8月11日は、アップルの共同創業者スティーブン・ウォズニアック(1950年)が生まれた日だが、ソフトバンクの創業者、孫正義の誕生日でもある。
孫正義は、1957年、佐賀の鳥栖に生まれた。父親は在日韓国人の廃品回収業者だったが、
正義が生まれた後、パチンコ店経営に乗りだし、パチンコチェーンを作り上げて成功した。正義は男ばかりの4人兄弟の次男だった。
貧しく、被差別的な環境のなかで、正義はよく勉強し、福岡の学校に通った。そのころ司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』を読み感銘を受けた。坂本龍馬の土佐藩脱藩にならい、米国行きを決意した。米国へ行くのに先立ち、東京の日本マクドナルドの藤田田社長に会いに行った。何度も門前払いをくった後、ようやく会えた藤田社長に、高校生の孫は、米国でなにをするべきかアドバイスを求めた。藤田はこういう意味のことを答えたという。
「日本人はまだ気づいていないが、コンピュータによってこれから世の中は大きく変わる。米国ではコンピュータを見てくるべきだ」
17歳のとき、高校を中退して渡米。米国の高校、大学を卒業した。大学在学中に、自動翻訳機のアイディアを、日本企業シャープに売り込み、代価1億円を得て、それを元手に米国で会社を興し、日本からインベーダーゲーム機を輸入し販売した。
大学卒業後、帰国。日本でも起業し、パソコン用ゲームソフトの販売、インターネット回線ADSL事業、プロ野球球団経営、携帯電話事業などと事業を展開、拡大させた。彼の企業ソフトバンクは国際的巨大企業となり、彼は世界有数の富豪となった。
孫正義はお手本とするべき大人物である。金銭的な成功者だからではない。苛酷な環境にくじけず、まっすぐに自分の大志に向かって邁進した。一部の日本人は、在日の人々を含む、日本人以外の有色人種を意味もなく蔑視するけれど、そうした差別や意地悪に対し、孫は資質を屈折することなく、自分を伸ばしてきた。小人や俗物の発する雑音に惑わされず、困難を乗り越え、わが道をゆく。これは、まさに英雄の生きざまである。
孫は『竜馬がゆく』を読んでいるところもえらい。すくなくとも二度以上通読している。彼が『竜馬がゆく』を再読したのは、26歳のころ、肝炎のために入院していたときだった。ソフトバンクの社長を一時ほかの者に譲り、入院して医師に「死ぬかもしれない」と言われた。それで若いときに読んだこの小説を読み返した。彼は言っている。
「二回目に読むと、いろいろと違うことが見えてきた。人間は必ず死ぬ。死ぬんだけどその瞬間に、ああオレは精一杯生きた、と思いながら死ねるような、おもしろおかしい生き方をしたいと思うようになりました」(山田俊浩『稀代の勝負師 孫正義の将来』東洋経済新報社)
(2021年8月11日)
●おすすめの電子書籍!
『ビッグショッツ』(ぱぴろう)
伝記読み物。ビジネス界の大物たち「ビッグショッツ」の人生から、生き方や成功のヒントを学ぶ。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ、ソフトバンクの孫正義から、デュポン財閥のエルテール・デュポン、ファッション・ブランドのココ・シャネル、金融のJ・P・モルガンまで、古今東西のビッグショッツ30人を収録。大物たちのドラマティックな生きざまが躍動する。
●電子書籍は明鏡舎。
http://www.meikyosha.jp
孫正義は、1957年、佐賀の鳥栖に生まれた。父親は在日韓国人の廃品回収業者だったが、
正義が生まれた後、パチンコ店経営に乗りだし、パチンコチェーンを作り上げて成功した。正義は男ばかりの4人兄弟の次男だった。
貧しく、被差別的な環境のなかで、正義はよく勉強し、福岡の学校に通った。そのころ司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』を読み感銘を受けた。坂本龍馬の土佐藩脱藩にならい、米国行きを決意した。米国へ行くのに先立ち、東京の日本マクドナルドの藤田田社長に会いに行った。何度も門前払いをくった後、ようやく会えた藤田社長に、高校生の孫は、米国でなにをするべきかアドバイスを求めた。藤田はこういう意味のことを答えたという。
「日本人はまだ気づいていないが、コンピュータによってこれから世の中は大きく変わる。米国ではコンピュータを見てくるべきだ」
17歳のとき、高校を中退して渡米。米国の高校、大学を卒業した。大学在学中に、自動翻訳機のアイディアを、日本企業シャープに売り込み、代価1億円を得て、それを元手に米国で会社を興し、日本からインベーダーゲーム機を輸入し販売した。
大学卒業後、帰国。日本でも起業し、パソコン用ゲームソフトの販売、インターネット回線ADSL事業、プロ野球球団経営、携帯電話事業などと事業を展開、拡大させた。彼の企業ソフトバンクは国際的巨大企業となり、彼は世界有数の富豪となった。
孫正義はお手本とするべき大人物である。金銭的な成功者だからではない。苛酷な環境にくじけず、まっすぐに自分の大志に向かって邁進した。一部の日本人は、在日の人々を含む、日本人以外の有色人種を意味もなく蔑視するけれど、そうした差別や意地悪に対し、孫は資質を屈折することなく、自分を伸ばしてきた。小人や俗物の発する雑音に惑わされず、困難を乗り越え、わが道をゆく。これは、まさに英雄の生きざまである。
孫は『竜馬がゆく』を読んでいるところもえらい。すくなくとも二度以上通読している。彼が『竜馬がゆく』を再読したのは、26歳のころ、肝炎のために入院していたときだった。ソフトバンクの社長を一時ほかの者に譲り、入院して医師に「死ぬかもしれない」と言われた。それで若いときに読んだこの小説を読み返した。彼は言っている。
「二回目に読むと、いろいろと違うことが見えてきた。人間は必ず死ぬ。死ぬんだけどその瞬間に、ああオレは精一杯生きた、と思いながら死ねるような、おもしろおかしい生き方をしたいと思うようになりました」(山田俊浩『稀代の勝負師 孫正義の将来』東洋経済新報社)
(2021年8月11日)
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