臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

日暦(11月15日)

2016年11月15日 | 我が歌ども
○ 亡き母が踏み台に立ちて巻けば鳴る柱時計の刻むセコンド

○ 広島に原爆落としたエノラゲイ心中ひそかに潜む飛行機

○ いにしへも女同士は妬み合ふ百合子を珠代が嫉む当世

○ かぎりなくかなしきものはアラフォにて妻の失くせし乳房ひとつ 

日暦(11月14日)

2016年11月14日 | 我が歌ども
○ 行円が革の衣を身に纏ひ寄付金あつめて建てた革堂

○ 苔寺のコケの種類は二百余種うそコケほらコケ百二十種だ

○ 今朝もまたイノダの珈琲飲まんとし風の涼しき堺町ゆく

○ 蛇の目傘さす人ちかごろ少なくてとつぴんぱらりと俄か雨降る


日暦(11月13日)

2016年11月13日 | 我が歌ども
○ 瓢亭の朝粥こんなに高値にて何が京都だ六千円也!

○ 棒鱈と芋を煮たのが「いもぼう」か!素通りしよう平野屋本家!

○ 金閣寺焼失せしは敗戦後空襲されぬは存外のこと

○ 三条駅いまだ地上に在りしころ大辻隆弘初キスせしと

○ 黒谷は蓮生法師の墓所法然廟前五輪の塔建つ 

日暦(11月11日)

2016年11月11日 | 我が歌ども
○ スニーピーの右の掌汗ばみて握手する気になれぬ陽溜り

○ 我が顔を映せとばかりに輝きて初霜置けり無花果の葉に

○ 小六の孫ニヒルの表情浮かべたりショパンのエチュード5番弾きつつ

○ 陽水が「最後のニュース」を歌ひ終へ吾らが眠りに就きしあの頃

今週の「朝日歌壇」から(11月7日掲載分・其のⅣ)北方四島以南、本日堂々特出し大公開!乞う、ご期待!

2016年11月10日 | 今週の朝日歌壇から
[永田和宏選]
○ カンパ箱三度も廻る集会で「風に吹かれて」いやほど聴いた  (大和郡山市)四方 護

 大和郡山市にお住まいの四方護さんは、本傑作を通じて、この度ノーベル文学賞を受賞することになったボブ・ディランの「風に吹かれて(Blowin'The Wind)」が、「事ほど左様に流行った名曲であった」と言いたいのでありましょうか?
 それとも、ただ単に「いやほど聴いた」即ち〈飽きるほど度々聴いた〉とだけ言いたいのでありましょうか?
 仮に後者であったとしたならば、〈飽きるほど度々聴いた〉結果、今はどのように思っているのでありましょうか?
 また、件の「集会」で「カンパ箱」が「三度も廻」った事に対しては、どんな思いを抱いているのでありましょうか!
 それはともかくとして、彼のボブ・ディラン氏がノーベル文学賞を受賞することになったのは、近未来小説と称して訳の解らない恋愛小説を書く彼が受賞することよりも、比較にならないくらい有意義なことと思われます。
 何故ならば、件の近未来小説作家は、自作を通じて、私たち平和を愛する人類に積極的にアピールする点が何ら見られないからです。 
 それと比較した場合、ボブ・ディランの「風に吹かれて」は、彼自身が歌うことを通じて、また、彼以外の世界中の歌い手が歌うことを通じて、私たちの宇宙の平和と社会福祉に貢献し、文学の領域を拡大し、文学の奥行を深くする点に於いて、比較にならない程の大きな貢献をしているからです。
 [反歌] カンパ箱三度廻した集会で手にした寄付金百円足らず 


○ 言うほどの仲良し夫婦じゃなかったが逝かれて一年何このさみしさは  (田辺市)池添希伊子

 「言うほどの」とは、「他人がいうほどの」という意味でありましょうか?
 それとも、「自分が口にしているほどの」という意味でありましょうか?
 そのいずれにしろ、「夫婦」の片割れを亡くした後の「さみしさ」は、亡くした者でなければ知ることが出来ません。
 [反歌] 言うほどの夫婦仲ではなかつたが思い出しても虫唾が走る   


○ 「イエスかノーかはっきりさせなけや」と言いながら母は「ノー」を許さなかった  (長崎市)柏原由貴子

 「母は『ノー』を許さなかった」とありますが、相手が血を分けた娘さんだから良かったが、相手が夫であったとしたならば、悲惨なことになりましょう。
 第一に、ようきゅうされる度ごとに「イエス」ばかり言ってたならば、彼の身体が持ちませんよ!
 [反歌] 夜ごと夜ごと「イエス」ばかりの境涯で若死にしたる長崎の人


○ 君の名はと問われ真知子という祖母と三葉と答える孫は仲良し  (西海市)前田一揆

 日本中挙げての「君の名は」旋風には、戦後育ちの私としては呆然としている他ありません!
 あのお定まりのストーリーのドラマの何処がそんなにも宜しいのでありましょうか?
 そのかみの佐田啓二・岸恵子主演の映画「君の名は」は、元を正せば、昭和27年4月10日から29年4月8日に掛けて、毎週木曜の午後8時から午後9時までの30分間、NHKラジオの連続放送劇として放送されていたのでありましたが、その時間帯は、「日本全国の銭湯がガラ空きになった」との伝説さえありました。
 あれから六十数年経った平成の世の、アニメ版「君の名は」ブームの到来には、後宮春樹役の北沢彪氏も氏家真知子役の阿里道子氏も、さぞかし喜んでいらっしゃることでありましょう。
 だが、今回のアニメ版「君の名は」ブームの背景には、〈昨今に於ける我が国の恋愛映画の払底〉という憂うべき事情が在ったのかも知れません。
 他人(ひと)がいい気分になっているのも知らないで、いろいろと七面倒臭いことばっか言ってごめんなさいね!
 [反歌] 佐田が逝き岸が惚けたる今の今なんたる故の「君の名は」ブーム  
     啓二逝き恵子呆けたる今頃に何たる訳で「君の名は」ブーム


