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ざっきばやしはなあるき  

雑記林花或木 Since 2005-01-01 
美術とか映画とかなんとなくぶろぐ 

ピエール・ルメートル「わが母なるロージー」

2025-03-25 18:22:24 | 
ピエール・ルメートル「わが母なるロージー」(文春文庫)2019年

 パリ警視庁、身長145cmのカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ3部作の4作目。なんだって? 3部作の4作目って日本語おかしいだろ! でも3部作の4作目なのだ。

 ①「悲しみのイレーヌ」、②「その女アレックス」、③「傷だらけのカミーユ」の3部作はすでに完了していたが、出版社からの依頼で出来上がった物語だそうで、せっかくなのでカミーユにも出て来てもらおうということになったようだ。

 順番としては②と③の間に起こった事件だそうだ。でもこれだけ読んでも単品として楽しめる。3部作は各々400ページ前後あるのに「わが母なるロージー」は半分の200ページくらいに薄くなっている。だからお試しカミーユしたい人にはいいかもしれない。古書店でも手に入るし。


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ピエール・ルメートル「傷だらけのカミーユ」

2025-02-17 21:10:23 | 
ピエール・ルメートル「傷だらけのカミーユ」(文春文庫)2016年

 身長145cm、パリ警視庁・カミーユ・ヴェルーヴェン刑事3部作の3作目。1作目で精神的にズタズタになってしまったカミーユ。2作目で無理やり捜査に引っ張り出されて気を取り直したカミーユ。3作目でタイトルからして傷だらけのローラ、じゃなくてカミーユって何じゃそりゃ。またしてもダメな邦題だねぇ。

 今回はいきなり強盗事件発生、通りすがりの女性が哀れにもその場を通りかかったばかりに、邪魔するなと死ぬ寸前まで痛めつけられるという暴力描写、たまたまその女性を知っていたカミーユはすぐさま捜査に向かう。初っ端からすごいスピード感をもって物語が走り出す。

 この小説は3章に分かれていて、一日目、二日目、三日目となっている。つまり事件が起きて3日間の出来事が380ページくらいに詰まっている。それだからスピーディな雰囲気なのかな。

 ぜひとも1作目「悲しみのイレーヌ」→2作目「その女アレックス」の順に読むことをお勧めする。関連した事柄もいろいろ出てくるので最悪「その女アレックス」を飛ばしても「悲しみのイレーヌ」は先に読んだ方がいい。「その女アレックス」がつまらないわけではなく、それには独立した凄さがある。だから「その女アレックス」を最初に読んでしまった私が1作目と3作目も読んでみようと思ったわけで。

 1作目にも2作目にも驚くような仕掛けが隠されていたが、もちろん3作目のこれにも、とっておきの仕掛けが待っている。その仕掛けをより楽しむためにも1作目を先に読んでほしい。


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ピエール・ルメートル「悲しみのイレーヌ」

2025-02-06 18:30:03 | 
ピエール・ルメートル「悲しみのイレーヌ」(文春文庫)2015年

 パリ警視庁、身長145cmのカミーユ・ヴェルーヴェン警部、3部作の第1作。でも日本では第2作「その女アレックス」が先に出版されてたようで、私はそんな事情を知らなかったにもかかわらず、多くの読者と同じく第2作を先に読んでしまった。古書店に第2作だけ置いてあったからである。まぬけである。

 そのせいで、イレーヌに何が起こるのかを知っていたので、それがいつ来るかいつ来るかと思いながら読むことになる。それはそれで読むのがつらい。そうでなくても「悲しみのイレーヌ」という邦題はダメだ。イレーヌという人が悲しむ物語だと想像できてしまうから。それに比べれば「その女アレックス」という邦題は問題ない。その女の名前がアレックスというらしいことしかわからないのだから。その女の名前がアレックスだと書いてあるのに実はアシックスだったなんてことではないのだから。

 第2作もそうだったが、残酷で猟奇的な殺人事件の物語なので、読まない方が身のためだ。この本は第一部が400ページ進んで残り50ページほどになって第二部が始まる。なんてバランスの悪い小説だと思いながら読み進むと、あれ? え? なんで? だってそれさっき読んだよねぇ、あれ? どーゆーこっちゃ? おりょりょ・・・という小説である。どうやら2006年に発表されたピエール・ルメートルのデビュー作らしいのだが、ピエール・ルメートル、とんでもないフランス人だ。ア・ザヴジュヴァン!


