
こうやって政府の統一見解が出され、高市総務大臣の発言を補強するとなると、もはや事態はこれまでの「変わった大臣が変なことを言っている」という状態から、「政府がいざとなれば放送局の電波を停止すると言っている」という状態に深刻化したことになります。
政府は2016年2月12日、放送事業者が政治的公平性を定めた放送法違反を繰り返した場合、電波停止を命じる可能性があるとした高市早苗総務相の発言に関し、
「番組全体を見て判断するというこれまでの解釈を補充的に説明した」
とする統一見解を衆院予算委員会理事懇談会に提出しました。
この政府統一見解では、
「政治的公平の判断の際は一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するとした従来の解釈に何ら変更はない」
と指摘し、高市氏が2015年12月に
「一つの番組のみでも政治的公平を確保しているとは認められない場合がある」
と述べたことについては、
「選挙期間中などに特定の候補者のみ取り上げるなど極端な場合は、一般論として政治的公平を確保しているとは認められないとの考え方を示した」
と説明しました。
要は、放送全体を見て公平でないと判断すれば電波を止めるし、一番組だけでも極端な場合は電波を止めるとはっきり言ってしまったのですから、高市発言よりさらに確定的に悪いと言えるでしょう。
しかし、政府統一見解が挙げた選挙期間中に特定の候補のみを取り上げることに関しては、放送法13条が
放送事業者が、公選による公職の候補者の政見放送その他選挙運動に関する放送をした場合において、その選挙における他の候補者の請求があつたときは、料金を徴収するとしないとにかかわらず、同等の条件で放送をしなければならない。
と規定していますから、その放送局で他の候補も同じだけ選挙活動に関する放送をさせればいいのです。
この13条は法的義務を放送局に課するものですから、この条文に違反して他の候補の放送をしない場合には、放送法13条違反で電波停止や業務停止にすればいいのであって、これを公平な放送でないと言って、放送法4条違反で電波停止や業務停止をする必要は全くありません。
高市総務大臣「テロを呼びかける放送は放送法違反だから電波停止にしないと」。いやそれ犯罪だからw
これがもはやテロ(失礼! 笑)。
高市総務相が何度も何度も国会の内でも外でも、公平でない番組を作ると電波停止にする可能性があると言及すると、それが放送局への威嚇になるという効果をもたらしました。
そして、そのとどめに、政府がこれらの発言にお墨付きを与えたのですから、表現の自由、報道の自由に対する圧迫がますます増したことになります。
こうした大臣と政府の言動そのものが、もはや憲法違反というべきでしょう。
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「政治的公平性」解釈で政府統一見解
毎日新聞2016年2月12日 20時39分(最終更新 2月13日 08時14分)

総務省は12日、衆院予算委員会理事懇談会で、放送法の「政治的公平性」の解釈に関する政府統一見解を示した。「一つの番組でなく、放送事業者の番組全体を見て判断する従来の解釈に何ら変更はない」と表明。高市早苗総務相が、一つの番組だけでも放送局に電波停止を命じる可能性に言及したことに関しては「番組全体を見て判断するという解釈を補充的に説明し、より明確にした」と説明した。
その理由を見解は「『番組全体』は『一つ一つの番組の集合体』であり、一つ一つの番組を見て全体を判断するのは当然」と述べた。一つの番組を取り上げて命令する可能性がある事例として、選挙期間中などに選挙の公平性に明らかに支障を及ぼす▽国論を二分する政治課題で一方の見解だけを支持する内容を相当の時間、繰り返し放送する−−を挙げた。
