先端技術とその周辺

ITなどの先端技術サーベイとそれを支える諸問題について思う事をつづっています。

ドイツで進む「新しいクルマ」のあり方 企業も市民も行政も価値観を変えた

2020年08月12日 20時32分57秒 | 日記

 

ニューズウィークが、ドイツの自動車会社が次々とカーシェアリング、クルマと人、公共交通システムと人とをつなげる革新的なソーシャル・アプリを介したいろいろなモビリティ・サービス事業を充実し始めているという。然も、単独ではなく、競争相手である自動車会社が共同でMaas事業を展開しているという。クルマを製造し販売するだけの産業の限界を認識し、デジタル・サービスを組み合わせた都市型モビリティ・エコシステムを創出することが自動車産業の生き残れる道だというわけか? MaaSはドイツで生まれたアイデアにせよ、日本の自動車会社は相変わらず、ガソリンエンジンの宣伝しか行っていない。トヨタだけが、一時期MaaSで、新しい概念を宣伝していたが、相変わらず、車単体の宣伝。多くの人は車には勝手ほどの興味は示していない。いささか日本の自動車産業、心配になる。それこそ、数十年前は日本のICT、世界の最先端を行っていた時期があったが、今は、後進国のトップを言っているという感じ。日本の自動車会社、パラダイムシフトしてもらいたいもの。

BMWとダイムラーは合弁会社を設立し、5つのモビリティ・サービスを

2019年2月、2つの大手ライバルであるBMWとダイムラーは、それぞれの都市型モビリティ・サービス事業を5つのサービスに統合する合弁会社を設立し、10億ユーロ(約1,246億円)の投資を実行した。

takemura0807a.jpg

019年2月、BMWグループとダイムラーAGのモビリティサービスの統合を発表するベルリンでのプレスイベント。BMW AG取締役会会長のHarald Krüger氏(左)と、ダイムラーAG取締役会会長でメルセデス・ベンツ自動車の責任者であるDieter Zetsche氏(右) (C)Daimler AG

この5つの事業内容を紹介しよう。第1は、AからB地点に移動するためのさまざまなオプションをユーザーに提供し、地元の交通機関のチケットを予約して直接支払い、カーシェアリングからレンタル自転車などを複数組み合わせて移動オプションを提供するREACH NOW(マルチモーダル)である。

第2は、電気自動車のドライバーにむけた充電サービス、CHARGE NOW(充電)である。このサービスを通じて、ドイツ国内および海外の公共の充電スタンド(25か国に100,000を超える充電ポイントがある)を簡単に見つけ、使用し支払うことができる。

第3は、スマホをタップするだけで、顧客はタクシー、プライベート・ドライバー、または最新のeスクーターなどをオファーできるFREE NOW(タクシーやライドシェア配車)である。これは、ヨーロッパとラテンアメリカで2,100万人以上の顧客と25万人以上のドライバーとつながっている。市内の交通量の削減に重要な貢献をしているサービスであるFREE NOWは、ベルリンでは、Uberを超えてタクシーやライド配車の定番となっている。

takemura0807c.png

FREE NOW(タクシー配車)のスマホ画面。出発地点から目的地までの距離、時間、料金が表示される


第4は、駐車場や路傍での駐車を簡素化した革新的なデジタル・パーキングサービスであるPARK NOW(駐車場予約)である。このサービスは、顧客に最適なパーキング・ソリューションを提供する。駐車スペースを一目で見つけ、予約し、駐車時間を指定し、チケットなしで駐車場に出入りし、キャッスレスで駐車料金を支払うことができる。

