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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

4月29日・ウィリー・ネルソンの歌声

2015-04-29 | 音楽
「昭和の日」の4月29日は、「A列車で行こう」のデューク・エリントンが生まれた日(1899年)だが、米国のシンガーソングライター、ウィリー・ネルソンの誕生日でもある。

ウィリー・ヒュー・ネルソンは、1933年4月29日に米国テキサス州アボットで生まれた(記録上は4月30日生まれ)。イングランド、アイルランド、チェロキーの血を引くウィリーの両親は、大恐慌時代のなか、職を求めてアーカンソー州からやってきた。
ウィリーが生まれると母親、父親が相次いで出ていき、ウィリーと二つ年上の姉ボビーは、鍛冶屋をする祖父に育てられた。祖父は幼い孫たちに音楽を教えた。ウィリーは6歳のときにギターをプレゼントされ、コードを教わり、7歳ではじめて作曲し、教会で歌った。
ウィリーは9歳で地元のバンドのギター弾きになったが、夏場になると綿摘みに駆りだされ、この重労働がいやで、ウィリーはよけいに音楽にのめりこんだ。
高校時代の彼は、アルバイトをしながら、町のバンドでギターを弾いた。
高校卒業後は、空軍で9カ月間軍務に就いた後、除隊し、21歳でベイラー大学に入学し、農業を学んだ。しかし、2年ほどで退学し、音楽の世界へもどった。それから、クラブの用心棒や植木屋、油田作業員など職を転々としながら音楽活動を続けた。
彼はテキサス州のプレザントンへ引っ越し、ラジオのディスクジョッキーの仕事にありついた。22歳のとき、デモテープを作り、レコード会社に送ったが、採用されなかった。
それからも彼はカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州、ミズーリ州など土地を転々と変え、ラジオのアナウンサー、聖書や掃除機の訪問販売、皿洗いなどをしながら曲を作り、デモテープを送りつづけたが、反響はなかった。
27歳のときテネシー州ナッシュヴィルへ引っ越したころから運が向いてきた。彼が作った曲をロイ・オービソンやパスティ・クラインらの歌手が歌い、ヒットしだした。
28歳のとき、ネルソンはレコード会社と契約を結び、翌年にはカントリーソング「喜んで(Willingly)」「タッチ・ミー(Touch Me)」がヒットし、彼の音楽キャリアは軌道に乗りはじめた。ネルソンはレコード会社を移籍しながら、音楽活動を続けた。
一時は嫌気がさして、レコード業界から離れたこともあったが、やがて復帰し、42歳のときに発表した「雨の別離(Blue Eyes Crying in the Rain)」は、カントリー・チャートで1位となり、グラミー賞のベスト・カントリー・ボーカルの男性部門を受賞した。
その後も「My Heroes Have Always Been Cowboys」「If You've Got the Money I've Got the Time」「Blue Skies」など数々のヒット曲を放ち、1985年にはマイケル・ジャクソンらが呼びかけた「USAフォー・アフリカ」に参加。また、同年、困窮する米国の農家のため、ボブディランらとともに「ファーム・エイド」を開いた。カントリーから出発し、カントリーのジャンルを越えて活躍するシンガーソングライターである。

ローリング・ストーンズのキース・リチャーズはネルソンについてこう言っている。
「ウィリーはすばらしい。ひっくり返ったフリスビーさ、回って回って回って。美しき麻薬常用者とはウィリーのことだよ。ベッドから起きだすとすぐ一服するんだ。おれでさえ朝起きて10分間は待つのに。なんて作曲家だ。彼は最高のひとりだよ。」 (Keith Richards with James Fox, Life, Phoenix, 2011.)

ウィリー・ネルソンの歌う「オールウェイズ・オン・マイ・マインド(Always on My Mind)」など、彼の澄んだ、よく通る歌声を聴くと、世のすべての雑音を忘れ、うっとりとなる。心が洗われる気がする。
(2015年4月29日)



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