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ピエール・ルメートル「その女アレックス」

2025-01-26 20:08:53 | 
ピエール・ルメートル「その女アレックス」(文春文庫)2014年

 先日読んだ「僕が死んだあの森」の作者が2011年に書いた殺人サスペンス。パリ警視庁の身長145cmのカミーユ・ヴェルーヴェン警部の三部作のひとつ。文庫が数十円で買えたのでひょいと買ってしまい、事情を知らずに読む順番を間違えたことに途中で気づいた。事件が引き続いているわけではないので大して問題はないが、できれば「悲しみのイレーヌ」を先に読んだほうがいいかもしれない。

 新たに発生した誘拐事件に緊張が走る。ヴェルーヴェン警部は誘拐事件に関する悲しくも苦い過去を持つ。なので、本当は担当したくなかった事件だが、容赦なく捜査に引きずり出されてしまう。誘拐された女性の生死は時間との戦いに委ねられる。警察の捜査と監禁場所との描写が交互に描かれる切迫感。

 しかしこの小説は誘拐事件の解決で終わる物語ではなかった。読み進むに連れて、話はとんでもない方向に舵を切る。えっ?そっち行くのか! と思ったらそんなことになるのか! なんてこった! あぁそうゆうことか! 前情報なしに読んで驚くのにはうってつけの探偵小説。カミーユは決意した。真実よりも正義・・・

 ただし、この小説にはものすごく惨いシーンが多い。ほんわかしている暇がない。惨い話はごめんだ!という人にはお薦めできない。「僕が死んだあの森」は殺人事件が起こった後は、主人公と読者を精神的に追い詰めるような物語だったが、「その女アレックス」は残酷な描写が繰り返され、登場人物と読者を直接痛めつけるような物語だ。



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ピエール・ルメートル「僕が死んだあの森」

2025-01-04 19:28:40 | 
ピエール・ルメートル「僕が死んだあの森」(文春文庫)2021年

 フランスのある村の物語。母と二人で暮らしている12歳のアントワーヌ少年。なにげない日々の営みに溶け込んでいた少年だが、ある日、殺人事件が起こる。ここから先、少年と周囲の人々の人生がガラリと変わる。そこまでは何だかパッと冴えない小説だなぁなんて思いながら読んでいたのに、突然先が気になって気になってしかたなくなる。この少年はどうなるんだ、母はどうなるんだ、隣人たちはどうなるんだ、物理的に精神的に追い詰められる犯人の動揺がずっしりとこびりついたまま最後のページまで不安な読書が終わらない。



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ポリグロット

2024-11-26 20:39:06 | 
 多言語を習得し話す人をマルチリンガルと呼んだり、ポリグロットと呼んだりする。私は英語だけで四苦三十六・八苦七十二しているというのに、多言語習得とはなんたることだ!そんなけしからん本をいくつか読んでみた。勉強法、習得法は様々だが、読み書きだけしていても話せるようにはならないという事は誰もが書いている。並々ならぬ情熱、繰り返し学ぶ忍耐力、学びのセンス、勉強だと思わずに楽しむ余裕などもないと、多国語話者になるのはそんな簡単な事ではないのだろう。だからと言って「ムリムリィ~」って初めから諦めたらそりゃ無理だ。




・「7カ国語をモノにした人の勉強法」
  橋本陽介 (祥伝社黄金文庫) 2018年

 専門は中国文学だが、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、中国語、韓国語を習得した人。話せる外国語を習得する学習方法を細かく書いてある。中国語専門の橋本さんがスペイン語を学ぼうと思ったきっかけは、ガルシア=マルケス「百年の孤独」を原書で読もうと思ったからで、数年がかりで成し遂げたとのこと。
https://www.youtube.com/@橋本陽介-n9t




・「純ジャパの僕が10カ国語を話せた 世界一シンプルな外国語勉強法」
  秋山燿平 (ダイヤモンド社) 2018年

 バラエティ番組にも出たマルチリンガルな人。東京大学薬学部卒。とりあえず200単語と30表現だけ覚えて使いまくろう、と書いてある。とりあえずね、それで10カ国の日常会話が通じるのなら問題ない。そんな感じの勉強法が簡潔に書かれている本。
https://www.youtube.com/@YoheiAkiyama