第5は、スマートフォンを使って、いつでもどこでも、自由に街中のカーシェアリング・サービスにアクセスでき、31の都市で20,000台のクルマが配置され、合計400万人を超える顧客がいるSHARE NOW(カーシェアリング)である。カーシェアリングは、車両の利用率を高めることができるため、都市の車両総数を減らすことができる。メルセデス・ベンツやBMW、ミニ・クーパーなど、ユーザーが望むクルマが選択できるのも魅力となっていて、市場のカバー範囲が拡大している。

takemura0807d.png

SHARE NOWのスマホ画面。自分のいる場所の近くに多くのクルマが見つかる

ドイツで進む「新しいクルマ」のあり方 企業も市民も行政も価値観を変え

ドイツで進む「新しいクルマ」のあり方 企業も市民も行政も価値観を変えた

ベルリンのタクシーはメルセデス・ベンツとトヨタ・プリウスに二分される。ベンツのお膝元でも、プリウスの評価は高い。写真はトヨタ・プリウス。車体にはFREE NOWのロゴがある

<ベルリンでは、数年前からMaaS(サービスとしてのモビリティ)の可能性を実感できるサービスが次々と登場している......>

ドイツには226のカーシェアリング・プロバイダーがある

人が移動する手段や、社会の交通システムと情報コミュニケーションとを最適化するのがモビリティ・マネージメントである。これは「サービスとしてのモビリティ(Mobility as a Service: MaaS)」としても知られ、より個人化された移動サービスの基盤でもある。世界中でMaaSの市場に勢いが生まれた背景には、ライドシェアリング、配車サービス、バイクやスクーターを含むカーシェアリング・サービスなど、革新的なモビリティ・サービスプロバイダーの急成長がある。

特にカーシェアリングや自動運転車をオンデマンドで手軽に利用できれば、自家用車を所有することの経済的デメリットは顕著となる。MaaSへのシフトは、シームレスに複数の交通チェーンをスマホ・アプリに統合することで、移動のすべての区間で予約とキャッシュレス支払いを一括管理できる利点がある。

<iframe id="R0XIJIP" width="0" height="0" frameborder="0" marginwidth="0" marginheight="0" scrolling="no" allowfullscreen=""></iframe>

ここベルリンでは、数年前からMaaSの可能性を実感できるサービスが次々と登場している。クルマと人、公共交通システムと人とをつなげる革新的なソーシャル・アプリを介したサービスが次々に生まれ、都市のモビリティに大きな変化が到来している。内燃エンジンから電気自動車への急速なシフトも、環境負荷に配慮した次世代のクルマ社会の顕著な動向である。

中でも、自動車大国ドイツの各都市では、クルマを所有せず、クルマを複数の人と共有するカーシェアリング市場が急拡大してきた。ドイツ・カーシェアリング協会の調査によれば、現在、ドイツには226のカーシェアリング・プロバイダーがあり、国内840か所でクルマの共有(シェア)が実施されている。ドイツ国内で229万人の顧客が登録されていて、利用されるクルマは25,400台を数える。パンデミックによるロックダウンで一時サービスが休止状態に追い込まれたが、今は市内の移動や近場の旅行などのニーズに対応し復活している。

今やクルマはスマホのアクセサリーか?

ベルリンはオーガニックやビオ(Bio)食品、エコ・ビジネスなど、ライフ・イノベーション産業の中心地でもあり、循環型持続社会への取り組みは、ドイツの基幹産業である自動車産業にも劇的な変化を促してきた。この変化の主要な要因は、クルマと人を直接つなげるスマホ・アプリの威力である。個人のモビリティ・マネージメントの大半は、情報のモビリティとなり、今やクルマはスマホのアクセサリーとさえなっている。人々の新たな情報器官となったスマホは、実体経済の仲介役としてさまざまなビジネスをもたらしてきた。スマホというソーシャル・インフラこそ、既存産業のすき間に様々なビジネスを生み出すプラットフォームである。

ドイツの自動車産業界が、相次いでカーシェアリングを軸にした新ビジネスに参入した背景には、未来の自動車産業の課題が反映されている。単にクルマを個人に販売するだけでなく、クルマが社会全体の中でどう存在すべきなのか?そのひとつの答えが、カーシェアリングによるモビリティ社会の再構築なのだ。


