ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】生命を探る 第二版

2009年04月17日 22時12分18秒 | 読書記録2009
生命を探る 第二版, 江上不二夫, 岩波新書(黄版)112, 1980年
・日本における生化学の第一人者による、『化学の立場から見た生命』。細胞を構成する分子のミクロの視点から地球外の生命というマクロの視点まで、専門外の人間でも十分読みこなせる平易な言葉で語られている。1967年に出版された第一版の改訂版。
・それとは知らずに手にとった本だったが、筆者は、この分野での有名な本、ワトソン著『二重らせん』の訳者でもありました。
・残念ながら筆者は故人ですが、この改訂版からも既に29年が経ち、第三版を書き直しても良いほどのめざましい進歩が生化学分野では現在も続いています。しかし「生命とは何か?」の答えが見えない状況は相変わらず。
・「生命を探る ――化学の立場から――  化学の立場から生命を探る、とは、生命現象を分子間の相互作用として理解することである。  それは前世紀以来「生化学」とよばれている。」p.i
・「化学者はまず、生命は何か無機界とは本質的にちがった物質を含んでいるのではないか、生物には無機界とちがった化学変化が行なわれているだろう、それを見出そう、と考えた。」p.1
・「19世紀初期の化学者は、有機物を合成する能力を生命の特性と考え、それを生命力に帰していた。ただ、生命力そのものについての意見は一様ではなく、ある者は神秘的な力として理解し、ある者は特殊な物理化学的条件として理解していたようである。」p.2
・「代謝が分子間の相互作用として理解されたとき、分子生物学の成立があってもよかったであろう。しかしそうはならなかった。分子生物学が成立するには、生物の最も基本的な性格である遺伝の本質が分子間の相互作用として理解されるのを待たねばならなかった。」p.10
・「10年余り前から生命科学という言葉が盛んにつかわれるようになった。しかし実はその意味は必ずしも一様な理解に至っていない。(中略)その社会的要請に即して、筆者は生命科学を「人間生活のための生物学」と理解する。」p.11
・「ここでは化学の立場から、生命科学の社会的要請にこたえて、生命を探ろうと思う。」p.13
・「20年以上も前に生命の問題を議論する会議がモスクワであったときに、ポーリング(米、1954年ノーベル化学賞)が、生命を定義することよりも、生命を研究することの方がやさしい。定義はしなくても研究はできる。化学者は定義しないで研究すればよい。そういうことをいったことがあるが、研究することによって本質がだんだんとわかってくるともいえる。」p.16
・「生命の存続を可能ならしめている最も基本的な行為は自己増殖である。そしてそれを含めてより一般的にいえば、英国の有名な生理学者ホルデーンの古い言葉をかりれば「正常な特異的な構造の積極的(能動)維持」といえる。」p.18
・「個々の生物をつくっている形態・物質は本来この地球上では不安定なものであり、いずれは無機物へ返されてしまう運命にあるのであるが、生きている限りは、それに抵抗して、維持されているのである。  われわれは、この維持のために、空気をすい、水を飲み、食物をとる。」p.25
・「「正常な特異的な構造の積極的維持」をするためには、われわれは食物をとらなければならないが、われわれは、まず食物のもっている、ほかの生物の特異的構造を徹底的に破壊して、特異性のない低分子化合物にしてから、吸収し、それを素材として、自己の正常な特異的な構造をつくりあげるのである。」p.28
・「以上、本来不安定なものの積極的維持には、まず素材エネルギーが必要であることをのべた。  実は、これだけでは大事なものが欠けている。一軒の家を建てるにも、材料とエネルギーのほかに、どのような家を建てるかを指定する設計図が要るだろう。(中略)ヒトの子はヒト。ヒトの子に急にサルの子が生まれたりはしない。「こういう子を作るのだぞ」という命令――それをわれわれは情報という――が、それをつくる場に伝えられているにちがいない。これを情報の伝達という。それは設計図の役割を果たす。」p.32
・「化学の立場から見ると、「地球型生物」の第一の基本的な特徴は、「水と炭素化合物を基盤的物質とした生物」といえるであろう。」p.40
・「生物が正常な生活現象を営むのに必要な元素を生元素といっている。」p.40
・「ヒトについて生元素であると一般に認められているものは、多量にある酸素、炭素、水素、窒素、ナトリウム、カルシウム、塩素、リン、イオウ、カリウム、マグネシウム、生物微量元素として、鉄、マンガン、銅、亜鉛、ヨウ素、セレン、コバルト、モリブデン、クロムである。ケイ素、フッ素、ニッケル、錫、バナジウム、臭素などもその必要性が報告されている。」p.42
・「地球上に天然にある元素は約90種であるが、生体はそのうちの10種ほどの元素でほとんど構成されているということは興味あることである。生物はどのようにして、この約10種を選んだのであろうか。」p.43
・「すべての天然の自己増殖能をもつものは、少くとも、水、タンパク質、核酸を含んでいる。(中略)ところで、水とタンパク質と核酸とをただまぜ合わせても、自己増殖能のあるものは生まれない。問題は「水とどのようなタンパク質とどのような核酸とが、どのような存在状態にあるときに自己増殖能が生まれるか」を解明することである。」p.47
・「「すべての生物は生命に最も重要なものは自分自身でつくれるようにできている。だから食う必要なんかないんだ。われわれは生まれてきた。ビタミンはつくれないから、食って命をつづけている。核酸はつくれるから食わんでよい。核酸をつくれないようなものははじめから生まれてくることさえできないんだ。」p.59
・「1800年代のはじめにベルツェリウスがいったことば「生物には合成を容易ならしめる特殊な条件がある」は、今なおそのまま通用する。この特殊な条件の一つ、あるいはむしろ、そこの主役を演じているものは生物の特殊な触媒であり、それが酵素である。」p.76