高市氏は12日の記者会見でも「必要な場合、法を所管する立場から対応を行う」と述べ、電波停止を命じる可能性に改めて言及した。高市氏が発言を繰り返すほど野党は「報道機関への介入だ」(共産党の小池晃政策委員長)と反発する構図になっており、自民党の谷垣禎一幹事長は12日の会見で「深入りするとわれわれもやけどする。いい悪いをだれが判断するのか、深刻な問題だ」と指摘。公明党の井上義久幹事長も会見で「法律の『建前』を繰り返し発言するのは、別の効果をもたらす可能性がある」と高市氏に苦言を呈した。
市民団体「放送を語る会」と日本ジャーナリスト会議(JCJ)は12日、高市氏の発言に「憲法が保障する言論・表現の自由に対する許し難い攻撃だ」と抗議し、辞任を求める声明を発表した。【青木純、望月麻紀】
“放送の政治的公平性” 政府が統一見解

それによりますと、「放送法4条で規定された政治的公平性が確保されているかを判断する際には、1つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するとした、従来からの解釈には何ら変更はない」としています。
そして、「『1つの番組のみでも認められない場合がある』などとした高市大臣の見解は、選挙期間中などに、ことさらに特定の候補者のみを取り上げ、選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合などといった極端な場合には、一般論として、政治的な公平性を確保しているとは認められないという考え方を示すものだ」としています。
そのうえで、「高市大臣の見解は、『番組全体を見て判断する』というこれまでの解釈を補充的に説明し、より明確にしたものだ」としています。
一線を完全に踏み越えていますね。
そもそも、その放送局の番組全体であろうが一番組についてであろうが時の政権が「公平」を判断するということ自体が完全間違いです。
「政治的公平」を、その放送局の番組全体で判断するのか個々の一番組の中で判断するのかのかが論点ではないことは明確にされなければならないと思います。
何より一番の問題最大の論点は、政治権力が「政治的公平」なるものを判断して良いのかどうかということであり、言うまでもない良いわけはないのです。
高市大臣の発言や見解は、戦後の日本政治が曲がりなりにも構築して来た報道の自由と政治権力との関係を破壊しようとするものに他なりません。
こういう発想は、「古き良き保守政治家」が健在な頃は自民党内においても「悪い冗談」くらいに受け止められたと思いますが、現在においては日本政治の深刻な脅威であり許すべからざるものだと思います。
いうなら
今俺らが働いて 仕事をして
生きていることも憲法9条第二項
その他の戦力不保持なんだから
違反ですよ。
もっとスジが通ることを
反論してほしいですにゃ。
戦争が軍隊だけでできると
思い込んでる。
その他の戦力って
建設機械も船や車も農業や
産業総ての生産活動も
含みますんでね。
国民を裏切っても、大臣さえ辞職しなくてすます政党、でも、党を裏切ったら議員辞職に追いこむ政党、いっそ、日本労働党とかに改名しては。
日本を取り戻すため、(W.G.I.P.)と(戦後レジーム)から脱却により、今こそ真の独立国として復権を目指すという重大な局面を迎えている。
TBS・テレビ朝日の報道番組は安保法制について、国会審議から決議に至るまで真っ向から異を唱えてきた。 安保法制・憲法改正を潰そうという社論に沿って番組が進行している。 仕組んだ筋書きの論法で、キャスターとコメンテーターが予定した目的の方向に視聴者の心を誘導する。 つまり、視聴者を介在して伝播(国民に感染)することで世論操作しているわけです。 放送界に特有の(洗脳)の手法です。
近年は偏向報道という言葉が使われがちですが、現実を見ると(偏向報道)ではなく、正しくは(誘導報道)というべきなのです。
新聞社には社の持論を説く(社説)があります。 しかし、放送局は放送法により禁じられているにも拘らず、新聞社と双生児とも言える親子関係であるため、放送法の規定を逸脱してしまう・・・放送法第4条に違反した番組編集をしているのです。 限られた電波を許可するので、新聞社説のように言論の自由が無いのは当然であり、(政治的な公平)等は誠実に守られなければなりません。