ダイムラーのCEOであるディーター・ゼッツェ氏とBMWのCEOであるハラルド・クルーガー氏は、クルマを製造し販売するだけの産業の限界を認識し、デジタル・サービスを組み合わせた都市型モビリティ・エコシステムを創出するために、大手2社だけでなく、スタートアップとの連携を強化しようと考えてきた。ドイツの自動車メーカーは、お互い競い合うだけではなく、共にUberやグーグル、そしてテスラに挑むことを決意したのだ。合弁会社の拠点は、もちろんベルリンである。

今や世界各地に拡張しているドイツのカーシェアリング・ビジネス

ドイツの自動車メーカー大手にとって、モビリティ関連の新興企業によってもたらされた脅威は、彼らの100年前のライバルよりはるかに大きな影響を与えている。BMWとダイムラーによるジョイント・ベンチャーは、世界に約6,000万人いる彼らの顧客に向けたモビリティ・エコシステムをめざすものだ。

ドイツの主力自動車会社が世界に先がけて始めたカーシェアリング・ビジネスは、ドイツ国内にとどまらず、今や世界各地に拡張している。中でも、BMWが最初に市場参入し、現在ダイムラーとの合弁会社として運営されているSHARE NOWは、ここベルリンでは多くの支持を得ている。「フリー・フローティング・カーシェアリング」と呼ぶこのサービスは、クルマが街中のどこにでもあることを意味している。市内のどこにいても、半径200メートル以内にクルマが見つかる、というのが謳い文句で、事実、急にクルマが必要になれば、専用のスマホ・アプリで周辺のクルマを探し、スマホのアプリがクルマのキーになり、面倒な手続き不要でクルマをシェアできる。

駐車スペースも地下駐車場や専用駐車ゾーン以外なら、市内どこでも停められる。これは、SHARE NOWがベルリン市と包括的な駐車料金支払い契約を結んでいるからだ。SHARE NOWは、そのスマホ・アプリの使い勝手の良さもさることながら、1キロメートルにつき0.19ユーロ(約24円)の料金で短時間でも長時間でも乗り捨てできる。2時間で13.99ユーロ(約1,744円)、一日シェアしても24.99ユーロ(約3,116円)である。駐車代、燃料代、保険料などの諸経費も、利用料金に含まれており、その利便性が市場拡大を支えている。


takemura0807f.jpg

SHARE NOWで一番コンパクトなクルマ「スマート」
<iframe id="RKAS6XP" width="0" height="0" frameborder="0" marginwidth="0" marginheight="0" scrolling="no" allowfullscreen=""></iframe>

 

企業も市民も行政も"クルマ"の価値観を変えた

ベルリン市の人口は377万人、そこに1,200台のクルマが点在しているだけで、多くの人々のクルマ利用のニーズを満たしている。実際ベルリンの街を歩いていると、このSHARE NOWのクルマによく遭遇する。従来の所有するクルマではなく、皆とシェアするクルマというパラダイム・シフトを実現するのは、簡単なことではなかったはずだ。

ベルリン市はこの新たなクルマのコンセプトを、環境問題解決や都市交通網の最適化に貢献すると判断した。道路交通法を抜本的に変え、これらの新規ビジネスの参入障壁を取り除き、かつ都市環境問題の解決に取り組むという、企業、市民、行政のそれぞれが価値共有(シェアリング・バリュー)に成功した事例となったのである。

同時に、既存の自動車産業とユーザー・コミュニティが直接つながることで、異業種とのコラボレーションも生まれている。今やクルマは、道路の上にあるだけでなく、インターネット(スマホ)の中に存在している。クルマを所有する人が減少する中、特に若者たちのクルマ離れは世界の先進国で顕著となっている。クルマが所有するだけの選択肢に留まっていたなら、若者たちはクルマの免許すら取得しないかもしれない。

