステーション。
NHKからこのクローズアップ現代が問題にされたのも、今回のやらせだけの問題ではなく、この番組がNHKには珍しく、福島原発事故を追い続けたり、鋭い政権批判をしてきたからでしょう。
この件について、BPOは
「放送法は、放送番組編成の自由を明確にし「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」(第3条)と定めている。
ここにいう「法律に定める権限」が自民党にないことは自明であり、自民党が、放送局を呼び説明を求める根拠として放送法の規定をあげていることは、法の解釈を誤ったものと言うほかない。
今回の事態は、放送の自由とこれを支える自律に対する政権党による圧力そのものであるから、厳しく非難されるべきである。」
と言っていますが、胸がすく思いと言うか、まさにそのとおりです。
ノコノコとでかけていく両局の幹部は本当に情けない。
テレビ朝日とNHKは報道機関である以上、自民党の事情聴取には応じるべきでない。他のマスコミは援護を!
さらに、このBPOの意見書は自民党に対して、
「番組内容に関しては国や政治家が干渉するのではなく、放送事業者の自己規律やBPOを通じた自主的な検証に委ねる本来の姿に立ち戻るよう強く求める」
と訴えました。
また、BPO放送倫理検証委員会の川端和治委員長は会見で
「放送法には政権与党が放送内容に干渉できないと定められているのに圧力をかける、かけたかのように見える。非常に問題」
と話しています。
さあ、ここまで言い切ったBPOに対して、逆に安倍自民党政権や保守系論壇から圧力が加わるのは必至です。
我々市民も、放送局があくまで自分たちで自立・自律して放送の自由を守っていくのを応援していかなければなりません。
追記
BPOは、NHKのこれらの番組については、視聴者に誤った事実を伝えた面は否定できないとし
「報道番組で許容される演出の範囲を著しく逸脱した表現と言わざるを得ない」
と指摘し、NHKの調査委員会が「『やらせ』は行っていない」と結論付けたことは
「視聴者の一般的な感覚とは距離があり、深刻な問題を演出や編集の問題に矮小(わいしょう)化している」
としました。
まさに、
「放送に携わる者自身が干渉や圧力に対する毅然とした姿勢と矜持を堅持できなければ、放送の自由も自律も侵食され、やがては失われる。これは歴史の教訓でもある。放送に携わる者は、そのことを常に意識して行動すべきである」(BPOプレスリリース末文)
というべきでしょう。
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プレスリリース
放送倫理・番組向上機構[BPO]の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は、審議していたNHK総合テレビ『クローズアップ現代』“出家詐欺”報道事案について、「重大な放送倫理違反があった」とする意見(委員会決定23号)をまとめ、2015年11月6日、記者会見を行い、公表いたしました。
■ 概要
NHK総合テレビ『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)と、その基になった『かんさい熱視線』(同年4月25日放送 関西ローカル)は、寺院で「得度」の儀式を受けると戸籍の名を変更できることを悪用した"出家詐欺"が広がっていると紹介。番組で「ブローカー」とされた人物が、演技指導によるやらせ取材だったと告発したのに対して、NHKは「過剰な演出」などはあったが「事実のねつ造につながるいわゆるやらせは行っていない」との報告書を公表していた。
委員会は、NHK関係者のみならず、番組で紹介された「ブローカー」「多重債務者」に対しても聴き取り調査を行った。その結果、2つの番組は「情報提供者に依存した安易な取材」や「報道番組で許容される範囲を逸脱した表現」により、著しく正確性に欠ける情報を伝えたとして、「重大な放送倫理違反があった」と判断した。
その一方で、総務省が、放送法を根拠に2009年以来となる番組内容を理由とした行政指導(文書での厳重注意)を行ったことに対しては、放送法が保障する「自律」を侵害する行為で「極めて遺憾である」と指摘した。
■ 委員会の判断~重大な放送倫理違反があった
放送の自主自律を確保するために、NHKが自ら定めた「放送ガイドライン」(以下、ガイドラインという)では、「2 放送の基本的な姿勢」の冒頭の「1.正確」で、次のように規定している。
●NHKのニュースや番組は正確でなければならない。
正確であるためには事実を正しく把握することが欠かせない。
