紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「石の中の蜘蛛」浅暮三文

2005年05月18日 | あ行の作家
浅暮三文といえば、「ダブ(エ)ストン街道」の印象が強くて、
不思議な魅力で作品に遊ばせてくれる人だと思っていたのですが、
これまた“不思議”以外どこにも共通点がなく(笑)。
ミステリーはミステリーなのですが、ほとんど他人との
接触がなく、主人公の“独白”スタイルで進むので、
なかなか辛いモノがありました。物語には、ドラマティックな
展開を望んでいるらしいのですね、私は(今気付いたよ^^;)。

事故後、聴覚が異常に発達してしまった主人公。
彼が引っ越しした先の部屋で、前の住人が残した“音”から
事件の匂いを嗅ぎ取った彼は、次第に深みにはまっていく。

日本推理作家協会賞・長編部門受賞作ということで、
物語後半、核心に迫っていくあたりは読んでいるだけで
心臓がばくばくしました(笑)。新しい事実を、音によって
掴んでいくというのが面白いし、その音は、間違いなく事実で
あるというのがまた面白い。しかしながらですね、
彼の異様に発達した聴覚がどういうものか、彼に音がどう
聞こえるか、また“見える”か、という説明が長い長い。
それがとても重要なことはよく分かります。それが
事件解決の鍵になるわけですからね。でも正直、
途中で飽きました(笑)。しかも、その状態が彼にとっても
異常であり、苦痛であるのがこちらにも伝わってしまい、
読みながら眩暈がする(笑)。しかも、最後救われなくて
眩暈がする(^^;)。この不思議な世界は浅暮さんらしい
とは思いますが、読むにはしんどかったです(笑)。


石の中の蜘蛛」浅暮三文(集英社文庫)