ざっきばやしはなあるき  

雑記林花或木 Since 2005-01-01 
美術とか映画とかなんとなくぶろぐ 

春画展

2015-09-20 23:00:17 | 美術[さ]
「春画展 SHUNGA 大英博物館特別出品」@永青文庫


 「安心してください、履いてません!」


 というわけで、本家の日本をそっちのけにして、2年前に大英博物館で開催された春画展がついに元祖の日本でも開催。大きな美術館では尻込みしていたので、細川家が乗り出して永青文庫で開催されることになった。この機会に初めての永青文庫訪問。すぐ近くには丹下健三の東京カテドラルや講談社野間記念館もあり、そっちは行ったことがあるのになんで永青文庫は行かなかったのだろう?というくらい近い。

 建物は白亜の洋館でオシャレな雰囲気。階段を上って4階、3階、2階が展示室となっている。初日はけっこう込み合っていて、こんなに大勢来るとは想定していないような狭い館内なので、これからもっと混んだりしたらどうなるのだろう? 半分くらいは女性客なので、見に行こうかどうしようかと迷っている18歳以上の人は安心して突撃しよう。普通の美術展の春画コーナーなどよりは入りやすいと思う。せっかくのオシャレな洋館なのだが館内は展示室以外も全部撮影禁止になっている。

 展示は前期・後期合わせて版画や肉筆画など全133点、うちにも春画関連の本が5冊くらいあるので、見たことのある物件もちらほら。春信、歌麿、北斎その他いろんな絵師が春画も手掛けていたわけで、浮世絵を知る上では春画も、なかったことにはできないモノなのだろう。絵の中でやってることはエロいのだが、できあがったその絵がエロいかというと、そうでもないモノのほうが多い。ちょっと笑っちゃうモノも多々ある。その最たる原因は、米国人も目を剥いて「おーまいが」と驚くほどの巨大なちんこ。マンガかよ! 現実がそうでないことは皆さんご存知の通り。

 図録を買おうかと思ったら、あまりにも分厚すぎるうえに4000円もするのでやめた。装丁も懲り過ぎで、ちょっと見、何の本なのかわからないようになっているのだが、内容がどうであれ、高いよ・・・

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進化する だまし絵II

2014-08-10 13:31:41 | 美術[さ]
「進化する だまし絵II」@Bunkamura ザ・ミュージアム


 2009年に開催された「奇想の王国 だまし絵展」の続編というわけで、前回出尽くしたので今回はカスだらけかというと、そんなわけでもなく、いろいろな隠し玉がぞくぞく登場し、だまされる心地よさを体感できる。前回たくさんあった浮世絵や幽霊画などは今回は出ていない。

 マグリットが3点、ダリが2点、マグリットの《白紙委任状》は前回来ていたのに今回も来ている。まぁそれだけ、この、樹木を縫うように歩む馬の絵は、だまし絵の基本形みたいな不思議さと判りやすさと、愛しさと切なさと心強さを兼ね備えた優れた作品だということだろう。

 だまし絵展のマスコットキャラとして、定番のアルチンボルド、ゆらゆら動く立体絵画で衝撃を与えたパトリック・ヒューズ、だまし絵日本代表の福田繁雄、だまし絵地球代表のエッシャーなどが相変わらず大活躍。それらに混じって、現代アート展で変なモノを展示する田中偉一郎や、見過ごしがちな小技が得意な須田悦弘なども登場している。

 福田美蘭の《Copyright 原画》は、一見、何が描いてあるのかわからないのだが、あれ? よく見ると、もしや、あいつでは? と思われる、あの有名なキャラっぽいのが見え隠れしている。はっきり描くと夢の国とかいろんな方面から、著作権がうんぬんだからけしからんとか、苦情が出るであろう危なっかしい作品。著作権侵害のセーフかアウトかギリギリのラインを攻めていて面白い。これなどは視覚的トリックというよりも精神的トリックなのかも。そういう意味で言えば、西郷隆盛の肖像や頼朝の肖像なども、実は別人かも、という意味では歴史的だまし絵であると言えないことはないとも言えないようなこともないとは言えるような言えないような。

