ざっきばやしはなあるき  

雑記林花或木 Since 2005-01-01 
美術とか映画とかなんとなくぶろぐ 

『屋根裏のラジャー』

2023-12-23 18:41:10 | 映画[や]
『屋根裏のラジャー』

監督:百瀬義行
原作:A・F・ハロルド『ぼくが消えないうちに』

 スタジオポノックの長編アニメ2作目。イマジナリと呼ばれる想像から生まれた存在。物語の中の登場人物が空想した存在という危うい立場の者たちのアニメ。ラジャーは登場人物アマンダの想像から生まれたイマジナリ。「物語の登場人物」というだけで想像上の存在なのに、そいつらが頭の中で考えただけの存在であり、登場人物が忘れてしまったら消える運命だというのだから、その存在、薄すぎるぅぅぅ!と心配しながら見ていた。薄すぎても映画はちゃん濃く進むから心配なかったけど。

 実際、私が子供の頃にもあれこれ想像していた動物やら物質やらあったはずだが、時が経ってしまった今は、それが何だったのかも思い出せない。当然、考えた人(子供)にだけ見えていて、周りの大人には見えないから「マイちゃん、誰と話してるの?」なんていうちょっとホラー染みたセリフも映画や漫画ではお馴染みだ。

 でも子供がそのイマジナリを絵に描いていたらラッキーだ。描いた絵は大人にも見えるから一緒に絵を見ながら「マイちゃん、この首の長い黒い人はだぁれ?」「それはねぇ・・・言ったらダメだって」「誰がダメだって言ってるの?」「ギ・・・ひみつ!」なんていう微笑ましい会話もできるし。

 考えただけの存在っていうと子供だけの特権のようにも思うが、大人でも「小さいおじさん」が見えている人がいるから、まぁ、いろいろと、年齢には関係ないイマジナリはそこかしこに居て、短い一生を元気に駆け回っているのかもしれない。

 登場人物が忘れたら消え去るイマジナリが、自分が消えるのを待っているだけの一生を描いた映画では面白みがないので、悪い奴もやってきて、儚い命が終わりそうで悩んでいるイマジナリを追いかけて悪さをしようと企む。フンダリーケッタリーである。もうすぐ消えるんだからそっとしといてくれ!って言いたくなるよ。




「イマジナリ?」 「そーねだいたいね♪」
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ヤン・シュヴァンクマイエルの映画

2012-01-15 23:08:52 | 映画[や]
ヤン・シュヴァンクマイエル《サヴァイヴィング ライフ - 夢は第二の人生 -》,《オテサーネク - 妄想の子供 -》

 昨年9月に展覧会をやっていたヤン・シュヴァンクマイエルの映画を見た。展覧会でも2010年の作品 《サヴァイヴィング ライフ》 のメイキング映像があっり、資金不足なのでコマ撮りアニメーションを混ぜるんだとか変なことを語っていたので、へんてこな映画だということはわかっていたが、見たらやっぱりへんてこな映画だった。

 夢と現実の二重生活を送る男の困った人生を描いた珍妙な映画だが、見る方もそれなりに困る。ひょこひょこトンチキなアニメが混ざり、ニワトリ男が駆け抜けたり、ヘビが駆け抜けたり、拍手が巻き起こったりするので、シリアスにドキドキしてる暇はない。ちょっと寝た。

 同時上映の 《オテサーネク》 は2000年の作品。子どもの生まれない夫婦の物語。それで気が沈んでいる妻に、夫が人間の形をした木の切り株を与えて慰めようとしたばかりにえらいことになってしまうという珍妙な映画である。珍妙ダブルス。

 グロテスクで不条理なホラー映画という位置づけなのだろうが、そのホラー感覚が、幽霊が出てくるよりも有り得ない違和感を醸し出し、ホラーの始まりと同時に頭がおかしくなる妻がいて、物語はどんどん救いようのない状態に突入して行く。なにはともあれ珍妙であることには間違いない。
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ユメ十夜

2007-01-28 23:58:28 | 映画[や]

