紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「未明の家 建築探偵桜井京介の事件簿」篠田真由美

2005年02月02日 | さ行の作家
初・篠田さん。当然、初・桜井京介なのです。
さすがは女性の篠田さん、女性読者の萌えるツボをよくご存知で(笑)。
美貌の探偵・桜井京介はもちろん、ミステリアスな蒼に萌えますな。
なんというか、助手なのですが、15歳。
薬屋探偵妖綺談でいうところのリザベルみたいな感じです。
蒼くん、キミは一体、普段は何をしているの?
どういう経緯で桜井京介と一緒にいるようになったんですか?
さらに、深春さんと京介との関係も気になるところ。
ストーリーそっちのけでのめりこみました(笑)。

“建築探偵”とは、なんとも館モノにぴったりの探偵ではないですか。
確か、犀川助教授は建築学科でしたね。建築の専門家。
でも、あのシリーズで館モノはあまり印象に残ってないなあ。
で、建築探偵・桜井京介はというと、実は文学部なのですね。
美術史を学ぶ大学院生で、専門は近代日本建築史だそうです。
建築の専門となると、やはり森助教授のようにコンクリートとか、
そもそも土木部だし、構造とか素材とかそっちの方になるんでしょうね。
だから美術史なんだ。建物を芸術として見る。建物にまつわる歴史を見る。
そうすることによって、住む人にも深く関わることができる。
どちらかというと、館シリーズの場合は、館そのものが格になるわけですが、
このシリーズでは、館そのものというよりは、館にまつわる人たちが、
さらには、京介や蒼、深春といったレギュラー陣の人間関係が
格になるんじゃないかと思います(まだ1作しか読んでないんですが(笑))。

桜井京介の所属する研究室に依頼されたのは、閉ざされたパティオのある
別荘「黎明荘」の鑑定。そこではかつて、主が不可解な死を遂げたという。
さっそく京介たちは調査のために出かけるが、その別荘を巡ってまた事件が…。

そこに仕掛けられた“謎”というものが、
見る角度によって変わる万華鏡のような気がしました。
探偵にとっては“謎”であったとしても、
依頼者にとってそれは“呪い”でしかない。
それを、探偵は解いていくだけなのだけれども、
依頼者にとっても呪いが“解かれる”ことになったわけです。
こういう風に書くと京極堂シリーズのような感じに思えますが、
あれは、京極堂が謎を解くと同時に、憑き物も落してやっているのですが、
京介の場合は単に謎を解いただけで、それで呪いも解けてしまった、と。
この物語では、京介と依頼者というのが、対極にいるように感じるんです。
でも、それを蒼という存在がうまくリンクさせているなあ、と思いました。
そんな魅力的な存在なのに、まだまだ謎に包まれているんですよね、蒼って。
これは、続けてシリーズを読まないといけないじゃないか(笑)。
またひとつ、追いかけるシリーズが増えました。


「未明の家 建築探偵桜井京介の事件簿」篠田真由美