しかし、何が真実であるかを確かめることは容易ではなく、取材や制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする姿勢が求められている。
●ニュースや番組において簡潔でわかりやすい表現や言い回しは必要だが、わかりやすさのために、正確さを欠いてはならない。
●番組のねらいを強調するあまり事実をわい曲してはならない。
ところが、審議の対象とした2つの番組の相談場面は、ブローカーの活動実態をはじめとして、事実とは著しく乖離した情報を数多く伝え、正確性に欠けており、上記の規定にことごとく反していると言わざるを得ない。
記者は、相談場面を構成する事実を正しく把握していなかっただけでなく、取材や制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする姿勢に欠けていた。
相談場面は、旧知の2人のやりとりを「隠し撮り」ふうに取材しているが、これは番組のねらいを強調するあまり事実をわい曲したものだった。
さらに、ガイドライン「4 取材・制作の基本ルール」の「2.取材先との関係」には、次のようにある。
●取材相手との関係においては、常に放送倫理や公平・公正な放送を意識し、節度ある距離を保たなければならない。
今回の相談場面の取材に関する記者の対応は、裏付け取材などもせずに懇意の取材先の情報に依存し、しかも相談場面の撮影の段取りもすべて情報源の取材先に委ねてしまった点で、取材先との節度ある距離を保てず取材者としての自律性を失っており、この規定に反している。
加えて、ガイドライン「4 取材・制作の基本ルール」の「1.企画・制作」の冒頭には次のようにある。
●番組の提案にあたっては、(中略)提案の内容について担当者の間で議論を尽くし、制作にあたっては共通の認識を持つことが大切である。
この一文には、番組制作にあたって、現場での議論と共通認識がおろそかとなることに自戒を促す意味が込められている。今回の制作過程では、スタッフ間で率直な対話を欠き、相互に健全なチェック機能が働かなかった点でこの規定に反していると言えよう。
以上のことから、委員会は、審議の対象とした2つの番組にはいずれも重大な放送倫理違反があったと判断する。
■ おわりに
戦後70年の夏、多くの人々が憲法と民主主義について深く考え、放送もまた、自らのありようを考えさせられる多くの経験をした。
6月には、自民党に所属する国会議員らの会合で、マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番、自分の経験からマスコミにはスポンサーにならないことが一番こたえることが分かった、などという趣旨の発言が相次いだ。メディアをコントロールしようという意図を公然と述べる議員が多数いることも、放送が経済的圧力に容易に屈すると思われていることも衝撃であった。今回の『クロ現』を対象に行われた総務大臣の厳重注意や、自民党情報通信戦略調査会による事情聴取もまた、このような時代の雰囲気のなかで放送の自律性を考えるきっかけとするべき出来事だったと言えよう。
2015年4月28日、総務大臣はNHKに対し、『クロ現』について文書による厳重注意をした。番組内容を問題として行われた総務省の文書での厳重注意は2009年以来であり、総務大臣名では2007年以来である。NHKが調査報告書を公表した当日、わずか数時間後に出された点でも異例であった。
総務大臣は、厳重注意の理由は「事実に基づかない報道や自らの番組基準に抵触する放送が行われ」たことであり、厳重注意の根拠は、放送法の「報道は事実をまげないですること。」(第4条第1項3号)と「放送事業者は、放送番組の種別及び放送の対象とする者に応じて放送番組の編集の基準を定め、これに従つて放送番組の編集をしなければならない。」(第5条第1項)との規定だとする。
しかし、これらの条項は、放送事業者が自らを律するための「倫理規範」であり、総務大臣が個々の放送番組の内容に介入する根拠ではない。
放送による表現の自由は憲法第21条によって保障され、放送法は、さらに「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」(第1条2号)という原則を定めている。
しばしば誤解されるところであるが、ここに言う「放送の不偏不党」「真実」や「自律」は、放送事業者や番組制作者に課せられた「義務」ではない。これらの原則を守るよう求められているのは、政府などの公権力である。放送は電波を使用し、電波の公平且つ能率的な利用を確保するためには政府による調整が避けられない。
