映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

『北のカナリアたち』

2013年01月29日 | 映画~か~
2012年 日本映画


飛行機の中で鑑賞しました。ANAのイギリス行きだったのですが、ANAさんの映画の選択のチョイス、とても良かったです!日本行きがルフトハンザで上映作品がすっごく微妙だったので、余計に嬉しかったです!!!


そんなことはどうでもよくて、『北のカナリアたち』です。
東映創立20周年の記念作品だそうで、なるほどキャストがすごいですよね。主演の吉永小百合に、脇を固めるのが皆実力派の若手俳優たち。派手さは無いけど、東映がこの記念作品にかける本気度が伝わってくるキャスティングだなと素人ながらに感心しました。実は、ANAの機内誌を見るまでこの映画のことは全く知らなかったのですが、この「本気の実力勝負」的なところに惹かれ見てみた作品です。


北海道のある離島で小学校の教師をする川島はるは、6人の年齢がバラバラな生徒の担任。小さな教室でも問題はつきものだが、はるは生徒達の歌の才能に気が付き、子どもたちは歌を通して自信をつけ、担任とも強いつながりを築いていく。しかし、ある日おこった事故をきっかけに、歯車が狂い出した。そして20年が経ち、再び生徒たちを対面することになったはるだが…。


この映画を見たのはすでに3週間ほど前なのですが、どの場面がというよりは、それぞれの俳優の場面が同じくらいの強さで思い返されます。これ、私にはすごく珍しいことです。私の場合、通常はインパクトの強い一場面や、映像が鮮烈に脳裏に焼き付くということが多いのです。それ故に、場面や映像を覚えていても、肝心なエンディングを忘れることが多々あるというのは内緒です。


それでもこの豪華な実力派俳優たちの中で、誰が一番印象に残っているかと聞かれれば、主演の吉永小百合ではなく、もうダントツで森山未來です!この人って、「憑依型」なんでしょうね。映画の中では、「森山未來が演じている◯◯」ではなく、その役にしか見えないんです。難しい生い立ち、障害を抱えた鈴木信人の「生きることの苦しさ」が痛々しいくらいに伝わってきます。もちろん森山さんは俳優として鈴木信人を演じているわけですが、もう演じているようには見えないんですよ。

そして、鈴木信人の子供時代を演じた小笠原弘晃をいうお子さんがまた本当に演技がうまくてびっくり。昔の子役って、もっと学芸会っぽくありませんでした?いや~、最近の子役って本気ですね。この子も将来いい作品に巡りあって欲しいなぁ。



さて、実は主演が吉永小百合の映画を観ることは、大げさに聞こえるかもしれませんが私にとってはちょっとした挑戦だったんですよ。というのも、吉永小百合主演の映画って、見た覚えがあるのが『北の零年』しかないのですが…これがいまいちだったんですよ、私にとっては。

私の中では「吉永小百合=メリル・ストリープ説」(!)というのがありまして。メリル・ストリープは多分、顔の作り自体が苦手で、さらにどの映画を見ても私には「メリル・ストリープ」にしか見えないんですよ。メリルって、演技力の高さで知られていますが、うーん、ダメなんですわ。『マンマ・ミーア』を見た時の感想にも書いていますが、どうも「秘めた強さはあるのだけど表には出さず、女性的でどこか自分を押さえ込むような感じ」の役が多いように見えて、それが私の中で彼女のイメージとして固まってしまっているんです。『マンマ・ミーア』で彼女を褒めちぎりましたし、あれをきっかけにメリルへの苦手意識が無くなるかとも思ったのですが、長年かけて作られた苦手意識ってしぶといもんですね。私も妙齢なので、余計に自分の感覚を変えるのが難しいのかもしれませんが(放っておいて)。

それと同じ感覚を、私は吉永小百合さんに感じるんです。そして『北の零年』で「ああ、やっぱり…」と自分のそれまで持っていたイメージ通りの姿(役柄?)があって、そこで完全に固定されてしまったというか。


この映画の中の吉永さんは、よくも悪くもイメージ通りの吉永さんでした。でも、今回の役は、その「いつもの吉永さん」のイメージのままで映画を観ていたからこそ、「ええっ!こんなシーンまで!!!」という驚きも倍増。「吉永さん、体張ってる」ということ。年齢もそうですけど、よくぞ監督も吉永さんにここまでやらせたなぁ、と見ているこっちがドギマギしたり。

しかも旦那の役を柴田恭兵…え?吉永小百合の旦那の役を柴田恭兵がやるの?年齢が離れすぎてない(柴田さんが年下)??と思ったのですが、今調べてみたら6つくらいしか離れていないんですね。どうも私は好き嫌いを超えたレベルで吉永小百合を神格化しているのかも…。

更に言いますと、柴田恭兵の私の中のイメージも「あぶない刑事」の軟派な感じ(と言ってもこのドラマのファンでは全く無いのでほとんど見たことがない。あくまで私の中の勝手なイメージ)で固められているんですよ。この映画の中の柴田さんは全く軟派なイメージなど無く(当たり前なんだけど)、素晴らしい演技だったのだけど、あ~、ほんと難しいわ。一度自分の中で作られてしまったイメージを変えるのって。



最後に、映画の中では端役でしたが、あたくし満島ひかりさんが好きなんです。彼女が配役されていた、というのがこの映画を見てみようと思った理由の一つでもあります。2年ほど前にDVDで『川の底からこんにちは』をみて、んまぁ~びっくりしたんですよ。こんなすごい女優が出てきたのか!と、異国の地(イギリスです)で嬉しくなったほど。その後、彼女が出演していたテレビドラマ『それでも生きてゆく』を観て、どれほど心が揺さぶられたか。今後どんな映画、ドラマに出られるのか、本当に楽しみな女優さんだと思います。



映画の感想というか出演者の感想になってしまいましたが、映画全体としては凄くバランスが良くて、出演者のそれぞれが上手く個性を出し合っている面白い作品でした。湊かなえ原作の映画の『告白』は、なんだか奇抜すぎて全然好きじゃなかったのです(原作は未読)。しかし、ストーリーのインパクトの強さには惹かれるものが有ったので、『北のカナリアたち』の内容にも期待していたのですが、これには大満足。なんといっても『北のカナリアたち』というタイトルが良い!このタイトルを目にしただけでも、本やDVDなら手にとりたくなるレベルですもの。



派手さはないけれど、丁寧に作られた作品だということがひしひしと伝わってきます。話の面白さ、そして俳優たちの演技力の高さが抜群です。北海道の離島の荒々しい風景もぴったりで本当におすすめ。次回はミステリー好きのうちのばあちゃんと一緒にDVDで見たいと思います。




おすすめ度:☆☆☆☆★


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