 この展覧会は兵庫県立美術館、名古屋市美術館に巡回予定。だまし絵展でだまされる訓練をしておけば、オレオレ詐欺やリフォーム詐欺などの凶悪犯罪から身を守ることができる! かどうかはあなた次第です。



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佐伯祐三とパリ、ポスターのある街角

2014-05-10 23:49:30 | 美術[さ]
「佐伯祐三とパリ、ポスターのある街角」@静岡県立美術館


 佐伯祐三の作品58点、その周辺の画家18点、パリの広告29点、その他資料を展示している。佐伯祐三58点は「没後80年展」以来の大量投入。今回はその全てが、大阪新美術館建設準備室の所蔵品。

 初めて見た「蟹」が美味しそう。しかしこのカニは活きが悪いからと捨てられたものをごみ箱から拾い出して描いたものだとか。絵にした途端に活きが良くなってしまったのかに。

 《モランの寺》の絵も5種類並べて展示してある。他には《汽船》、《立てる自画像》、《街角の広告》、《レストラン》、《靴屋》、《郵便配達夫》など、佐伯祐三の名品が揃っている。

 元々、大阪新美術館の構想は佐伯作品の寄贈が契機になったということで、今は日本最大の佐伯コレクションを所蔵しているのだそうだ。新しい美術館は中之島の国立国際美術館のすぐ横あたりに作られるらしいが、いつできるのかはわからない。準備室だけで終わっちゃったりして。
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杉山美術館/六町ミュージアム・フローラ

2013-09-09 20:36:56 | 美術[さ]
 アートテラーとに~さん主催のアートツアーに参加した。今回は「気づいたら美術館を作ってしまっていた人々に会う旅」というタイトルで2館を巡るツアーだった。前から一度来たかった好きな画家の美術館と、独特な建築の美術館の2件でほのぼのとした午後を満喫できた。


杉山美術館

 ひとつめは新小岩にある杉山美術館、見た目は杉山さんち。この美術館は、93年に47歳で亡くなったスペインの画家ホアキン・トレンツ・リャドをメインに展示する小さな美術館。原画は8点所蔵していて、最初に購入した原画《トリニダッド・カンピン嬢》は所蔵する画廊に通いつめて、借金してゲットしたという。1階は本業のための事務所で、2階が展示室となっている。普通の家に見えるが美術館に改築したわけではなく、美術館として建てたものだそうだ。

 リャドは私も好きな画家で、1992年の松坂屋での展覧会や1994年の小田急百貨店での追悼展にも行ったことがある。早世したのが残念な画家である。画風は、色鮮やかで独特な風景画と、徹底的なリアリズムで描く肖像画がある。「ベラスケスの再来」などと呼ばれたこともあり、風景画は一言で言うと、印象派のモネが目を覚ましたような雰囲気。モネが「もー寝る」とか言ってずっと寝てたというわけでもないが、でもやっぱり睡蓮シリーズなども、眠たいイメージがないこともない。そこに目薬を差したような画風はけっこう好き。



六町ミュージアム・フローラ

 ふたつめはつくばエクスプレスの六町駅の近くにあり、白谷建設の社長がコレクター歴6年にして建ててしまった美術館。日本画を中心に洋画を含め約350点を所蔵している。バードウォッチングで花の絵などに興味を抱き絵画を買ったのが最初だそうだ。

 コンセプトが「砂漠のオアシス」というだけあって、建物が個性的で、中央の水盤を囲むようにスロープ状の緑地が作られていて、その下を回遊する形に展示室が造られている。2階は多目的室となっており、お茶や珈琲が飲み放題、文化的催し物の貸室としても機能する。入館料は300円だが、2度訪れると3度目から5度目まで無料になるというスタンプカードなどもあって、近隣の人たちの憩いの場所となっている。