そのため、電波法は政府に放送免許付与権限や監督権限を与えているが、これらの権限は、ともすれば放送の内容に対する政府の干渉のために濫用されかねない。そこで、放送法第1条2号は、その時々の政府がその政治的な立場から放送に介入することを防ぐために「放送の不偏不党」を保障し、また、時の政府などが「真実」を曲げるよう圧力をかけるのを封じるために「真実」を保障し、さらに、政府などによる放送内容への規制や干渉を排除するための「自律」を保障しているのである。これは、放送法第1条2号が、これらの手段を「保障することによつて」、「放送による表現の自由を確保すること」という目的を達成するとしていることからも明らかである。
「放送による表現の自由を確保する」ための「自律」が放送事業者に保障されているのであるから、放送法第4条第1項各号も、政府が放送内容について干渉する根拠となる法規範ではなく、あくまで放送事業者が自律的に番組内容を編集する際のあるべき基準、すなわち「倫理規範」なのである。
逆に、これらの規定が番組内容を制限する法規範だとすると、それは表現内容を理由にする法規制であり、あまりにも広汎で漠然とした規定で表現の自由を制限するものとして、憲法第21条違反のそしりを免れないことになろう。放送法第5条もまた、放送局が自律的に番組基準を定め、これを自律的に遵守すべきことを明らかにしたものなのである。
したがって、政府がこれらの放送法の規定に依拠して個別番組の内容に介入することは許されない。とりわけ、放送事業者自らが、放送内容の誤りを発見して、自主的にその原因を調査し、再発防止策を検討して、問題を是正しようとしているにもかかわらず、その自律的な行動の過程に行政指導という手段により政府が介入することは、放送法が保障する「自律」を侵害する行為そのものとも言えよう。
もっとも、放送が他からの命令や指導によってでなく自由と自律の下で番組の質を維持し向上させるには、不断の自己検証と努力に加えて、放送局の独善に陥らないための仕組みが必要であろう。
そのためにこそ、BPO(放送倫理・番組向上機構)がある。当委員会は、2007年に設置されて以来、番組内容に問題か゛あると判断した場合には、勧告・見解や意見を公表して放送局と放送界全体に改善を促してきたが、これを受けて各放送局は社内議論を深め、正確な放送と放送倫理の向上のための施策を定めるという循環が生まれてきている。
政府もまた、このような放送の自由と自律の仕組みと実績を尊重し、2009年6月以降は、番組内容を理由にした行政指導は行わなかった。今回、このような歴史的経緯が尊重されず、総務大臣による厳重注意が行われたことは極めて遺憾である。
また、その後、自民党情報通信戦略調査会がNHKの経営幹部を呼び、『クロ現』の番組について非公開の場で説明させるという事態も生じた。
しかし、放送法は、放送番組編成の自由を明確にし「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」(第3条)と定めている。
ここにいう「法律に定める権限」が自民党にないことは自明であり、自民党が、放送局を呼び説明を求める根拠として放送法の規定をあげていることは、法の解釈を誤ったものと言うほかない。今回の事態は、放送の自由とこれを支える自律に対する政権党による圧力そのものであるから、厳しく非難されるべきである。
当委員会は、この機会に、政府およびその関係者に対し、放送の自由と自律を守りつつ放送番組の適正を図るために、番組内容に関しては国や政治家が干渉するのではなく、放送事業者の自己規律やBPOを通じた自主的な検証に委ねる本来の姿に立ち戻るよう強く求めるものである。
また、放送に携わる者自身が干渉や圧力に対する毅然とした姿勢と矜持を堅持できなければ、放送の自由も自律も侵食され、やがては失われる。これは歴史の教訓でもある。放送に携わる者は、そのことを常に意識して行動すべきであることをあらためて指摘しておきたい。
■委員会決定の全文はこちら
http://www.bpo.gr.jp/?p=8322&meta_key=2015
<参考資料>
「放送倫理検証委員会」運営規則
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=903
■放送倫理・番組向上機構 概要
名称:放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送事業の公共性と社会的影響の重大性を踏まえて、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを
目的とした非営利・非政府の団体。言論・表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、