・「ゼロから12ヵ国語マスターした私の最強の外国語習得法」
  Kazu Languages (SB新書) 2024年

 KazuさんはYouTubeで、いろんな国の人たちとのオンライントークで突然その人の母国語を使った時の相手の驚きや喜びの様子を映した動画を上げている。多国語がポンポン出てくる手際の良さが楽しい。Kazuさんはまだすごく若いので、これからもっと話せる言語は増えて行くだろう。
https://www.youtube.com/@KazuLanguages




・「20ヵ国語ペラペラ 私の外国語学習法」
  種田輝豊 (ちくま文庫) 2022年

 1969年に発行された本の文庫化。戦後、ローマ字を覚えて日本語をローマ字で書けばアメリカ人に伝わると信じていたような少年時代、語学に目覚めて行く自伝が面白い。テープレコーダーを持って映画館に行き、洋画を録音して発音を覚えた、なんてことも書いてある。「※今は著作権侵害です」と編集部の注意書きがあって笑っちゃう。そういう時代だったんだねぇ。




・「50ヵ国語習得法 誰でもできる、いまからでも間に合う」
  新名美次 (ブルーバックス) 2015年

 人種のるつぼニューヨークで眼科医をしている著者、いろんな国の患者が来るので50ヵ国語も話せればどれほど役立ったことか。1994年に「40ヵ国語習得法」を出版していたようなので、その後21年で10ヵ国語くらい増えたことになる。話せる50ヵ国語について表記も含めて細かく書かれている。




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劉慈欣「老神介護」角川文庫

2024-09-27 20:30:25 | 
 「三体」の作者・劉慈欣の短編集。これは7月頃読んだ「流浪地球」と同時に発売したもの。全部で11編が多すぎるから2分冊になったようだ。この本で好きな作品は「地球大砲」だけれど、「流浪地球」も含めた11編の中では「中国太陽」が好き。

 「老神介護」:歳老いてしまった神々を介護しなければならない立場になる人類の話。やおよろずの神どころの数ではない神々が大挙してやってきた。食べ物を恵んでもらおうとする老神が哀れ。

 「扶養人類」:老神介護の続編、神々が語ったヤバい事実に基づいて物語が大きく膨らんで行く。

 「白亜紀往事」:むかしむかし、大きな恐竜と小さな蟻さんがうまい具合に補完し合って共存してた頃の話。うまい具合にいったままならよかったのに、いつの間にかホツレ目が出て全面戦争に突入する話。体格から言ったら恐竜の勝ちなんだけど・・・

 「彼女の眼を連れて」:直接見に行けない人に代わって目だけ預かって旅をする話。

 「地球大砲」:病気になった父親が、医学の発展を期待して人口冬眠、目覚めると息子がなにかまずいことをしたらしく、父親が拘束されてしまう。タイトルからして、そこらへんの街角の物語では済まなそうな予感がするでしょ。



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安部公房「砂の女」新潮文庫

2024-09-10 19:59:37 | 
 古書店のクーポンを使って30円で手に入れた文庫「砂の女」を「箱男」の流れで読んでみた。60年以上前の作品。砂の女というタイトルを見て、心が砂を噛むようなジャリジャリした女の話かと思ったら、ジャリジャリしているのは心じゃなくて体のほうだった。

 主人公が迷い込んだ謎の場所で出会ったのは、毎日砂搔きをしないと埋もれてしまう家に住む女。設定からして常軌を逸している。映画「SAW」とか「Cube」とかを見ている気分になる。この閉塞感がやるせない。

 この作品は安部公房を世界的有名作家に押し上げた重要な作品らしい。結末がどうなったのかは第1章を読めば察しが付く。でも読み進めるうちに、結末がどうなるのかを知りたくて止まらなくなる蟻地獄みたいな小説。映画「砂の女」も見てみたいんだけどなぁ~



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安部公房「箱男」新潮文庫

2024-08-30 20:05:29 | 
 先日映画を見た「箱男」の原作を読んでみた。覗くという行為を日常的に繰り返す男、しかし逆に、他人から覗かれる立場には慣れていない。自分が覗かれるという反対の立場に置かれた場合の精神的混乱が描かれる。とはいえトータルに何だかわかり辛い。軍医殿が出てくるころにはますますよくわからなくなってきた。すべてが曖昧な夢のような妄想のような妙な小説だ。