 「地域のシンボル、水と緑のエコハウス」として、鋼柱による柱の見えない設計、震災時の避難施設、バリアフリー、緑化によるヒートアイランド防止、雨水濾過循環による非常時の水確保、太陽光発電・LED照明による節電など、建設業ならではの工夫が随所に施されている、見本市みたいな美術館である。
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「若冲が来てくれました」 in 仙台

2013-04-27 20:48:49 | 美術[さ]
「東日本大震災復興支援 若冲が来てくれました
  プライスコレクション江戸絵画の美と生命」@仙台市博物館


 伊藤若冲などプライスコレクション100点ほどを展示する展覧会が開催中。3/1から仙台市博物館、5/18から岩手県立美術館、7/27から福島県立美術館と、被災地となった東北3県を巡回する。ジョー・プライス氏が東日本大震災の惨状に心を痛めて、被災地の子供たちに元気になってもらおうと考えた展覧会。なので高校生以下は無料で観覧できる。残念ながら私はもう高校は卒業してしまったので無料ではない。

 というわけで仙台に行ってきた。仙台は人生で2度目、大して行ってない。前回行ったのは1990年で、デジカメの無い時代だったのでコンパクトなフィルムカメラを持って行った。写真アルバムを見直したら、伊達政宗像だけはしっかり撮ってあった。

 2006年に東博に来たプライスコレクション。今回のターゲットは子供なので、動物を描いた絵を重点的に展示している。升目描き 《鳥獣花木図屏風》 は目玉品目、あれやこれやの動物だらけで、この展覧会に相応しい絵である。今回はガラスケースの中ではなくて、むき出しかぶりつきで展示されている。今回も若冲の作品は十数点。

 同じ升目描きの若冲の印章が付いている 《白象群獣図》 からの類推で、この作品も若冲の作とされているが、ホントはどうなのかわからないらしい。ほぼ同様な静岡県立美術館の 《樹下鳥獣図屏風》 もあって、どちらも若冲なのか、どちらかは他人の模倣なのか。この 《鳥獣花木図屏風》 には周囲が額縁のように描かれているので豪華な感じがする。仏教の思想とのかかわりがあるというので、きっとこの絵は、涅槃図の釈迦の周りに集まる動物たちを、釈迦目線で描いた絵なのだろう。それにしては呑気にあっち向いて水浴びしている馬もいるけど。

 長沢芦雪 《白象黒牛図屏風》 も大きな作品。屏風からはみ出す巨大な象の背に乗るカラス、巨大な牛の足元でなぜか笑顔の白い仔犬がおちゃめでかわいい。MIHO MUSEUMから国内賛助出品の伊藤若冲 《象と鯨図屏風》 は展示替えで既に無かった。

 森徹山 《松に鶴図屏風》 の鶴の多さには引く。水辺にひしめく大量の鶴、空からはまだまだたくさん飛んできている。でも鶴でよかった、これが全部巨大な虫だったら・・・ それはさておき、この屏風は描きかけの遺作となっている。色付けしている最中に幕府に呼ばれて江戸に行き、なぜかそのまま亡くなったらしい。だから浜辺の鶴の多くは色が付いているが、輪郭だけの怪しげな飛翔物体が白いまま残っている。

 この展覧会の図録は一回り小さなB5サイズで730g、旅人フレンドリーな持ち運び易い手頃感についつい買いたくなってしまう。ちなみにアナザーワールドの図録はA4サイズで1600gもあった。大きければ見やすいのは確かなんだけど、買った後それを持って市内観光とか考えると、ぞっとする、背筋が凍る、血の気が失せる、ホントに軽くてよかった。


 図録には、子供にも分かりやすく振り仮名が付けてある。さらに全作品に「子供向け作品名」というのが付けられている。たとえば 《軍鶏図》→《のし歩くシャモ》、《料理屋梧桐林店頭図》→《レストラン「ごどうりん」》、《簗図屏風》→《ヤナにかかったアユとカニ》、《仏涅槃図》→《<おしゃかさま>がお亡くなりになりました》 などえとせとらなどえとせとら。

