映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「タイタンズを忘れない ~Remember the Titans~」

2008年01月23日 | 映画~た~
4.5年前に弟がレンタルで借りてきて一度観た覚えがあるので、2度目です。といっても初めて観たときの印象はというと…「アメリカ的泣ける映画」。ちょっと斜めから観ているかんじだったのですが、今回は素直に楽しめたと思います。実話をもとに…ってどこまでが実話かわからないくらい脚色をすることがあるのですが、それを考え始めたらアメリカ映画は楽しめませんね。反省。

さて内容はといいますと、黒人差別が色濃く残る1971年のヴァージニア州の田舎町。アメリカ公民権運動の高まりの下、この田舎町でも白人学校と黒人学校が統合され、その高校のアメフト部のコーチに黒人のブーン(デンゼル・ワシントン)がやってくる。アメフトを通して人種の壁を越え始める選手たち、そして彼らの活躍を通して町の人たちも変わっていく。


いやー、デンゼル様はいい仕事なさるわ。何を見てもはずれがない。あ、『ペリカン文書』は未だに最後まで見れてないけど(面白さがわからない)。どんな役も演じきる。いや、もう演じているようには見えない。デンゼル・ワシントンであることは間違いないのだけど、それぞれの映画の中で全くの別人に見えるところがすごい。だって、この映画のデンゼル様と『インサイドマン』のデンゼル様が同一人物だとは思えないでしょ!?私、興奮しすぎでしょうか?


原作も読んでいないし、本当にどこまで実話に基づいているかわかりませんが、映画としてのキャラ設定は抜群でした。

チームのキャプテンの男の子もよかったわ。無駄なカッコよさ(見た目)がなくて、アメフトやってなければあんなかわいい彼女できないだろ!…とスポーツの強い学校ではよく見られるパターンを見事に体現。監督ジェリー・ブラッカイマーはそこまで計算してたのか!ほんと、運動一筋で脳みそも筋肉でできてそうな外見なんだけど、こいついい奴やわ。あんまり威厳がないところも高感度アップの要因やね。

チームを風通しをよくしたのは、カリフォルニアからの転校生のサンシャイン。映画のなかでは飄々としていて都会的な香りがして、女の子にも人気な設定なんだけど、登場シーンの彼は見ごとにダサい。ええ~っ!?っていうくらい垢抜けない。髪を切ってよかったね。そしてなぜか太極拳をたしなむところがまたカリフォルニアちっくでよい。突然キャプテンにチューしたり、ちょっと不思議ちゃんだけど、それがまた男臭いアメフト部に新鮮だったり。

当初いざこざの絶えなかったタイタンズのメンバーを、デンゼルは「ゲティスバーグの戦い」の戦場に連れて行く。1863年、南北戦争の趨勢を決めたといわれる最も重要な戦いの地で、高校生たちは何を感じたのだろう。100年前の戦争と同じようにいがみ合っている自分たち。黒人差別(奴隷解放)のために7000人以上が亡くなり眠っているこの地を訪れた彼らにとって、大きなターニングポイントになったに違いない。


考えさせられたのは、被差別側として弾圧されてきた黒人たちの心の強さ。ブーンコーチの精神力の強さはどこから来るのだろう。現在の心理学の実験でも、周囲に「劣っている」と言われたりすると、本来の力が出なくなってしまったり、自分を卑下したりするようになることが実証されている。当時のアメリカでは(いや、きっと今もあるだろうけど)黒人差別は当たり前。その空気の中でチームをまとめ、士気を高め、自らの家族を守り、黒人社会からの期待も背負い・・・この人のメンタルの強さ、自分の気持ちをコントロールする力の源は何なのだろう、と。

ヴァージニア州というと、南部に入るんかな。今もアメリカは、南部地域のほうが黒人差別は強い(昔ほどあからさまではないけど)。7年前にノースキャロライナ州に行ったときに聞いたエピソードを思い出しました。そこの知り合い(日系アメリカ人)が高校に進学するときのこと(1997年)。中学には白人も黒人も大勢いて皆仲良くしていて、通常高校への進学は自分たちが住んでいる地域の学校へ行くため、皆同じ高校に通うはずだったのだが、いざ高校に行ってみるとそこには黒人の同級生しかいなかったらしい。白人の学生は、黒人学生とは別の学校へ行くため皆引越しをしたそう。
表立った差別はなくても、心のどこかには潜んでいる。この出来事は、ほんの今から10年前。タイタンズの話は1971年、約40年前。ゲティスバーグの戦いは140年前。根本的には何にも変わっていない、ということなのかな。

タイタンズが試合前に行うダンスが、ものすごくかわいいです。リズムには乗ってるけど、動物の本能が出ているような。アメリカ人のこういう鼓舞の仕方って独特よなぁ。オリジナリティーがあっていいわぁ。



おすすめ度:☆☆☆★




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