12月29日は、ゴムの加工法を発明したチャールズ・グッドイヤーが生まれた日(1800年)だが、チェロ奏者パブロ・カザルスの誕生日でもある。
パブロ・カザルスは、1876年、スペインのカタルーニャ地方のベンドレイで生まれた。本名はパウ・カルラス・サルバドー・カザルス・イ・デフィリョ。父親は、教会のオルガン奏者で、聖歌隊の指揮者だった。
息子のパブロは、4歳ですでにピアノ、フルート、ヴァイオリンが演奏でき、6歳のときにはヴァイオリン・コンサートを開ける腕前だった。
11歳のとき、はじめてチェロの生演奏を聴き、この楽器にほれこんだ。彼はバルセロナの音楽学校に入り、本格的にチェロの理論を学びだした。
17歳のとき、カフェでトリオ(三重奏団)で演奏しているところを、たまたま作曲家に見いだされ、カザルスは宮廷で演奏会に飛び入り出演する機会を得た。それがきかっけとなって、カザルスは王室から奨学金をもらい、首都マドリードで作曲の勉強をした。
18歳のとき、彼はフランスのパリにでて、オーケストラのチェロ奏者の職についた。そして世界的チェロ奏者として知られるようになった。
28歳のころ、ピアノのアルフレッド・コルトー、ヴァイオリンのジャック・ティボーと組んでカザルス・トリオを結成し、トリオとして演奏活動をはじめた。
スペインのフランコ総統の独裁政権に反対して演奏活動をやめてしまったこともあった。彼は一貫して反ファシズム、平和主義で、核実験禁止運動に参加し、第二次世界大戦が終わると、平和の象徴として「鳥の歌」の演奏をはじめた。94歳のとき、ニューヨークの国連本部で、こうあいさつして「鳥の歌」を演奏した。
「わたしの故郷のカタルーニャの鳥は、ピース、ピース(平和、平和)と鳴きます」
国連平和賞を受賞した後、カザルスは1973年10月、心臓発作のため、プエルトリコのサンフアンで没した。96歳だった。
カザルスは納得がいくまで練習を重ねる練習の鬼だった。13歳のときバルセロナの音楽店で、ボロボロになった中古のバッハのチェロの組曲の楽譜を手に入れた彼は、それから毎日欠かさずその曲を練習しつづけ、人前でその曲をはじめて演奏したのはそれから13年後だったという。
カザルスが学生当時は、チェロは両ひじをわきにくっつけて、堅苦しい恰好で弾くのが作法だったのを、カザルスはひじをわきから離し、自由に動かすよう作法を変えた。
大学を卒業するとき、担当教官のお宅にうかがって、夕食をご馳走になった。アルコールがまわると、教授は古いカザルス・トリオのレコードを出してきてかけてくれた。
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第7番「大公」だった。
「カザルスのチェロに、コルトーのピアノと、ティボーのヴァイオリンの音がうまく溶け合って、これがいいんですね」
「文化的なもの」を感じた。以来、カザルスは、或る高級な文化の象徴になった。
(2016年12月29日)
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パブロ・カザルスは、1876年、スペインのカタルーニャ地方のベンドレイで生まれた。本名はパウ・カルラス・サルバドー・カザルス・イ・デフィリョ。父親は、教会のオルガン奏者で、聖歌隊の指揮者だった。
息子のパブロは、4歳ですでにピアノ、フルート、ヴァイオリンが演奏でき、6歳のときにはヴァイオリン・コンサートを開ける腕前だった。
11歳のとき、はじめてチェロの生演奏を聴き、この楽器にほれこんだ。彼はバルセロナの音楽学校に入り、本格的にチェロの理論を学びだした。
17歳のとき、カフェでトリオ(三重奏団)で演奏しているところを、たまたま作曲家に見いだされ、カザルスは宮廷で演奏会に飛び入り出演する機会を得た。それがきかっけとなって、カザルスは王室から奨学金をもらい、首都マドリードで作曲の勉強をした。
18歳のとき、彼はフランスのパリにでて、オーケストラのチェロ奏者の職についた。そして世界的チェロ奏者として知られるようになった。
28歳のころ、ピアノのアルフレッド・コルトー、ヴァイオリンのジャック・ティボーと組んでカザルス・トリオを結成し、トリオとして演奏活動をはじめた。
スペインのフランコ総統の独裁政権に反対して演奏活動をやめてしまったこともあった。彼は一貫して反ファシズム、平和主義で、核実験禁止運動に参加し、第二次世界大戦が終わると、平和の象徴として「鳥の歌」の演奏をはじめた。94歳のとき、ニューヨークの国連本部で、こうあいさつして「鳥の歌」を演奏した。
「わたしの故郷のカタルーニャの鳥は、ピース、ピース(平和、平和)と鳴きます」
国連平和賞を受賞した後、カザルスは1973年10月、心臓発作のため、プエルトリコのサンフアンで没した。96歳だった。
カザルスは納得がいくまで練習を重ねる練習の鬼だった。13歳のときバルセロナの音楽店で、ボロボロになった中古のバッハのチェロの組曲の楽譜を手に入れた彼は、それから毎日欠かさずその曲を練習しつづけ、人前でその曲をはじめて演奏したのはそれから13年後だったという。
カザルスが学生当時は、チェロは両ひじをわきにくっつけて、堅苦しい恰好で弾くのが作法だったのを、カザルスはひじをわきから離し、自由に動かすよう作法を変えた。
大学を卒業するとき、担当教官のお宅にうかがって、夕食をご馳走になった。アルコールがまわると、教授は古いカザルス・トリオのレコードを出してきてかけてくれた。
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第7番「大公」だった。
「カザルスのチェロに、コルトーのピアノと、ティボーのヴァイオリンの音がうまく溶け合って、これがいいんですね」
「文化的なもの」を感じた。以来、カザルスは、或る高級な文化の象徴になった。
(2016年12月29日)
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