 ミュージアムショップには 《鳥獣花木図屏風》 をあしらったグッズがいろいろ。木製のトレイ、ルービックキューブ、Tシャツ、iPhoneケースなどえとせとらなどえとせとら。



 博物館を出ると裏道を登って仙台城跡、例のあの伊達政宗公騎馬像の所へ。


 ここはぜんぜん変わってない、と思ったら、昭忠碑:金鵄像のとびが震災で落下破損したままになっていた。


 ここからは眺めが良く、仙台市内が見渡せる。その眺望の中に小さく白いアレが見えた。




 次の日、アレを見に行った。大観密寺の仙台大観音。高さが100m 展望室が68m 海抜181mの場所に建っている。120mの牛久大仏には届かぬものの、国内第2位を誇る巨大建築仏。1991年に仙台市制100周年を記念して建てられたので100mというわかりやすい単位。牛久大仏と並べてみたい。

 この白衣観音の凄さは、山上でもなく広大な草原でもなく、住宅地に隣接して建っていることで、ちょっと離れた所から見ると、家屋や道路との対比でさらに巨大に見えて喜びも倍増。右手にはドラゴンボールというか宝珠が、左手には67トンの知恵の水が入るという水瓶が。何かに気を取られているのか水瓶は下を向いて、知恵の水ダダ漏れこぼし放題←いやそういうことじゃないが。

 だんだん


 だんだんだんだん


 だんだんだんだんだんだん


 だんだんだんだんだんだんだんだん


 近くなった


 正面の龍の口から中に入る。体内1階には作りがきれいな三十三観音や黒っぽい十二神将が並んでいる。


 ひとまわりしてエレベーターで展望室まで上ると、周囲の小窓から遠景を見ることができる。天気が良ければ大平洋も見えるようだ。展望室からは延々と下まで螺旋階段が続く。1周50mくらいはありそうな螺旋を下りながら、各階ごとに百八体仏を見て回る形式になっている。途中でリタイヤする場合はエレベーターで降りればよい。延々と続く螺旋階段を見ていると飛び降りたくなる人もいるのかもしれないが、2階の上にちゃんと網が張ってあるので成仏はできない。


 建立当時は賑わっていたらしいが、展望室から眼下を見ると、誰も使ってないような広大な駐車場が広がっている。足元には仙台大観音プラザハウスという施設があるが、中には中国工芸品を売っている店がぽつんとあった。そこはかとなく寂しかった。

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始発電車を待ちながら

2013-01-13 12:22:46 | 美術[さ]
「始発電車を待ちながら」@東京ステーションギャラリー

 東京駅復元工事に伴い休館していたギャラリーで、9人の作家による東京駅と鉄道をめぐる現代アートの展覧会をやっている。どんなふうにリニューアルされたのか気になったし、入館料はオープン記念で500円なので、スベってもいいからという気分で入ってみた。結果、スベリ損ねたわけだが。

 パラモデルは青いプラレールを部屋の床、壁、天井いっぱいにつなぎ合わせる単純に分かりやすい作品。国立国際美術館で見た時はレールだけ壁を這っている状態だったが、今回は発泡スチロールで造られた白い山が現れて、黄色い重機やらダンプやらもたくさん登場して、ジオラマ部屋みたいになっている。どこまで増殖するのやら。

 クワクボリョウタの鉄道模型は相変わらず夜の日用品街を走り続けているが、今回はやたらコンパクト版。真っ暗な部屋の中をライトを点けた小さな列車が走ると、壁には日用品の影が大きく映り込み後ろへ後ろへと流れて行く。ザルをくぐりぬける時は部屋中がザルの中のようになる。つかの間の不思議な深夜列車旅行。