○ 数百人が南スーダンで殺されし「戦闘」ならず「衝突」なりしと  (名古屋市)諏訪兼位

 たまたまそうなったのかとも思われますが、本作は、前述の高野公彦選の第三席入選の植田正太郎作とほぼ同内容の作品であり、格別に申し上げなければならないような点は見当たりません。
 それはそれとして、トランプ大統領が現実のものになった今日、彼のアベノミクス及び日米安保の行方や如何!
 彼は昨日、賢しらだって、首尾良く大統領の椅子をせしめたトランプ氏に対して「日米は揺るぎない同盟国」などという、どうでもいい内容の祝辞を送ったそうであるが、そうは問屋は卸しませんぞ!
 [反歌] メキシコに扉立てても問題は解決しないトランプどうする 


○ 都庁から出すな自死者は 願わくば洗い浚いをぶちまけて欲し  (近江八幡市)寺下吉則

 お気持ちは、ものすごくよく解りますが、東京都職員として彼の陰謀に加担した者が、事の真実の「洗い浚いをぶちまけ」るはずはありません。
 それにも関わらず、作者・寺下吉則さんが「都庁から出すな自死者は」と仰り、加えて「願わくば洗い浚いをぶちまけて欲し」とまで仰るのは、あまりにも理想的に過ぎましょう。
 かく申す私などは、「都庁舎の最上階からの投身を危惧して元都知事殿検束必死」などという、ドラマチックな事態を思い描いている次第であります。
 [反歌] 豊洲など問題外の風吹いて石原慎ちやんにんまりとせり


○ 古典基礎勉強すればわかるでしょ?恋って花を手折ることなの  (茅ヶ崎市)川島向日葵

 「恋」は恋でも〈横恋慕〉の場合は、「恋って」他人の「花を手折ることなの」と言うことが出来ましょうが、通常の「恋」が、如何なる理由で以て「花を手折ること」になるのでありましょうか!
 私は、国語教師生活が三十五年の長きを及んで居りますから、我が国の「古典」文学の「基礎」ぐらいは、人並み以上に「勉強」して来たつもりでおりますが、何しろ七十六歳という高齢に達して居りますから、そうした点に就いては理解することが出来ません。
 就きましては、神奈川県茅ヶ崎市にお住まいの本作の作者・川島向日葵さんからご教授賜りたくお願い申し上げます。
 [反歌] 昔なら糸し糸しと言う戀が如何なる故に花を手折つた 


○ 帰るとも行くとも言わぬ旅に出で秋のひと日をふるさとにをり  (ドイツ)西田リーバウ望東子

 ドイツの拠点空港たる〈フランクフルト国際空港〉から〈ルフトハンザ・ドイツ航空機〉に乗ってひとっ飛びすれば、羽田までの所要時間はわずかに十二時間(即ち、半日)足らずでありますから、普段はドイツにお住まいの西田リーバウ望東子さんが、「帰るとも行くとも言わぬ旅に出で秋のひと日をふるさとにをり」といった事態も有り得ましょうか?
 でも、日本生まれでありながら、ドイツに長くお住まいの西田リーバウ望東子さんの場合は、「帰る」とか「行く」とかという言葉の意味が、日本生まれで日本育ちで永久に日本で暮らさなければならない私・鳥羽省三とは少し異なるのではありませんか?
 [反歌] 帰るとも出るとも未だ言わぬのにご仏前を取られてしまつた    


○ 1階と地下1階の間には0階という闇が広がる  (長崎市)牧野弘志

 本作も亦、豊洲市場関連と思われますので、鑑賞は割愛させていただきます。
 [反歌] 真実の闇は工事費や地価にあり政官業の結託にあり   

今週の「朝日歌壇」から(11月7日掲載分・其のⅢ)北方四島以南、本日堂々特出し大公開!乞う、ご期待!

2016年11月09日 | 今週の朝日歌壇から
[高野公彦選]
○ 籠り居る心を街に連れ出せば何人も会う笑顔の天使  (大月市)都倉富士雄

 「籠り居る心を街に連れ出せば」までの表現は作者の手柄であるが、その後の「何人も会う笑顔の天使」という表現はあまりにも能天気な表現である。
 そもそも、この世の中というものはそんなにも善意に満ちたものではありませんし、仮に、たまたま作中主体(=作者)が、自らの引き籠もりがちな「心を街に連れ出」した時に、彼と「会う」の人々の「何人」もが「笑顔の天使」であったとしたならば、それは彼の顔にご飯粒でも付いていたのかも知れません。
 とは言うものの、いつもいつも自室に引き籠もってばかり居ないで、一週間に一度の土曜日ぐらいは、大月駅前通りかそれと交差する甲州街道沿いの繁華街に繰り出したら如何でありましょう。
 先月末に、私・鳥羽省三が足を運んだ時には、ダイエー大月店前の通りを大月短期大学付属高校の女生徒たちが、あの藍色の上着と海老茶色の格子のスカート姿で闊歩していて、それはそれは賑やかで華やかで、私の鬱屈していた心も久しぶりに解放されたことでありました。
 [反歌]  曳き出せよ!君の心をあの街へ!海老茶のスカートが君を待つてる! 