放送法は単なる注意書きではありません。 違反があれば罰するのも遵法であり、法治国家のあるべき姿です。 TBSのNEWS23では岸井成格氏が長期間に渡って安保法制を廃案に追い込むべき発言をしました。 これを放置するのは、即ち凶悪な犯罪者を捕らえない事なのです。 重大な法律違反なのですから番組降板で済まされることであっては断じてなりません。 法令に基づき、(TBS社長の武田信二 氏・番組責任者・アンカーの岸井成格 氏)の責任を厳正に追及しなければなりません。
元法学部教授のブログ主様どうなんでしょうか
放送法はまだ新しい法だとは知っていますが時代の進化に法が追いつかないのだとすれば法律も変えていかないといけないものなんですかね~
諸外国の憲法や法律も同じように問題を抱えてるのでしょうか・・・
しかし未だに一番影響のあるメディアはTVだと思っているのですが、影響があるからこそTV局は公共の電波を使用している立場上公正に物事を伝えないといけないのであるならば、問題は中立な立場で物事を伝える人が少ない事だとと思うのです。
ニュース番組やワイドショーでよく起こりがちなケースだとは思いますが、司会者がどちらかに寄りすぎるとこういう問題になるんですよね~
司会者の表現の自由はどうするんだという点は困ります。立場上やはり表現の自由より平等な立場を優先するのが名司会者なのかな~と。
TV番組でよくわからないコメンテーターに意見を求め議論するのもいいですが、司会者は局からの指示をで動いているのかや、番組の構成がどのように行われてるのかは無知なので知りませんが、結局のところ今回の問題は一政権から指摘をするのが問題であるならばそれに代わりBPOなり他に何か公平な立場の機関が指摘改善指導を行うようにすればいいのではないかな~と思います。TV局が今まで自由にやりすぎたのかもしれませんが、どうですかね~
その法律は、行政手続法 (平成五年十一月十二日法律第八十八号)です。
此処だけの話で、行政庁の裏話ですが、実に、面倒なのですね、この法的手続は。
何処かのおばさんは、簡単に言われますが、一体、夫々の行政庁で、例えば、行政命令はどれ程出されたのかを御承知でしょうか。
そして、法律に定められた命令の発出までに、どのような手続が要ると思われるのでしょうか。
この国では、諸外国から良く言われるgyouseishidouが殆どなのですよ。 否、だったのですよ。 ところが、行政手続法では、行政指導にも細かく法的規制が加えられたので、今では、調査や、訪問、面談、等と云った相手方との交渉に依り、事案の解決を図り、また、単なる指導と称する実質的行政指導に依る行政目的の遂行を行っている訳です。
あからさまに言えば、法律的措置を行っていれば、公務員がどれだけ居ても業務が遂行出来ません。
従って、おばさんの言われるところの本音は、単なる脅しであり、安倍政権の要望なり、指示なり、談合は、別途、酒と料理を前にして、マスゴミの経営層と記者クラブメンバーとで行われているではありませんか。
実際に行われている事実を別にして架空の論議に喧々諤々と参加するのは、極めて空虚な思いがしますね。
「誘導報道」ですか?
「そこまで言って委員会」で、しょっちゅうやってましたね。(ここ数年見てないので今は知りませんが)
「偏向報道」といい「誘導報道」といい、どうも(自民党風の)憲法改正に反対したり新安保法制に批判的な報道を「偏向」とか「誘導」と仰られているようにしか思えないのですけどね。
自民党風の憲法改正に賛成することは「公平中立」だが、それに反対するのは「偏向」しているのだという考え方自体が一つの「偏向」だと思うのです。
政治というものを考える時「公平中立」Vs「偏向」なんて構図は成り立たないと思いますけどね。
そうではなくて「偏向」Vs「偏向」という構図の方が現実的ではないかと思います。
もちろん、その「偏向」している立場と方向は違うのですが。
ということで、私の考え方にはもちろん偏向がありますし、明智小五郎さんの考え方も別の方向で偏向していると言えるのではないでしょうか?
そのような意見の違いを前提にして「話し合う」と言うのが民主主義というものかなと考えております。