 柴川敏之のなんでもかんでも錆びだらけの化石にしてしまう作品。招き猫、携帯電話、トロフィー、蚊取り線香その他もろもろがごわごわの茶色い錆びと緑色の緑青にまみれている。レンガの隙間にシラっと置かれていると色合いが融和して見落としそうな非存在感。駅舎のレンガの所々黒くへこんでいる箇所は「木レンガ」という木製のレンガが空襲で焼けて炭化したものだそうだ。その黒い隙間にさりげなく錆びたアイテムを置いてある。「発掘されたチョメチョメ」という物悲しさと、しょーもない物を錆び色塗装した滑稽さがツボにハマる。

 ヤマガミユキヒロは鉛筆画を展示している。線路のスケッチ、その精密さに感心して眺めていると視界の隅に何やら明かりが瞬くのに気づいた。あっ、背面からライトを当てているのか、と納得し始めた頃、鉛筆画の中を電車が走り抜けた。電車は半透明なので鉛筆画の背景も見えている。まるで幽霊電車のようだ。なんだろうこの違和感から生じる感動は。いつまでも見ていたい後ろ髪引かれる作品である。
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須田悦弘展

2012-11-11 15:08:55 | 美術[さ]
「須田悦弘展」@千葉市美術館

 木彫りで本物そっくりな草花を造る須田悦弘(よしひろ)の個展が千葉くんだりで開催中。作品を展示するためのコンテナのような物まで自作したそうで、ひとりずつ靴を脱いでその中の作品を見て戻るシステム。混雑でもしたらちょっと辛いシステムだ。

 しかし須田氏の得意技は「あえて見逃しやすいところに展示する」という、いたずら小僧的な展示システムである。衝立の裏側にひっそりと咲く花、真っ白い空間の隅っこに舞い落ちた木の葉の欠片、というような意表を突いたディスカバージャパンが今回も随所に仕掛けられていて、それを知っている館内スタッフと、気付かずに通り過ぎる観客の無言の化かし合いバトルが繰り広げられている。出口まで来てなんかこうモヤモヤっとした気分が晴れないのでスタッフに聞いてみたら、やはりひとつ見逃している作品があることがわかり逆戻り。ここかよ! 他の人が群がっていれば気付くだろうが、普通ならここは通過するだろう。通路だし・・・

 須田氏が千葉市美術館所蔵品の浮世絵などから選んで展示する「江戸の美」では、木彫りの草花が競演。屏風絵からハラリと落ちたかのようにポツンところがる花、絵巻物の中の雀が突っつき損ねた米粒、この必然的なコラボレーションは秀逸。というか米粒を実物大に木彫りする須田氏の存在自体が珍しい。

 この美術館は旧川崎銀行千葉支店のビルで、1階にある「さや堂ホール」は高い天井と白い円柱が威厳のある空間を作り出しているが、今回はさや堂ホールでも作品を展示している。作品と言っても小さな木彫りの花なので、しっかり目を見開いて探し出さなければならないが、あまりにもがら~んとした場所なので、それほど見つけ辛くもない。会場内は一部の作品を除き、写真撮影可能となっている。デジカメは忘れずに。


展示するコンテナも自作


さや堂ホールにも作品が隠れている

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空からの眺め ~大江戸八百八町~

2012-05-14 21:41:41 | 美術[さ]
「空からの眺め ~大江戸八百八町~」@浮世絵太田記念美術館

 ブラアキラでお馴染みの謎の学芸員アキラさんが解説する、浮世絵・空からの眺め。この展覧会企画もアキラさんの発案だそうで、きっかけは「空から日本を見てみよう・・・くもじぃじゃ!」が好きだったからというパクリ企画だそうで。とに~さんとの軽妙ゆるゆるな掛け合いも楽しめた。

 ちょっと前に話題になったスカイツリーが描いてある国芳の版画、似たような井戸掘りの櫓が描かれた浮世絵も続々。でも確かに国芳の櫓だけちょっと形態が違っている。

 鍬形斎の《日本名所の絵》はまさに「空から日本を見てみよう」そのものである鳥瞰図。見事にひねりあがった日本列島にそりゃもう小さな文字で市川、相模、沼津、下田、朝鮮などの名所や地名が書かれている。単眼鏡・双眼鏡必携。この絵に影響を受けた北斎が描いた中国全土の鳥瞰図《唐土名所之絵》こちらのほうが文字も大きめで読みやすいが、もうどうでもいいや。
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セザンヌ パリとプロヴァンス

