1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

1月6日・シュリーマンの発掘

2018-01-06 | 歴史と人生
1月6日は、米国の偉人、ベンジャミン・フランクリンが生まれた日(ユリウス暦1706年)だが、トイロを発掘した考古学者、シュリーマンの誕生日でもある。

ヨハン・ルートヴィヒ・ハインリヒ・ユリウス・シュリーマンは、1822年、現在のドイツ、メクレンブルク=フォアポンメルン州で生まれた。父親はプロテスタントの牧師で、ヨハンは9人きょうだいの上から6番目だった。
家が貧しく、13歳のときに学校をやめて食品会社で働きだした。
19歳のとき、ベネズエラに新天地の夢を見て海を渡ったが、船が難破し、オランダ領に漂着した。それが縁でオランダの貿易会社に勤めだし、24歳のとき、ロシアで商社を創業。戦争時の武器輸出などで財を成した。
シュリーマンは、その後の人生を、古代ギリシアの発掘に賭けることを決意。語学の習得に励み、ギリシア語、ラテン語、アラビア語、トルコ語など18カ国語をあやつるようになり、商売で築き上げた財産を、ホメロスの『イーリアス』に描かれたトロイ戦争の跡の発掘に注ぎ込んだ。彼はトルコのヒサルルクこそ、いにしえのトロイアにちがいないと見当をつけ、48歳のころから、発掘作業をはじめた。
そして、51歳のとき「プリアモスの財宝」を発見した。「伝説のトロイアを発見」「トロイ戦争はほんとうにあった」とのニュースは世界をめぐった。
その後もシュリーマンはトロイの発掘をつづけたが、1890年12月、旅行先のイタリア、ナポリの急死した。68歳だった。

小学生のころからギリシア神話を愛読していたので、シュリーマンの自伝『古代への情熱』を何度も読んでいる。読んでいちばん感心したのは彼の言語習得能力で、シュリーマンはひとつ新しい言語を自分のものにすると、つぎの言語にいく。しだいに記憶力が鋭さを増し、だんだん習得速度が早くなっていき、現代ギリシア語にいたってはほんの六週間でマスターした、そういう記述である。まさに神速で、ことばもない。

おおまかにまとめると、シュリーマンの生涯はこうである。
子どものころにホメロスの物語を読んで感動し、ギリシアとトロイの戦争はほんとうにあったのだと信じた。商売でお金を儲けたお金で、みんながおとぎ話だと思っているトロイ戦争の跡を発掘し、ほんとうだと証明して見せる、と決意した。将来結婚していっしょに発掘をしようと約束した女の子は、成功したシュリーマンが迎えにいくと、すでにほかの男と結婚していた。彼はべつの女性と結婚し、発掘に向かい、ついに発見した、というような話である。けれど、こうした話は、シュリーマンの創作で、トロイ発掘の試みは彼以前からあり、彼は実際には事業をたたんでから発掘を思いついたという異説もあるらしい。
いずれにせよ、たいした偉業、たいした人生で、凡人にまねできる業ではない。

イタリアのジョークに、たしかこういうのがあった。
「ツイてないよ。もう、これより下がないという不運のどん底だよ」
「そうか。じゃあ、掘ってみろ」
ときどき、掘ってみなくては、シュリーマンのように。
(2018年1月6日)



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