ユメ十夜 オフィシャルサイト

 「原作 夏目漱石」という文字列が重々しい10話オムニバス。「こんな夢を見た」で始まる夢の物語なので、まあ、何が起こっても「夢だから」で済むってんで、もう何でもありありのハチャメチャ10話だ。もちろん根底には漱石の原作ネタがあるけれど、それぞれの監督がそれぞれの解釈で、好き勝手に噛み砕いて、好き勝手に消化して、好き勝手に排便したような感じ。だから10話相互にはつながりが無く、静かなストーリーのすぐ後にどんちゃん騒ぎが始まったりアニメが始まったりで一貫性は無い。一貫性は無いが、どれもトンチキのコンコンチキでいかにも夢っぽい雰囲気がして、充分に面白いし、飽きが来ない。そういうわけわからん「夢」らしさが一貫性を持っているとでも言えば言えないこともない。10分程度の作品が10話で1時間40分、エピローグとプロローグとエンドクレジットも入れて1時間50分。もし気の乗らない「夢」だったら10分待ってれば新しい「夢」が始まる。「運慶」には笑った。笑うしかなかったが、これなんかどっちかといえば原作に近いほうだった。本上まなみもよかったが、緒川たまきがかなりポイント高かった。
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ユナイテッド93

2006-08-13 00:50:26 | 映画[や]

ユナイテッド93 オフィシャルサイト

 管制センターの混乱状態とハイジャックされた機内の恐怖や緊迫感が的確に描かれていて凄い。余計なデコレーションを付けずに「その時」に向かってまっしぐらに突き進んで行く、現実的な迫力から目が離せない。トム・クルーズみたいな大スターが出ているわけでもない。それどころか、実際に当日の現場に居合わせた管制官なども出演していて、この再現映画に、より現実味を出している。ひとつの演出として自爆テロの実行犯の心情にも焦点を当てている。犯人たちは自分のやろうとしていることこそ正義と信じて疑わない。そして神に祈る。犠牲者にしてみたら不快極まりないことかもしれないが、これもきっと現実だった。見る前から誰もが判っている結末、せつない映画であるが、命を賭けて犯人に立ち向かった勇士たちの記録でもある。まだ生々しく記憶に残っている9.11テロ事件の映画化ということで、秋に公開予定の「ワールド・トレード・センター」と見比べてみたい。
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妖怪大戦争

2005-08-07 00:27:14 | 映画[や]
妖怪大戦争 オフィシャルサイト

 『妖怪百物語』『妖怪大戦争』『東海道お化け道中』をリアルタイムに見てきた世代だから、このタイトルだけで、気になってしまう映画である。子供のころはそりゃぁワクワクしながら見ていて、なにやら気味悪げな『妖怪百物語』の雰囲気が好きだったし、『妖怪大戦争』はやや大風呂敷を広げすぎて気味悪さが足りないと、子供心にも思ったりもした。

 妖怪が一致団結しちまうとゲゲゲの世界だ。子供向けの娯楽映画だから、もうとっくにスネコスリの見えない歳になってしまっている大人が見ても、妖怪は見えないのかもしれない。そのかわりに「あ、宮部みゆきだ」とか「いまのギャグはすべってる」とか裏方のほうばかり見てしまう。まっ、それはそれで面白いけど。咳き込んで首が落っこちるろくろ首を予告編で見ていたから、だいたいどういうノリの映画かはわかっていたが、やっぱりそのまんまだった。妖怪がタバコ吸ってるし。

 妖怪大戦争というよりも、芸能人お笑いお化け運動会ポロリもあるよ←ねぇよ
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世にも不幸せな物語

2005-05-07 10:21:33 | 映画[や]
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 オフィシャルサイト

 「非常に不愉快な物語」との前置きどおり、気の毒な3人の子供の物語、とはいうもののジュヴナイルだから、それなりに不幸ってだけで、まあこれくらいの不幸な主人公なら、ほかにもいるし、大人向けの目を背けたくなるような不幸な映画ならゴマンとあるし。
 ジム・キャリーは悪い奴に徹していて、爆笑ってほどでもないが、隙間なく繰り出す阿呆な小技が光る。主役は子供たちなんだけど、なんだかんだ言って、ジム・キャリーショーみたいな娯楽映画である。
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