放送への苦情や放送倫理上の問題に対応する独立した第三者機関で、民放連およびNHKによって設置され、
以下の三委員会から構成される。
委員会: 放送倫理検証委員会
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)
放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)
住所 : 東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館
理事長: 濱田 純一
URL : http://www.bpo.r.jp/
PR TIMESプレスリリース詳細へ
放送への圧力と自民党を批判 BPO検証委員会
[2015年11月6日20時7分]
NHKの報道番組「クローズアップ現代」でやらせがあったとされる問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は6日、「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を公表、その中でNHKを厳重注意した総務省と事情聴取した自民党を「極めて遺憾」「圧力そのもの」などと厳しく批判した。BPOが政府・与党を批判するのは極めて異例で、放送業界でつくった第三者機関が権力の介入に強く警鐘を鳴らすかたちとなった。
意見書は、総務省がNHKに文書で厳重注意したことを「政府が個別番組の内容に介入することは許されない」と非難。自民党がNHK幹部を呼び出して説明を求めたことを問題視した。その上で「番組内容に関しては国や政治家が干渉するのではなく、放送事業者の自己規律やBPOを通じた自主的な検証に委ねる本来の姿に立ち戻るよう強く求める」と訴えた。
一方、番組については、視聴者に誤った事実を伝えた面は否定できないとし「報道番組で許容される演出の範囲を著しく逸脱した表現と言わざるを得ない」と指摘。NHKの調査委員会が「『やらせ』は行っていない」と結論付けたことは「視聴者の一般的な感覚とは距離があり、深刻な問題を演出や編集の問題に矮小(わいしょう)化している」とした。
検証委の川端和治委員長は記者会見で「番組はNHKのガイドラインにことごとく違反している。政権与党の事情聴取は一定の強制力があり、問題視した」と話した。
NHKは「指摘を真摯(しんし)に受け止め、信頼される番組作りに当たっていく」とコメントした。
検証委は弁護士の川端委員長のほか、映画監督の是枝裕和さん、精神科医の香山リカさんら各界の識者で構成。5月から番組関係者の聞き取り調査などを進めてきた。
問題となった番組は、昨年5月放送の「クローズアップ現代 追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」と、その基になった関西ローカル番組。番組内で詐欺に関わるブローカーとして匿名で紹介された大阪府の男性が「NHK記者の指示で架空の人物を演じた」と週刊誌で告発した。
クローズアップ現代をめぐっては、BPO放送人権委員会も審理対象にしている。(共同)
毎日新聞 2015年11月06日 21時40分(最終更新 11月07日 02時50分)
NHK報道番組「クローズアップ現代」のやらせ疑惑の問題で、NHKと日本民間放送連盟による第三者機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会(委員長・川端和治弁護士)は6日、「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を公表した。
その中で、この問題をめぐって放送に介入する政府・与党の動きが見られたことから「放送の自由と自律に対する圧力そのもの」と厳しく批判。BPOが政府・与党を批判する意見書を出すのは極めて異例。政治による放送への介入を許さない立場を示した。
問題の番組は、昨年5月14日に放送した「出家詐欺」の特集。多重債務者が、ブローカーを介して出家の儀式を受けて名前を変え、融資などをだまし取る詐欺の手口を伝えた。放送後、ブローカーとして登場した男性が「やらせだった」と訴えていた。
BPOの意見書は「記者が積極的に演技をさせて事実に見せかけたという意味での『やらせ』があったとは言い難い」とした。一方で「NHKのやらせの概念は視聴者の一般的な感覚とは距離があり、問題を矮小(わいしょう)化している。放送倫理の観点から自己検証すべきだった」と断じた。その上で、記者が裏付け取材をせずに男性をブローカーとして番組に登場させ、男性が登場した場面を隠し撮りに見せるなどして「報道番組で許容される演出の範囲を著しく逸脱した」ことから、重大な放送倫理違反があったと結論付けた。
