直江兼継の何がすごいのかよくわからずじまいでした。直江状と言われる書簡が有名だそうですね。そう言われればそれは確かにすごいと後から思いました。でも、もっと駆け引きとか出てくるかと思ったので少々拍子抜け。でも、時代小説もなかなかおもしろいと思いました(何だこの小学生みたいな感想は・・・)。
妹がタイに行っちゃったので、つなぎで一本書いてみました。もう、推敲する気力もないのでそのまま上げちゃいます。お題は引き続き「コ・コ・コ」様より拝借。
ミストとスキンブルで、ミストが街にきてちょっとしたころのお話。
**************************************************************
【悲しい不幸を撒き散らした】
「夜は好きかい?」
突然隣にやってきた青年は、突然そんなことを聞いた。すでに人々は寝静まっているのか、街の家並みに明かりはない。
「僕は好きだけど、君も好きかなあと思ってね。ほら、君はよく星空を眺めているじゃないか」
にこにことしているその青年は、名をスキンブルシャンクスという。その明るい笑顔は、闇夜の満月というよりも昼間の太陽のようだ。少なくともミストフェリーズはそう思っている。
「・・・嫌いじゃないよ。僕の身体がこの闇色に溶けてしまうからね、落ち着くんだ。星が好きで眺めてるわけじゃないよ。ただそうしてぼうっとしていれば変な力を使うこともないから」
「そう。僕だって夜が好きさ。あ、さっきも言ったかな。僕はね、夜になると出番だって思うんだ。夜行列車に乗っているお客さんの快適な旅のために働くのさ。列車っていいもんだよね」
列車の話になると、茶虎柄の青年はいつもに増して目を輝かせる。少し変わっているとは思うけれど、ミストフェリーズはこの青年には好感を持っている。年がら年中花をつけたヒマワリのような奴だと、わかるようなわからないような例えをした仲間もいる。
ミストフェリーズがこの街にやってきてもう随分時間が経っている。色んな町を渡り歩いてきたが、生まれ持った彼の力は、望まなくても周りの猫たちの目を好奇と畏怖の色に染めてきた。とかく、彼にとってそれは面倒な話だった。いつも彼は異分子だった。何かあれば、時には頼りにされ、時には煙たがられた。取りあえず、この街では今のところそういうことはないからいついているだけだと彼は考えている。
「ところでさ。昨日マンカスが怪我しただろう?」
「何?僕のせいだって言いたいのかい?」
「まさか。隣街のチンピラ軍団と一戦交えたんでしょ。今頃ランパス辺りが隣町に殴りこみに行ってるんじゃないかなあ。温和に収めてくれればいいけど無理だろうね。喧嘩っ早いのが売りだし」
困った売りだけどねえ、などと言ってスキンブルシャンクスは笑った。ミストフェリーズも何となくつられて笑った。
「うん、その方がいいよ」
「え?」
「笑ってる方がいいって言ったのさ。ねえ、ミスト」
スキンブルシャンクスの目はいつになく優しく見えた。その柔らか光を湛えた眼から視線を逸らすことができずに、ミストフェリーズは何度か瞬いた。
「そろそろやめようよ」
「やめるって、何を?」
「そろそろ不幸ごっこやめないかい?」
何を言うのだ。やめるもなにもそんなことはしていない。そう反駁しようとしてできないのはなぜか。瞠目する黒猫に、スキンブルシャンクスは淡々と話しかける。
「辛いとか悲しいとか理不尽だとかそんな過去ってみんな持ってるよ。親や友達を目の前で失ったとか、裏切られたとか、死ぬような目に遭ったとか、化け物扱いされたとかね。みんな悲しかったんだよ、いや、まだ悲しいのかもしれないね。まだ理不尽だと感じているかもしれない」
「何が言いたいのさ」
「あのね。どんな不幸であっても、それを受け止めるのって自分しかいないんだよ。どんなに不幸だって宣伝してみても、自分の周りが不幸になるわけじゃないんだ。不幸を撒きびしみたいに撒いたところで、誰かが踏んでも痛くなきゃそれで終わりさ。だから、君も不幸を撒くのはやめるんだね」
「そんなこと・・・」
するわけがない。いや、周りの目にはそう映っているのか。それとも、知らぬ間に不幸を振り撒くような言動をしていたのか。ミストフェリーズは結局言い返せずに口を閉じた。
「自分のこともっと好きになりなよ。自分にもっと誇りを持つんだ。君も誇り高い猫じゃないか。顔を上げて胸を張ってさ。この世界ってたぶん君が思ってるよりずっと楽しいよ。ね、ちょっとさっきのところからやり直してみようか」
「やり直す?」
スキンブルシャンクスはにこにこと笑って、そうだよと言った。全くよくわからない。
「ミスト。ほら、星がきれいじゃないか。仔猫たちは寝ているかなあ。かわいいよね、仔猫たちの寝顔」
「あ、うん、そうだね」
何を突然。そう思ったけれど、脳裏に浮かんだ仔猫たちの寝顔に自然と頬が緩む。
「いい夜だなあ。星もきれいで。ところでさ、ミスト。昨日マンカスが怪我したんだってね」
「そうらしいね。大丈夫かな。お見舞いに行こうか」
ああ、こういうことか。ミストフェリーズは思う。なぜかさっきとは違う言葉が口をついて出た。スキンブルシャンクスは満面の笑みを浮かべて頷いた。
「そうと決まればぐずぐずしている場合じゃないよ!」
スキンブルシャンクスは駈け出した。ミストフェリーズも軽く跳躍してその後を追った。人々が寝静まった町を駆け抜ける。
そんなある夜のお話。