2012-04-22 00:16:29 | 美術[さ]
「セザンヌ パリとプロヴァンス」@国立新美術館

 100%国宝じゃなくて100%セザンヌ、初期から風景、身体、肖像、静物、晩年までセザンヌの作品を約90点展示した個展。展示ルームが変わるたびに壁紙の色合いも変わる。セザンヌ命!という人には見逃せない展覧会だが、スザンヌ命!という人だったらどうなんだかわからん。セザンヌの絵にも、好きな物件とどうでもいい物件がある。やっぱり大原美術館蔵《風景》と諸橋近代美術館蔵《林間の空地》が好き。そして今でも、リンゴの静物を見ると森村泰昌の顔を思い出してしまう。そんなことを考えながら新美術館を後にした。この日「セザンヌは山をどこから描くか」という山口晃の講演会があったことも知らずにorz


《風景》


《林間の空地》

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錯覚美術館

2011-12-04 00:53:00 | 美術[さ]
明治大学 錯覚美術館

 土曜日だけ開いている美術館。土曜日だけというのは錯覚ではない。ワンルームの小さなスペースでいろいろな目の錯覚、脳の錯覚にまつわる展示をしている。写真撮影もOK! 入場無料なので、たまたま土曜日に小川町を通りかかった際に寄ってみるとよい。←かなりハードル高いなぁ


 以前ネットで話題になっていた曲がって見えるポップル錯視↓

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 でもこの錯覚が、数学的に錯視成分を抽出しちゃうと、あとに残った文字列は曲がって見えない、というペテン師みたいな話。曲がって見えるはずの文字列がまっすぐ見えちゃうのが逆にびっくり。錯視成分ってなんなのさ? L-リジンか? チクロか? コチニールか? 数学的って言われたらインド人じゃないのでもうついていけない。





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ジパング展

2011-06-07 00:02:30 | 美術[さ]
「ジパング展」@日本橋高島屋

 31人の現代作家の作品を展示している。山口晃、池田学、束芋、山本太郎などは好きなほう。指江昌克《MOON》も、いかがわしいラピュタみたいな作風で面白い。吉田朗《ボサツ X》 《ボサツ Z》はプラスティックにウレタン塗装したものらしいが、なんか清潔な神々しさを感じるさっぱりした仏像。

 今回いちばんハマったのが上田順平の陶磁器立体作品。《ウラシマピーターパン》 《キンタウルス》 《ツカイノモノ》の3点の大きなものが並んでいる様は脳みそからカビが生えてきそうな変質者感覚満点、会場でばったり遭遇したアートテラーとに~さんもお気に入りのキ印良品。これを玄関に並べておけば押し売りも尻尾を巻いて逃げるにちまいまい。

 土曜日に山口晃トークショーがあったようだが、知らなかった。でもトークショーを知らずに土曜日に行った知り合いは、トークショーは満席で入ることができない上に、トークショーで使っているため6階展示室の作品を見ることさえできなかったという二重苦を体験した貴重な生き証人となったらしい。

 こういう現代アートをデパートでやるのも珍しい。その会場にのこのこと登場したご婦人2人、初っ端にどかぁ~んと現れる鴻池朋子のシャレコーベを見た途端「あぁ、気持ち悪いわ、こんなのばっかり?」と係員の元に駆け戻って苦情、係員も困ったように言い訳していたが、結局2人は入り口から即刻退場した。見てなかったけど当然お金は返してもらっただろう。←無料招待券だろうという意見もあり・・・
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写楽展

