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ヨコハマトリエンナーレ2014

2014-08-17 22:01:40 | 美術[や]
ヨコハマトリエンナーレ2014

 今年もまたヨコハマトリエンナーレの季節がやってきた。今年も、と言っても3年ぶり5回目である。主要な会場は前回と同じ横浜美術館、新港ピア、BankART StudioNYK、その他。連動して黄金町バザール2014も開催中。横トリは歩いて回れる範囲に展開しているので、時間に縛られずにうろちょろできるのがメリット。でもとりあえず各会場を回る無料バスは用意されている。

 今回のアーティスティック・ディレクターは森村泰昌氏、女装してフェルメールの絵のフリをしたりする人だ。そして今年のテーマは「忘却の海」。うっかり忘れたもの、時代の波間に置き忘れられたものに思いを馳せる、という、わかるようなわからないようなテーマ。でもまぁ、テーマとしては割とポイントを搾りやすい方かな。

 というわけで、横浜美術館の正面広場にはヴィム・デルボアの《低床トレーラー》が展示されている。錆びたまま置き去りにされたような巨大トレーラーの抜け殻が不思議な存在感を醸し出している。遠くから見ると錆びたトレーラーだが、近寄ると、きめ細かな模様が現れる。なんだこれは、すげぇなぁと思ってしまいがち。



 そして美術館に入ると馬鹿でかいアクリルの巨大ゴミ箱が目に入る。これはマイケル・ランディの《アート・ビン》というゴミ箱で、失敗した作品や未発表のまま忘れていた作品などを捨ててしまう「忘却の容器」である。ちょうど参加したアーティストらしき人が、階段の上から不要な作品を投げ入れている姿を見た。まだ会期が始まって半月ほどなので、ゴミ箱の下の方に「ゴミ」が溜まっているだけだが、今後満杯になるかもしれない。サイトで随時参加受付をしているようなので、そういえばうちにもゴミのような作品があったなぁ、という人は、参加してみたらよい。※注:ゴミのような家族などは捨てられません



 新港ピア会場で見かけた巨大な物件は、やなぎみわ《演劇公演「日輪の翼」のための移動舞台車》というトレーラー式舞台装置と、大竹伸朗《網膜屋/記憶濾過小屋》。記憶濾過小屋は大竹伸朗の神髄が武装したような、へんてこりんな物件で、忘れたくても忘れられない、忘却不能な精神的遺物といった作品。異常な存在感に引き寄せられて周囲をぐるぐる回りたくなる。



 BankART StudioNYKにある巨大なものは、原口典之の《オイル・プール》。平たい容器に敷き詰められた真っ黒いオイルが、静寂の中で、微動だにしない黒い鏡面となり、天井の梁やライト、柱や窓が映り込み、巨大な穴から下の階を覗いているような錯覚に陥る。ちょっと長く眺めていたい疑似空間。



 黄金町バザール2014は前回より充実しているような雰囲気がした。特徴的な日ノ出竜宮美術旅館があった辺りは商業ビルの建築現場になってしまったので、もうちょっと黄金町寄り高架下の、日の出スタジオから、京急線に沿って黄金町駅近辺まで展開している。ここは展示品を見るだけでなく、元はヤバイ場所だったという狭苦しい展示施設に入ってみる楽しみもある。

 どこの会場にしても、現代アートの集まりなので、面白いものはとっても面白いが、琴線に触れないものは面白くもなんともない、これのどこがアートなの?と思った途端に「忘却の海」に捨てたくなるものもある。そういうものも含めて現代アートなのだからしかたない。何でもかんでも感動できるわけではない。「忘却の海」は広いから、どうでもいい思い出はどんどん忘れてしまおう。「忘却の海」が溢れちゃって足元がゴミのような作品で埋もれてしまう心配はない。それでもゴミのような作品で埋もれたのなら、それはたぶん自分の作品なので一刻も早く《アート・ビン》の参加申し込みをしよう。

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