 女教師のトイレを覗こうとした少年Dのエピソードは独立していてわかりやすい。これは箱男と直接関係はなく、覗き覗かれることをテーマとしたらできあがったようなエピソードだ。こんな複雑な原作を読むと、映画がどれだけ理解し易く作られているかを実感できる。

 登場人物の「中の人」が「これは僕が書いた物語だから、君たちは登場人物にすぎない」とか「あんたたちはぼくの空想の産物だ」とか、「中の人」が著者の立場になるシーンがある。先日読んだ「百年の孤独」も、すべては登場人物メルキアデスの記述だというような表現がされている。堂々巡りみたいな夢落ちみたいな、何かこうカチッとした線が引けない感覚、私はこういう手法はどちらかというと好みではない。ただそれだけで興ざめというわけでもないが。

 虚構と現実の錯綜はいいけれど、その両方をもっと上位の「書いている人・読んでいる人」の目線で語られると、物語のリアルさが薄まる。物語の中の人は置かれた場所で咲きなさいって思う。ちょっと違うかもしれないが、いがみ合って鬼のような眼つきの敵と味方が突然華麗に踊りまくるミュージカルのような。敵が踊り出したら隙だらけだから撃つなら今だぞ!←そんなミュージカルは無い






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ガルシア=マルケス「百年の孤独」

2024-08-22 19:45:07 | 
ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」新潮文庫

 コロンビアの作家ガルシア=マルケスの50年以上前に出版された長編の文庫化、ようやく読み終えた。あとがき・解説を含めて660ページ、長かった、百年の読書。「改行しろよぉ~」とか思いながら読んだブエンディア家の100年の物語。

 読みづらい最大の問題は、百年に渡る一族の名前がややこしいことだ。日本人と違って外国人は親や祖先と同じ名前に「・ジュニア」などを追加したりする命名方法が一般的にある。まさにそれがいやがらせかというほど繰り返される。あの男もアルカディオ、この男もアルカディオ、その男もアルカディオ、あの女もレメディオス、この女もレメディオス、その女もレメディオス。アウレリャノなんか家系図に22人も出てくる。まぎわらしいったらありゃしない。

 家の中の出来事からマコンド村の珍事、国の政治を揺るがす大問題まで、さまざまな事件が巻き起こる。そのあたりは割と真面目腐って書いているのに、油断していると突然、魔法のような奇跡のような珍妙な出来事がボソっと語られる。あれ?そっち系?と戸惑う暇もなく、その珍妙の解説もしないまま改行もしないまま普通の文章が続いて行く。そんなありさまなので読みづらい割に次に何が起こるのか気になってしまう。

 さらに、一族繁栄の物語だから、というわけかどうかは別にして、性行為のシーンがいっぱいいっぱい出てくるのだ。ほんとにいっぱいいっぱい。それだけで50ページくらい行くのではないか、いや数えてないけど。そういうわけで、ラテンの血が騒ぐ物語である。官能小説が好きな人にお薦め、とはいえあとの600ページは読みづらいので、それ目的ではお薦めしないほうがいいかも。



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乙一「サマーゴースト」

2024-07-22 20:43:47 | 
乙一「サマーゴースト」集英社文庫

 線香花火を灯すと現れる幽霊の物語。あれ?つい最近それっぽいの読んだ気がするのだが・・・と思ったら「一ノ瀬ユウナが浮いている」の姉妹作って書いてある。そういうことか。死にたい高校生3人が主人公なので、死にたい情報満載。ゴーストに会いに行くきっかけも、自殺したらどんな感じかを聞きたいという実用的な動機があったから。

 原案・監督:loundrawで、3年前にアニメ映画化されていたなんてことも知らなかった。線香花火で幽霊が出てくる所は一緒だけれど、「一ノ瀬ユウナが浮いている」とは全然ストーリー展開が違うし、「一ノ瀬ユウナが浮いている」より90ページくらい短いので、新鮮な気分であっという間に読み終えてしまった。