○ 単身で、夫婦で、女性グループで、高齢者が秋の川辺を歩む  (八王子市)青木一秋

 「秋の川辺を歩む」程度なれば宜しいが、現実には、暇とお金を持て余した「高齢者」たちが、「単身で、夫婦で、女性グループで」と、わんさかわんさか間も無く雪が降雪期を迎える北アルプスに挑んだりするから、山岳救助隊の方々は益々忙しくなるのでありましょう。
 [反歌]  戻り鮎の鱗きらめく川沿ひを老いた二人が手を取り歩む 


○ 「戦闘」を「衝突」に変え戦地への派遣目論む為政者の虚言  (高松市)植田正太郎

 「為政者の虚言」と朧化して述べ、「自公連立政権の虚言」としないところが、表現者としての植田正太郎さんの〈節度〉というものでありましょうか?
 [反歌]  戦闘を衝突などと誤魔化してアメリカ帝国主義に肩入れ 


○ 武器輸送・駆けつけ警護と慣らされて改憲の垣根ひくくなりゆく  (下関市)乗安 勉

 「改憲の垣根」が泣かせる!
 そうです。彼らにとっての「改憲」は、当初から「垣根」程度の高さでしかなかったのでありましょう。
 [反歌]  農村の失対事業の一環の警察予備隊のとどの詰まりよ 


○ 今はただ母のみ一人住む家も表札はまだ八人家族  (交野市)木下祥子

 この頃、よく見る風景ですが、それでも「八人家族」とは驚き!
 [反歌]  玄関に男の大きな靴置きて寡婦なる姉の防犯対策 


○ 秋は湯のぬくもりにまたよみがえる雪崩で逝きし吾子の冷たさ  (千葉市)有村妙子

 本作中の「吾子」も亦、冬山登山とやらで「雪崩」に遭ったのでありましょうか?
 「秋は湯のぬくもりにまたよみがえる」という叙述からすると、本作の作者の有村妙子さんが、「吾子」が「雪崩」で亡くなった山の麓の温泉にでも訪れて思い出に浸っているものと解釈されがちでありますが、事の真実は、案外、ご自宅のINAX社製の瀟洒な浴室の「湯のぬくもり」に浸りながら、今は亡きご子息様の思い出を耽って居られるのかも知れません。
 [反歌]  燗酒の温もりにさへ蘇る巣立ちし息子の引き籠もりのさま 


○ ざわついた心を鎮める安定剤あの人の声と図書館と土  (水戸市)横須賀美穂子

 率直に言わせていただきますと、末尾の「土」の取って付けたような感じには救いようがありません。
 [反歌] 浮ついた心を鎮める安定剤鏡に映る醜い面貌  


○ もう少し背が高ければボクシングやらなかったよ絵を描いてたよ  (神戸市)康 哲虎

 本作の作者・康哲虎(リングネーム・千里馬哲虎)さんは、元日本ミドル級チャンピオンの千里馬啓徳氏が会長を務める神戸市のボクシングジム「千里馬神戸ボクシングジム」に、かって所属し、スーパーバンタム級のA級ライセンスを所持していた人気ボクサーであり、〈神戸の虎〉という渾名を奉られた突貫ファイターでありました。
 彼のプロボクサーとしての現役時代の戦績は〈29戦21勝5敗3分(11KO)〉という輝かしいものでありましたが、彼がボクサーとして頭角を現したのは三十歳を過ぎてからであり、それ故に彼は幾多のリスクを背負ってリングに立たざるを得なかったのであり、プロボクサーとして我が国のスーパーバンタム級の一位まで上り詰めていた彼が、志半ばで1002年に引退せざるを得なかったのは、プロボクサーにとっての致命傷である網膜剥離を患ったからである、とのことであります。
 斯くして、残念無念の引退後の彼は、認知症ケア専門の看護師として働きながら、「NHK短歌」の2015年11月号掲載の一首「婚約のときの約束はたさんとゴキブリを手に封じ込めたり」や、今年の5月23日の朝日歌壇の高野選・永田選の共選の一首「キムチというあだ名で呼ばれし『在日』の友思いだす総菜売場」などの如き、持ち前のユニークな発想に依る短歌を発表して居られるのである。
 「もう少し背が高ければ」とは、彼のプロボクサーとしての階級が〈スーパーバンタム級〉であったことから推して理解されるのであるが、彼が絵描き志望であったことは、かく申し、私・鳥羽省三も、今日まで知りませんでした。
 [反歌]  もう少し顔が良かつたらシンガーソングライターになつていたのだ


○ 雀真似、鵯を真似、草むらの虫の音真似る百舌の一日  (松坂市)こやまはつみ

 「百舌」という和名は、この鳥が「様々な鳥(百の鳥)の鳴き声を真似た、複雑な囀りを行うことに由来する」とのこと。
 [反歌]  百舌よ百舌!お願ひだから、菅官房長官の真似だけはしないでお呉れ


○ ガラガラと崩れた自信うなだれて答案受け取る中間テスト  (芦屋市)室 文子

 自信過剰な天才少女の室文子でさえも、この度の「中間テスト」の結果には自信喪失寸前なのかも知れません。
 [反歌] ガラガラと廻せば飛び出す白い玉 四等賞は飴玉一個

日暦(11月9日)

2016年11月09日 | 我が歌ども
○  解るまで徹底的に教えます!臨海セミナー古渕校では!

○  ご三家も女子ご三家もへっちゃらさ!臨海セミナー古渕校なら!

○  曳き出せよ!君の心をあの街へ!君を待つてる海老茶のスカート!

○  ガラガラと廻せば飛び出す白い玉 四等賞は飴玉一個
       
○  百舌よ百舌!お願ひだから、菅官房長官の真似だけはしないでお呉れ

○  もう少しましな顔を持つていたらシンガーソングライターになつた

○  さだまさし程度の顔で良かつたら俺にもなれるシンガーソングライター

○  浮ついた心を鎮める安定剤鏡に映る醜い面貌

○  燗酒の温もりにさへ蘇る巣立ちし息子の引き籠もりのさま

○  玄関に男の大きな靴置きて寡婦なる姉の防犯対策

○  農村の失対事業の一環の警察予備隊のとどの詰まりよ
  
○  戦闘を衝突などと誤魔化してアメリカ帝国主義に肩入れ

○  戻り鮎の鱗の鈍き川沿ひを老いた二人が手を取り歩む

○  排泄に便利な面を無視してはスカートの起源は語れません

日暦(11月8日)

2016年11月08日 | 我が歌ども
○  華麗なる羽を背に負ふ小鳥ちやん声を張り上げ「大地讃頌」
 
○  今日からは〈陰の支配者〉チューバ吹き女だてらに啖呵を切つて

○  玄関をそつと出て行くキャバクラへ寝たふりしてるジゴロの為に

○  抜けた乳歯を大屋根に放り投げたら青い小鳥が咥へて行つた

○  安田家の飼ひ犬クロは幸せだ、聞こえる声が「ごほうび」ばかりで

○  池の面に浮かべた亀が逃げて行く似非浦島の企みを知り

○  桃色の鰾を口から吹き出せるオニオコゼこそ鰭のひろもの

○  愛といふ見えない縄に自縛され低賃金で働く介護士

○  石舞台一辺50平方余の大方墳蘇我馬子の墓所とも謂ふ
 


 

今週の「朝日歌壇」から(11月7日掲載分・其のⅡ)北方四島以南、本日堂々特出し大公開!乞う、ご期待!

2016年11月08日 | 今週の朝日歌壇から
[馬場あき子選]
○ コンクールきれいな羽を持つ小鳥さえずっている気分で歌う  (富山市)松田わこ

 松田わこちゃんったら、またまたいきなしに「コンクール」という名詞を一首の初っ端に置いたりして、作品全体の〈見出し〉にするとか、〈総タイトル〉にするとかといったような安易な手法で短歌を詠んでいるのである!
 こんな手馴れた手法ばっかり使っていると、あなたの短歌はこれ以上進歩しませんから、もう少し工夫をしなければなりません。
 ところで、この一首の意は「今日の私は、クラス対抗の合唱『コンクール』の舞台に直面しています。この舞台で、私はまるで『きれいな羽』を持ってる可愛い『小鳥』が『さえずっている』ような『気分』で一所懸命に『歌』っているのです」といったところでありましょうか?
 それにしても、極めて安易な気分で詠まれた一首であり、それに第一に、作者自身が自らを「きれいな羽を持つ小鳥」に準えるなんて、松田わこさんは、あまりにも世間の人々に甘えていませんか!
 [反歌] 華麗なる羽を背に負ふ小鳥ちやん声を張り上げ「大地讃頌」  
 

○ 異界への入口なるや石舞台はしゃぐ子供ら吸い込まれてゆく  (高槻市)藤本恵理子

 「石舞台」、即ち「石舞台古墳は、奈良県明日香村にある古墳時代後期の古墳」であり、「国の特別史跡に指定されてい」て、「元は土を盛りあげて作った墳丘で覆われていたが、その土が失われ、巨大な石を用いた横穴式石室が露出してい」て、「埋葬者としては蘇我馬子が有力視されている」とのことであり、平成の世の現在は、マウント富士と並んで「我が国有数のパワースポット」とされていて、連日多くの観光客が訪れているのである。
 と、言うことになりますと、作中の「異界への入口なるや」とは、本作の作者・藤本恵理子さんが、「石舞台の石舞台たる所以」を十分に知って居ての叙述でありましょう。
 それにしても、彼の「石舞台」の奥行きは僅かに8メートル足らずである。  
 それなのにも関わらず「異界への入口なるや」と仰り、「はしゃぐ子供ら吸い込まれてゆく」とまで仰るとは、少々大袈裟過ぎはしませんか?
 [反歌] 石舞台 一辺50平方余の大方墳蘇我馬子の墓所とも謂ふ  


○ 愛といふ曖昧なものふつ飛びぬ介護のひとり抱えてみれば  (武蔵野市)三井一夫

 少々乱暴で失礼な言い方をさせていただきますが、昨今の「介護」施設の男性職員の方々の多くは、フアッションモデル紛いの痩身細腰の若い男性とお見受け致します。
 と、言うことになりますと、その「介護」対象者が男性であれ女性であれ、「ひとり」の「介護」対象者を彼が「抱えてみれば」、そのあまりの重さに耐えかねて「愛といふ曖昧なもの」などは、一瞬にして「ふつ飛」ぶのは当たり前のことではありませんか!
 斯くして、これからの介護施設の職員は、優しさと豪腕とを兼ね備えたスーパーマンのような人間でなければ務まりません。
 [反歌] 愛といふ見えない縄に自縛され低賃金で働く介護士    


○ 深い深い底よりあがるオニオコゼ口に吹きだす桃色の鰾  (東京都)野上 卓

 東京都にお住まいの〈釣りキチ戯作者〉こと、本作の作者・野上卓さんは、またぞろ、例のゴムボートとやらを物置小屋の隅から引きずり出して来てマイカーに積み込み、東京湾沿いの何処かの港まで運んで行って海水に浮かべて、あろうことか「オニオコゼ」などという、奇っ怪な姿をしていながらも、煮魚にしても、活き造りにしても、唐揚げにしても、椀種にしても美味しい魚を釣ろうとしたのでありましょうか!
 当日、たまたま運良く一匹だけ釣れた「オニオコゼ」が、「口」から「桃色の鰾」を「吹きだ」している様子を見て、いち早く発想転換して、これを題材にして一首を為し、首尾良く朝日歌壇の入選者席に潜り込むことが出来たのは、さすがに戯作者ではありませんか!
 この際、評者の私としては、大いに賞賛しなければなりません!
 [反歌] 桃色の鰾を口から吹き出せるオニオコゼこそ鰭のひろもの    


○ 池の面に助けた亀を浮かべれば澄む水深く身をゆすり行く  (東かがわ市)桑島正樹

 大方、讃州引田町の悪戯小僧どもが近所の公園にでも捨てた亀を拾って来て、自宅付近の溜池にでも浮かべたのでありましょうが、「助けた亀」とは、東かがわ市にお住まいの桑島正樹さんは、恰も彼の浦島太郎みたいではありませんか!
 なにしろ、香川県には、あの弘法大師様のお造りになった満濃池を肇とした、大小様々の灌漑用の溜池が随所に在りますから、拾って来た亀を深べる場所には事欠かなかったのでありましょう。
 それにしても、「池の面に助けた亀を浮かべれば」、その亀が「澄む水深く身をゆすり行」ってしまって、本当に本当に良かったですね!東かがわ市にお住まいの桑島正樹さんよ!
 [反歌] 池の面に浮かべた亀が逃げて行く似非浦島の企みを知り   


○ お隣もどうやら犬を飼ったのか待てお座り伏せの声がする  (川崎市)小島 敦

 どうやら、お隣りでは飼い犬を冷遇しているらしい!
 だって、川崎市にお住まいの小島敦さんちに聴こえて来る声は、「待て」と「お座り」と「伏せ」だけで、「ごほうび、ごほうび」だとか「ちょうだい、ちょうだい」だとか「ごちそうさま」だとかが無いからである。
 [反歌] 安田家の飼ひ犬クロは幸せだ、聞こえる声が「ごほうび」ばかりで    


○ はがぬけてかけっこしたらすきまからあきのかぜがはいってきたよ  (奈良市)山ぞえ葵

 「山ぞえ葵」と、氏名の一部をひらがなで書いたのは、作者が小学生である事を示そうとしたのでありましょうが、殊更なる一部分のひらがな書きは必要ありません。
 [反歌] 抜けた乳歯を大屋根に放り投げたら白い烏が咥へて行つた


○ 今日からはパートリーダー音域も広げチューバでオケ支えよう  (横浜市)高橋理沙子

 夏の高校野球の県大会予選の際は、大勢の応援団と共に吹奏楽部員を球場に駆り出されるのであるが、その中でも取り分け苦労の多いのは、「チューバ」担当の女性部員だったと、私は記憶して居ります。
 なにしろ、あの「チューバ」という超大型の金管楽器は、高さが1メートルもあり、その重さたるや、10キログラム以上もあるのですから、身の丈150センチメートル程度の小柄な女性が一人で担いで、バスや電車を乗り継いで球場まで運んで行くのは、とてもとても難儀なことであったと、今更ながら思われます。
 そもそも、公立高校での吹奏楽部のパート決めの際には、豪腕で口が達者な男性部員や、器量が良くて性格が宜しくない女性部員が、トランペットやクラリネットやフルートなどの、重量が軽くて格好のいい楽器を担当する事になりがちである。
 そして、残りの楽器担当は、気の弱く小柄な男性部員や、器量の良し悪しに関わらず、性格が宜しくて優しい気持ちの女性部員が担当者となるのである。
 本作の作者・高橋理沙子さんは、お名前から推察してみても、理性的かつ美しくかつ気持ちの優しい女性かと思われます。
 そういう次第で、高橋理沙子さんは進学先の高校の吹奏楽部で、あの厄介な「チューバ」を担当する事になったのだと推察されます。
 それと、もう一点付け加えて申しますと、あの「チューバ」という楽器は、一曲の中の伴奏部分の最低音部だけを担当し、出番が比較的に少なく目立たない楽器であります。
 しかしながら、あのチューバ担当者がいい加減な気持ちで吹奏したら、肝心要のメロディー部分が輝きません。
 従って、あのチューバ担当者こそは、楽団全体の演奏を見渡し、「私は吹奏楽団の〈陰の支配者〉である」といった気持ちで事に当たらなければなりません。
 そういう次第で、私の敬愛する高橋理沙子さんよ、これからも頑張って下さい。
 [反歌]  今日からは〈陰の支配者〉チューバ吹き女だてらに啖呵を切つて


○ 玄関をそっと出て行く音立てず寝たふりしているインコのために  (松原市)久木山恵

 あの「インコ」めが「寝たふり」なんかするもんですか!
 [反歌] 玄関をそつと出て行くキャバクラへ寝たふりしてるジゴロの為に

今週の「朝日歌壇」から(11月7日掲載分・其のⅠ)本日堂々と特出し大公開!

2016年11月07日 | 今週の朝日歌壇から
 本日付けの朝日新聞の朝刊は、昨、11月6日に名古屋〜伊勢間で行われた「第48回全日本大学駅伝対抗選手権大会」のニュースを、第一面から「並み居る観衆の歓呼の声に迎えられて『ガッツポーズでゴールする青学大の一色恭志選手』の顔」の大型カラー写真入りで掲載している。
 その上、第12面から13面に掛けてのスポーツ欄には、当レースに就いての写真や解説記事や記録などが満載されているのであるが、その見出しに就いては、天下の朝日新聞らしからぬ失態が感じられて、先祖代々の朝日新聞ファンである私としては、何とも論評し難いものがある。
 先ず、第12面の大見出し「青学逆転、3冠王手」は、そのままで宜しいとしても、その後の「49秒差、最終区エース激走」には、少なからず首を傾げざるを得ません。
 そもそも、早大のアンカーを務めた安井雄一選手は、その持ちタイム〈一万m・29分59秒69〉から推してみても、真に〈早稲田大学競走部のエース〉と称し得る程の力量のランナーであるとも思われず、数多ある長距離競争部員の中のせいぜい〈ベストテンに入るか?入らないのか?〉といったレベルの選手でしかないと思われ、しかも、そのゴール時点での両大学間のタイム差〈49秒〉から推してみても、一色・安井両者のタイム差〈2分弱〉から推してみても、到底「最終区エース激走」とは言えないような大差なのである。
 次に、第13面には「山梨学院大・成長三位」という大見出しがあるが、その記事の内容は、同大学が三位入賞を果たした事に就いてあれこれと褒め称えて書き連ねはいるのである。
 然しながら、山梨学院大学が当レースで三位入賞という大躍進を果たしたのは、ひとえにケニアからの留学生で、自らも「山梨学院大学へのケニアからの歴代の留学生の中で自分が最強ランナー」と豪語しているニャイロ選手の並外れた働きに因るものと思わなければなりません。
 それにも関わらず、間抜けな朝日新聞のスポーツ記者は、「(上田)監督の次男で1区6位の上田をはじめ、4句7位の市谷、7区8位の河村ら……云々」などと、いろいろと3位入賞の原因を分析して褒め称え、記事にしているのであるが、こうしたピント外れの分析記事こそは、「再生を図らんとする朝日新聞を更に地獄のどん底に追い込むような間抜けな記事である」としか評しようがありません。
 贅言はこれくらいで止めといて、そろそろ予定していた「今週の『朝日歌壇』から」の執筆を始めましょう。


[佐佐木幸綱選]
○ 苦闘して栗の皮むくしみじみと三人育てし母想いつつ  (宇都宮市)岡田友里

 「栗の皮」を剥くのは、確かに並大抵なことではありません!
 然しながら、「苦闘して栗の皮むく」とまで言うとは、あまりにも大袈裟過ぎませんか?
 それに、「三人」を「みたり」と読まなければならない必然性もありませんし、「三人育てし母想いつつ」を含めた一首全体の表現内容も、斎藤信夫作詞・海沼実作曲「里の秋」を想わせて、佐佐木幸綱選の首席入選作品としては、あまりにも平凡な表現に過ぎましょう。
 [反歌] 栗の毬剥いては思ひ栗の皮剥いては思ふ里の秋かも  鳥羽省三 


○ 温かい湯呑み茶碗を手で包む同じ事聞く母にも慣れて  (神戸市)高寺美穂子

 「同じ事聞く母にも慣れて」という下の句の叙述が、〈当世流行の高齢者の自宅介護や老老介護の場面〉をさりげなく想像させてなかなか宜しい。
 [反歌]  焼け火箸ぎゆつと握らせ姑を死なせた嫁も何処かに居るとか?


○ 先生の机の上の湿度計たまに見ながら進路の話  (富山市)松田梨子

 「現実の出来事をありの侭に詠んだのである!」と言われてしまえばそれまでのことではありますが、三句目の「湿度計」は、なんと無く取って付けたような感じの「湿度計」である。
 例えば、これを「先生の机の上の通信簿気にしながらも進路相談」としても、「先生は机の上にツバ飛ばしにやりと笑い進路の話」としても、また「先生は右手に掴んだおにぎりをときどき食べて進路の話」としても、或いは「先生の右手の指のささくれを気にしながらも進路の話」としても、その出来栄えにはそれほどの大差があるとは思えません。
 それよりも何よりも、松田梨子さんがこんな作品を詠んでいる間にも、富山市の市議会議員たちは揃いも揃って、政務活動費の不正使用を企んで居たんですよ!
 年が明ければ、松田梨子さんも立派過ぎる程の立派な有権者として扱われ、選挙権を持つことになりますから、もう少し広い視野に立って物事を判断しなければなりません。
 以上のような徒事めいた文言を書き連ねた後に、もう一度、掲出作中の「湿度計」の必然性に就いて熟考してみると、「先生の机の上の湿度計」という表現の方が、「先生の机の上のキキララ」といった表現や「先生の机の上のゴム風船」といった表現よりも、より教育の場たる学校の進路相談室の室内風景を表すに相応しい表現である事に気が付いてしまったのであるし、亦、この「進路の話」に必ずしも作者の松田梨子さんが積極的に望んでのものでは無い可能性だって有り得ますから、ならば、私は私自身が記した先刻の贅言、即ち、本稿の「三句目の『湿度計』は、……(中略)……もう少し広い視野に立って物事を判断しなければなりません。」を〈訂正〉乃至は〈削除〉しなければならない訳ではありますが、こうした大人の浅はかな思考過程も亦、若い作者にとっては何かの参考になるかとも判断されるので、この場面に於いては、先刻の贅言を私は敢えて削除しません。
 然しながら、思うに、作者の松田梨子さんは、通学中の高校とは別に、予備校などにも通って居られるものと思われますから、自分の偏差値が自分の進学希望大学の合格ラインに到達していることを事前に知悉している上で、学級担任の「先生」との進路相談の場に臨んだのでありましょう。
 従って、彼女は「先生」の語る「進路の話」を積極的に聴かなければならない必然性を感じていなかったのであり、そうした彼女の安易な気持ちが「先生の机の上の湿度計たまに見ながら進路の話」を聴く、という結果を齎したのでありましょう。
 [反歌] 先生も人間なれば人並みにタバコも吸ふし色目も使ふ  鳥羽省三
 ところで、本日付けの朝日新聞の夕刊に、昨日行われた富山市議会の補欠選挙の結果が報道されていて、それを拠ると、「無所属も含めた自民党関係の議員が過半数以上の議席を獲得した」との事であり、またぞろ政務活動費の不正流用などの涜職が懸念される事態になりました。
 斯かる危機に直面しての松田短歌姉妹の動向が、私・鳥羽省三にとっては、とても気になります。


○ テロップでは暴風圏に入りにしを防災無線は熊のこと告ぐ  (鳥取県)山田和代

 事ここに至っては、「暴風」被害から避けることを選ぶか、「熊」を食われることを避けるか、の二者択一といった場面とは相成りましょう!
 ところで、本作の表現に拠りますと、本作の作者の山田和代さんは、現在「防災無線」を傍受出来る場所に身を置いて居られるように思われますが、とすると、彼女の現在のお仕事は、町役場の吏員か婦人警察官のようにも私には思われますが、そうした私の推測は、私自身の浅はかさ故の推測でありましょうか?
 [反歌]  テロップは株の暴落告げてゐるアベノミクスは既に壊滅  鳥羽省三 


○ 独房の窓辺にも来よ呟けば声を返してくれる梟  (ひたちなか市)十亀弘史

 〈アメーバーブログ〉の「フクロウのすむ家」には、次のような記事が掲載されていますので、参考の為にそれをそのまま引用させていただきます。
 即ち「2週間ほど前からサスケが『ほー・ほー』と鳴いた直後に私が真似をして『ほー・ほー』と返すと、サスケはもう一度『ほー・ほー』と鳴くのです。初めて鳴き返してくれた時は本当に嬉しかったです。/最近ではこの鳴き返し率は80%ほど。いいオヤジがフクロウの前で『ほー・ほー』言っているのは、傍らでは滑稽に見えるでしょうが私にとっては楽しい遊びです。/しかしこの鳴き返しの確率は、先にサスケが鳴く事が必須条件で、私の方から先に『ほー・ほー』言っても、上の写真の様な顔をして黙ったまま。まるで『なに言っとるんや!アホちゃうか?』みたいな眼差しで見つめるだけです。/それでも30回に1回位は『しゃぁーないなぁ』みたいな感じで鳴き返してくれるので、多くの冷たい視線を浴びながらもやってしまうのです」(以上は、2006年01月14日〈土〉の記事)。
 続いて「あれからも毎日のように『ほー・ほー』と、サスケとの会話?を楽しんでいます。そして少しずつですが鳴き返してくれる確率も上がってきました。色々コツも解ってきました。一発目に失敗すれば何度やっても無理な事。静かな環境の中で唐突な感じで呼びかけると鳴き返してくれます」(以上は、2006年01月20日〈金〉の記事)。
 引用文中の「サスケ」とは、梟の愛唱でりましよう。
 ところで、本作の作者・十亀弘史さんは〈ひたちなか市〉にお住まいとのことでありますが、件の地には「水戸刑務所(茨城県ひたちなか市大字市毛847)」が在る、とのことであり、水戸刑務所は「執行刑期10年未満で犯罪傾向の進んだ者(B指標受刑者)を収容している刑務所」であるとのことでありますが、それでも尚且つ、刑務所ともなれば、人里離れ、梟が棲むような地に設置されているのでありましょうか?
 それにしても、いくら「執行刑期10年未満」の受刑者とは言え、その彼が、深夜の「独房の窓辺」に寄って、「梟」に「ホー、ホー」と話し掛けると、「梟」も亦「ホー、ホー」と「声を返してくれる」ような光景は、あまりにも侘し過ぎるではありませんか!
 だから、誓って言う!「私は、決して、決して、刑務所に入らなければならないような悪事は働きません」と。
 [反歌]  誓つて言ふ「これまでもこれからもなほ悪事一切働きません」と  鳥羽省三  


○ 幸せな人と見られてにこやかな顔することも老いの生き甲斐  (茅ヶ崎市)若林禎子

 事ここに至りますと、「老い」ることもなかなかに難儀な事ではありませんか!
 それとは別に、私の周辺にいらっしゃる高齢者たちの中には、本作に登場する「老い」と同様に、必要以上に「私はとても幸せな人」といった顔をして生きている人が多く見られます。
 そんな場面に出会した場合の私は、同じ高齢者として、どんな顔をして彼らと交われば宜しいのでありましょうか?
 [反歌] 「世界一幸せそうな婆ちゃん」と語り掛けるが介護士の癖  鳥羽省三


○ くせっ毛でピンピンはねる左側あだ名は「ウラン」チャームポイント  (芦屋市)室 文子

 〈FC2ブログ〉の「どたばたふぁみり~」の「2005.10.09(21:47)」記載の記事に依りますと、「我が家には大迷惑な秋休みも残り2日となりました〜/晩ご飯のあと、1〜3番目と旦那はバッティングセンターへ。この前初めて連れてってもらったらかなりおもしろかったらしく・・・『2,3番目で6000円もかかった』と旦那が泣いておりました。/今日は予算を決めて出かけて行ったけど・・・・果たして帰りは温泉に寄ってくるらしいので、私は4番目とダラ〜ッとしてます。静かですっごい平和/そろそろ帰ってくる頃かなあ/7日に4番目の髪をバッサリ切りました。20cmくらいかなぁ。/そしたら髪を洗うのがすごく楽〜ただねぇ、左側の髪に少しくせがあるらしく、ピンピンはねる。どんなことしても直らないということは、やっぱりくせっ毛/1番目も同じなんだよねぇ。/毎朝の髪を結ぶ仕事が減っただけでもかなり嬉しい〜。/4番目も頭が軽くなってご機嫌。ただ、私が切ったからちょっと変かもー。/美容院で直してもらったほうがいいかなあ〜。でも、20cmも切った時は気分よかった〜」とのこと。
 件の記事は、管理者自らが「秋田の田舎で農業やってます。仕事や田舎の風景、子供のことなどグダグダ~っと。」と仰って居られる如く、なかなかにして乱文かつ難解な記事ではありますが、掲出の室文子さん作を鑑賞するに際して必要な部分は、その裡の真ん中辺りの「7日に4番目の髪をバッサリ切りました。20cmくらいかなぁ。/そしたら髪を洗うのがすごく楽〜ただねぇ、左側の髪に少しくせがあるらしく、ピンピンはねる。」という辺りだと思われます。
 という事になりますと、「『くせっ毛』の女性の髪が『ピンピンはねる』のは『左側』だけ」という事になりましょうか?
 それはそれとしても、それに続く下の句を「あだ名は『ウラン』チャームポイント」とした点が、私にはよく解りません?
 [反歌] くせっ毛は秋田の女ばかりかと思っていたが間違いだった  鳥羽省三
 と、ここまで書いて来て、ふと思い付いたことがあったので、パソコンの検索窓に「『ウラン』チャームポイント」と入力して検索してみたところ、何方かのホームページの「オータムセール2007上場馬」という頁にヒットして、そのページには、一頭のサラブレットと思しき牝馬の写真が掲載されていて、「No.1006チャームポイント・牝・芦・2006/4/4生/父シルバーチャーム・母ウランウラン(母父ブライアンズタイム)/お問合せ先:エバグリーンセールスコンサインメント/住所:新ひだか町東静内(map)、Tel:0146-44-2200、mail/販売申込者・生産牧場:ホウセイ牧場=様似町岡田」との説明が為されていて、その写真の後に「280万円でご購買、小笠原 啓一様/誠にありがとうございました」との、お礼の言葉が記されて居りました。 
 と、すると、彼の牝馬「チャームポイント」こと「あだ名は『ウラン』」は、巡り巡って阪神競馬に出走して、本作の作者・室文子の目にするところとなったのかも知れません。


