紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「シンデレラの罠」セバスチアン・ジャプリゾ

2005年05月19日 | さ行の作家
「私は事件の探偵であり、証人であり、被害者でもあり、
しかも犯人でもあるのです。いったい私は何者でしょう」
この、超有名なフリに誘われて、手に取ってはみたものの、
やっぱりちょっと古いんだよね(^^;)。なかなか読みづらくて、
薄い割には時間がかかりました。求む・新訳。

ある朝目覚めると、私はミイラのように顔に包帯を巻かれて
いました。名前は“ミッキー”。億万長者の相続人。
でも、私には記憶がなくて…。

少し前に、よく似た設定の作品を読んでいたこともあり、
早い段階でネタは割れてしまったのですが、安心して読んでいると
エライ目に遭います(笑)。記憶喪失を扱った話だと、
“私(あなた)は誰?”というのがメインとなるのですが、
本作では、“私はミッキーか、それともドムニカか”の二者択一。
自分のアイデンティティを取り戻そうという、無くしたものを探す
物語ではなく、どちらか一方を選ぶだけで、必然的に
アイデンティティは付いてきます。でも、私だったら、どっちも
選びたくないな(笑)。まあ、そこに彼女が記憶を失うきっかけに
なってしまった事件と、遺産相続の問題が絡んでくるから面白いのです。
しかも、あのショッキングな終わり方といったら!
だから、もう少し読みやすい訳だとより楽しめるのになあ(笑)。
でも、最初の「ミと、ドと、ラという3人の少女がいました」という
始まり方は、とても雰囲気があって、好きです(^-^)。



シンデレラの罠」セバスチアン・ジャプリゾ(創元推理文庫)