紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「荊の城」サラ・ウォーターズ

2005年01月19日 | さ行の作家
一昨年読んだ「半身」は、ものすごい衝撃でした。
や。筋は案外ありがちなんですよね。でも、そこ(結末)へ
至までの道中と、その末路のギャップがなんともものすごかった。
「半身」がそんな作品だったので、ある意味手を出すのが
怖かったのですが、なんのなんの。「半身」を凌ぐ面白さでした。

舞台は19世紀のイギリスはロンドン。
スウは下町でスリを生業として生活していた。
一緒に住むのは、いかがわしい商売をしている“家族”たち。
そんなスウのもとへ、“紳士”と呼ばれる男性が話を持ち込む。
スウにそれに一枚かんでほしい、というのだ。
迷いつつもその話に乗ったスウは、一路「ブライア城」へ出かける…。

上下2巻、しかも洋モノとあって、苦手意識が先行していたのですが、
気付けばあの世界にどっぷり浸かっている(笑)。
物語にのめり込ませておいて、落す、というのは
「半身」で心得ていたはずなんだけど、想像以上にすごかった。
落されること数度。その度ごとに、余計にのめり込んでいくのですよ。
自分の意志ではなく、作者の意のままに引きずり回されるんですねえ。
なんでこんなに惹かれるんだろう、と考える隙も与えず、
すぐにあっち(物語)の世界に連れて行かれてしまいます。
そして迎えるフィナーレは、とても満足のゆくものでした(^-^)。

でも実は、一歩間違うと嶽本野ばらではないかとか、
いや森奈津子か?とか、そんな感じだったりするのは、内緒です(笑)。


「荊の城(上)」「荊の城(下)」サラ・ウォーターズ