臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の「朝日歌壇」から(10月24日掲載分・其のⅢ)北方四島以南、近日大公開!乞う、ご期待!

2016年10月24日 | 今週の朝日歌壇から
[佐佐木幸綱選]
○  エスカレーターの角度で飛行機昇ってくビルの凹凸秋の青空  (富山市)徳永光城

 「飛行機」が「エスカレーターの角度」で「昇って」行くと共に乗客としての、あの市議会議員の涜職で以て今話題の富山市にお住まいの徳永光城さんも亦、天空へと「エスカレーターの角度」で「昇って」行くのでありましょう。
 従って「ビルの凹凸」は側臥位で以て見下ろした光景であり、「秋の青空」は仰臥位で以て見上げた光景なのである。


○  鹿鳴草こぼるる路肩ゆふはり舞ふ紋黄蝶二匹気流に乗りゆく  (横浜市)松村千津子

 「鹿鳴草」が「秋の七草の一つ、萩の美称である」などという七面倒臭い講釈などはどうでも宜しいが、本作は、「鹿鳴草こぼるる路肩」という歌い出しの表現といい、「路肩ゆふはり舞ふ紋黄蝶」という中間部の表現といい、「紋黄蝶二匹気流に乗りゆく」という下の句の表現といい、なかなか目新しい発見があって言葉の運びも巧みな傑作である。


○  鼻歌のおさるのかごやを絶叫に変えた熊手の先のシマヘビ  (佐渡市)藍原秋子

 「熊手の先」に突如として現れた「シマヘビ」如きに驚いて「鼻歌のおさるのかごやを絶叫に変えた」としたら、アベノミクスの暴風が吹き荒れているこの世の中を生きて行かれませんよ!
 絶海の孤島・佐渡島にお住まいの藍原秋子さんよ、もう少ししかっりしなければなりませんぞ!


○  菜園に浜茄子一群咲いており天橋立見える菜園  (宮津市)細見愼二

 日本三景の一つである「天橋立」が「見える菜園」に「浜茄子」が「一群咲いて」いる光景ったって、それほど珍しい光景ではありません。
 何故ならば、「浜茄子」は、日本海側、太平洋側を問わず、日本全国の海岸の荒地に無闇矢鱈に生えている植物だからである。


○  ここからは掛け声なしのランニング朝の部活に苦情来たれば  (横浜市)島巡陽一

 「朝」の「ランニング」に「苦情」が寄せられて、止む無く「掛け声なしのランニング」をしなければならなかった経験は、斯く申す私・鳥羽省三にもあります。 
 と言うのは、今から三十年余り前に、私は横浜市内のある大規模団地に於いて、早一番に、少年野球のメンバーである小学生たちを十数人集めて、ランニングから始まって守備練習を行い、打撃練習も行うといった軟式野球のコーチ紛いのことをしていたのでありましたが、その際、その大規模団地の二丁目の五号棟の一階にお住まいの方の奥様から、「朝早くから子供たちを集めてランニングをなさって居られるご様子。大変ご苦労様です。実を申しますと宅の主人にとっては、その時間帯が熟睡時間なんです!」という言葉で以てやんわりと「苦情」を寄せられた次第でありました。
 あれから三十年余りの歳月が経ちましたが、その後間も無く、その奥様のご主人様が定年退職の日を前にしてお亡くなりになった、というニュースに接したのは、私たちが八年間に及ぶ田舎暮らしから抜け出して、川崎市内に住むようになってからしばらく経った後のことでありました。
 知らないで遣ったことではありましたが、今から思うと、全く近所迷惑のランニングであったと、深く反省している次第であります。


○  ふるさとの熊本よりの今年米「森のくまさん」心して研ぐ  (横浜市)高橋嘉子

 「ふるさとの熊本より」「今年米」の『森のくまさん』が届いたので、「心して研ぐ」との趣旨の一首でありましょうが、もしかしたら、


○  ふくしまは黄金の穂波の揺れるころか赤とんぼ舞ふわが里を恋ふ  (国立市)半杭螢子


○  最新のカットで微笑む美容院の裏口にいる胴なき首は  (熊本市)星ひかり


○  活きがいい弾丸あり舛の看板を掲ぐ後方支援を言ひて  (名古屋市)浅井克宏




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