臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の朝日歌壇から(10月6日掲載・其のⅠ・)

2014年10月08日 | 今週の朝日歌壇から
[高野公彦選]

(大阪市・安良田梨湖)
〇  悪口とか愚痴とは他人のままでいたい ビジネス街を足早に行く

 この春、岡山大学を卒業して大阪市内に職を得たばかりの若き閨秀歌人が、「私は、同じ職場の人達のように、他人の悪口を言ったり、愚痴を零してばかりいるような者にはなりたくない」との純朴な決意な思いを述べているのである。
 就業したばかりの職場には、この若き歌人の悲壮な思いとは別に、日頃、「悪口」や「愚痴」が満ちているのでありましょうか?
 「職業は就活生です新宿のハンバーガー屋で夜行バスを待つ」とは、本作の作者が未だ就活に明け暮れていた、昨年の十一月十一日付けの「佐佐木幸綱選」及び「高野公彦選」の入選作である。
 あの頃は、学生生活から足を洗って、立派な職業人になろうと懸命になっていたのであるが、その職業人としての一歩を踏み出した途端に厳しい現実を目の辺りにしたのであるが、それでも尚且つ、彼女は悲壮な決意を胸にして、大阪の「ビジネス街を足早」に闊歩するのである。
 私・鳥羽省三としては、「安良田梨湖さんの職業生活に幸あれ!」と祈らずに居られません。


(東京都・夏目たかし)
〇  蟻地獄の底のやうなる庭球場につこり王子の這ひ上がり来ぬ

 庭球界の「にっこり王子」ならぬ「にしこり王子」こと錦織圭選手もこの所なかなか好調であり、全米オープンの準優勝に続いて、マレーシア・オープン及び楽天ジャパン・オープンで二週連続優勝して、一昨日発表の世界ランキングでは、一躍6位にランクされたとか。
 それに較べると目も当てられないほど評判倒れなのは、例の「ハンカチ王子」こと<北海道日本ハムファイターズ>の斎藤佑樹投手である。
 口さがないインターネット界の噂に拠ると、日本ハムファイターズ入団後の彼は、地元・札幌のススキノ辺りを遊び回った挙句、その筋の年増女性から下半身病を頂戴したとか?
 彼と共に2011年3月に早稲田大学を卒業してプロ球界にデビューし、彼と共に<早稲田三羽鴉>と持て囃された二人の投手の名を、私たちは未だに記憶しているのであるが、その中の一人、西武ライオンズの大石の名を私たちはこの頃耳にする事がありませんが、彼は何処の世界に消えて行ったのでありましょうか?
 STAP細胞の「おぼちゃん」こと小保方晴子氏と言い、ハンカチ王子と言い、大石達也迷投手と言い、早稲田大学出身者には碌な人物が居りません。
 ところで、大正4(1915)年に、中国に<対華二十一箇条>という無理難題を押し付けて、侵略戦争の発端を為した国辱的政治家は、早稲田大学の学祖・大隈重信首相である。
 ならば、早稲田大学の所謂「大隈精神」とは何ぞや?
 

(横浜市・森秀人)
〇  事実から離れて行っていつの間にかキャンペーンになる記事の危うさ

 本作も亦、「朝日歌壇」一流の「反政府キャンペーン」に迎合する作品(の変種)と看做すべきありましょうか?


(取手市・近藤美恵子)
〇  去年より多くてうれしオリーブの青き楕円が翡翠のようだ

 「オリーブ」が生った話と言っても、小豆島ならまだしも、茨城県取手市の話では、わずか一本か二本ぐらいの木にオリーブが生った話でしょう!
 それなのにも関わらず「去年より多くてうれしオリーブの青き楕円が翡翠のようだ」などと、まるでスペインのオリーブ農家の人々が収穫祭の時に「収穫の神・ケイラメトラ」に感謝して捧げる歌のような事を言わないで下さい!