2011-05-08 22:26:21 | 美術[さ]
「写楽」@東京国立博物館

 約百四十図、約百七十枚の写楽の作品のあらかたを展示。こんな機会は滅多にない。摺りバージョンによる色合いの違いを比較したり、同じ役者を描いた別の絵師の版画と比較したり、歌舞伎の演目ごとに並べて展示して判りやすくしたりと、展示にも気を使っている。写楽というとやはり「どこの誰だか知らないけれど写楽をみんな知っている♪」という謎の部分が逆に興味を掻き立てる。写楽外人説なんて説もあるようだが、いかにもありそうな話で面白い。それから江戸東京博物館のシンボルマークについて、何も意識していなかったが、写楽版画の役者の目であるという話も今回初めて知った。おおそうだったのか。
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シュルレアリスム展&文化庁メディア芸術祭

2011-02-12 23:58:23 | 美術[さ]
「シュルレアリスム展 - パリ、ポンピドゥーセンター所蔵作品による -」@国立新美術館

 ポンピドゥーセンターは行ったことがないので、新鮮な作品ばかり。タンギーは好きな画家だが、今回のタンギー《岩の窓のある宮殿》は大きくてでらっくす。意味不明な緻密さに心を奪われる。ヴィクトル・ブローネルの作品はほとんど見たことがなかったが、今回はちょこまかとあちこちに出現していて、合計19点見ることができた。なかなか悪くない。

 折りたたんだ紙に1人ずつ絵を描いていって、2人目は先に描いた人の絵は見ずに、描かれた線の位置だけ受け取って続けて好き勝手に描いて行く。3人目は同じように2人目の絵を見ずに線をつなげて描いて行く。こうして4人で描き終えた紙を広げると「なんじゃこりゃ」という変な作品が現れるという《甘美な死骸》というお絵描き遊びが3点。こんな楽しくて馬鹿馬鹿しい遊びをミロ、タンギー、マンレイ、ブルトンなどがやっていたというのが面白い。同じような遊びを「笑っていいとも」でもやっていた。

「文化庁メディア芸術祭」@国立新美術館

 13日まで入場無料でやっているのでついでにさらっと見てきたがけっこう賑わっていた。Googleマップのストリートビュー画像だけをつなぎ合わせて作った映画《NIGHT LESS》、ストリートビューなので10mぐらいずつ画像が飛んでいる。それをくっつけて早送りするとカクカクしながら旅ができる。そこで見つけた人の写っている画像などを繰り返したり静止させたりして、さも意味ありげに作っている。

 クワクボリョウタ《10番目の感傷(点・線・面)》:バケツやゴミ箱、洗濯ばさみなどの日用品で作ったジオラマシティを、照明を付けた鉄道模型が移動すると、壁に現れる日用品の大きな影。それがトンネルのように、鉄橋のように、原子炉のように現れては流れ去る。なんともいえないファンタジックな世界に感動。
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救いのほとけ展

2010-10-16 00:57:15 | 美術[さ]
「救いのほとけ -観音と地蔵の美術-」@町田市立国際版画美術館

 東大寺展に比べたら小ぶりだけれど、版画と仏像という組み合わせの展覧会。前期・後期で展示替えまである。印仏という版画というかハンコというか、そんな小さな刷物から、大きな曼荼羅まで描かれたさまざまな仏。また、そういう印仏などが入れてある木製仏像も数体展示されている。

 《よみうりランド観音》という聖観音の怪しげな名前に笑う。よみうりランドに安置してあるからそう呼ばれているってだけで、聖観音立像はそれなりに立派な姿をしている。

 《法華経普門品》という版画には、天にいる仏様が腕を長くのばして、地上の人を救っている所が描いてある。ロングハンドが天から地へビヨヨ~ンと伸びている絵は初めて見たが、まるで怪物くんである。♪怪仏ランドの王子だぞ♪
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瀬戸内国際芸術祭

2010-10-07 20:30:53 | 美術[さ]
瀬戸内国際芸術祭

【小豆島】
 芸術祭といいながらも、せっかく瀬戸内海まで来たのだから懸案事項をひとつ処理するために小豆島大観音佛師寺に向かった。「フランスのコンテストで一位になった世界一美しい観音様」なんて言われたら一度は見てみたくなる。確かにバランスのとれた姿にさりげない金色のデコレーションが美しい。高さは非公表で推定68mと言われている。