また、自民党国会議員らの6月の会合で「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい」との発言があったことなどを「圧力」の例として列挙。高市早苗総務相が4月末、NHKを厳重注意したことも問題視した。放送局側にも「干渉や圧力に対する毅然(きぜん)とした姿勢と矜持(きょうじ)を堅持できなければ、放送の自由も自律も侵食され、やがては失われる」とし、努力を促した。
ただ、NHK内では、来年4月の番組改編期に向け、「クローズアップ現代」の見直しが検討されている。複数のNHK関係者によると、放送開始時からの国谷裕子キャスターを交代させ、放送時間も現在の午後7時半から午後10時に移す案が浮上しているという。
BPOから批判を受けた高市総務相は6日、談話を発表。NHKに対する厳重注意の行政指導について「昨年5月に放送された『クローズアップ現代』の内容が放送法に抵触すると認められたため、放送法を所管する立場から必要な対応を行った」と説明。「放送法の番組基準は(放送事業者が自律的に守るべき)倫理規範ではなく、(拘束力がある)法規範性がある」と反論した。【丸山進、須藤唯哉】
◇第三者の立場示した…音好宏・上智大教授(メディア論)の話
放送事業者が設置した第三者機関で自主的、自律的に番組の問題を議論する健全性を、政府や政権与党が尊重していないことを問題提起した点でBPOの指摘の意義は大きい。政権与党がBPO改革をしばしば求め、総務省がBPOの議論を待たずに厳重注意をしたことを問題視し、圧力に毅然(きぜん)と対応できていない放送局側にも注文を付けており、第三者機関の立場を示した。
◇クローズアップ現代の「やらせ」疑惑◇
NHKの報道番組「クローズアップ現代」が昨年5月14日、多重債務者がブローカーを介して出家の儀式を受け、名前を変えて融資をだまし取る詐欺の手口を紹介した。ブローカーとされた男性が「記者の指示で演じた」と主張。NHKの調査報告書は、「過剰な演出」や「視聴者に誤解を与える編集があった」と結論付けた。やらせは否定した。
後藤洋平、滝沢卓、佐藤美鈴
2015年11月6日21時10分 朝日新聞
昨年5月に放送されたNHK「クローズアップ現代」の「出家詐欺」報道の過剰演出問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は6日、意見書を発表した。番組について「重大な放送倫理違反があった」と指摘する一方で、この問題で高市早苗総務相がNHKを厳重注意したことや、自民党がNHK幹部を呼んで説明をさせたことを厳しく批判した。BPOがこうした指摘をするのは初めて。
意見書では、厳重注意の根拠となった放送法を取り上げ、「ここに言う『放送の不偏不党』『真実』や『自律』は、放送事業者や番組制作者に課せられた『義務』ではない。これらの原則を守るよう求められているのは、政府などの公権力である」と指摘。「政府がこれらの放送法の規定に依拠して個別番組の内容に介入することは許されない」と断じた。
さらに、NHKが自主的に再発防止策を検討していたにもかかわらず総務相が厳重注意したことを、「放送法が保障する『自律』を侵害する行為」とした。
意見書に対し高市総務相は「放送法を所管する立場から必要な対応を行った」「最終的な判断は、放送事業者からの事実関係を含めた報告を踏まえ、放送法を所管する総務大臣が行うもの」などとする談話を出した。
意見書ではまた、自民党情報通信戦略調査会がNHKの幹部を呼び番組について説明させたことも「放送の自由とこれを支える自律に対する政権党による圧力そのものであるから、厳しく非難されるべきである」と批判した。
BPO放送倫理検証委員会の川端和治委員長は会見で「放送法には政権与党が放送内容に干渉できないと定められているのに圧力をかける、かけたかのように見える。非常に問題」と話した。(後藤洋平、滝沢卓、佐藤美鈴)
〈放送倫理・番組向上機構(BPO)〉 放送に関わる問題を放送界で自主的に解決するため、NHKと民放が設立した第三者機関。放送における言論・表現の自由を確保しながら、視聴者からの苦情や意見を受けて番組内容を審査し放送局に注文を伝える。番組の向上や虚偽の疑いのある放送に関して議論する放送倫理検証委員会、苦情申し立てを受けて審理をする人権委員会、青少年に対する放送や番組のあり方を審議する青少年委員会で構成される。
よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!