しかし、クルマをシェアする時代が到来したことで、若者たちはクルマの免許を取得しようとする。カーシェアリング・ビジネスへの参入によって、クルマが売れなくなるのではという懸念も産業界にあった。ドイツの自動車産業界は、カーシェアリングを敵にするのではなく、未来のクルマ社会の味方にしたのだ。この懸命な選択は評価されるべきだろう。今やクルマも、ソーシャル(社交する)メディアであるからだ。


デジタル投資15.8%増 20年度、コロナ下でDX加速

2020年08月12日 20時03分39秒 | 日記
日経によると、『デジタル投資15.8%増 20年度、コロナ下でDX加速』という。調査した企業では設備投資は1.2%減っているが、IT投資は15.8%増える見通しで、経営変革を狙った、情報通信の拡充だという。

日本経済新聞社は2020年度の設備投資動向調査をまとめた。企業のIT(情報技術)投資の計画額は前年度実績比15.8%増と大幅に増える見通しだ。新型コロナウイルスの感染拡大で集計企業全体の設備投資額が1.2%減になるなか、積極性が目立つ。モノやヒトの動きが滞り、ビジネス環境は一変している。販売や供給網の変革につながるデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる。

調査は上場企業と資本金が1億円以上の有力企業948社を対象に集計した。20年度の全産業の設備投資の計画額は19兆2395億円と1.2%減る見通し。前年割れは英国の欧州連合(EU)離脱の決定などで世界経済の不透明感が増した16年度以来、4年ぶりだ。このうち製造業は1.4%減、非製造業は0.9%減る。

これに対し、IT投資額(対象は765社)は15.8%増の4718億円となり、2年連続での2桁増を見込む。製造業の伸び率は20.3%増と過去最高で、非製造業は13.1%増となる。

 

 

目指すのは事業の変革を通じた競争力向上だ。IT投資額で首位のセブン&アイ・ホールディングスは19.9%増の1212億円を投じ、売り方などを変える。ネットスーパーで配送料金を柔軟に上下させて消費者の利便性を高めるほか、配送員の負担を分散させる。

クボタは2.4倍の208億円を投じる。米マイクロソフトと提携し、「農機や建機の生産や販売の情報をグローバルで一元管理する」(北尾裕一社長)。大成建設はIT投資を17.1%増やす。遠隔で工事の進捗を確認したり、施工管理したりして省力化する。

 

 

DXに積極投資する企業が増えているのは、ITの活用で組織運営やビジネスモデルの変革を進めてきた企業ほど、コロナ下でも業績や企業価値を高める傾向にあるためだ。みずほ総合研究所の酒井才介主任エコノミストは「新型コロナで変革を迫られた経営者がDXの必要性に改めて気づいた。今後はIT投資が一段と進む可能性がある」と語る。

在宅でのテレワーク対応なども含め、IT投資が広がるためにはインフラ整備が欠かせない。富士通は設備投資を14.1%増の1100億円とし、データセンターの増強などを急ぐ。「DXビジネスの拡大に向けた戦略投資を進める」(時田隆仁社長)

新型コロナの逆風が強い産業では設備投資の落ち込みが大きい。日本航空は20年度の投資を1200億円と前年度から半減させる。「飛行機が飛ばない状態では削るしかない」(赤坂祐二社長)とし、手元資金の確保を優先する。

新型コロナで設備投資は下振れするリスクが残るほか、対立を深める米中関係も影を落とす。ソニーは設備投資を5000億円と2.5%減らす。収益の柱の一つである画像センサーで、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)向けの供給減などを想定する。

事業環境の先行きが不透明として、NTTグループ(NTTドコモは回答)やイオン、JR東日本など一部の大企業は調査に回答していない。

一方、「世界的な経済環境は悪いが、そういうなかでシェアを取る会社が絶好のチャンスを得る」(日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者=CEO)との声も上がる。ITを軸とする成長分野への投資を堅持できるかが問われそうだ。