 ♪裏飯屋~~~




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劉慈欣「流浪地球」

2024-07-13 20:55:02 | 
劉慈欣「流浪地球」角川文庫

 「三体」の作者・劉慈欣の短編集。この人の小説は大風呂敷を広げたがるから壮大な物語になる。「三体」を読んでしまうと、それ以上広がりようがないことになるが、それでもじゅうぶんに壮大で、ちょっとページをめくれば何万年とかシレっと過ぎていたりする。この中でいちばん好きな作品は「中国太陽」かな。夢があっていい。

 「流浪地球」:太陽の影響で地球が爆発する未来、それに備えて太陽系脱出を企てる地球人。

 「ミクロ紀元」:帰ってみれば怖いカニ、十億分の一に縮んだ人類に出迎えられて。

 「呑食者」:地球を食い尽くす巨大宇宙船がやってくることが判明して慌てふためく地球人。

 「呪い5.0」:ネットに潜む呪いのウイルスとやらが虎視眈々とチャンスを伺う。

 「中国太陽」:人口の太陽を清掃する主人公の波乱万丈のぶっ飛んだ物語。

 「山」:突然海が盛り上がって山になったので登りたくなった男がそこでみたものは。
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乙一「一ノ瀬ユウナが浮いている」

2024-07-09 20:52:15 | 
乙一「一ノ瀬ユウナが浮いている」集英社文庫

 「死んだ彼女は線香花火を灯すと現れる」なんてオビに書いてある、乙一の最新文庫化作品。軽度の乙一ファンなので文庫化されてから読んだり。文庫化されるまで待っていられるくらいだから、市販のお薬で治るレベルだ。

 「死んだ彼女は」とあるように、主人公・遠藤大地の彼女と言っていいかもしれない一ノ瀬ユウナは、本を開くとさっそく死んでしまう。「えっ、もう死ぬのかよ!」と声を出してしまう。普通なら彼女が死んでしまったら、回想シーンや想い出シーンでしか登場できない。

  そんなわけで青春の1ページが悲しみに埋め尽くされてしまった遠藤大地とその仲間の物語が続いて行くのだが、50数ページ過ぎて油断していた頃から乙一イリュージョンがはじまってしまう。そうなるともう一気に読むしかない。このあたりの、日常を掻き回すイリュージョン、ゾワっとする現象、ホロリとさせられるシーンなどのミックスされた乙一青春小説が好き。



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「レ・ミゼラブル 百六景」

2024-02-07 18:08:29 | 
「レ・ミゼラブル 百六景」鹿島茂(文春文庫)

 ヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」は数年前にスマホの青空文庫で読んだ。けっこう長くてしんどかった。昔から「ああ無情」という無情な邦題の本があることは知っていて、読んだような気になっていたが実は読んでいなかった。パンを盗んだばかりに悲惨な人生を送る羽目になるジャン・バルジャンの物語である。だからジャン・バルジャンの名前も知っていた。もしかしたら教科書に載っていたかもしれない。でも内容を知らないから「がんばるじゃん!」とか言ってふざけるのが関の山だった。

 この文庫は小説そのものではなく、ストーリーの重要なシーンの挿絵二百数十枚に対して、物語の内容や当時の社会情勢、作者周辺の話題など、さまざまな説明を加える形で書かれている。480ページくらいある本の左側が全部挿絵になっていて、絵本のような気分で情景を見ながら読める。でもストーリーは飛び飛びに、挿絵に関連する箇所だけ語られているので、「レ・ミゼラブル」本編を読んでからこの本を見たほうがいいと思う。なるほどそうだったのかと裏事情に納得したり、忘れていたストーリー展開を思い出したりするとこができると思う。
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「猫を処方いたします。」

2024-02-05 19:13:08 | 
を処方いたします。」石田祥(PHP文芸文庫)

 体調が悪くて知り合いに教えられた病院に行ってみると、ちょっと不思議な先生から、薬の代わりにを処方されてしまう物語、第一話~第五話。「を10日分出しておきます」なんて言われてを手渡されて治る病気となれば、まぁだいたいメンタル的な悩み事だろうなぁと想像できるが、まさにその通り。人にはいろいろ悩みがある。にもいろいろ悩みがある。そんな人やにお薦めの作品。「を服用して」とか出てくるが、粉にして飲め、みたいなコワい話ではないから安心して服用してください。カバー絵のもかわいいから無理して服用しても大丈夫です。お大事に!
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