紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「共犯マジック」北森鴻

2004年12月01日 | か行の作家
ストーリーというよりも、その構成、展開、
そしてストーリーテリングがとても上手く、
全体的にその試みは成功しているんじゃないかと思います。

人の不幸のみを予言する占い書「フォーチュン・ブック」。
偶然それを手にした男女7人の物語を短編で綴ります。
そしてそれらの物語は、“必然”という糸でキレイに
まとめられ、一つの壮大な“物語”へと形を変える…。

昔読んだ、赤川次郎の「POISON-毒-」という作品を
思い起こさせます。内容ではなく、その構造が。
「POIZON」は、摂取後24時間で人を死に至らしめ、
しかもその死体からは検出されないという夢のような猛毒(笑)が、
さまざまな人の手に渡っていく度に巻き起こる殺人事件を、
順を追って、連作短編の形式でまとめたものです。

本作において、共通するのは“フォーチュン・ブック”のみ。
時間も場所も、まったく違ったところで起こる
さまざまな事柄が、実は“フォーチュン・ブック”を介して
結び付けられるというある種の必然ですね。
ははあ、なるほど。などと思って感心しながら読んでたんですが、
終盤に近づくにつれ、あれよあれよという間に、
とんでもないことになっていくのです(笑)。
その、一見何も関係のないところにある関係に気付いたとき、
一瞬背筋が凍ります。まさに“マジック”だなあ、と。

ただ、中にはあの人はどうなったの?という人もちらほら(笑)。
短編だと考えれば、解決のない終わり方もありなんですが、
連作短編だしなあ、結局一つの大きな物語になるわけだしなあ、
と考えたときに、放り出されたままの人のことが気になったり。
ま、それは物語全体からすると、とても些細なことなのですけどね。


共犯マジック
北森鴻著

出版社 徳間書店
発売日 2001.07
価格  ¥ 1,680(¥ 1,600)
ISBN  4198613826

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