(八戸市・安倍淑子)
〇  八十の仲間を若いと言う母は米寿を過ぎてコーラスに通う




(熊本市・垣野俊一郎)
〇  歩道にて車列の切れ目待ちながら鴉は猫の骸見つめる

(横浜市・松村千津子)
〇  名月に対ひて弓を引きをれば虫の音一瞬とぎれる時あり

(館林市・恩田清)
〇  ガンセンター内の電話機のメモ書きにカエリタイヨの崩れたる文字

(久喜市・中村けいこ)
〇  「調べる」が「ぐぐる」となった世の中で鶏頭の赤泥臭く咲く

(八尾市・水野一也)
〇  わが病めば林檎をすりてくれし母にゼリー飲料少しずつ飲ます
[永田和宏選]

(広島市・楯田順子)
〇  動物園爬虫類館の裏口に飼はれてをりし蟋蟀数多

(東京都・大村森美)
〇  元気なりハキダメギクもボロギクもヘクソカズラもこの爺さんも

(狛江市・相馬里子)
〇  十五年戦争を阻止できなかった人たちと同じ立場に今私はいる

(高松市・菰渕昭)
〇  敵艦の撃沈映る新聞を大切に仕舞いし軍国少年  

(愛知県・増田辰治)
〇  戦争を知らぬ首相を危ぶむが戦争なんか知らぬが一番

(高崎市・門倉まさる)
〇  ナナカマドどんな悲しみ積み重ね赤き実となるキエフの町よ

(久喜市・中村けいこ)
〇  「調べる」が「ぐぐる」となった世の中で鶏頭の赤泥臭く咲く

(長野市・根橋京子)
〇  アキアカネ色極まれる紅の光引き交い北八ヶ岳は秋

(松戸市・猪野富子)
〇  紫蘇好きのオンブバッタの穴あけし紫蘇に花咲きほのかに香る

(横浜市・杉本恭子)
〇  二十年使えば今では本物と錯覚している織部の小鉢
[馬場あき子選]

(摂津市・内山豊子)
〇  土手の草刈れば鳩きて草の実をついばむ秋晴れゆったりと雲

(館林市・阿部芳夫)
〇  大きめの麦藁帽子に包まれて笑顔は深きかげのうちなる

(石川県・瀧上裕幸)
〇  丁寧に化粧塩つけ焼かれゐる魚の目より光るもの垂る

(舞鶴市・吉富憲治)
〇  そこはかとなき威圧感滲ませて秋の埠頭に

(松戸市・猪野富子)
〇  紫蘇好きのオンブバッタの穴あけし紫蘇に花咲きほのかに香る

(筑後市・近藤史紀)
〇  この夏は自分のことを「ボク」と呼ぶ彼女を連れてはじめての海

(富山市・松田わこ)
〇  のんびりと運動会の代休を過ごす寝ているみたいな雲と

(東京都・山木海絵子)
〇  ランタナに夏を求めて蜜を吸う翅の傷んだ最後の揚羽

(アメリカ・郷隼人)
〇  秋風が吹く頃になれば戻り来て蝙蝠群れ成し飛ぶ務所の空を

(札幌市・藤林正則)
〇  九月九日午前九時九分憲法九条を唱和して大鐘を撞く
[佐佐木幸綱選]

(西条市・村上敏之)
〇  店の名は「とんび」「鷹」「百舌」「紅孔雀」鳥に喰はるる酔客われら

(香川県・藤井哲夫)
〇  炎天下六地蔵まえの蠟燭は溶けて倒れて「へのへのもへじ」

(いわき市・馬目弘平)
〇  天災に人災に負け妻に負けおろおろ歩く昭和・平成

(神戸市・福家博子)
〇  点字読む指の速さに厳しさを生き抜く人の誇りあふるる

(東京都・上田結香)
〇  信号が点滅すれば走ってた会いたい気持ちは甦らない

(神奈川県・九螺ささら)
〇  眠気から眠りに落ちるそのあいだユーモレスクの空港がある

(坂戸市・山崎波浪)
〇  この街の荒廃を見る思いしてマンションロビーに散らかれるビラ

(札幌市・藤林正則)
〇  九月九日午前九時九分憲法九条を唱和して大鐘を撞く

(富山市・松田わこ)
〇  のんびりと運動会の代休を過ごす寝ているみたいな雲と

(熊谷市・内野修)
〇  磯蟹の片目現れ人影にさつと隠るる岩の隙間に


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