 エレベーターで胸の位置の釈迦殿展望窓に行けて外が見えるが、前後に小窓が3つずつあるだけで外が見えづらい。視界の残念さや内部構造は牛久大仏に似ている。美しさでは小豆島大観音の勝ち、展望視界のよさでは東京湾観音の勝ちかな。

◆小豆島大観音佛歯寺



【直島】
 ベネッセアートサイトとして有名なので、いちばん近くにある地中美術館は整理券が配られるほど大混雑。時間がくるまで次の李禹煥(リーウファン)美術館ベネッセハウスミュージアムを見たりして過ごすことになる。三か所とも安藤忠雄設計による建造物。ベネッセハウスミュージアムは宿泊施設にもなっていて、瀬戸内の絶景が見渡せる高台にある。

◆ニキ・ド・サンファール《象》


 本村周辺は家プロジェクトとして古い家を使用して作品展示をしている。直島でも三本指に入るほどの金持ちだったらしい家に千住博の滝の部屋があったり、元歯科医院だった建物が大竹伸朗の手にかかって「はいしゃ」というとんでも建築になっていたり。さらに直島町役場の外観がヤバい。建築家・石井和紘が古い街並みに調和するように設計したというが、違和感たっぷりで調和しているのかは疑問。なんたら教団の施設かと思った。

◆直島町役場


 最後に宮浦に戻り、大竹伸朗の「直島銭湯」に入った。ちゃんとした大きさの銭湯なのだが、外観内装とも狂喜乱舞、変なモノいっぱい、ゾウの像まで登場してなんだこりゃ状態。風呂に浸かって、体はリフレッシュ、心はラリパッパ。

◆大竹伸朗《直島銭湯》



【女木島】
 瀬戸の花嫁の舞台となった鬼ヶ島、港で鬼がお出迎え。オーテと呼ばれる風除けの石垣が個性的、まるで鬼の城みたい。高さ3~4m、厚み1m、白い花崗岩と黒い安山岩で造られている。海岸にはなぜかリアルモアイも登場、イースター島に再建した時の吊り下げテスト用模刻だそうだ。休校中の女木小学校がギャラリーサイト福武ハウスになっている。

◆風除けの石垣オーテのある風景



【男木島】
 山に張り付くように立ち並ぶ民家、迷路のような小径が絡まり、折り重なる瓦屋根、ふと角を曲がると坂の下に見える海。山の上の神社から瀬戸内が見える。そんな迷路のあちこちに作品を展示している家がある。先週の火災で大岩オスカールの作品は焼失したので見逃してしまったが、井村隆「カラクリン」は交流館の中に復活、機械仕掛けのサカナかな。ここは面白い。いちばん好きかも。

◆男木島:谷山恭子《雨の路地》


◆豊玉姫神社からの眺望


◆井村隆《カラクリン》



 高松に戻ってからせっかくなので、高松城跡のある玉藻公園香川県立ミュージアム高松市美術館もやっつけた。3箇所とも瀬戸内芸術祭パスポートで割引料金になる。おまけにどこもほとんど貸し切り状態。嬉しいやら侘しいやら。香川県立ミュージアムなんか、客がいないからとエスカレーターのスイッチを切ってあり、帰ろうとしたら「あちらのエレベーターをお使いください」って、まあ確かに、節電は大事だよぉ♪。

 香川というと「うどん」、やっぱりあちこちで目に付くうどんの文字、で、現地での食事はこうなった。
1日目: 昼:とろろ昆布うどん、 夜:肉かまたまうどん、 
2日目: 昼:ざるうどん、     夜:カレーつけうどん、 
3日目: 昼:肉うどん、      夜:天ざるうどん、 
帰ったらソバを食べようと心に誓った旅であった。

 3日間で万歩計は63000歩だった。
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