**************************************************************
ちょっと長かったかも。
お題・・・まあ、かすってるってことで。
妹がタイに行っちゃったので、つなぎで一本書いてみました。もう、推敲する気力もないのでそのまま上げちゃいます。お題は引き続き「コ・コ・コ」様より拝借。
ミストとスキンブルで、ミストが街にきてちょっとしたころのお話。
**************************************************************
【悲しい不幸を撒き散らした】
「夜は好きかい?」
突然隣にやってきた青年は、突然そんなことを聞いた。すでに人々は寝静まっているのか、街の家並みに明かりはない。
「僕は好きだけど、君も好きかなあと思ってね。ほら、君はよく星空を眺めているじゃないか」
にこにことしているその青年は、名をスキンブルシャンクスという。その明るい笑顔は、闇夜の満月というよりも昼間の太陽のようだ。少なくともミストフェリーズはそう思っている。
「・・・嫌いじゃないよ。僕の身体がこの闇色に溶けてしまうからね、落ち着くんだ。星が好きで眺めてるわけじゃないよ。ただそうしてぼうっとしていれば変な力を使うこともないから」
「そう。僕だって夜が好きさ。あ、さっきも言ったかな。僕はね、夜になると出番だって思うんだ。夜行列車に乗っているお客さんの快適な旅のために働くのさ。列車っていいもんだよね」
列車の話になると、茶虎柄の青年はいつもに増して目を輝かせる。少し変わっているとは思うけれど、ミストフェリーズはこの青年には好感を持っている。年がら年中花をつけたヒマワリのような奴だと、わかるようなわからないような例えをした仲間もいる。
ミストフェリーズがこの街にやってきてもう随分時間が経っている。色んな町を渡り歩いてきたが、生まれ持った彼の力は、望まなくても周りの猫たちの目を好奇と畏怖の色に染めてきた。とかく、彼にとってそれは面倒な話だった。いつも彼は異分子だった。何かあれば、時には頼りにされ、時には煙たがられた。取りあえず、この街では今のところそういうことはないからいついているだけだと彼は考えている。
「ところでさ。昨日マンカスが怪我しただろう?」
「何?僕のせいだって言いたいのかい?」
「まさか。隣街のチンピラ軍団と一戦交えたんでしょ。今頃ランパス辺りが隣町に殴りこみに行ってるんじゃないかなあ。温和に収めてくれればいいけど無理だろうね。喧嘩っ早いのが売りだし」
困った売りだけどねえ、などと言ってスキンブルシャンクスは笑った。ミストフェリーズも何となくつられて笑った。
「うん、その方がいいよ」
「え?」
「笑ってる方がいいって言ったのさ。ねえ、ミスト」
スキンブルシャンクスの目はいつになく優しく見えた。その柔らか光を湛えた眼から視線を逸らすことができずに、ミストフェリーズは何度か瞬いた。
「そろそろやめようよ」
「やめるって、何を?」
「そろそろ不幸ごっこやめないかい?」
何を言うのだ。やめるもなにもそんなことはしていない。そう反駁しようとしてできないのはなぜか。瞠目する黒猫に、スキンブルシャンクスは淡々と話しかける。
「辛いとか悲しいとか理不尽だとかそんな過去ってみんな持ってるよ。親や友達を目の前で失ったとか、裏切られたとか、死ぬような目に遭ったとか、化け物扱いされたとかね。みんな悲しかったんだよ、いや、まだ悲しいのかもしれないね。まだ理不尽だと感じているかもしれない」
「何が言いたいのさ」
「あのね。どんな不幸であっても、それを受け止めるのって自分しかいないんだよ。どんなに不幸だって宣伝してみても、自分の周りが不幸になるわけじゃないんだ。不幸を撒きびしみたいに撒いたところで、誰かが踏んでも痛くなきゃそれで終わりさ。だから、君も不幸を撒くのはやめるんだね」
「そんなこと・・・」
するわけがない。いや、周りの目にはそう映っているのか。それとも、知らぬ間に不幸を振り撒くような言動をしていたのか。ミストフェリーズは結局言い返せずに口を閉じた。
「自分のこともっと好きになりなよ。自分にもっと誇りを持つんだ。君も誇り高い猫じゃないか。顔を上げて胸を張ってさ。この世界ってたぶん君が思ってるよりずっと楽しいよ。ね、ちょっとさっきのところからやり直してみようか」
「やり直す?」
スキンブルシャンクスはにこにこと笑って、そうだよと言った。全くよくわからない。
「ミスト。ほら、星がきれいじゃないか。仔猫たちは寝ているかなあ。かわいいよね、仔猫たちの寝顔」
「あ、うん、そうだね」
何を突然。そう思ったけれど、脳裏に浮かんだ仔猫たちの寝顔に自然と頬が緩む。
「いい夜だなあ。星もきれいで。ところでさ、ミスト。昨日マンカスが怪我したんだってね」
「そうらしいね。大丈夫かな。お見舞いに行こうか」
ああ、こういうことか。ミストフェリーズは思う。なぜかさっきとは違う言葉が口をついて出た。スキンブルシャンクスは満面の笑みを浮かべて頷いた。
「そうと決まればぐずぐずしている場合じゃないよ!」
スキンブルシャンクスは駈け出した。ミストフェリーズも軽く跳躍してその後を追った。人々が寝静まった町を駆け抜ける。
そんなある夜のお話。
**************************************************************
ちょっと長かったかも。
お題・・・まあ、かすってるってことで。