1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

4月14日・アン・サリヴァンの奇跡

2022-04-14 | 歴史と人生
4月14日は、歴史家アーノルド・トインビーが生まれた日(1889年)だが、教師、アン・サリヴァンの誕生日でもある。ヘレン・ケラーの家庭教師である。

アン・サリヴァンは1866年、マサチューセッツ州フィーディング・ヒルで生まれた。本名はジョアンナ・マンズフィールド・サリヴァン。両親はアイルランドの大飢饉から米国へ逃げてきた移民で、農家だった。ジョアンナは長女で、下に弟がいた。
生まれたときから「アン」の愛称で呼ばれていた彼女は、5歳のときトラホームにかかり、目が見えなくなった。アンが8歳のとき、母親が亡くなると、父親は養育を断念して、2人の子を施設救貧院へ預けた。アンの弟は入院後ほどなくして亡くなった。
子どもで満杯の貧窮院で、当初は自暴自棄だったアンも、やがて向学心に目覚め、希望して盲学校へ通うようになり、目の手術を受けて、弱いながら視力が回復した。
貧窮院で7年をすごしたサリヴァンは、卒業生総代となる優秀な成績で同院を卒業。20歳で卒業したその直後、貧窮院にアラバマ州タスカンビアから家庭教師を求める求人が届いた。それは、7歳になる目と耳が不自由で、ことばがしゃべぱれない少女の家庭教師の仕事だった。声をかけられた卒業生サリヴァンは、その依頼を引き受け、北部マサチューセッツを離れ、南部のアラバマへ向かった。
サリヴァンが住みこみで教えるのは、2歳のときに熱病にかかり、以来目が見えず、耳が聞こえなくなり、そのためことばをしゃべれなくなったヘレン・ケラーという娘だった。サリヴァンはヘレンに、既存の手順でことばを教えようとしたが、すぐにそれをやめ、ヘレンの興味が向く方向に沿って教えるやり方に変更した。ヘレンのてのひらに文字を書いて教えることで、半年間に575語を習得させる成果をあげた。
長いあいだことばを失っていたヘレンは、ふたたびしゃべられるようになり、勉強に励みだし、現在のハーヴァード大学を卒業した。さまざまな社会福祉活動にたずさわり、自伝を口述し、各地を講演してまわり、世界中の障害者の心に希望の火を灯した。サリヴァンはその間、ずっとケラーに付き添い、その活動を助けた。
37歳のとき、サリヴァンは、ヘレン・ケラーの自叙伝の編集者、メイシーと結婚し、名前がジョアンナ・マンズフィールド・サリヴァン・メイシーになった。
晩年、病床に伏したサリヴァンは、病床にある彼女を心配して日本からの来日要請を無視していたヘレン・ケラーに、日本へ行くよう勧める遺言を残した後、1936年10月、ニューヨークのフォレストヒルズで没した。70歳だった。
その翌年、ヘレン・ケラーの来日が実現した。

目、耳、ことばが不自由な三重苦の人、ヘレン・ケラーもさることながら、聞き分けのない教え子ケラーに忍耐強く教えたサリヴァン先生こそ、及びがたい。

ウィリアム・ギブソン作の戯曲『奇跡の人』は、ヘレン・ケラーとサリヴァンの授業風景を脚色した感動的な劇で、世界各国で繰り返し上演されている。この原題は「The Miracle Worker(奇跡的な働きをした人)」である。すると、タイトルの「奇跡の人」は、ヘレン・ケラーではなく、アン・サリヴァンを指しているのだろう。
(2022年4月14日)



●おすすめの電子書籍!

『大人のための世界偉人物語』(金原義明)
世界の偉人たちの人生を描く伝記読み物。エジソン、野口英世、キュリー夫人、リンカーン、オードリー・ヘップバーン、ジョン・レノンなど30人の生きざまを紹介。意外な真実、役立つ知恵が満載。人生に迷ったときの道しるべとして、人生の友人として。


●電子書籍は明鏡舎。
https://www.meikyosha.jp


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする