本日付けの朝日新聞の朝刊は、昨、11月6日に名古屋〜伊勢間で行われた「第48回全日本大学駅伝対抗選手権大会」のニュースを、第一面から「並み居る観衆の歓呼の声に迎えられて『ガッツポーズでゴールする青学大の一色恭志選手』の顔」の大型カラー写真入りで掲載している。
その上、第12面から13面に掛けてのスポーツ欄には、当レースに就いての写真や解説記事や記録などが満載されているのであるが、その見出しに就いては、天下の朝日新聞らしからぬ失態が感じられて、先祖代々の朝日新聞ファンである私としては、何とも論評し難いものがある。
先ず、第12面の大見出し「青学逆転、3冠王手」は、そのままで宜しいとしても、その後の「49秒差、最終区エース激走」には、少なからず首を傾げざるを得ません。
そもそも、早大のアンカーを務めた安井雄一選手は、その持ちタイム〈一万m・29分59秒69〉から推してみても、真に〈早稲田大学競走部のエース〉と称し得る程の力量のランナーであるとも思われず、数多ある長距離競争部員の中のせいぜい〈ベストテンに入るか?入らないのか?〉といったレベルの選手でしかないと思われ、しかも、そのゴール時点での両大学間のタイム差〈49秒〉から推してみても、一色・安井両者のタイム差〈2分弱〉から推してみても、到底「最終区エース激走」とは言えないような大差なのである。
次に、第13面には「山梨学院大・成長三位」という大見出しがあるが、その記事の内容は、同大学が三位入賞を果たした事に就いてあれこれと褒め称えて書き連ねはいるのである。
然しながら、山梨学院大学が当レースで三位入賞という大躍進を果たしたのは、ひとえにケニアからの留学生で、自らも「山梨学院大学へのケニアからの歴代の留学生の中で自分が最強ランナー」と豪語しているニャイロ選手の並外れた働きに因るものと思わなければなりません。
それにも関わらず、間抜けな朝日新聞のスポーツ記者は、「(上田)監督の次男で1区6位の上田をはじめ、4句7位の市谷、7区8位の河村ら……云々」などと、いろいろと3位入賞の原因を分析して褒め称え、記事にしているのであるが、こうしたピント外れの分析記事こそは、「再生を図らんとする朝日新聞を更に地獄のどん底に追い込むような間抜けな記事である」としか評しようがありません。
贅言はこれくらいで止めといて、そろそろ予定していた「今週の『朝日歌壇』から」の執筆を始めましょう。
[佐佐木幸綱選]
○ 苦闘して栗の皮むくしみじみと三人育てし母想いつつ (宇都宮市)岡田友里
「栗の皮」を剥くのは、確かに並大抵なことではありません!
然しながら、「苦闘して栗の皮むく」とまで言うとは、あまりにも大袈裟過ぎませんか?
それに、「三人」を「みたり」と読まなければならない必然性もありませんし、「三人育てし母想いつつ」を含めた一首全体の表現内容も、斎藤信夫作詞・海沼実作曲「里の秋」を想わせて、佐佐木幸綱選の首席入選作品としては、あまりにも平凡な表現に過ぎましょう。
[反歌] 栗の毬剥いては思ひ栗の皮剥いては思ふ里の秋かも 鳥羽省三
○ 温かい湯呑み茶碗を手で包む同じ事聞く母にも慣れて (神戸市)高寺美穂子
「同じ事聞く母にも慣れて」という下の句の叙述が、〈当世流行の高齢者の自宅介護や老老介護の場面〉をさりげなく想像させてなかなか宜しい。
[反歌] 焼け火箸ぎゆつと握らせ姑を死なせた嫁も何処かに居るとか?
○ 先生の机の上の湿度計たまに見ながら進路の話 (富山市)松田梨子
「現実の出来事をありの侭に詠んだのである!」と言われてしまえばそれまでのことではありますが、三句目の「湿度計」は、なんと無く取って付けたような感じの「湿度計」である。
例えば、これを「先生の机の上の通信簿気にしながらも進路相談」としても、「先生は机の上にツバ飛ばしにやりと笑い進路の話」としても、また「先生は右手に掴んだおにぎりをときどき食べて進路の話」としても、或いは「先生の右手の指のささくれを気にしながらも進路の話」としても、その出来栄えにはそれほどの大差があるとは思えません。
それよりも何よりも、松田梨子さんがこんな作品を詠んでいる間にも、富山市の市議会議員たちは揃いも揃って、政務活動費の不正使用を企んで居たんですよ!
年が明ければ、松田梨子さんも立派過ぎる程の立派な有権者として扱われ、選挙権を持つことになりますから、もう少し広い視野に立って物事を判断しなければなりません。
以上のような徒事めいた文言を書き連ねた後に、もう一度、掲出作中の「湿度計」の必然性に就いて熟考してみると、「先生の机の上の湿度計」という表現の方が、「先生の机の上のキキララ」といった表現や「先生の机の上のゴム風船」といった表現よりも、より教育の場たる学校の進路相談室の室内風景を表すに相応しい表現である事に気が付いてしまったのであるし、亦、この「進路の話」に必ずしも作者の松田梨子さんが積極的に望んでのものでは無い可能性だって有り得ますから、ならば、私は私自身が記した先刻の贅言、即ち、本稿の「三句目の『湿度計』は、……(中略)……もう少し広い視野に立って物事を判断しなければなりません。」を〈訂正〉乃至は〈削除〉しなければならない訳ではありますが、こうした大人の浅はかな思考過程も亦、若い作者にとっては何かの参考になるかとも判断されるので、この場面に於いては、先刻の贅言を私は敢えて削除しません。
然しながら、思うに、作者の松田梨子さんは、通学中の高校とは別に、予備校などにも通って居られるものと思われますから、自分の偏差値が自分の進学希望大学の合格ラインに到達していることを事前に知悉している上で、学級担任の「先生」との進路相談の場に臨んだのでありましょう。
従って、彼女は「先生」の語る「進路の話」を積極的に聴かなければならない必然性を感じていなかったのであり、そうした彼女の安易な気持ちが「先生の机の上の湿度計たまに見ながら進路の話」を聴く、という結果を齎したのでありましょう。
[反歌] 先生も人間なれば人並みにタバコも吸ふし色目も使ふ 鳥羽省三
ところで、本日付けの朝日新聞の夕刊に、昨日行われた富山市議会の補欠選挙の結果が報道されていて、それを拠ると、「無所属も含めた自民党関係の議員が過半数以上の議席を獲得した」との事であり、またぞろ政務活動費の不正流用などの涜職が懸念される事態になりました。
斯かる危機に直面しての松田短歌姉妹の動向が、私・鳥羽省三にとっては、とても気になります。
○ テロップでは暴風圏に入りにしを防災無線は熊のこと告ぐ (鳥取県)山田和代
事ここに至っては、「暴風」被害から避けることを選ぶか、「熊」を食われることを避けるか、の二者択一といった場面とは相成りましょう!
ところで、本作の表現に拠りますと、本作の作者の山田和代さんは、現在「防災無線」を傍受出来る場所に身を置いて居られるように思われますが、とすると、彼女の現在のお仕事は、町役場の吏員か婦人警察官のようにも私には思われますが、そうした私の推測は、私自身の浅はかさ故の推測でありましょうか?
[反歌] テロップは株の暴落告げてゐるアベノミクスは既に壊滅 鳥羽省三
○ 独房の窓辺にも来よ呟けば声を返してくれる梟 (ひたちなか市)十亀弘史
〈アメーバーブログ〉の「フクロウのすむ家」には、次のような記事が掲載されていますので、参考の為にそれをそのまま引用させていただきます。
即ち「2週間ほど前からサスケが『ほー・ほー』と鳴いた直後に私が真似をして『ほー・ほー』と返すと、サスケはもう一度『ほー・ほー』と鳴くのです。初めて鳴き返してくれた時は本当に嬉しかったです。/最近ではこの鳴き返し率は80%ほど。いいオヤジがフクロウの前で『ほー・ほー』言っているのは、傍らでは滑稽に見えるでしょうが私にとっては楽しい遊びです。/しかしこの鳴き返しの確率は、先にサスケが鳴く事が必須条件で、私の方から先に『ほー・ほー』言っても、上の写真の様な顔をして黙ったまま。まるで『なに言っとるんや!アホちゃうか?』みたいな眼差しで見つめるだけです。/それでも30回に1回位は『しゃぁーないなぁ』みたいな感じで鳴き返してくれるので、多くの冷たい視線を浴びながらもやってしまうのです」(以上は、2006年01月14日〈土〉の記事)。
続いて「あれからも毎日のように『ほー・ほー』と、サスケとの会話?を楽しんでいます。そして少しずつですが鳴き返してくれる確率も上がってきました。色々コツも解ってきました。一発目に失敗すれば何度やっても無理な事。静かな環境の中で唐突な感じで呼びかけると鳴き返してくれます」(以上は、2006年01月20日〈金〉の記事)。
引用文中の「サスケ」とは、梟の愛唱でりましよう。
ところで、本作の作者・十亀弘史さんは〈ひたちなか市〉にお住まいとのことでありますが、件の地には「水戸刑務所(茨城県ひたちなか市大字市毛847)」が在る、とのことであり、水戸刑務所は「執行刑期10年未満で犯罪傾向の進んだ者(B指標受刑者)を収容している刑務所」であるとのことでありますが、それでも尚且つ、刑務所ともなれば、人里離れ、梟が棲むような地に設置されているのでありましょうか?
それにしても、いくら「執行刑期10年未満」の受刑者とは言え、その彼が、深夜の「独房の窓辺」に寄って、「梟」に「ホー、ホー」と話し掛けると、「梟」も亦「ホー、ホー」と「声を返してくれる」ような光景は、あまりにも侘し過ぎるではありませんか!
だから、誓って言う!「私は、決して、決して、刑務所に入らなければならないような悪事は働きません」と。
[反歌] 誓つて言ふ「これまでもこれからもなほ悪事一切働きません」と 鳥羽省三
○ 幸せな人と見られてにこやかな顔することも老いの生き甲斐 (茅ヶ崎市)若林禎子
事ここに至りますと、「老い」ることもなかなかに難儀な事ではありませんか!
それとは別に、私の周辺にいらっしゃる高齢者たちの中には、本作に登場する「老い」と同様に、必要以上に「私はとても幸せな人」といった顔をして生きている人が多く見られます。
そんな場面に出会した場合の私は、同じ高齢者として、どんな顔をして彼らと交われば宜しいのでありましょうか?
[反歌] 「世界一幸せそうな婆ちゃん」と語り掛けるが介護士の癖 鳥羽省三
○ くせっ毛でピンピンはねる左側あだ名は「ウラン」チャームポイント (芦屋市)室 文子
〈FC2ブログ〉の「どたばたふぁみり~」の「2005.10.09(21:47)」記載の記事に依りますと、「我が家には大迷惑な秋休みも残り2日となりました〜/晩ご飯のあと、1〜3番目と旦那はバッティングセンターへ。この前初めて連れてってもらったらかなりおもしろかったらしく・・・『2,3番目で6000円もかかった』と旦那が泣いておりました。/今日は予算を決めて出かけて行ったけど・・・・果たして帰りは温泉に寄ってくるらしいので、私は4番目とダラ〜ッとしてます。静かですっごい平和/そろそろ帰ってくる頃かなあ/7日に4番目の髪をバッサリ切りました。20cmくらいかなぁ。/そしたら髪を洗うのがすごく楽〜ただねぇ、左側の髪に少しくせがあるらしく、ピンピンはねる。どんなことしても直らないということは、やっぱりくせっ毛/1番目も同じなんだよねぇ。/毎朝の髪を結ぶ仕事が減っただけでもかなり嬉しい〜。/4番目も頭が軽くなってご機嫌。ただ、私が切ったからちょっと変かもー。/美容院で直してもらったほうがいいかなあ〜。でも、20cmも切った時は気分よかった〜」とのこと。
件の記事は、管理者自らが「秋田の田舎で農業やってます。仕事や田舎の風景、子供のことなどグダグダ~っと。」と仰って居られる如く、なかなかにして乱文かつ難解な記事ではありますが、掲出の室文子さん作を鑑賞するに際して必要な部分は、その裡の真ん中辺りの「7日に4番目の髪をバッサリ切りました。20cmくらいかなぁ。/そしたら髪を洗うのがすごく楽〜ただねぇ、左側の髪に少しくせがあるらしく、ピンピンはねる。」という辺りだと思われます。
という事になりますと、「『くせっ毛』の女性の髪が『ピンピンはねる』のは『左側』だけ」という事になりましょうか?
それはそれとしても、それに続く下の句を「あだ名は『ウラン』チャームポイント」とした点が、私にはよく解りません?
[反歌] くせっ毛は秋田の女ばかりかと思っていたが間違いだった 鳥羽省三
と、ここまで書いて来て、ふと思い付いたことがあったので、パソコンの検索窓に「『ウラン』チャームポイント」と入力して検索してみたところ、何方かのホームページの「オータムセール2007上場馬」という頁にヒットして、そのページには、一頭のサラブレットと思しき牝馬の写真が掲載されていて、「No.1006チャームポイント・牝・芦・2006/4/4生/父シルバーチャーム・母ウランウラン(母父ブライアンズタイム)/お問合せ先:エバグリーンセールスコンサインメント/住所:新ひだか町東静内(map)、Tel:0146-44-2200、mail/販売申込者・生産牧場:ホウセイ牧場=様似町岡田」との説明が為されていて、その写真の後に「280万円でご購買、小笠原 啓一様/誠にありがとうございました」との、お礼の言葉が記されて居りました。
と、すると、彼の牝馬「チャームポイント」こと「あだ名は『ウラン』」は、巡り巡って阪神競馬に出走して、本作の作者・室文子の目にするところとなったのかも知れません。
○ アレッポの名は知らざりきアレッポに山本美香さん撃たれし日には (水戸市)中原千絵子
斯く申す私も、「アレッポに山本美香さん撃たれし日」までは、「アレッポ」が何処の国のどんな土地であるか分りませんでした。
[反歌] アレッポはただの砂漠で雑草がちらほら生えてる原っぱである 鳥羽省三
○ 特養の運動会で玉入れに父が投げれば青き空あり (横浜市)飯島幹也
「玉入れ」の玉が、首尾よく網籠の中に入ったかどうかは解りませんが、とにもかくにも、「父が投げれば青き空あり」であり、有意義な「特養の運動会」日和だった訳ですから、それで佳しとしなければなりません。
[反歌] 玉入れでたまたま父が投げた玉たまたま入りご満悦の父 鳥羽省三
○ 廃校の草生す庭の片隅の蜻蛉止まれるサッカーボール (東京都)石橋ふみ子
「廃校の→草生す庭の→片隅の→蜻蛉止まれる→サッカーボール」と、焦点が徐々に徐々に定まって行き、究極的には「蜻蛉止まれるサッカーボール」だけが巨大画面に大写しになるのでありましょうが、私は、元来「サッカー」が好きではありません。
[反歌] 廃坑の崩れし坑内奥深く大蛇棲むとふ恐ろしきこと 鳥羽省三