・「要するに、酵素は酵素作用(触媒作用)という機能をもったタンパク質である、ということになる。本章の最初にのべたように、「酵素は生きているか」という質問をしばしばうける。生物学者や生化学者の一般の常識からいえば、それは生きていない。しかし、赤堀四郎博士がしばしばいわれるように「タンパク質は生きている」という意見もないわけではない。実は「生きている」ということが定義されないので、これは議論にならないのである。」p.79
・「本書の最初に、「化学の立場から生命を探る、とは、生命現象を分子間の相互作用として理解することである」とのべたが、この「分子」のなかには、多くの場合に酵素が含まれているのである。」p.84
・「生物は熱機関ではない。エネルギー源としての栄養素の栄養価を熱量単位カロリーであらわすので、誤解をおこしやすいのである。(中略)いいかえれば、生物は、一般に、エネルギー源に含まれている科学的潜在エネルギーを、熱の形をへることなしに、いろいろな生物的仕事に変換しているのである。仕事をした後に、終局的には熱として外界に放出する。」p.88
・「これを言葉でいえば、エネルギー源としての栄養素の分解によって遊離されるエネルギーでまずATPがつくられる。ATPの形でエネルギーがためられる、といってもよい。次にATPが分解され、そのとき遊離されるエネルギーでいろいろな生物的仕事が行なわれる。もちろん、どの段階の反応にも、それを触媒している酵素が関係している。」p.97
・「要するに、すべての生物は、生活に必要なエネルギーをATPに依存し、そのATPは有機物中にたくわえられた化学的潜在エネルギーをうけてつくられる、ということができる。」p.102
・「細胞についてはいうまでもないが、細胞小器官といわれている細胞内の諸構造体(核、細胞膜、ミトコンドリアなど)が、それを構成している要素(いろいろなタンパク質、核酸、脂質、多糖など)から、何によって規定されて具体的な構造がつくられ、機能をもつかはほとんどわかっていない。これらは今後の生化学の大きな課題である。」p.135
・「微生物が合成しうるすべてのタンパク質の設計図はDNAの中に書き込まれている。ただ微生物は、自身のつくりうるタンパク質のすべてを実際につくってはいない。そのおかれた環境で生活に必要なタンパク質をはじめ、ごくわずかのタンパク質を合成しているにすぎない。ほかのタンパク質を合成する能力は、能力として保持しているが、通常は実際に用いていない。特殊な環境におかれ、特殊な酵素を合成することが必要な条件におかれると、誘導的にその酵素を合成するのである。これはいわば微生物細胞の自動制御である。」p.141
・「しばしばホルモンビタミンと並べて論じられる。ビタミンとはある種の生物(普通には動物)の生長または健康な生理的状態の維持に必要なもので、かつ、主要栄養素(高等動物ではタンパク質、脂質、糖類、塩類)から体内において調整することのできないものである。(中略)たとえばビタミンCはヒトにとってはビタミンであるが、ネズミにとってはホルモンである。」p.147
・「生物圏が地球上で果たしている役割を科学的に研究するのが地球生化学である。」p.151
・「生物学が地球生物学である限り、生物学は普遍的な科学とはいえない。宇宙生物学となってはじめて生物学は物理学・化学とならぶ普遍的な科学となりうるのである。」p.160
・「宇宙生物学の基本的法則というのは、天体の進化の一環としての生物の進化の法則にほかならず、天体の過去現在とそこの生物との必然的関係を明らかにすることである。  先にのべた宇宙生物学の第一の分野の目標はここにあり、従って私はむしろこれを普遍生物学とよびたいのである。実はこれこそが生物学であり、従来の生物学は地球生物学(実は地球を無視しているが)なのである。」p.163
・「生体高分子から、その複合系、原始的生命への発展がどのように行なわれたかについては、まだ一般に認められる説はない。実験的にも、原子細胞模型として、タンパク質などからなる微小球の形成などが行なわれているが、生命の起源との結びつきは疑わしい。  しかしいずれにしても漠然と、原始地球に形成した生体高分子を中核とし、さらに水、多くの低分子有機物の相互作用を経て原始細胞へと進化したと思われる。」p.186
・「もし太陽系内には地球以外に生命はない、ということが確定された暁には、太陽系外に一般の生命の存在を探求することは当分不可能なので、高度の文化をもった地球外文化の探究のみに期待をかけなければならない。」p.203
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【写】北広島市芸術文化ホール<花ホール>(北広島)

2009年04月17日 08時00分25秒 | 撮影記録2009
●北広島市芸術文化ホール<花ホール>(北広島) 撮影日 2009.1.18(日) [HomePage][Yahoo!地図]

・開演前の空き時間にホールを撮影。
 
・イスの行列。まん中のブロックは前後で頭の位置が重ならないように、微妙にずれて配置されています。
 
・ステージより。こちらは道内でも屈指の音響を誇る、座席数約600の中型の音楽用ホールです。
 
・照明の加減で、イスの下には不思議な影が。
 
 
・ホールのロビー。
 
・ロビーの窓はステンドグラスになっています。
 
・ロビーの階段を上がり、通路を通って二階席へ。
 
・上から見たホール全景。
 
・ステージに並ぶイスと譜面台。
 
・二階席の縁に沿って造花がぐるっとホールを取り囲むように飾られていますが、これが<花ホール>という名称にちなんだ物であることに今更気がつく。
  
・再びロビーに下り、車椅子用の通路を通ってホールへ。
 
・扉をいくつか抜けて舞台裏へ。
 
・舞台裏の様子。

・出番を待つ花束たち。開演はもうすぐ。

[Canon EOS 50D + EF-S18-200 IS]
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