心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

倫理・政経

2005-11-02 12:11:30 | 法律・倫理など
 関係ないけど,今から考えると,すごい科目名だなあ,倫理・政経。
 さて,最近の記事の流れでは心倫研とも称したくなってきましたが,日本心理臨床倫理学会(通称:日心倫,隠語:森林)なんてどうかなとか。
 もとい,ある書籍の評価として,その内容というのはいうまでもないのですが,もう一つの捉え方として,「社会文脈上の意味」というのも考えられるかと思います。
 無論,その本それ自体に価値がなければ流れていくだけですが,意表をつく出版文脈から出てくる本もあるわけで,少なくともそこには文脈上の意味がないわけはない。なければ出版されないですから。
 昨今の出版事情は芳しいわけはなく,そういう意味では出版社はみな必死ですから,新規開拓を狙っているのは間違いないのですが。
 奥歯にモノの挟まった前置きになりましたが,綿矢りさ『インストール』とか,エドワード・ゴーリー『ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで』(これなかなか面白いです)を出してる河出書房新社からこんな本が近々出版される模様。


よくわかるカウンセリング倫理よくわかるカウンセリング倫理
水野 修次郎

河出書房新社 2005-11
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 まあ,出版社で働くものとしては,色々と邪推したくなるのですが,明らかに専門家以外は興味を示さないであろう(タイトルからしても)書籍が,なぜ。
 単に著者と出版社になんらかのつながりがあってのことなのかもしれませんが,心理の文脈を離れたところで,こういう問題が取り沙汰される「意味」があるのだとすれば,事態はもっと深刻なのかもしれません。まあ総合出版社っていうのは基本的には節操ないから,考えすぎなんでしょうけどね。
 どういう本になっているのか,読むのが楽しみです。


 さて,そんな私のベストブックオブ河出書房新社は,これ。


ユリシーズ〈1~3〉ユリシーズ〈1~3〉
ジェイムズ ジョイス James Joyce 柳瀬 尚紀

河出書房新社 1997-03
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ユリシーズ〈4~6〉ユリシーズ〈4~6〉
ジェイムズ ジョイス James Joyce 柳瀬 尚紀

河出書房新社 1997-08
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 つうか,このシリーズの刊行事情こそ,いったいどうなっちゃってんの?

 そして,よくやった! と言いたいのは,ちょっと前なんですが,これ。


フィネガンズ・ウェイク 1フィネガンズ・ウェイク 1
ジェイムズ・ジョイス 柳瀬 尚紀

河出書房新社 2004-01-07
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 2004年に何と文庫で出てました! 昔,どこかに引用されてた柳瀬訳「アナ・リヴィア・プルーラベルの章」を読んでホント衝撃だったのですが,今だと,わりと普通に読めるというのが,驚きです。もはやそれほど異常だとは思わないというか。2039年(ジョイスは100年後には理解されるだろうと言ったそうです)には確実にみんな理解できてるだろうと思わせる昨今の言語状況かと思います。
 そして柳瀬訳はタイポグラフィカルな技もたくさん使っているのですが,症例記述にタイポグラフィをふんだんに盛り込んだのは,といえば以前も紹介したこれです。


症例でたどる子どもの心理療法―情緒的通いあいを求めて症例でたどる子どもの心理療法―情緒的通いあいを求めて
森 さち子

金剛出版 2005-09
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 この症例記述は,ALP(アナ・リヴィア・プルーラベル。こう略すとインテリっぽい)を彷彿とさせますよ。若い女性の著者に多い気がしますね。宮川香織先生とかね。
 つうか最終的に,倫理,関係なくなってしまいますた……。あなオソロシ,自由連想。まあ僕の脳内では関係してますが,何か?

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2 コメント

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河出さんの本 (名無し)
2005-11-02 13:01:32
河出さんは,こんな本を出されていますよ.



家族のイメージ

亀口 憲治 (著)



ただの情報ですが.
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誤解を生む表現ですみません。 (psy-pub)
2005-11-02 13:36:29
 無論,講談社だって集英社だって心理書を出してると思いますが,「専門家→一般」のベクトルがあまり感じられず,「専門家→専門家」以外のベクトルが感じられない本ということなんですよ……。文章力不足ですみません……。



 つまりはカウンセラー以外は読もうとは思わないのでは?ってことなんです。亀口先生の『家族のイメージ』は,タイトルからも,一般人が買うのがアリだと思うのですが(内容は別としても),『カウンセリングの倫理』だと一般人は買わないでしょうということなんです。



 「怖いカウンセリング」とか「カウンセリングを受けたいあなたへ」とかだったら分かりますが,それだと「カウンセリングを受ける人」向けになるし,明らかに内容が「カウンセリングをする人」向けになってる気がしたものです

から。そしてそれは専門書というのでは? という論理なんです。まあ全部推測なんですがね。
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