大関暁夫の“ヒマネタ”日記~70年代大好きオヤジのひとりごと

「日本一“熱い街”熊谷発コンサルタント兼実業家の社長日記」でおなじみ大関暁夫が、ビジネスから離れて趣味や昔話を語ります

嗚呼、洋楽生活40年(その3)

2013-02-17 | 洋楽
雑誌「ミュージック・ライフ」で個人的に一番重要なコーナーは、ニューリリースのEP紹介と新作LP紹介のコーナーでした。限られた小遣いを有効に使うためには情報が命でしたから。EP紹介は評論家の方々の投票で毎月1位から10位までが数人のコメントと共に冒頭に並べられ、その後にベスト10圏外の曲が多数紹介されていました。

このEP新譜ベスト10ですが、毎月テクニクス・プラザというナショナルのショールームで、評論家の先生方とかDJの皆さんを集めて雑誌の発行に先駆け順位発表と試聴をおこなう定例イベントもありました。私は1回だけ学校の帰りに聞きに行ったことがあります。池袋だったような気がするのですが、定かではありません。その日座席は満席で立ち見でしたが、評論家の故福田一郎さんとかDJとしても活躍していた八木誠さんとかが出ていて、いろいろなアーティストの最新情報を聞くことができてなかなか充実していました。

その日八木さんが「今月のイチ押し」として熱く語り紹介してくれたのが、グラディス・ナイト&ザ・ピップスの「夜汽車よジョージアへ!」という新曲でした。ロックじゃなかったのですが確かにいい曲だなと思ったことを今でもハッキリ覚えています。その後、ラジオでも何回か聞いてあの日の印象もあり「やっぱりいい曲だ」と妙に感じ入り、シングル盤を購入しました。これがブラック系で初めての洋楽シングル購入でありました(彼らがブラックだというのは、購入時にジャケットを見て初めて知ったので、ブラックを初めて買ったという意識は特になかったですが…)。

一方の「ミュージック・ライフ」のLP紹介コーナーの方ですが、このコーナーのおかげで、それまで歌謡曲と同じく寄せ集めの金儲け企画とばかり思っていたLPいわゆるアルバムというものに対する誤解が解けました。海外アーティストの場合、アルバムはしっかりとコンセプトを持って作り込まれたものなんだと分かったことは、大きな収穫でした。そうなると、そのアルバムというやつを買ってみようということになるわけです。当然候補はTレックスでした。

その当時のTレックスの最新アルバムは「タンクス」でした。しかし、このアルバムにはシングルヒットが入っていなく、しかもシングル「イージー・アクション」のB面「ボーン・トゥ・ブギー」が入っていたので、自分の手持ち曲とダブりがあるのは損な気がしました。そこで、目をつけたのはひとつ前のアルバム「ザ・スライダー」でした。こちらは、聞いてみたいと思っていたシングル曲「メタル・グゥルー」と「テレグラム・サム」の2曲が入っていることが最大の魅力でした。それとジャケットに漂う不思議なアート感が、「中身もいいに違いない」と思わせるのに十分魅力的であったのでした。

初めてのLP購入は、2000円というシングル4枚分ものお金を出すので、なぜか家の近くのレコード店でやすやすと買ってはいけない気がして、渋谷まで現金を握りしめて買いに行った記憶があります。それはあの当時に「ちょっとしたものを買うときはデパートで」という習慣があったからのような気がします。何かあったときにデパートならちゃんと対応してくれるから、と親に教わっていたのかもしれません。

渋谷の駅に着いて道を歩いていると、道端でレコードを売っている露天商に出くわしました。いわゆる輸入盤販売です。通りがかりに横目で見るとなんとお目当ての「ザ・スライダー」が飾られているじゃないですか。しかも特価1500円とか書いてあって、これから買おうとする国内盤よりも500円も安い。「なんで安いんだ?」「500円浮けば、シングルが1枚買える」。心が揺らぎました。しかし、ワゴンに向かいジャケットを手に取ってみるとやけに薄い。その感触今でもはっきり覚えているのですが、レコードが入っていないかのように思えたのです。

私は思いきって、露天商のおじさんに聞いてみました。「これレコード入ってますか?」。するとおじさんは少しムッとした顔つきになり、「何言ってんだこの小僧」と言わんばかりに「ん!」と小さく発して睨まれてしまいました。そのやり取りでハッと我にかえり、「こんなところで買って、もしレコードが入っていなくても、絶対に交換や払い戻しはしてくれないぞ。それどころか明日来たらもうこんな店ないかもしれないぞ。信頼一番のデパートでLPを買うために来たんじゃないか。つまらん寄り道はするな!」と心が囁きました。

その日の目的地は西武百貨店でした。なんとなくですが、こういうものは東急じゃなくて西武かなと思い、ここで買うことを決めて家を出てきたのです。レコード売り場に、「ザ・スライダー」はありました。2000円也。本当にこれでいいんだなと、もう一度いろいろなLPを見比べてから、アルバムをレコード棚から抜いてレジに向かいました。ついに買ってしまった初めてのLP。当時の2000円は、中学2年生にはかなりの高額であったように思います。うれしさと中身に対する不安さと、入り混じった感覚で早く家に帰って聞いてみたい一心で購入後はまっすぐ家路を急いだのでした。(以下続く)

★今日の関連レコード
<グラディス・ナイト&ザ・ピップス>
夜汽車よジョージアへ!
<Tレックス>
ザ・スライダー(LP)
タンクス(LP)
電気の武者(LP)
ボラン・ブギー(LP)

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