○ アレッポの名は知らざりきアレッポに山本美香さん撃たれし日には  (水戸市)中原千絵子

 斯く申す私も、「アレッポに山本美香さん撃たれし日」までは、「アレッポ」が何処の国のどんな土地であるか分りませんでした。 
 [反歌] アレッポはただの砂漠で雑草がちらほら生えてる原っぱである  鳥羽省三 


○ 特養の運動会で玉入れに父が投げれば青き空あり  (横浜市)飯島幹也

 「玉入れ」の玉が、首尾よく網籠の中に入ったかどうかは解りませんが、とにもかくにも、「父が投げれば青き空あり」であり、有意義な「特養の運動会」日和だった訳ですから、それで佳しとしなければなりません。
 [反歌] 玉入れでたまたま父が投げた玉たまたま入りご満悦の父  鳥羽省三


○ 廃校の草生す庭の片隅の蜻蛉止まれるサッカーボール  (東京都)石橋ふみ子

 「廃校の→草生す庭の→片隅の→蜻蛉止まれる→サッカーボール」と、焦点が徐々に徐々に定まって行き、究極的には「蜻蛉止まれるサッカーボール」だけが巨大画面に大写しになるのでありましょうが、私は、元来「サッカー」が好きではありません。
 [反歌] 廃坑の崩れし坑内奥深く大蛇棲むとふ恐ろしきこと  鳥羽省三      

日暦(11月7日)

2016年11月07日 | 我が歌ども
○  廃坑の崩れし坑内奥深く大蛇棲むとふ恐ろしきこと  鳥羽省三

○  栗の毬剥いては思ひ栗の皮剥いては思ふ里の秋かも

○  先生も人の子なれば人並みにタバコも吸ふし色目も使ふ

○  先生も人の子なれば市議会の補欠選挙の結果を気にす

○  テロップは株の暴落告げてゐるアベノミクスは既に壊滅

○  焼け火箸ぎゆつと握らせ年寄りを死なせた嫁も何処かに居るとか?

○  誓つて言ふ「これまでもこれからもなほ悪事一切働きません」と

○  「世界一幸せそうな婆ちやん」と語り掛けるが介護士の癖

○  くせつ毛は秋田の女ばかりかと思つていたが間違いだつた

○  アレッポはただの砂漠で雑草がちらほら生えてる原つぱである

○  玉入れでたまたま父が投げた玉たまたま入りご満悦なり

 本日付けの朝日新聞の夕刊に、昨日行われた富山市議会の補欠選挙の結果が報道されていて、それを拠ると、「無所属も含めた自民党関係の議員が過半数以上の議席を獲得した」との事であり、またぞろ政務活動費の不正流用などの涜職が懸念される事態になりました。

日暦(11月6日)

2016年11月06日 | 我が歌ども
○  守礼門は何処にか消ゆ日銀は沖縄虐めに加担して居り  鳥羽省三

○  日銀は源氏の君を侮辱せり二千円札いづこにか消ゆ

○  ジンクスも何のそのとぞ漕ぎ行くもやはり揺れたりスワンボートは

○  旅愁濃き牧水の歌に憧れて何処へも往かぬ吾は旅人

○  例へば吾は応へに窮する木久扇さん君の誘ひにしどろもどろと

○  鶏頭の十四五本の枯れ行くを子規は見にけむ死の床に臥し

○  一昨日の糸瓜の蔓を切らざるは妹・律の怠慢ならず

○  善行は小田急線の駅にしてホームの椅子に入れ歯を忘る

○  胃袋に夕べ食べにしトンカツの溶けつつあらむこの宵の間も

○  世田谷線西太子堂駅のホームの椅子に入れ歯を忘れき 

日暦(10月4日)

2016年11月04日 | 我が歌ども
○  申請も検問受けての10分も諸氏の健康慮つての措置

○  耳なれた言葉「記憶にございません」甘利復活あまりに早し

○  ふくべなら殴れもしない殴つたらつるつと滑つて壊れてしまう

○  ガタクタの和家具擬きの野上さん朝日歌壇に入選もする

○  「宿題をやらなきやママに叱られる」という意識があっての目覚め

○  日本人国語学習ほっぽって英語覚えてハワイ観光

○  誰も食べない食べられず1g1000円超の大間のマグロ

○  直ぐ食える缶詰ばかり食べている老老介護の暮らし幾年

○  村上氏ノーベル賞を逃したりまた来る秋を信じて待たむ