BPOよくぞ言いましたね。
マスコミの幹部や従業員は立場上思っていても言えないこともありますからね。
自分の社会的地位や生活を失いたくないのは人間として生活者としては当たり前なことであって非難する資格は多分だれにも無いでしょう。
そうであるからこそ、例外的な勇気ある抵抗者は讃えられるのですが。
BPOの今回のメンバーやBPOじたいへの圧力や攻撃があるだろうことは目に見えるところですが、何とか何らかのやり方でサポートしたいものです。
以前、日刊ゲンダイのサイトで読んだのですが、イギリスBBCの放送免許だか放送権は、イギリス政府では無くイギリス王室が与えているとのこと。だから、BBCは時の政権に対しても毅然とした批判報道が出来るのだと。
日本のNHKも、関係法制を改正して、政府の脅しを受けず毅然とした政権批判報道を出来るような放送免許の与え方をすべきと思いました。もちろん、民間放送も同様にすべきです。
これは民主党政権時、輿石東議員の発言。
どこの政党も権力を振りかざすのが常套手段
BPO審査員、とくに香山リカ氏に、ネトウヨが猛攻撃を仕掛けてくると思われます。今までもそうでした。
彼女を応援したいが、どんな方法があるのだろう?
(Wikipediaに依る)
公共放送として、信頼されているBBCですが、時の政権からの様々な干渉が無かった訳では無く、例えば、フォークランド戦争の折には、時のサッチャー政権から、客観的な戦況の報道が利敵行為であるとして激しく非難されました。 それに抗して、BBCの労働者は、ストライキで反撃し、私が聴いていたBBCの短波放送のWorld Service も、数日の間、聴取不可能でした。
私の印象では、BBCの客観的報道姿勢は、制度的に保障されたものと云うよりも、個々の報道に携わる人々の努力に依るものと思われます。
報道姿勢も普遍のものでは無く、比較的に公平なものと思える程度のものであり、時と場合に依り変化もあります。 有名な歴史上の出来事では、第二次大戦時の戦況報道は、客観的ではありましたが、連合軍のノルマンデイー上陸作戦時にフランスのレジスタンスへ作戦発起の合言葉を放送しました。
また、冷戦時には、客観的報道そのものが旧ソ連や中国の反感を増幅し、ロシア語や中国語の海外放送は、激しい妨害電波で聴取不能になりました。
でも、南ベトナムでの紛争等では、敵味方ともに、BBCの短波放送を聞いていたそうです。
因みに、英語の短波放送では、俗に、BBC English(BBC 英語)と呼ばれるアクセントで、子音が強くて、語尾が明瞭で、一語、一語、明確な発音で、イントネーションが激しく上下しました。 これは、短波放送では、フェーデングと呼ばれる、音声の強弱が出来る現象が起きるので、聴取者が容易に理解出来得るようにアナウンサーが発音を明瞭にしたからですし、もともと英国英語は、米語と違い、イントネーションが豊かなのが理由です。
ニュースの放送は、機械のような英語で、十年程の間で、一度のみアナウンサーが咳をして、御詫びを述べたのみで、その他の読み誤り等は、全くありませんでした。
短波では、ビッグベンのゴォ―ンと鳴る鐘の音に続き、時刻と“BBC World Service” と短く放送局名がアナウンスされ、“The News read by ○ ○ ○ ○.”と毎時のニュースとアナウンサー名が告げられるのが通常の放送でした。
香港中継の英語学習番組の放送では、あのバナナラマの曲等を教材にした番組があり面白かったですし、勉強になりました。 米国の教材とは違って、話題は、世界的で、日本を舞台にした英語教材もありましたので、好感が持てました。
今でも、その影響で、バナナラマのファンです。 残念ながら今では、二人になりましたが現役ですよ。
(脱線序に、バナナラマの曲を。 ブログ主様の御職業に因んで、法廷を舞台にした曲です。)
Bananarama - Love In The First Degree (OFFICIAL MUSIC VIDEO)
https://www.youtube.com/watch?v=Iiy5HO4VKEA
○そして幹部がのこのことってのにまた驚かされました。これで報道機関?
○日本には報道の自由が無いんですね。
○これじゃ日本は無法国家ですよ。
> http://lite-ra.com/i/2015/11/post-1658.html
安倍政権の圧力に抗議…BPO委員の是枝監督が政治家の放送介入の実態を暴露!「BPOは政治家の駆け込み寺じゃない」
是枝監督の映画は見たことがないけれど、とくに社会派というわけではなさそうだが、揺るがない人らしい。BPOの人選は、適正に行われてきたのだ。今までは。
この記事の書き手の水井多賀子さんは、このサイトでよく見かける。わかりやすいし、姿勢が好きだ。
リテラに感謝。